防食概論塗装・塗料

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 ここでは,中塗り塗料の品質規格及び塗膜の評価方法について, 【中塗り塗料とは】, 【 JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント】, 【 JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料】 に項目を分けて紹介する。

 塗膜の評価(中塗り塗料)

 中塗り塗料とは

 JIS K5500「塗料用語」

 中塗り塗料(intermediate coat,undercoat)
 塗料を塗り重ねて塗装仕上げをするときの,中塗りに用いる塗料。
 下塗り塗膜と上塗り塗膜との中間にあって,両者に対する付着性をもち,塗装系の耐久性を向上させる目的に用いるもの,下塗り塗面の平滑さの不足を補うために用いるものなどがある。後者では,塗膜が厚くて研磨しやすいことが特徴である。
 備考:1.ISO(International Organization for Standardization;国際標準化機構)用語規格では,“intermediate coat”と“undercoat”とは同義で,“地肌塗り(priming coat)と上塗り(finishing coat)の間のコート(coat)”をいう。
 備考:2.BS(British Standards;英国規格)用語規格及びCED(Coatings Encyclopedic Dictionary)では,“undercoat”は,上塗り塗料を塗る前に,目止め,肌直し,地肌塗りなどを行った素地面,又は素地調整を行った旧塗膜面に塗装される塗料をいう。
 中塗り(intermediate coating)
 下塗りと上塗りとの中間層として,中塗り用の塗料を塗る操作。下塗り塗膜と上塗り塗膜との間の付着性の増強,総合塗膜層の厚さの増加,平らさ又は立体性の改善のために行う。英語では,目的によって,undercoat,ground coat,surfacer,texture coat などという。
 
 すなわち,中塗り塗料とは, 下塗り塗膜と上塗り塗膜との中間にあって,両者に対する付着性をもち,塗装系の耐久性向上(一般的には,上塗り塗膜の剥がれ防止)のためのもの, 厚く塗りつけ研磨するなどで,下塗り塗面のうねり,凹凸などの平滑さの不足を補うためのもの(一般的にはパテやサーフェーサーと称することが多い)などがある。
 防食塗装に用いる中塗り塗料は,前者①を目的とし,上塗り塗料の特性に適合する材料が求められるため,JIS 製品規格では,上塗り塗料の規格の中に中塗り塗料が規定されている。
 
 中塗り塗料の概要は,【塗料の評価】・「中塗り塗料」で紹介した。
 ここでは,防食塗装の上塗りと組み合わせて用いられるJIS K 5516 「合成樹脂調合ペイント」中塗り,及び JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」中塗りの品質規格の概要,及び塗膜特性を評価する適用される試験規格を紹介する。それぞれの塗料の品質項目と対応する試験方法の比較は,「品質試験の項目と手順」で紹介する。
 
 【参考】
 中塗り塗膜の品質に関連する用語を紹介する。
 塗膜の外観(appearance of film)
 塗装作業性の試験に合格した試験片と見本品とを比較し,差異の有無を観察する。
 隠ぺい率(contrast ratio)
 塗料が下地の色の差を覆い隠す度合。【JIS K5500「塗料用語」】
 上塗り適合性(overcoatability)
 ある塗料の塗膜の上に,決められた塗料を塗り重ねたときに,塗装上の支障が起こらず,正常な組合せ塗膜層が得られるための,塗り重ねられる下地塗膜の性状。【JIS K5500「塗料用語」】
 耐屈曲性(flexibility)
 乾燥塗膜が塗られている素地の変形に損傷を起こさずに順応する能力。【JIS K5500「塗料用語」】
 耐衝撃性(impact resistance, shock resistance, chip resistance)
 塗膜が物体の衝撃を受けても破壊されにくい性質。【JIS K5500「塗料用語」】
 層間付着性(interlayer adhesion)
 下塗り塗料と中塗り塗料との付着性(層間付着性Ⅰ),中塗り塗料と上塗り塗料との付着性(層間付着性Ⅱ)をいう。【JIS K5659「 鋼構造物用耐候性塗料」】
 耐アルカリ性(alkaliproof, alkali resistance)
 アルカリの作用に対して変化しにくい塗膜の性質。【JIS K5500「塗料用語」】
 耐酸性(acid resistance, fastness to acid, acidproof)
 酸の作用に抵抗して変化しにくい塗膜の性質。【JIS K5500「塗料用語」】
 耐湿潤冷熱繰り返し性(humidity and cool-heat cycling test)
 塗膜が湿潤又は浸せきの状態を経た後,温度変化を受けた場合の塗膜の変化を調べる試験をいい,試験方法は,JIS K 5600-7-4「耐湿潤冷熱繰返し性」に規定されている。
 ホルムアルデヒド放散速度(放散量)(formaldehyde emission rate)
 平成 14年(2002年)の建築基準法等の一部改正,建築基準法施行令の改正により,シックハウス対策のための規制対象となる化学物質並びに建築材料及び換気設備に係る技術的基準が定められ,平成 15年(2003年)には,国土交通省告示第 1113号(第一種ホルムアルデヒド発散建築材料),第 1114号(第二種ホルムアルデヒド発散建築材料)及び第 1115号(第三種ホルムアルデヒド発散建築材料)が公布された。
 これらの施行令,告示では,ホルムアルデヒド発散速度に応じた基準が示された。建材のホルムアルデヒド放散速度(放散量)により,材料の使用が制約を受けることになる。

