JIS K 5600_7_7  塗料一般試験方法‐第7部‐第7節:促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法)

 JIS K 5600-6-1 2008年版  塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第7節:促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法) ( Testing methods for paints-Part 7 : Long-period performance of film- Section 7 : Accelerated weathering and exposure to artificial radiation (Exposure to filtered xenon-arc radiation) )について  【序文・目次・適用範囲・用語及び定義】,   【原理・補足情報】,   【装置】,   【サンプリング・試験片の作製】,   【手順】,   【老化現象の評価】 に分けて紹介する。

 序文・目次・適用範囲・用語及び定義

 序文
 この規格は,ISO 11341:2004, Paints and varnishes−Artificial weathering and exposure to artificial radiation− Exposure to filtered xenon-arc radiationを基に作成したものである。
 
 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
 序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 用語及び定義4 原理,5 必要な補足事項6 装置(6.1 試験槽,6.2 光源及びフィルタ,6.3 試験槽空調システム,6.4 試験片にぬれを与える装置,6.5 試験片ホルダ,6.6 ブラックスタンダード温度計又はブラックパネル温度計,6.7 放射計,6.8 暴露装置の校正),7 サンプリング,8 試験片の作製9 手順(9.1 試験片の取り付け,9.2 ブラックスタンダード温度計又はブラックパネル温度計の調整,9.3 試験槽空気温度,9.4 試験片の暴露,9.5 試験片の濡れ及び試験槽内の相対湿度,9.6 照合試験片及び試験片の暴露,9.7 試験時間),10 老化現象の評価,11 試験報告書
 附属書A(規定)必要な捕捉情報
 附属書B(参考)水平面全天分光放射照度及び窓ガラスの分光透過率の表
 
 1 適用範囲
 この規格は,光源としてキセノンアークランプを用いた促進試験装置内で,水及び水蒸気の作用を含めて,促進耐候性試験,又は促進耐光性試験によって,塗膜を暴露する方法について規定する。
 この試験方法では,試験前,試験中及び試験後の選択した要因を比較測定することによって,個別に評価することができる。
 この規格は,試験の最も重要な要因,及び暴露装置の条件を規定する。
 
 3 用語及び定義
 この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 5500「塗料用語」によるほか,次による。
 老化現象 (ageing behaviour)
 促進耐候性試験又は促進耐光性試験における塗膜の性質の変化。
 :老化を起こす要因の一つの尺度は,400nm以下の波長又は特定の波長,例えば,340nmにおける放射露光量Hである。塗膜の老化現象は,塗膜の種類,塗膜の暴露条件,老化の進行を監視するために選択した特性及びその変化の程度に依存する。
 放射露光量,H(radiant exposure)
 試験片に放射され,次の式で与えられる放射エネルギーの量。
     H=∫Edt
   ここに,E:放射照度(W/m2)
        t:暴露時間(秒)
       H:放射露光量(J/m2)
 :放射照度 Eが総暴露時間中一定であれば,放射露光量 Hは Eと tとの積となる。
 老化基準 (ageing criterion)
 試験による,塗膜の選択した特性の変化の程度。老化基準は,規定によるか又は受渡当事者間の協定による。

   ページのトップ

 原理・補足事項

 4 原理
 ある放射露光量 Hを放射した後,塗膜の選択した特性の変化の度合いを得るために,及び/又はある度合いの老化を生じるのに必要な放射露光量を得るために,フィルタを通したキセノンアーク放射による促進耐候性試験,又は促進耐光性試験を行う。
 監視するために選択した特性は,実用的にも重要であるものが望ましい。暴露した塗膜の特性は,同一の塗料から同時に同じ方法で作製した照射前の塗膜原状試験片)の特性と比較するか,又は暴露装置内での試験中の状態が既知である塗膜照合試験片)と同時に暴露して,特性を比較する。
 
 自然暴露においては,太陽光の照射が塗膜の老化の必す(須)な要因と考えられる。同じことが窓ガラスを通した放射に対する暴露にも当てはまる。したがって,促進耐候性試験,又は促進耐光性試験において,この要因をシミュレートすることが特に重要である。
 キセノンアーク光源には,二つの異なるフィルタシステムがある。一つは,紫外域,及び可視域で水平面全天放射の分光分布に一致させるもの(方法 1),もう一方のフィルタは,紫外域,及び可視域で厚さ 3mmの窓ガラスを通した水平面全天放射の分光分布に一致させるもの(方法 2)で,いずれも分光放射照度を修正するように設計されている。
 
