防食概論:塗装・塗料
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ここでは,防食塗装の対象となる鋼橋について 【鋼構造とは】, 【鋼管構造とは】, 【通行区分による鋼橋の分類】, 【鋼橋の基本構造】 に項目を分けて紹介する。
防食塗装系(鋼橋維持管理の背景)
鋼構造とは
橋梁の種類や構造については,【社会資本とは】の「橋梁の製作と構造」で紹介した。鋼構造(steel structure)とは,鋼材のみから構成される構造物である。
一般的には,整備された工場で部材を作製し,これを現場に運搬・架設して構造物とする。鉄鋼(steel, iron and steel)は,現在まで約 200年の歴史があり信頼性が高いこと,現場での作業が容易であること,現場での工事期間が短いことなどから,広い範囲の構造物に用いられている。
鋼材(JIS 製品規格)の例
一般構造用圧延鋼(Rolled steels for general structure)SS材と記され,橋梁,船舶,車両その他の構造物に用いる一般構造用の熱間圧延鋼材及び熱間押出形鋼。
溶接構造用圧延鋼(Rolled steels for welded structure)
SM材と記され,橋梁,船舶,車両,石油貯槽,容器及びその他の溶接構造物に用いる熱間圧延鋼材及び熱間押出形鋼。
建築構造用圧延鋼(Rolled steels for building structure)
SN材と記され,建築構造物に用いる熱間圧延鋼材。
溶接構造用耐候性熱間圧延鋼(Hot-rolled atmospheric corrosion resisting steels for welded structure)
SMA材と記され,橋梁,建築,その他の構造物に用いる,溶接性を考慮した耐候性熱間圧延鋼材。
高耐候性圧延鋼(Superior atmospheric corrosion resisting rolled steels)
SPA材と記され,車両,建築,鉄塔及びその他の構造物に用いる高い耐候性をもつ圧延鋼材。
ステンレス鋼(Hot-rolled stainless steel)
SUS材と記され,熱間圧延ステンレス鋼板及び熱間圧延ステンレス鋼帯で,金属組織の違いでオーステナイト系,フェライト系,オーステナイト・フェライト系,マルテンサイト系,析出硬化系に分けられる。
溶融亜鉛めっき鋼(hot-dip zinc-coated steel sheet and strip)
SGH材やSGC材と記され,質量分率で,97%以上の亜鉛を含むめっき浴(において,両面等厚の溶融亜鉛めっきを行った鋼板及び鋼帯,並びに板を加工した波板。
溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼(hot-dip 55% aluminium-zinc alloy-coated steel)
SHLH材と記され,質量分率で約 55%アルミニウム,1.6%けい素,残部亜鉛を標準組成とするめっき浴において,溶融めっきを行った鋼板及び鋼帯並びに板を加工した波板。
溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼(hot-dip zinc-aluminium-magnesium alloy-coated steel)
SGMH材と記され,質量分率で,5.0%から 13.0%のアルミニウム,2.0%から 4.0%のマグネシウム,その他元素の合計 1.0%以下及び残部亜鉛からなるめっき浴において,両面等厚の溶融めっきを行った鋼板及び鋼帯並びに板を加工した波板。
クラッド鋼板(clad steel plates sheets)
主に耐摩耗性又は耐化学腐食性のある鋼又は合金を,低炭素鋼,低合金鋼などの母材と張り合わせた鋼板及び鋼帯。
クラッド鋼の JIS 品質規格には,ステンレスクラッド鋼,ニッケル及びニッケル合金クラッド鋼,チタンクラッド鋼,銅及び銅合金クラッド鋼がある。
【参考】
鋼(steel, ferrous metal)
読み「はがね」,「こう」,鉄を主成分として,一般に約 2%以下の炭素と,その他の成分を含むもの。【JIS G 0203「鉄鋼用語」】
炭素鋼(carbon steel)
鉄と炭素の合金で炭素含有率が,通常 0.02~約 2%の範囲の鋼。少量のけい素,マンガン,りん,硫黄などを含むのが普通である。便宜上,炭素含有量又は硬さ(強度も含まれる。)によって炭素鋼は,更に次のように分類される場合がある。