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 JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント

 合成樹脂調合ペイントとは,着色顔料・体質顔料などを,主に長油性フタル酸樹脂ワニスで練り合わせて作った液状・自然乾燥性の塗料である。
 JIS K 5516「合成樹脂調合ペイント」には,建築物(鉄部,木部),及び鉄鋼構造物用途の次に示す 3 種が規定されている。
 a) 主に,建築物,及び鉄鋼構造物の中塗り及び上塗りとして,下塗り塗膜の上に数日以内に塗り重ねる場合に用いる 1 種
 b) 主に,大形鉄鋼構造物の中塗りに用いる 2 種 中塗り用
 c) 主に,大形鉄鋼構造物の上塗りに用いる 2 種 上塗り用
 
 JIS K 5516 「合成樹脂調合ペイント」 2 種中塗り用の品質規格は次の通りである。
 塗料の品質
 塗料性状の規定として容器の中での状態,加熱残分,塗装作業に関連する規定には塗装作業性,表面乾燥性(乾燥時間),指触乾燥性(乾燥時間)が規定されている。塗料品質の試験法は,【塗料の評価】・「合成樹脂調合ペイント中塗りで紹介する。
 塗膜の品質
 塗膜形成機能として塗膜の外観,隠ぺい率,上塗り適合性のみが規定され,機械的特性などの耐久性についての規定はない。


JIS K 55162003「合成樹脂調合ペイント」2種中塗り用固有の品質
太字;塗料の品質,青太字:塗膜の品質
  項  目    2種中塗り用 
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になるものとする。 
  塗装作業性    はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 
  乾燥時間(表面乾燥性)    16時間以内 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  隠ぺい率 %(白及び淡彩(1) )    85以上 
  上塗り適合性    上塗りに支障があってはならない。 
  加熱残分 %    65以上 
注 1 : 淡彩とは,白エナメルを主成分として作った塗料の塗膜に現れる灰色,桃色,クリーム色,うすい緑及び水色などのようなうすい色で,JIS Z 8721 「色の表示方法−三属性による表示」による明度 V が 6 以上 9 未満のものをいう。
 ホルムアルデヒド放散等級
 ホルムアルデヒド放散等級は,箇条 5 によって試験を行ったときの塗膜からのホルムアルデヒド放散量で区分する。
 F☆☆☆☆(放散量 0.12mg/L以下),F☆☆☆( 0.35mg/L以下),F☆☆( 1.8mg/L以下),( 1.8 mg/Lを超える)
 注記 ハイフン(-)は,ホルムアルデヒド放散等級を規定しないことを示す。また,箇条 5 の試験を行わないものは,これと同じとみなす。
 

