JIS K 5600_7_1 塗料一般試験方法‐第7部‐第1節:耐中性塩水噴霧性

 JIS K 5600-7-1 1999年版  塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第1節:耐中性塩水噴霧性 ( Testing methods for paints−Part 7 : Long-period performance of film−Section 1 : Resistance to neutral spray )について  【序文・目次・適用範囲】,   【試験溶液・装置】,   【試料採取・試験板】,   【試験板の暴露方法】,   【操作条件・手順・試験板の試験】,   【附属書:大きな容量の噴霧装置】 に分けて紹介する。

 序文・目次・適用範囲

 序文
 この規格は,ISO 7253:1993, Paints and varnishes – Dtermination of resistance to neutral salt spray を翻訳したものである。
 塩水噴霧の作用に対する塗膜の抵抗性と他の環境における腐食に対する抵抗性とは直接の関係はほとんどない
 これは保護膜の生成のような腐食の進行に与えるいろいろな因子のそれぞれの効果が試験条件とは大きな差があるからである。したがって,試験によって得られた結果は,その試料が使用されるすべての環境での腐食抵抗性の直接の指標になるものではない
 また,試験での異なった試料の性能は,海洋暴露のような厳しい条件の下でも,それらの塗料の腐食抵抗性の比の直接の指標にしてはならない
 それにもかかわらず,この方法は,塗料又は塗装系の品質のチェックとして意味のあるものである。
 この規格は,塗料及びその関連製品の試料採取方法と試験方法を取り扱う一連の規格の一つである。どのような適用に対してもこの規格は,次の補足的な情報によって補完されることを要求する。
 この情報は部分的に又は全体的に,規格からか,又は試験する製品に関する文書からか,適切かどうか受渡当事者間の協定の対象とする。
  a)  素地及び材料の表面調整
  b)  素地に試料を塗装する方法
  c)  試験前の,塗膜の乾燥時間,及び条件(又は,適用できるならば,焼付け及び養生の条件)
  d) 乾燥膜厚(マイクロメートル単位)JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」による測定方法,単一塗膜か多層塗膜系か。
  e)  暴露の前にスクラッチを付けるかどうか。もし付けるならばその種類及び位置
  f)  試験の時間
  g)  どのように試験塗膜を検査するか,その抵抗性を評価するに当たって考慮すべき特性
 
 備考:この規格で規定されている装置,及び操作条件は ISO 3768「Corrosion testing of metallic coatings – neutral salt spray test」に従っているが,それと全く等しいとは限らない。塗料,ワニス及び関連製品を試験するのに許容されるキャビネットの最小の寸法はそれより大きい。
 
 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
 序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 試験溶液,4 装置(4.1 スプレーキャビネット,4.2 熱の供給及び調節の手段,4.3 塩溶液を噴霧する手段,4.4 集液装置),5 試料採取,6 試験板(6.1 材料及び寸法,6.2 調整及び塗装,6.3 乾燥及び状態調整,6.4 塗膜の厚さ,6.5 スクラッチの付け方),7 試験板の暴露方法8 操作条件,9 手順,10 試験板の試験,11 試験報告
 附属書A(規定)2m3より大きな容量の塩水噴霧装置の設計及び工作について考慮すべき要素
 
 1 適用範囲
 この規格は,塗料又は製品の仕様の要求に従って,塗膜の中性塩水噴霧試験に対する抵抗性を決定する方法について規定する。

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 試験溶液・装置

 3 試験溶液
 試験溶液は塩化ナトリウムを蒸留水,又は脱ミネラル水に溶解して濃度 50±5g/リットルに調製する。
 塩化ナトリウムは純度 99.6% (m/m)以上の白色,銅及びニッケルを含んでいてはならず,よう化ナトリウムは 0.1%(m/m)以下でなければならない。
 溶液の pHが 6.0~7.0の範囲外だったら,塩か水か,又はその両方の中の望ましくない不純物の存在について検討しなければならない。
 塩溶液のpHは,試験槽の中で採取された噴霧溶液の pHが 6.5~7.2の間になるように調整する。pHの調整は,25℃で電気的測定によって行うが,日常のチェックは狭い範囲のpH試験紙を用いることができる。試験紙は0.3pH単位以下の変化を読み取ることができるもので電気的測定によって校正してあるものとする。
 補正が必要なときには,分析試薬級の塩酸か水酸化ナトリウムの溶液を添加して行う。
 
 備考:溶液を噴霧したときに二酸化炭素濃度変化によって起こることがある pHの低下に注意しなければならない。
 このような変化は溶液中の二酸化炭素含有量を,例えば溶液の装置の中に入れる前に約 35℃に加温するか,又は溶液を調製するとき新しく煮沸した水を使うとよい。
 溶液は装置の貯蔵槽に入れる前にろ過する。噴霧装置の開孔を詰まらせるような固体を除くためである。
 