 放射照度値及び 400nm以下の紫外域におけるフィルタを通した照射の偏差の許容範囲を示すため,二つの分光エネルギー分布を示す(ここでは省略するが,源規格の表 1及び表 2参照)。
 さらに,キセノンアーク放射は 800nmまでの範囲では太陽光の放射とよく一致するので,その範囲の放射照度の規定に対して CIE No.85が用いられる。
 
 暴露装置内での試験中に,キセノンアークランプ及びフィルタシステムの劣化によって,分光放射照度 Eが変化する。特に高分子材料に光化学的な影響を大きく与える紫外域においてこの劣化が起こる。
 したがって,単に照射時間だけでなく,400nm以下の波長域又は特定波長,例えば,340nmでの放射露光量 Hについても測定を行う。その値は,塗膜の老化に関する参考値として用いる。
 
 塗膜に及ぼす自然のさまざまな作用を,正確にシミュレートすることは不可能である。したがって,この規格では,促進耐候性試験(ISO 11341では Artificial weathering)という用語を自然暴露とは区別している。窓ガラスを通した太陽光をシミュレートする試験は,この規格では促進耐光性試験(ISO 11341では artificial radiation− Exposure to filtered xenon-arc radiation)としている。
 注: CIE No.85 CIE(国際照明委員会)発行のTechnical Report No.85(1989)に発表された,太陽光の波長分布及び分光放射照度のモデル。
 
 5 必要な補足事項
 この規格の試験方法は,いかなる場合も補足情報によって補完する必要がある。補足情報の項目は,附属書Aによる。
 附属書 A(規定) 必要な補足情報
 この規格に規定する試験方法を実施するための必要な補足情報を,次に示す。これらの情報は,受渡当事者間での協定が望ましく,また,試験する製品に関する国際規格若しくは国内規格又はその他の文書から,部分的又は全体的に引用してもよい。
  a)  塗装する素地の材料,その厚み及び表面調整
  b)  素地への試験塗料の塗装の方法
  c)  試験前の塗膜の乾燥(又は焼付け)時間及び条件並びに養生時間及び条件(可能であれば)
  d)  試験前の試験片の調整時間(同一の試験片で,既に他の試験が終了しているとき)
  e)  JIS K 5600-1-7による乾燥膜厚(µm)及び測定方法。単一塗膜又は多層塗装系の区別
  f)  協定に基づく試験方法の変更
  g)  特別な試験条件及び耐光性の評価での色変化の限度

   ページのトップ

 装置

 6 装置
 6.1 試験槽
 試験槽は,放射光源,フィルタ,及び試験片のホルダを取り付けることができる耐食性材料製で,空調ができる囲いで構成する。
 6.2 光源及びフィルタ
 1本,又は複数のキセノンアークランプを光源として用いる。光源からの放射は,放射照度の相対分光分布(相対分光エネルギー分布)が試験片ホルダ面で,水平面全天紫外放射及び可視放射(方法 1)又は厚さ 3mmの窓ガラスを通した水平面全天紫外放射及び可視放射(方法 2)のいずれかに十分近似するようなフィルタを通過させる。
 デイライトフィルタ,及び窓ガラスフィルタを通したキセノンアークランプの分光放射照度分布を表 1(ここでは省略)及び表 2(ここでは省略)に示す。照度分布は 290nm~400nmまでの総放射照度に対する百分率で示す。
 
 通常,試験片ホルダ面での時間当たりの平均の放射照度 Eは次による。
 ・300nm~400nm間では 60W/m2,又は 340nmでは 0.51W/(m2・nm)(方法 1
 ・300nm~400nm間では 50W/m2,又は 420nmでは 1.1W/(m2・nm)(方法 2
 
