防食概論:塗装・塗料
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ここでは,道路の鋼橋塗装に適用される塗替え塗装系について,一般環境で用いられる 【旧塗装系 A,a の塗替え塗装】, 【 Ra-Ⅲ 塗装系・仕様】, 【鉛・クロムフリーさび止めペイントの品質】 , 【長油性フタル酸樹脂塗料の品質】 に項目を分けて紹介する。
道路橋の防食塗装(塗替え塗装)
旧塗装系 A の塗替え塗装
防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 7章 塗替え塗装系(抜粋・要約)
塗替え塗装仕様一般
塗替え塗装は,旧塗膜の塗装系,塗替え時の劣化程度,および塗替え後の塗膜に斯待する耐久年数によって塗装仕様を選定する必要がある。
鋼橋は,塗膜の暴露される環境が塗替え後も変わらないので従来の塗替え塗装では,旧塗装と同じ性能を有する塗装系を一般的に選定していた。
しかし,鋼橋塗装の LCC,環境対策,景観上の配慮などの観点からはより耐久性の優れた塗装系にするほうが有利かつ合理的と考えられるため,塗替え塗装仕様は従来よりも耐久性に優れる重防食塗装系を基本とするとよい。
2005年以後の塗替え塗装系
現行の「防食便覧」では,2005年の改訂で,一般環境でも重防食塗装系の Rc-Ⅰ,Ⅱ塗装系での全面塗替え(塗装系変更)を基本としている。
一般環境の塗替え塗装系として唯一規定されている Ra-Ⅲ塗装系は,次の塗装仕様で紹介する特殊な要件を満たす場合に限られる。すなわち,通常の構造物では,腐食性の低い一般環境においても,旧塗膜を全面除去し,塗膜更新による塗装系変更,すなわち腐食性環境で用いられる重防食塗装系 Rc への変更を推奨している。
2005年までの塗替え塗装
2005年まで用いられていた鋼道路橋塗装便覧では,腐食性の低い一般環境に新設時に塗装系 Aを用いて架設された橋梁の塗替え塗装系には,一般環境で塗替え塗装周期が 10年から 20年程度が想定される次の塗装系が採用されていた。
a-1 塗装系
下塗り塗装
鉛系さび止めペイント:使用量 140g/m2(ローラ・刷毛塗り)
中塗り塗装
長油性フタル酸樹脂塗料中塗:使用量 120g/m2(ローラ・刷毛塗り)
上塗り塗装
長油性フタル酸樹脂塗料上塗:使用量 110g/m2(ローラ・刷毛塗り)
a-3 塗装系
下塗り塗装
鉛系さび止めペイント:使用量 140g/m2(ローラ・刷毛塗り)
中塗り塗装
シリコンアルキド樹脂塗料中塗:使用量 120g/m2(ローラ・刷毛塗り)
上塗り塗装
シリコンアルキド樹脂塗料上塗:使用量 110g/m2(ローラ・刷毛塗り)
なお,シリコンアルキド樹脂とは,シリコン樹脂との変性アルキド樹脂をいい,長油性フタル酸樹脂より耐候性に優れる。
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Ra-Ⅲ 塗装系・仕様
過去の塗装便覧では,塗替え塗装系として,上塗り塗料種の異なる a-1塗装系,a-3塗装系の 2種を規定していたが,現行の防食便覧では,Ra-Ⅲ塗装系の 1種類のみが規定されている。
防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 7章 塗替え塗装系 塗替え塗装仕様
現在施工されている旧塗膜の A,a 塗装系が十分な塗膜寿命を有しており,適切な塗膜の維持管理体制がある場合や橋の残存寿命が 20年程度の場合には,素地調整程度 3種を行い,鉛・クロムフリーさび止めペイントに替えた塗装仕様( Ra-Ⅲ )を適用してもよい。
このとき,素地調整や塗装は極力機械化して良好な塗膜を形成することが重要である。
塗装仕様
素地調整
3 種(動力工具・手工具併用)活膜は残す。
塗膜の不良部の面積率で素地調整種別が,3種 A(さび面積 15~30%,塗膜異常 30%以上),3種 B(さび面積 5~15%,塗膜異常 15~30%),3種 C(さび面積 5%以下,塗膜異常 5~15%)に分けられる。
下塗り塗装
① 素地調整後 4 時間以内, 鋼板露出部のみ
鉛・クロムフリーさび止めペイント:使用量 140g/m2(ローラ・刷毛塗り)
② ①塗装後 1 日以上,10 日以内,全面塗り付け
鉛・クロムフリーさび止めペイント:使用量 140g/m2(ローラ・刷毛塗り)
③ ②塗装後 1 日以上10 日以内,全面塗り付け
鉛・クロムフリーさび止めペイント:使用量 140g/m2(ローラ・刷毛塗り)
中塗り塗装
下塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
