防食概論:塗装・塗料
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ここでは,建築物の鉄骨などの鋼材に適用される防食塗装について, 【建築物・鋼面の防食塗装】, 【新設・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)】, 【新設・耐候性塗り(DP)】, 【塗替え・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)】, 【塗替え・耐候性塗り(DP) 】 を紹介する。
鋼橋以外での防食塗装
建築物・鋼面の防食塗装
建屋,ビル,駅舎などの建築物で用いられる鉄骨などの鉄製品は,適切な防食対策を施さないと,建築物の寿命に影響する。このため,公共建築では,「公共建築工事標準仕様書」で標準的な防食対策が定めている。
例えば,建屋鉄骨では,屋外に露出する場合と露出しない場合に分けられ,露出する場合は,建屋鉄骨の美装が可能な塗装仕様を用いる。
露出しない場合は,美装を必要とせず,風雨や太陽光の影響を受けないので,防食目的の下塗り塗装仕上げの場合が多い。
建屋鉄骨の塗装は,建設環境により鋼板のミルスケール(黒皮)を除去しない場合,除去する場合などで仕様が分かれる。
ここでは,「公共建築工事標準仕様書」(平成 25 年版) 18 章塗装工事の仕様例を紹介する。
【参考】
建築物(building)
建築基準法第二条(用語の定義)では,建築物は土地に定着する工作物のうち,
① 屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。),
② ①に附属する門若しくは塀,
③ 観覧のための工作物,
④ 地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所,店舗,興行場,倉庫,その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋,プラットホームの上家,貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい,建築設備を含む。
建築設備(building equipment)
建築基準法第二条(用語の定義)では,土地に定着し建築物に設ける工作物のうち,電気,ガス,給水,排水,換気,暖房,冷房,消火,排煙若しくは汚物処理の設備や煙突,昇降機若しくは避雷針をいう。
建築基準法(Building Standards Act)
建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定める法律。
ミルスケール(mill scale)
黒皮ともいい,熱間加工(熱間圧延)で鋼材表面にできる酸化物被膜をいう。
鋼材の製造過程において高温に加熱されるとき,空気中の酸素と反応して生成し付着している酸化物被膜。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
鉄鋼の熱間圧延中に生じる酸化鉄の層。黒皮ともいう。【JIS K5500「塗料用語」】
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新設・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)
山間,田園,海岸から遠い都市部などの腐食性の低い環境で,高い耐候性を必要としない建築物の屋外に露出する建屋鉄骨に適用される塗装仕様である。
鉄骨製作工場
素地調整鋼材の保管状態が良く,ミルスケールがしっかりしている場合にはミルスケールを残した状態で塗装される。
汚れ,付着物除去:スクレーパー,ワイヤブラシ等で除去
油類除去:溶剤ぶき
さび落とし:ディスクサンダー,又はスクレーパー,ワイヤブラシ,研磨紙(P120~220)で除去
下塗り塗装
① 素地調整後直ちに
JIS K 5674 鉛・クロムフリーさび止めペイント 1種:塗付け量 100g/m2
現場へ搬送・組立
素地調整・下塗り塗装② 素地調整として研磨紙ずり(研磨紙(P120~220)で研磨)後,直ちに
JIS K 5674 鉛・クロムフリーさび止めペイント 1種:塗付け量 100g/m2
中塗り塗装
下塗り塗装後 1日以上
JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1種 中塗:塗付け量 90g/m2
上塗り塗装
中塗り塗装後 1日以上
JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1種 上塗:塗付け量 80g/m2
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新設・耐候性塗り(DP)
海岸から近いなどの腐食性の高い環境,高い耐候性が求められる建築物の屋外に露出する建屋鉄骨に適用される塗装仕様である。
防食性能の高い塗装仕様で,鋼板の素地調整にブラスト処理を採用し,鋼橋などの構造物で採用される長期防錆型塗装仕様を用いる。ただし,中・上塗り塗装は,景観性重視のため,現場での塗装が基本となる。
鉄骨製作工場
素地調整油類除去:溶剤ぶき
さび落とし:ブラスト処理により除去
プライマー塗装
ブラスト処理後直ちに
JIS K 5552 ジンクリッチプライマー 2種:塗付け量 140g/m2
下塗り塗装
① プライマー塗装後 1日以上
JIS K 5551 構造物用さび止めペイント A種:塗付け量 140g/m2
② ①塗装後 2日以上,7日以内
JIS K 5551 構造物用さび止めペイント A種:塗付け量 140g/m2
現場へ搬送・組立
素地調整研磨紙ずり:研磨紙(P120~220)で研磨する。(全工場塗装では省略)
中塗り塗装
研磨紙ずり後直ちに
JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料中塗:塗付け量 140g/m2
上塗り塗装
中塗り塗装後 1日以上,7日以内
JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料上塗:塗付け量 100g/m2
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塗替え・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)
改修では,劣化した部分のみを除去し活膜を残す場合と,塗膜を全面除去する場合がある。これは,塗膜の劣化状態により選択することになるが,ここでは,活膜を残す場合を紹介する。
素地調整
既存塗膜の除去:ディスククサンダー,スクレーパー等により,劣化しぜい弱な部分,及びさび等を除去し,活膜は残す。
汚れ,付着物除去:素地を傷つけないように,ワイヤブラシ等で除去
油類除去:溶剤ぶき
研磨紙ずり:研磨紙(P120~220)で全面を平らに研磨する。
下塗り塗装
① 素地調整後直ちに(素地露出面のみの補修塗り)
JIS K 5674 鉛・クロムフリーさび止めペイント 1種:塗付け量 100g/m2
② ①塗装後1日以上,研磨紙ずり後直ちに
JIS K 5674 鉛・クロムフリーさび止めペイント 1種:塗付け量 100g/m2
③ ②塗装後 1日以上
穴埋め・パテかい:JASS 18 M-110 不飽和ポリエステルパテで穴埋め,パテかいする。
中塗り塗装
下塗り塗装後1日以上
JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1種 中塗:塗付け量 90g/m2
上塗り塗装
中塗り塗装後 1日以上
JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1種 上塗:塗付け量 80g/m2
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塗替え・耐候性塗り(DP)
改修では,劣化した部分のみを除去し活膜を残す場合と,塗膜を全面除去する場合がある。これは,塗膜の劣化状態により選択することになるが,ここでは,活膜を残す場合を紹介する。
素地調整
既存塗膜の除去:ディスククサンダー,スクレーパー等により,劣化しぜい弱な部分,及びさび等を除去し,活膜は残す。
汚れ,付着物除去:素地を傷つけないように,ワイヤブラシ等で除去
油類除去:溶剤ぶき
研磨紙ずり:研磨紙(P120~220)で全面を平らに研磨する。
下塗り塗装
① 素地調整後直ちに
JASS 18 M-109 変性エポキシ樹脂プライマー:塗付け量 140g/m2
② ①塗装後 1日以上,7日以内
JASS 18 M-109 変性エポキシ樹脂プライマー:塗付け量 140g/m2
中塗り塗装
下塗り塗装後 1日以上,7日以内,研磨紙ずり後直ちに
JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料中塗:塗付け量 140g/m2
上塗り塗装
中塗り塗装後 1日以上,7日以内
JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料上塗:塗付け量 100g/m2
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