 受渡当事者間の協定によって,高い放射照度を用いてもよい。そのときには,試験片ホルダ面での時間当たりの平均の放射照度 Eは,次による。
 ・300nm~400nm間では 60W/m2~180W/m2まで,又は 340nmでは 0.51W/(m2・nm)~1.5W/(m2・nm)まで(方法 1
 ・300nm~400nm間では 60W/m2~162W/m2まで,又は 420nmでは 1.1W/(m2・nm)~3.6W/(m2・nm)まで(方法 2
注記 1: 高放射照度試験は,自動車用内装材などの幾つかの材料には有用である。高放射照度試験を行うときは,放射照度と特性変化との直線性を注意深く調べる。異なる放射照度で得た試験結果は,他の試験要因(ブラックスタンダード温度又はブラックパネル温度,槽内空気温度及び相対湿度)が近似しているときだけ比較することができる。
注記 2: 300nm~800nmまでの実際の放射照度 E を測定し報告することが望ましい。不連続運転のときには,この値には試験槽の内壁に反射して試験片ホルダ面に達する放射も含まれる。
注記 3: 広帯域( 300nm~400nm)での放射照度から狭帯域( 340nm又は420nm)での放射照度への換算率は,各種のフィルタでの平均値である。この換算率の詳細は,製造業者から得ることができる。
 
 放射照度 Eは,試験片のどの点においても,全面積での総放射照度の算術平均の±10%以上変動してはならない。キセノンアークランプの点灯によって生成するオゾンは,試験槽内に入れないように,分離して排気する。排気ができない場合には,試験片を周期的に入れ替えて各場所での暴露時間を等しくする。
 老化を更に促進させるために,試験対象とする塗膜の特定の性質に関して,自然暴露との相関が既知である場合には,相対分光エネルギー分布及び放射照度に関する上記の規定からの変更事項を,受渡当事者間で協定してもよい。
 このような老化を更に高める促進は,放射照度を高めるか,又は分光エネルギー分布の短波長側の端を規定の方法でより短波長側に移動させることによって行ってもよい。規定の方法から外れた場合は,詳細を試験報告書に記載する。
 キセノンアークランプ,及びフィルタの劣化は,試験中の相対分光エネルギー分布を変化させ放射照度の低下の原因となる。分光エネルギー分布及び放射照度を一定に保つために,ランプ,及びフィルタを交換するとよい。また,装置の調整によって放射照度を一定に保つようにしてもよい。交換及び調整は装置メーカの指示による。
 6.3 試験槽空調システム
 試験槽を規定するブラックスタンダード温度,又はブラックパネル温度に保つために,湿度及び温度を調節した清浄な空気を試験槽内に循環させる。
 試験槽内の空気の温度,及び相対湿度は,直接の放射から保護した温度,及び湿度センサで監視する。規定する相対湿度を保つために,蒸留水,又はイオン交換水だけを使う。
注記: 試験槽に新鮮な空気を連続的に送るとき,例えば,夏季の空気中の水分は冬季よりも多いので,冬季と夏季とでは,装置の運転条件が異なる場合があり,これが試験結果に影響するおそれがある。試験の再現精度は,空気を閉回路で循環することによって高めることができる。
 6.4 試験片にぬれを与える装置(方法 1 に用いる)
 試験片にぬれを与える装置は,規定するぬれ時間中,次のいずれかの方法で試験片をぬらすように作る。
  a)  表面に水を噴霧する。
  b)  試験槽内の試験片を水中に浸せきする。
 試験片が光源の周りを回転するときには,それぞれの試験片に対して要求に合うように,水噴霧ノズルを配置する。ぬれに用いる水は,電気伝導率 2μS/cm以下で,蒸発残 さ1mg/kg以下の,蒸留水又はイオン交換水とする。
 試験片の表面に析出物が生成されることによって誤った結果を招くおそれがあるので,必要な純度の水が得られない限り,水の再利用はしてはならない。
 水の供給タンク,配管及び噴霧ノズルは,耐食性材料で製作されたものでなければならない。
 