 4 装置
 装置は次の部分からなっている。
 4.1 スプレーキャビネット
 噴霧した溶液によって腐食されないような材料で作るか,又はライニングしたものとする。
 キャビネットの容積は 0.4m3以上とする。これより小さいと噴霧の分布の一様性の確保が困難である。
 天井又はふたは水平線から 25°以上の角度の傾斜を付けて,そこに集まった液滴が試験板の上に落ちないようにする。
 キャビネットの寸法,及び形は,集液装置に集められた溶液の量が規定している範囲に入るようにする。2m3より大きな容積のキャビネットはその設計と工作に注意深く配慮されたものでないと操作しにくい。考慮すべき因子は附属書に示す。
 4.2 熱の供給及び調節の手段
 キャビネットとその内容物を,規定した温度に保つ。温度は,キャビネットの中に設置した壁から少なくとも 100mm離れているか,又はキャビネットの上の水のジャケットの中に設置したサーモスタットによって制御する。
 いずれの場合も外から読むことのできる温度計をキャビネットの中の壁,又はカバーから少なくとも 100mm離れたところに設置する。
 4.3 塩溶液を噴霧する手段
 圧力と湿度が制御された清浄な空気を供給することと,噴霧する液の貯蔵槽と塩溶液に侵されない材料で作製した一つ,又はそれ以上のアトマイザーとを包含する。
 それぞれのアトマイザーへの圧縮空気の供給は,油や固形物のこん跡をすべて除去するためにろ過器を通して,70から 170kPaに加圧する。
 噴霧した液滴の蒸発を防ぐために,空気はそれぞれのアトマイザーに入る前にキャビネットの温度よりも摂氏で数度高い温度の水の入っている飽和塔を通して加湿する。それに適切な温度は,使用する圧力とスプレーノズルの型式に依存する。その温度は,キャビネットの中のスプレーの捕集率と捕集されたスプレーの濃度が規定の限度に保たれるように調節する。
 スプレーする溶液を入れておく貯蔵槽は溶液に侵されない材料で作られたタンクで,貯蔵槽の中の溶液の水準は一定になるようにする。
 アトマイザーは不活性な材料,例えばガラス,又はプラスチックスで作製する。スプレーか直接試験片に当たるのを防ぐために邪魔板を用いてもよい。キャビネットの中でスプレーの分布が一様になるように可動の邪魔板を用いると有用である。
 備考:キャビネットの中の圧力の上昇を防ぐために,装置は実験室の外の雰囲気に通気させるのが普通である。
 4.4 集液装置
 ガラス,又はその他の化学的に不活性な材料製のもので,少なくとも 2個を用いる。
 集液装置はキャビネットの中で,試験片が置かれている区域に置く。一つはスプレーの入口近くに,もう一つは入口から離して置く。
 それらはスプレーだけを集め,試験片やキャビネットの部品から落ちる液は集めないように置かなければならない。
 備考 1:目盛付きシリンダーに脚部を差し込んだガラス漏斗は適切な集液装置である。直径 100mmの漏斗は約 80cm2の吸集面積をもつ。
 備考 2:二つ又はそれ以上のアトマイザーを使用するときは集液装置の数は少なくともアトマイザーの数の 2倍とすべきである。
 装置を,スプレー試験か,この試験に規定した以外の溶液に使用したときは,使用する前に十分に洗う。

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 試料採取・試験板

 5 試料採取
 JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第2節:サンプリング」に従って,試験する製品(又は多層塗膜系の場合はそれぞれの製品の)を代表する試料を採取する。
 試験に先立って, JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」に従って,試料を調製する。
 
 6 試験板
 6.1 材料及び寸法
 特に規定又は合意事項かなければJIS K 5600-1-4 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第4節:試験用標準試験板」に規定されたみかき鋼板で約 150mm×100mmのものとする。
 6.2 調整及び塗装
 特に規定がなければJIS K 5600-1-3「試験用試料の検分及び調整」に従って,試験板を調整する。次に試験する製品又は多層塗装系で規定された方法で塗る。
 試験板の背面と端部は特に規定かなければ試験する製品又は多層塗装系で塗る。
 備考:背面と端部の塗装が試験する製品と違っているときには,試験しようとしている試料よりも腐食抵抗性の強いものとすべきである。
 6.3 乾燥及び状態調節
 塗装した試験板は規定された時間,規定された条件で乾燥(又は焼付け及び養生)する。特に指定がなければ,23±2℃で相対湿度 50±5%で最低 16時間,空気の自然循環下で,直射日光に当たらないようにして状態調節する。次にできるだけ速やかに試験操作を行う。
 6.4 塗膜の厚さ
 JIS K 5600-1-7「膜厚」に述べてある非破壊法の一つとして規定してある方法を用いて乾燥塗膜の厚さをマイクロメートル単位で測定する。
 6.5 スクラッチの付け方
 規定があれば,塗膜に,素地に達するスクラッチ,又は刻印を付ける。特に指定がなければJIS K 5600-5-6 「 塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)」に規定されている単一刃を用い,スクラッチを付ける場所は試験板のどの端からも少なくとも 20mm以上離れたところとする。

