防食概論塗装・塗料

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 ここでは,日本の近代塗料開発の歴史について,【塗料工業の黎明期】,  【関連用語】 で紹介する。

 塗料概論(塗料の歴史)

 塗料工業の黎明期

 明治中期から大正初期にかけて,塗料会社が次々と創立された。特に,1904年(明治37年)から1914年(大正 3年)まで続いた日露戦争の間に,塗料の国産化が進み,大正初期には輸入品が姿を消した。
 1923年(大正 12年)の関東大震災(the great Kanto earthquake disaster)で多くの建築物,構造物が被害を受け,その復興で塗料の需要が増大した。
 関東大震災は,大正 12(1923)年 9月 1日午前 11時 58分に発生した相模湾一帯を震源とするマグニチュード 7.9 の巨大地震であるが,同時に台風の影響で火災が広がり,死者・行方不明者は約 10万 5千人,建物の全半壊・焼失は約 37万棟と甚大な被害が出た。

関東大震災(神田橋)
写真出典:国立科学博物館地震資料室


 関東大震災までに登場した主な塗料会社は,1901年(明治 34年)にエナメル,ワニスの製造販売する川上塗料株式会社,神戸ボイル油株式会社(後の神東塗料株式会社),1916年(大正 5年)に船底塗料を扱う中国化学工業合資会社(後の中国塗料株式会社),1918年(大正7年)にラッカーを国産化した関西ペイント株式会社,1919年(大正 8年)に大阪製煉(株)(後の株式会社トウペ)が設立している。
 
 その後に,建築物,船舶以外の分野では,自動車や家具の美装の需要が増加し,これに適した塗料の開発が進んだ。
 この美装分野での革命的な塗料として,ニトロセルロースラッカー(硝化綿ラッカー,nitrocellulose lacquer)が,1923年にデュポン社で発明され,GM社の車に最初に用いられた。
 日本では,久保孝ペイント株式会社が 1924年(大正13年)にニトロセルロースラッカーの国産化に成功している。
 その後,昭和 15年までに,櫻宮化学株式会社水谷ペイント株式会社東京ペイント株式会社イサム塗料株式会社大日本塗料株式会社日本特殊塗料株式会社ロックペイント株式会社カナヱ塗料株式会社大同塗料株式会社株式会社アサヒペンなど日本の主要な塗料会社が設立している。

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 用語

 黎明期(れいめいき;the early days, the dawn of)
 夜明けにあたる時期。新しい文化・時代などが始まろうとする時期。
 エナメル(enamel)
 エナメルペイント(enamel paint)とは,油ワニスと着色顔料を練り合わせ,平滑で高い光沢を有する塗膜が得られるように作られた塗料の総称。ラッカーエナメル,メタリックエナメル,JIS K5572「フタル酸樹脂エナメル」,JIS K 5582「塩化ビニル樹脂エナメル」,JIS K 5654「アクリル樹脂エナメル」などがある。
 ワニス(vernish)
 樹脂などを溶剤に溶かして作った塗料の総称。顔料は含まれていない。塗膜は概して透明である。
 備考:1.ISO用語規格では,“ワニスはクリヤー塗料の一種。主に酸化乾燥によって透明塗膜を形成するクリヤー塗料をワニスという。”と定義している。
 2.BS用語規格では,“ワニスは,主に樹脂及び/又は乾性油から作られる透明塗料。”と定義している。
 3.ASTM用語規格では,“ワニスは,薄い層に塗ったとき透明な又は,半透明な個体膜を形成する液状組成物。”をいい,ビチューミナスワニス,油ワニス,スパーワニス,揮発性ワニスなどを含めている。【JIS K5500「塗料用語」】
 ラッカー(lacquer)
 揮発性の高い溶媒(ナフサ,キシレン,トルエン,ケトンなど)に樹脂を溶かしたものを指す。溶剤の揮発で乾燥し,硬くて耐久性の高い塗膜を得られる。
 船底塗料(ship bottom paint)
 船底の腐食防止,生物付着防止,生物侵入防止などに用いる塗料。鋼船船底塗料と木船船底塗料とがある。
 鋼船船底塗料は,塗膜形成要素の種類によって油性塗料,ビニル樹脂塗料,塩素化樹脂系塗料などに分かれ,目的によってA/C(anti-corrosibe paint),A/F(anti-couling paint),B/T(boot topping paint)の 3種類ある。
 A/Cはさび止め用で,下塗りと中塗りとに用い,A/Fは生物付着防止のための防汚用として上塗りに用い,B/Tは水線部の防汚用又は耐候性の上塗りに用いる。
 一般に,さび止め用は,さび止め顔料を加えて作り,防汚用は防汚顔料又は防汚性物質を加えて作る。なお,塗膜形成要素自体が防汚性能をもち,海水中で徐々に溶出するタイプの A/Fもある。【JIS K5500「塗料用語」】
 ニトロセルロースラッカー(nitrocellulose lacquer)
 硝化綿ラッカーともいい,1923年にデュポン社が開発した塗料で,綿などセルロースからなる繊維のニトロ化で得られる樹脂を含み,揮発性の高い溶媒を用いたラッカー。

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