炭素含有量による分類(低炭素鋼,中炭素鋼,高炭素鋼),硬さによる分類(極軟鋼,軟鋼,硬鋼)。【JIS G 0203「鉄鋼用語」】
炭素含有量による分類:一般的には,低炭素鋼( 0.25%以下),中炭素鋼( 0.25~0.6%),高炭素鋼( 0.6%以上)に分類される。なお,炭素含有量 0.6%以下の炭素鋼は,広く用いられており,普通鋼ともいわれる。
硬さによる分類:規定された分類はない。炭素含有量で一概に分類されるものではないが,機械工学などで,炭素鋼(炭素含有率 0.02~約 2%の鋼)を極軟鋼( 0.15%以下),軟鋼( 0.15~0.2%),半軟鋼( 0.2~0.3%),半硬鋼( 0.3~0.5%),硬鋼( 0.5~0.8%),最硬鋼( 0.8~1.2%)などに区分する例がある。
鉄鋼(steel, iron and steel)
鉄を主成分とする材料の総称として使われるが,普通は鋼 (鉄と炭素 2.0%以下の合金) を意味する。
工業的には純鉄,鋼,鋳鋼,合金鋼,銑鉄,鋳鉄,フェロアロイ (→合金鉄 ) を鉄鋼ということが多い。純鉄は工業材料としては限られた用途しかなく,大部分の鉄は炭素との合金すなわち鋼として,あるいは他の元素を含む合金鋼として使われる。世界中で使われている金属材料のうち重量で 95%が鉄鋼である。
合金鋼(alloy steel)
鋼の性質を改善向上させるため,又は所定の性質をもたせるために合金元素を 1種又は 2種以上含有させた鋼。【JIS G 0203「鉄鋼用語」】
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鋼管構造とは
橋梁の種類や構造については,【社会資本とは】の「橋梁の製作と構造」で紹介した。鋼管構造(steel tubular structure)とは,鋼管を部材として使用した構造である。
一般的には,柱部材として橋脚やラーメン脚に用いられることが多い。鋼管内部をコンクリートで充填し,梁あるいはアーチ部材として使用されることもある。
【参考】
鋼管(steel pipe)
鋼の圧延で得られる管形の物。鋼帯・ビレット・厚板などの鋼を加工して得られるので,二次製品として扱われる。
シームレス鋼管(seamless steel pipe)
継目無鋼管ともいい,例えば,断面を丸形に加工したビレットを高温に熱し,その中心にプラグという金具を押しつけて穴を開ける方法(マンネスマン法)で管に継ぎ目が無い鋼管が得られる。
アーク溶接鋼管(arc welded steel pipe)
鋼帯や厚板をアーク溶接して管に加工した物の総称。製造方法で UOE鋼管(直径 1500mm前後まで製造可能),スパイラル鋼管(理論上はどんなサイズの管でも製造),板巻鋼管(大径厚肉品など特殊な管の製造)がある。
電縫鋼管(electric welded tube)
読み「でんほうこうかん」,常温の鋼帯を引き出しながら,幅方向を円形に変形させ,局部的に大電流を流し,瞬間的に接合部を溶接(抵抗溶接)させて加工した物。
合成構造(composite structure)
鋼材,コンクリートなど複数の異種材料からなる部材を合成して一体化した構造である。
床版を鉄筋コンクリート,主桁を鋼桁とした合成桁が広く用いられている。
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通行区分による鋼橋の分類
通行区分や交差の構造による区分橋梁の構造は,次のように分けられる。
通行区分での分類
上路橋(deck bridge)通路が主桁,主構,又はアーチの上方にある橋。
交通の支障が少なく,見通しが良いなどの特徴がある。景観(デザイン)以外に,桁上空間に余裕がない場合に適用される。
下路橋(through bridge)
通路が橋桁の下部に設けられた橋。
橋桁の下の空間を大きく使うことができるので,景観(デザイン)以外に,桁下空間に余裕がない場合に適用される。
中路橋(half through bridge)
橋桁の中間部に通路を設けた桁橋。
交差の構造での分類
ひ(避)いつ橋(avoid bridge from overflow)洪水時などに氾濫した水を通し,築堤を防護する目的で造られた橋。
洪水時の氾濫地域に指定された地域で設けられる。
こ(跨)線橋(over bridge)
道路や鉄道の上を通過するために設けられた橋。
目的によって,こ線道路橋,こ線鉄道橋,こ線水路橋などがある。
架道橋(over bridge)