注記:方法 1 には,試験片のぬれがある。これは,屋外環境での降雨と結露をシミュレートすることを意図している。
注記:水の噴霧,及び水中での浸せきによる試験片のぬれは,必ずしも同じ結果にはならない。
 6.5 試験片ホルダ
 試験片ホルダは,耐食性材料を使用する。
 6.6 ブラックスタンダード温度計,又はブラックパネル温度計
 乾燥期間中,試験片の面における温度の測定には,ブラックスタンダード,又はブラックパネル温度計を用いる。
  a) ブラックスタンダード温度計
 厚さ約0.5mmのステンレス鋼の平たん(平滑)な板とする。代表的な寸法は長さ約70mm,幅約40mmとする。光源に向く表面は,耐候性に優れた黒色層で塗装する。
 この黒色層は,2500nmまでのすべての入射光を少なくとも90%吸収しなければならない。光源にさらされない平板の面の中央に良好な熱伝導を保つように白金抵抗センサを取り付ける。平板のこの面に,厚さ5mmの,充てん材を含まないポリふっ化ビリニデン(PVDF)製の裏板をはり付ける。
 このPVDF板は,白金抵抗センサを取り付けるのに十分なすき間を残して固定する。センサとPVDF板のくぼみとの距離は,約1mmとする。試験片ホルダに黒色塗装金属板を固定するとき,ホルダと金属板との間に金属間の熱接触が生じないよう,PVDF板の長さ及び幅を十分大きくとる。ホルダの金属部分は,金属板の縁から少なくとも4mmとする。
 異なる構造のブラックスタンダード温度計は,その温度表示が,暴露装置が達成できるすべての温度,及び放射照度設定での安定状態において規定する,規定構造での温度表示との差が±1.0℃以内である場合にかぎって用いてもよい。また,異なる構造のブラックスタンダード温度計は,安定状態に達するのに要する時間を,規定のブラックスタンダード温度計の10%以内とする。
  b) ブラックパネル温度計
 耐食性の平たん(平滑)な金属板とする。代表的な寸法は長さ約150mm,幅は約70mm,厚さ約1mmである。光源に向く表面は,耐候性に優れた黒色層で塗装する。
 この黒色層は,2500nmまでのすべての入射光を,90%以上吸収しなければならない。ダイヤル表示付き黒色塗装のバイメタル温度計,又は抵抗式温度計の感熱部は,暴露される面の中央にしっかりと取り付ける。金属板の裏面は,試験槽内の雰囲気に開放されていなければならない。
 黒色面の外観に変化が認められた場合,装置製造業者の指示に従う。

注記 1: ブラックスタンダード温度計は,黒色板が熱から絶縁されて固定されている点で,ブラックパネル温度計と異なる。したがって,測定された温度は,熱伝導性の低い素地に黒又は暗色系の塗装をした試験片の暴露面での温度にほぼ相当している。通常,淡彩の試験片の表面温度は低くなる。
注記 2: 試験片の表面温度は,放射の吸収量,放射量,試験片内の熱伝導,試験片と空気との間での熱移動,試験片とホルダとの間での熱移動などによる。そのため正確には予測できない。
注記 3: 一般的な暴露試験(高放射照度試験でない。)の条件では,ブラックスタンダード温度計の指示温度は,ブラックパネル温度計の指示温度より通常約 5℃高いブラックパネル温度ブラックスタンダード温度との差は,高放射照度試験時には大きくなる。
注記 4: ブラックスタンダード温度計は,熱絶縁形ブラックパネル温度計とも呼ばれる。ブラックパネル温度計は,非熱絶縁形ブラックパネル温度計とも呼ばれる。
 暴露中の試験片の表面温度の範囲を測定できるようにし,かつ,装置内の暴露条件を制御しやすくするために,ブラックスタンダード温度計と同一構造のホワイトスタンダード温度計を共に使うか,又はブラックパネル温度計と同一構造のホワイトパネル温度計を共に使うとよい。そのためには,300nm~1000nmの波長範囲で少なくとも 90%以上,及び 1000nm~2000nmの波長範囲で少なくとも 60%以上の反射率をもつ,耐候性に優れた白色塗膜を用いる。
 6.7 放射計
 試験槽内の試験片表面が受ける放射照度 E及び放射露光量 Hは,2πsr の視野及び良好な余弦感度をもつ光電子式受光器を備えた放射計で測定する。
 放射計は,表 B.1(ここでは省略)に示す分光分布を基に校正する。校正は,製造業者の指示に従って行う。
 注記: 暴露装置内で測定した放射露光量と自然暴露で測定した放射露光量との直接比較は,用いる放射計が同じタイプであれば,可能である。