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 試験板の暴露方法

 7 試験板の暴露方法
 7.1 試験板はキャビネットの中のアトマイザーからのスプレーが直接かからないところに置く。
 スプレーされた溶液が直接試験片に当たらないように邪魔板を用いてもよい。
 
 7.2 キャビネットの中で,それぞれの試験板が暴露される角度は非常に重要である。それぞれの試験表面は垂直から 20±5°の角度で上向けに置く。
 備考 :受渡当事者間の合意によって,異形の塗装物を試験することが必要な場合がある。そのような試験が行われるときは,その成型部品が使用される正規の姿勢で暴露試験することが特に重要である。このような制限の下では,その部品は流れの乱れが最小になるように置くべきである。
 さらに,その塗装物の形が全体のスプレーの流れに影響するようならば,それ以外の試験板は同時に試験することはできない。違った向きの塗膜は劣化の度合いが異なるかもしれない,ということに注意すべきであり,これらの結果の解釈には,当然そのことを考慮すべきである。
 
 7.3 試験板は他の試験板,及びキャビネットと接触しないようにする。試験面はスプレー(微粒の液滴)が自由に沈降してくるときにだけ当たるようにする。パネルは同じレベルに置いて他のパネル,又は部品からの滴が当たらないようにする。
 備考 :パネルの位置を定期的,例えば検査間隔のときに変えるとよい。しかし,どんな変更も試験報告に記入する。
 
 7.4 試験板を支える支持具は通常,ガラス,プラスチックス又は適切に塗装した木製品のような不活性な非金属性の材料でできた棚である。例外として,試験板をつり下げることが必要なときにはその材料は金属ではなく,合成繊維,木綿糸,その他の不活性な絶縁材料とする。
 

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 操作条件・手順・試験板の試験

 8 操作条件
 8.1 スプレーキャビネットの内部で測定した温度は 35±2℃でなければならない。
 8.2 それぞれの収集装置に集めた溶液の塩化ナトリウム濃度は 50±10g/リットルで,pHは 6.5~7.2でなければならない。
 それぞれの装置の溶液捕集の平均速度は,最低 24時間以上で測定して,水平捕集面積 80cm2に対し 1~2ml/hでなければならない。
 8.3 スプレーした試験溶液は再使用してはならない。
 
 9 手順
 特に規定がなければ,測定を 2回繰り返して行う。
 9.1 装置を記載したように組み立てる。
 9.2 試験片をキャビネットの中に暴露方法で記載したように配列する。
 9.3 キャビネットを閉じて試験溶液をアトマイザーを通して流し始める。チェックと貯蔵槽の溶液の補充,規定する必要な記録を作成するための,短い日ごとの中断を除いて,規定の試験期間中,連続的にスプレーする。
 
 10 試験板の試験
 パネルを定期的に観察しなければならないが,試験する表面は損傷を与えてはならない。
 定期検査は 1日に 24時間ごとに 60分を超えてはならない。できるだけ 1日の同じ時間に行う。パネルは乾燥状態にしてはならない( 7.3の備考参照)。
 規定の試験期間の終わりに,装置から試験板を取り出し,きれいな水で洗って表面の塩溶液の残りを除く。直ちに試験面の劣化の徴候,例えば膨れ,汚れ,付着性の低下,スクラッチからの腐食のクリープ[序文 g) 参照]などを検査する。
 必要ならばJIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」に従ってパネルを標準雰囲気の中で規定の期間,保管し,試験面の劣化を検分する。
 素地を侵されているかどうか調べる必要があれば,規定の方法で塗膜を除去する。

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 附属書 A(規定) 2m3より大きな容量の塩水噴霧槽の設計及び工作について考慮すべき要素

 A.1 本体に規定した制限の範囲内で,スプレーの分布の一様性を確保しなければならないアトマイザー装置及び邪魔板の数と位置。
 A.2 本体に要求しているスプレーを監視する必要な集液装置の数。
 A.3 キャビネットの内で試験片を暴露するすべての位置で均一な温度分布を得るための加熱,絶縁,温度調節方法。
 A.4 本体で要求しているような25°の角度の傾きがとれない場合,天井の設計(例えば仮天井)は,そこに付着した溶液のしずくが試験片の上に落ちるのを防ぐ必要なキャビネットの寸法。

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