長油性フタル酸樹脂塗料中塗:使用量 120g/m2(ローラ・刷毛塗り)
上塗り塗装
中塗り塗装後 2 日以上 10 日以内,全面塗り付け
長油性フタル酸樹脂塗料上塗:使用量 110g/m2(ローラ・刷毛塗り)
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鉛・クロムフリーさび止めペイントの品質
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
鉛・クロムフリーさび止めペイント
鉛およびクロムを含まない顔料をさび止め顔料とし,ボイル油および/またはフタル酸樹脂ワニスをビヒクルとした 1液形の塗料で,下塗り塗装に使用するものである。防せい(さび)錆顔料としては,りん酸亜鉛, 亜りん酸亜鉛,モリブデン酸亜鉛,モリブデン酸亜鉛カルシウム,りん酸アルミニウム,メタほう酸バリウム,シアナミド亜鉛などを使用する。本塗料は JIS K5674 鉛・クロムフリーさび止めペ イントに準拠する。品質
下表には,鉛・クロムフリーさび止めペイントの塗料品質,比較のため JIS K5674 2019 「鉛・クロムフリーさび止めペイント」1 種(有機溶剤系)の品質を紹介する。
項 目 | 鉛・クロムフリーさび止めペイント | JIS K 5674(1 種溶剤系) |
---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなく一様になる。 | |
塗装作業性 | はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 | 支障がない。 |
表面乾燥性 | 表面乾燥する。(8時間) | |
塗膜の外観 | 正常である。 | |
上塗り適合性 | 支障がない。 | |
耐屈曲性 | 折り曲げに耐える。(6mm) | |
付着安定性 | - | はがれを認めない。 |
サイクル防食性 | 膨れ,さび及びはがれがない。(36サイクル) | |
加熱残分(質量分率 %) | 75以上 | |
塗膜中の鉛(質量分率 %) | 0.06以下 | |
塗膜中のクロム(質量分率 %) | 0.03以下 | |
防錆性 | 防錆性を持つ。(24 か月) |
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長油性フタル酸樹脂塗料の品質
「防食便覧」付属資料(鋼道路橋塗装用塗料標準)に規定される塗料概要と品質を紹介する。
長油性フタル酸樹脂塗料
着色顔料,体質顔料,長油性フタル酸樹脂,溶剤等からなる 1液形の塗料で,JIS K5516:2003 2種合成樹脂調合ペイントに準拠する。品質
下表には,長油性フタル酸樹脂塗料の塗料品質,比較のため JIS K5516 2019 「合成樹脂調合ペイント」2 種(大形鉄鋼構造物用)の品質を紹介する。
項 目 | フタル酸樹脂中塗 | JIS K5516( 2種中塗) | フタル酸樹脂上塗 | JIS K5516( 2種上塗) |
---|---|---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |||
塗装作業性 | はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 | |||
乾燥時間(表面乾燥性) | 16 時間以内 | |||
指触乾燥性 | 1時間以下で指触乾燥してはならない。 | ― | 1時間以下で指触乾燥してはならない。 | ― |
塗膜の外観 | 塗膜の外観が正常であるものとする。 | |||
隠ぺい率 %(白及び淡彩) | 85 以上 | 90 以上 | ||
鏡面光沢度( 60度 ) | ― | 80 以上 | ||
重ね塗り適合性 | ― | 重ね塗りに支障があってはならない。 | ||
上塗り適合性 | 上塗に支障があってはならない。 | ― | ||
加熱残分 % | 65 以上 | 60 以上 | ||
耐塩水性 | ― | 塩化ナトリウム溶液に浸しても,異常がないものとする。 | ||
促進耐候性 | ― | 膨れ,割れ及びはがれの等級は 0 であり,色とつやの変化の程度が見本品に比べて大きくないものとする。また,白及び淡彩では,白亜化の等級が 1 以下とする。 | ||
屋外暴露耐候性 | ― | 2 年間の試験で,膨れ,はがれ及び割れがなく,色とつやの変化の程度が見本品に比べて大きくないものとする。また,白及び淡彩では,白亜化の等級が 4 以下とする。 |
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