   ページのトップ

 サンプリング・試験片の作製

 7 サンプリング
 JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第2節:サンプリング」の規定に従って,試験する製品(又は多層系塗装のときは各々の製品)から代表的な試料を採取する。
 次いで,JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第3節:試験用試料の検分及び調整」の規定に従って,試験用の各試料を検査し,調製する。
 
 8 試験片の作製
 試験片の作製に用いる素地は,通常実際に使われているもの(例えば,石こうボード,木材,金属,樹脂材料)を用いる。塗料の塗装及び乾燥方法は,通常用いられる膜厚となるように実際に使っている方法を用いる。
 特に規定又は受渡当事者間の協定がない限り,試験用素地として,JIS K 5600-1-4 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第4節:試験用標準試験板」の規定による標準試験板が望ましい。
注記: 試験槽のホルダに収まるような適切な大きさの平らな試験片が望ましい。
 
 特に協定がない限り,試験片の表面だけを試験する塗料,又は塗装系で塗装する。裏面及び端面は,必要があれば,試験の期間中素地を劣化から守るのに適した塗装をする。
 焼付け塗料は,通常の使用と同じ条件で乾燥させる。常温乾燥のときには,塗装片は水平に保ち,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」の規定に従って温度 23±2℃,湿度 50±5%で乾燥させる。乾燥期間及びその後の保管も,規定どおりに行う。
 すべての試験片には適切な方法でを付ける。塗膜の厚さは,JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」に従って測定する。
 異なる試験期間の一連の試験を行うときには,各々の塗装材に対し適切な数の試験片を作製する。必要があれば,各々の塗装に対し少なくとも 1枚余分の試験片を作製し,原状試験片として使うために,18℃~28℃の暗所で保管する。
 注記: この塗装板は,保管中に特性が変化する可能性がある。
 暗所での保管に鋭敏な,アルキド樹脂塗料のような塗膜は,受渡当事者間で協定した条件で保管しなければならない。

   ページのトップ

 手順

 9 手順
 9.1 試験片の取付け
 試験する塗膜が周囲の環境に自由にさらされるように,試験片を試験片ホルダに取り付ける。
 注記: 試験片ホルダの配置は,例えば,上の列と下の列を入れ替えるなど,一定間隔で変える。
 9.2 ブラックスタンダード温度計又はブラックパネル温度計の調整
 通常の試験では,ブラックスタンダード温度(BST)を 65±2℃,又はブラックパネル温度(BPT)を 63±2℃に設定する。
 暴露中に試験片を周期的にぬらすときには,乾燥期間の終わりに BST又は BPTを測定する。装置が不連続モードで動いているときでも,ブラックスタンダード温度計,又はブラックパネル温度計は常に継続して用いる。
 色の変化を試験するときには,55±2℃の BST,又は 50±2℃の BPTに設定する。より高温では,バインダの広範な劣化が生じ,白亜化及び光沢の減少となり,色変化の正確な評価が難しくなる。
 注記: 65℃の BST又は 63℃の BPTには相互の関連はない。通常 63℃又は 50℃の BPTは,65℃又は 55℃の BSTより,それぞれ高い表面温度を意味する。四つの温度は,すべて異なった条件を表し,それぞれの条件で異なる試験結果が予想される。
 ブラックパネル温度計を用いるときには,温度計の種類,及び試験片ホルダへの取付け方を試験報告書に記載する。
 受渡当事者間の協定があるときには,他の温度を選ぶことができるが,試験報告書に記載する。
 注記: BST又は BPTは,試験片の温度に一致しない。
 9.3 試験槽空気温度
 通常の試験では,試験槽空気温度 38±3℃を用いる。
 9.4 試験片の暴露
 方法 1,又は方法 2によって,連続的(連続運転)又は周期的な放射照度の変化(不連続運転)で,試験片及び放射計を暴露する。いずれのときも,ブラックスタンダード温度計,又はブラックパネル温度計を連続して用いる。
 不連続運転のときには,周期的な放射照度の変化は,試験片ホルダを 180度回転させた後,光源からの直接の放射に戻すことによって得られる。
 注記: 不連続運転では,規定する平均的な放射照度を確かめることが必要である。
 9.5 試験片のぬれ及び試験槽内の相対湿度
 他に協定がなければ,サイクル A及びサイクル Bの規定によって,試験片を繰返しぬらすか,又はサイクル C及びサイクル Dの規定によって,試験槽内の相対湿度を一定に保つ。


