防食概論:塗装・塗料
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ここでは,塗料・塗膜の品質項目及び評価方法について,【防食塗装用塗料の品質項目】, 【塗膜品質の分類】, 【関連の JIS試験規格】に項目を分けて紹介する。
塗膜の評価(防食塗装用塗料の JIS 品質試験)
防食塗装用塗料の品質項目
防食塗装用塗料の品質項目について,その種別と試験方法をまとめて紹介する。なお,表中の記号の意味は,○ : 全ての塗料に規定あり,△ : 一部の塗料に規定あり,× : 規定なしを意味する。
なお,このサイトでは,表中の赤字の項目を中心に概要を紹介する。青字の項目は,塗料の評価で紹介した項目である。
種 別 | 項 目 | 試験方法 | 下塗 | 中塗 | 上塗 |
---|---|---|---|---|---|
塗料の性状 | 容器の中での状態 | JIS K 5600-1-1の4.1(容器の中の状態) | ○ | ○ | ○ |
低温安定性(-5℃,水性塗料) | JIS K 5600-2-7の4.(低温安定性) | △ | △ | △ | |
加熱残分(%) | JIS K 5601-1-2 | △ | ○ | ○ | |
塗装作業性 | 塗装作業性 | JIS K 5600-1-1の4.2(塗装作業性) | △ | △ | ○ |
乾燥時間(表面乾燥性) | JIS K 5600-3-2 | △ | ○ | ○ | |
指触乾燥性,半硬化乾燥 | JIS K 5600-1-1の4.3.(乾燥時間) | △ | △ | △ | |
ポットライフ | JIS K 5600-2-6 | △ | △ | △ | |
重ね塗り適合性 | JIS K 5600-3-4 | × | × | △ | |
塗膜形成機能 | 塗膜の外観 | JIS K 5600-1-1の4.4(塗膜の外観) | ○ | ○ | ○ |
隠ぺい率 | JIS K 5600-4-1の4.1.2方法B(隠ぺい率) | × | ○ | ○ | |
上塗り適合性 | 塗料規格(JIS K 5551)に定める方法 | △ | ○ | × | |
耐衝撃性(耐おもり落下性) | JIS K 5600-5-3 | △ | △ | △ | |
耐屈曲性(円筒形マンドレル法) | JIS K 5600-5-1 | △ | △ | △ | |
付着性 | JIS K 5600-5-6 | △ | × | × | |
層間付着性 | 塗料規格(JIS K 5659)に定める方法 | × | △ | △ | |
付着安定性 | 塗料規格(JIS K 5674)に定める方法 | △ | × | × | |
塗膜の性能・耐久性 | 促進黄色度 | JIS K 5600-4-5 | × | × | △ |
鏡面光沢度 | JIS K 5600-4-7 | × | × | ○ | |
耐液体性* | JIS K 5600-6-1の7.(浸漬法) | △ | △ | ○ | |
耐熱性 | 塗料規格(JIS K 5551)に規定する方法 | × | △ | × | |
耐塩水噴霧性 | JIS K 5600-7-1 | △ | × | × | |
耐湿潤冷熱繰返性 | JIS K 5600-7-4 | × | △ | △ | |
サイクル防食性 | JIS K 5600-7-9 | △ | △ | × | |
促進耐候性 | JIS K 5600-7-7 | × | × | ○ | |
屋外暴露耐候性 | JIS K 5600-7-6 | ○ | × | ○ |
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塗膜品質の分類
塗膜の品質は,一般的に次の特性で区分される。
① 塗膜の視覚特性
塗膜の外観を特徴付ける色(color),艶(つや)(gloss)に関わる塗膜表面の特性,塗膜の色の安定性に影響する下地色の隠ぺい性(contrast ratio)などがある。
② 塗膜の機械的性質
塗膜一般に求められる機械的性質は,塗膜の安定性に関わる付着性(adhesive property)がある。塗膜の用途別では,例えば,施工時,加工時の塗膜損傷に関わる柔軟性(flexibility),及び耐衝撃性(impact resistance),使用環境での耐摩耗性(abrasion resistance, wear resistance)などの機械的性質が求められる。
③ 塗膜の化学的性質
塗膜の使用環境は,一般的に大気環境,水中環境,土壌環境,高温環境などに分けられる。この中で,水中環境,土壌環境に限らず,大気環境でも液体との接触時間が長い場合には,塗膜に耐液体性(resistance to liquids)が求められる。また,一時的であっても高温にさらされる塗膜には,文字通り耐加熱性(resistance to heat)が求められる。
④ 塗膜の長期耐久性
鋼橋などの社会資本に用いられる塗膜には,数十年以上の長期耐久が求められる。塗膜は,架設地の環境条件,例えば,太陽光,風,温度,湿度,降雨,結露,大気汚染物質,飛来物質,吸着物質などの影響を受ける。
環境条件の中から,紫外線に対する抵抗性を重視した場合には,促進耐候性(artificial weathering, accelerated weathering)や促進耐光性(accelerated fastness to light,accelerated light resistance)が求められる。濡れに対する抵抗性を重視した場合には,耐湿性(resistance to humidity)が,濡れと環境汚染物質(飛来海塩,亜硫酸ガスなど)の相互作用に対する抵抗性を重視した場合には耐(複合)サイクル腐食性(resistance to cyclic corrosion conditions)が,海塩を多く含む環境に対する抵抗性を重視した場合には耐中性塩水噴霧性(resistance to neutral salt spray)が求められる。
また,大気環境での使用される塗膜に関しては,最も信頼性の高い実環境への暴露で評価される屋外暴露耐候性(outdoor exposure test, natural weathering)が求められる。
塗膜劣化の評価項目
塗装試験片の状態を,客観的,的確に評価できるように,JIS 規格(日本産業規格)には,目視による試験結果の相互比較のための観察方法を規定している。
JIS 規格で対象とする塗膜劣化(degradation of coatings)は,“塗膜膨れ(ふくれ;blister)”,“塗膜表面,及び塗膜下のさび(rust)”,“塗膜表面の割れ(cracking)”,“塗膜のはがれ(peeling, flaking)”,及び“白亜化(はくあか;chalking)”である。
塗膜変状の大きさと程度により“等級(designation of degree, rating schemes)”の付け方が規定されている。
JISとは
2019年までは,日本工業規格(Japanese Industrial Standards)と称され,1946年(昭和 21年)に制定された工業標準化法に基づき,経済産業省に設置された日本工業標準調査会(略称 JISC)の答申を受け,大臣が制定する国家標準(工業標準)であった。
工業標準化法の改正により,2019年7月に法の名称が産業標準化法に,日本工業標準調査会が日本産業標準調査会(Japanese Industrial Standards Committee ;略称 JISC)に,日本工業規格は「データ,サービス」を含む日本産業規格(Japanese Industrial Standards;略称 JIS)に名称変更された。
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関連の JIS試験規格
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JIS K 5600-1-6 「第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」
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