鉄道と道路が立体交差する場合に,鉄道が道路の上を越す形で設ける橋りょう。
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鋼橋の基本構造
構造形式による最も一般的な区分
鋼桁橋(steel beam bridge)
鋼桁を主構造とする橋梁をいう。この構造では,主桁が曲げモーメントとせん断力を受け持つ。桁の構造によって,I 形桁,H形桁,鈑桁(ばんけた),格子桁,箱型桁に分類される。
鈑桁(プレートガーダー;plate girder bridge)は,鋼板を組み合わせて作った I 形の桁を主桁として使用した鋼桁橋梁をいう。この構造は,自重が小さく,工期が比較的短いという特徴がある。
箱形桁(ボックスガーダー;box girder)は,箱形の断面をもつ桁,これを並べて架設した橋を箱桁橋という。ねじれに強いので,支間の大きい橋に使用されるが,質量が大きくなる。
鋼トラス橋(steel truss bridge)
トラスとは,直線部材を三角形状に接合して組み合わせた構造をいう。トラス構造には,斜材と弦材の形式によって,次のように分類される。
直弦トラス(parallel-chord truss):上下の弦材が平行しているもの。平行弦トラスともいう。
曲弦トラス(curved-chord truss):上下の弦材が水平でないトラス。スパン 60m以上の古い構造物によくみられる。
ワーレントラス(Warren truss):斜材が上向き,下向きと交互になっているトラス,他のトラス形式に比べて剛性が大きく,使用鋼材が少なく,構造上有利なため鋼トラス橋によく使われる。
曲弦ワーレントラス(bowstring warren truss):ワーレントラスの上弦材が水平でないトラス。
プラットトラス(Pratt truss):斜材が中央に向かって下向きになっているトラス。斜材は主として引張力を,垂直材は圧縮力を受ける。斜材の組み方がハウトラスと逆になっている。
ハウトラス(Howe truss):斜材を中央部から端部に向けて「ハ」の字形状に配置したトラス。力の作用がプラットトラスと逆の垂直材に引張力,斜材に圧縮力が生じる。
ポニートラス(pony truss):上方が解放された下路橋および中路橋に用いられるスパンの短いトラス。スパンが短い場合に,上横構,橋門構,対傾構などは建築限界によって取り付けることができないため,上方が解放された橋になる。スパンの短い古い構造物に見られる。
アーチ橋(arch bridge)
アーチを主桁とした橋梁をいう。アーチ橋には,構造形式により,次のように分類される。固定アーチ橋(fixed arch bridge):アーチの途中にヒンジ(継ぎ目,回転できる支点など)がなく,両支点が完全に固定されたアーチ橋。一般にはコンクリートアーチに用いることが多い。
ローゼ橋(Lohse bridge):アーチリブにも桁にも曲げモーメントとせん断力が作用する構造。
ランガー橋(Langer bridge):アーチリブに軸方向圧縮力だけを受け持たせ,補剛桁または補剛トラスで曲げモーメント,せん断力を受け持たせる構造。
ブレーストアーチ橋(braced arch bridge):アーチ部をトラスで構成した橋梁。
吊り橋(suspension bridge)
狭義には,2 本の主塔とそれに渡される 2組のメインケーブルを持ち,そのケーブルから鉛直に垂らされたハンガーロープで桁を支持する橋梁をつり橋という。広義には,綱などの張力で吊り下げて支える形式の橋梁をいい,斜張橋(cable stayed bridge)もつり橋の一種となる。斜張橋とは,橋脚上に主塔から,ケーブルを斜めに橋桁の数か所に張り,つり橋のように橋桁をつった形式の橋梁をいう。
ラーメン橋(rigid-frame bridge)
ラーメン(rahmen)は,ドイツ語で額縁を意味し,土木分野では,部材間が剛結された構造をラーメン構造といい,主構造にラーメン構造を用いた橋梁をラーメン橋という。ラーメン橋には,構造の違いで,1径間の橋台と橋桁が剛結合した構造の門形ラーメン橋(ポータルラーメン橋;portal rigid frame bridge),主桁を頬杖で支える構造の頬杖(方づえ)形ラーメン橋(strutted beam bridge),はしごを横にした形の桁(フィーレンディール桁)を使用しているフィーレンデール橋(Vierendeel bridge)などがある。
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