表 −試験片ぬれサイクル
  サイクル   A   B   C   D
  操作   連続運転   不連続運転   連続運転   不連続運転
  ぬれ時間 分   18   18   ―   ―
  乾燥期間 分   102   102   永続   永続
  乾燥期間中の相対湿度 %   40~60   40~60   40~60   40~60
 注記: 試験槽内の空気の相対湿度は,各試験片の色が異なるため温度も異なるので,試験片表面に接する空気の相対湿度とは必ずしも等しくならない。
 
 サイクル A及びサイクル Bは,耐候性試験に用いる(方法 1)。
 サイクル C及びサイクル Dは,窓ガラスを通した暴露をシミュレートすることを意図している(方法 2)。
 ぬれの間に放射を中断してはならない。
 石(レンガ)又は自動車用の塗料のような特殊なもののときには,異なるぬれ時間・乾燥期間のサイクル,例えば,ぬれ時間 3分・乾燥期間 17分又はぬれ時間 12分・乾燥期間 48分のサイクルが,満足する結果を与える。異なるサイクルを用いたときには,試験報告に記載する。
 9.6 照合試験片及び試験片の暴露
 単に老化を放射露光量の関数と考えることは,異なる種類の装置の差,相対分光エネルギー分布(ここでは省略)内における放射照度の分光分布の変化,並びに試験片の温度差のいずれも考慮していないことになる。
 これらの要因はすべて,塗膜の老化過程,及びその速度に顕著に影響する。
 試験期間中のすべての要因の影響を考慮する一つの方法は,試験片と同じ装置,及び同じ試験条件で,照合試験片を暴露することである。照合試験片は,試験する塗膜と化学構造及び老化現象ができるだけ似ているものとする。
 9.7 試験時間
 次のいずれかの時間まで試験する。
  a)  試験片の表面を,規定した,又は受渡当事者間で協定した放射露光量に達するまで露光する。
  b)  規定した,又は受渡当事者間の協定した老化基準に達するまで露光する。
 
 b) のとき,試験時間の各段階で取り出し,検査し,老化曲線を描くことによって終点を求める。
 あらゆる種類の塗膜に適した単一の試験期間,又は試験計画を規定することはできない。試験の総数,及び各試験における段階の数は,個々の試験の必要数に応じて選ぶ。
 特別な場合には,受渡当事者間で協定する。協定がなければ,評価は各段階で 2枚の試験片で行う。試験片の試験は,キセノンアークランプ,又はフィルタの交換,清掃,若しくは各段階での試験片の取出しのとき以外は,中断してはならない
 試験片を光沢,又は色の変化で評価するときは,乾燥期間の終了時に暴露装置から取り出す。

   ページのトップ

 老化現象の評価

 10 老化現象の評価
 暴露の前後及び試験中の塗膜の特性の測定及び適切な標準の使用については,受渡当事者間の協定による。評価の方法は,
 JIS K 5600-8-1 「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第1節:一般的な原則と等級」,
 JIS K 5600-8-2 「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第2節:膨れの等級」,
 JIS K 5600-8-3 「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第3節:さびの等級」,
 JIS K 5600-8-4 「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第4節:割れの等級」,
 JIS K 5600-8-5 「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第5節:はがれの等級」,
 JIS K 5600-8-6 「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第6節:白亜化の等級」による。
 受渡当事者間の協定がない限り,試験の
 中間段階で試験片を洗浄したり,磨いたりしてはならない
 試験の最終段階で,塗膜の特性を測定する表面を洗浄するか洗浄しないか,又は磨くか磨かないかは,受渡当事者間で協定する。
 測定した個々の特性値は,中間段階の結果,及び変化の進行過程がはっきり分かるように示さなければならない。
 必要があれば,暴露していない原状試験片,又は同時に暴露した照合試験片の特性値と比較した結果で表示する。
 複数の段階試験では,中間段階及び最終段階の結果を,図又は表の形式で,放射露光量の関数として表示する。

 ページのトップ