 形成塗膜の品質試験

 7.3 試験の一般条件は,次による。
 試験の一般条件は,JIS K 5600-1-1 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件及び方法)」 ,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」及び JIS K 5601-1-1 「塗料成分試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件及び方法)」によるほか,次による。
 a) 試験の場所
 1) 養生及び試験を行う場所は,他に規定がない場合は,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」の4.1(標準条件)に規定する条件[温度 23±2℃,相対湿度(50±5)%]
 2) 目視観察のときの光源(拡散昼光,色観察ブース)
 b) 試験板の作製
 1) 鋼板: SPCC-SB の鋼板とし,7.5,7.7,7.11及び 7.12の試験では,溶剤洗浄によって調整した鋼板,7.14,7.15及び 7.16の試験では,研磨によって調整した鋼板とする。
 2) ガラス板: 溶剤洗浄によって調整したガラス板(フロート板ガラス又は磨き板ガラス)とする。
 3) アルミニウム板: 溶剤洗浄によって調整したアルミニウム板とする。
 c) 試料の塗り方 はけ塗りとし,1回ごとの塗付け量は,100cm2 当たり 0.50±0.05mL とする。はけの種類は,JIS K 5600-1-5 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第5節:試験板の塗装(はけ塗り)」の 3.1(はけ)又は附属書 A[試験板の塗装(はけ塗り)]による。
 d) 乾燥方法 標準状態で乾燥する。
 
 7.7 塗膜の外観の試験は, JIS K 5600-1-1 の 4.4(塗膜の外観)によるほか,次による。
 a) a) 試験板: 7.3 b) 1)に規定する鋼板とし,寸法は,200mm×100mm×0.8mm とする。
 b) 試験片の作製: 7.3 c)の方法によって,試験板の片面に規定の塗付け量になるように,はけ塗りし,標準状態で 24時間以上 48時間以内で乾燥したものを試験片とする。見本品の試験片も同じ方法で作製する。
  なお,試験片は 7.5の試験が終わった試験片を用いてもよい。ただし,塗り終わってから標準状態で,24時間以上 48時間以内で乾燥したものを試験片とする。見本品の試験片も同時に作製しておく。
 c) 評価及び判定:判定は試験片と見本品試験片とを比べて,塗膜の色及びつやの差異がなく,色むら,つやむら,はけ目,流れ及びしわの程度が大きくないとき,“正常である”とする。
 7.8 隠蔽率試験は,次による。
 a) 試験板JIS K 5600-4-1 「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第1節:隠ぺい力(淡彩色塗料用)」 の 4.1.2[方法 B(隠ぺい率試験紙)]に規定する隠蔽率試験紙を用い,試験紙の大きさは,全寸で 100mm×200mm 以上のものとする。
 b) 試験片の作製: 隠蔽率試験紙を平らなガラス板の上に水平に固定し,隙間 100μmのフィルムアプリケータを用いて,試料をうすめずに塗り付け,塗面を上向きに水平にして,標準状態で 48時間乾燥したものを試験片とする。試験片は,2枚作製する。
 c) 試験方法JIS K 5600-4-1 の 6.の方法 B(隠ぺい率試験紙)による。試験片の白地及び黒地の上の塗膜について,各 4か所以上の三刺激値 Yを測定し,それぞれの平均値 YW(白地上)と YB(黒地上)とを求める。
 d) 計算: 平均値 YWと YBとから,2枚の試験片の隠蔽率 YB/YW を百分率で計算し,その平均値を整数 2桁に丸める。
 7.12 上塗り適合性の試験は,JIS K 5600-3-4 「塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第4節:製品と被塗装面との適合性」 によるほか,次による。
 a) 試験板: 7.3 b) 1) に規定する鋼板とし,寸法は,200mm×100mm×0.8mm とする。
 b) 試験片の作製: 試料を 7.3 c) の方法によって 1回塗りした後,水平に置いて標準状態で 24時間乾燥したものを試験片とする。
 c) 試料:上塗りに用いる試料は,2種上塗り用とする。
 d) 試験方法:試験片の塗面に,c) の試料を 7.3 c) の方法によって塗り重ねて,水平に置き標準状態で 24時間乾燥した後,上塗り塗膜を観察する。また,別の試験板に 1回塗りし,標準状態で 24時間乾燥させたものを原状試験片とする。
 e) 評価及び判定:試験片の塗り重ね作業に支障がなく,上塗り塗膜に,はじき,割れ,穴,膨れ及び剝がれを認めず,原状試験片に比べて,つや,粘着及びしわの差異が大きくないとき,“支障がない”とする。

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 JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料

 JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」は,主に鋼構造物美装仕上げ塗りに用い,長期の耐候性をもつ塗料について規定している。
 この規格は,2008年に,それまでの製品規格であった旧JIS K 5657 「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と旧JIS K 5659 「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統合し,鋼構造物用の中・上塗り塗料の性能規格化を図ったものである。
 種類
 2008年版の溶剤形塗料(solvent-based paint)は A種に,新たに加わった水性塗料(water-based paint)を B種に分け,それぞれを上塗り塗料,及び中塗り塗料に区分し,上塗り塗料は,更に等級分けしている。
   A種a)上塗り塗料c): 1級,2級,3級e)
   A種中塗り塗料d): 等級なし
   B種b)上塗り塗料: 1級,2級,3級
   B種中塗り塗料: 等級なし
 
 a) 溶剤形塗料で,有機溶剤を主要な揮発成分とし,主剤,硬化剤などを混合し反応硬化させて用いる(多液形)塗料。
 b) 水性塗料で,水を主要な揮発成分とし,主剤,硬化剤などを混合し反応硬化させて用いる(多液形)塗料と,1液で反応硬化させて用いる(1液形)塗料とがある。
 c) 上塗り塗料の原料は,ふっ素系樹脂,シリコン系樹脂又はポリウレタン系樹脂とする。
 中塗り用の品質項目は次の通りである。
 
 塗料品質の試験法は,【塗料の評価】・「鋼構造物用耐候性塗料・中塗り用の品質 で紹介する。
 【塗膜の品質】
 中塗りの塗膜形成機能として,上塗り適合性,層間付着性,耐屈曲性,耐衝撃性が規定されている。
 塗膜の耐久性に関わる性能については,耐アルカリ性,耐酸性,耐湿潤冷熱繰返し性が規定されている。
 鋼構造物用耐候性塗料は,一般的に,構造物用さび止めペイントを下塗り塗料として用い,10年を超える長期耐久を期待されている。このため,合成樹脂調合ペイントとは異なり,下塗り塗膜との付着性に関連する品質として層間付着性が規定されている。また,上塗り塗膜との付着性に関し,上塗り適合性,層間付着性が規定されている。
 塗装後の変形(曲げ)や衝撃などの物理的外力に対する抵抗性として,耐屈曲性,耐衝撃性が規定されている。
 また,中塗り塗膜として,上塗り塗膜の特性と整合するため,耐薬品性温度衝撃による影響を評価する試験が規定されている。


JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」中塗り塗料
太字;塗料の品質,青太字:塗膜の品質
  項  目    中塗り 
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  低温安定性(-5℃)    変質しない。( B種のみ) 
  表面乾燥性    表面乾燥する。(常温8時間後,低温5℃16時間後) 
  塗膜の外観    正常である。 
  ポットライフ    規定時間(5時間)後,使用できる。 
  隠ぺい率    白・淡彩は90以上,鮮明な赤及び黄は50以上,その他の色は80以上 
  上塗り適合性    支障がない。 
  耐屈曲性    折曲げに耐える。(10mmマンドレル) 
  耐おもり落下性(デュポン式)    塗膜に割れ及びはがれが生じない。(デュポン式300g,500mm) 
  層間付着性 Ⅰ    異常がない。 
  層間付着性 Ⅱ    異常がない。 
  耐アルカリ性    異常がない。(水酸化カルシウム水) 
  耐酸性    異常がない。(硫酸水) 
  耐湿潤冷熱繰返し性    湿潤冷熱繰返しに耐える。 
  混合塗料中の加熱残分 %    白・淡彩は60以上,その他の色は50以上 

 形成塗膜の品質試験

 7.3 試験の一般条件は,次による。
 試験の一般条件は,JIS K 5600-1-1 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件及び方法)」 ,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」及び JIS K 5601-1-1 「塗料成分試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件及び方法)」によるほか,次による。
 a) 試験の場所
 1) 養生及び試験を行う場所は,他に規定がない場合は,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」の4.1(標準条件)に規定する条件[温度 23±2℃,相対湿度(50±5)%]
 2) 目視観察のときの光源(拡散昼光,色観察ブース)
 b) 試験板の作製
 1) 試験板: 研磨によって調整した SPCC-SB の鋼板とする。
 2) 試料の調整: 1液形の場合は,かくはん(攪拌)し,均一の液体とする。多液形の場合は,均一にした主剤,硬化剤などを,その製品の製造業者が指定する混合比率で混合し,更にかくはん(攪拌)によって均一にする。多液形塗料は,混合したときから A種は 5時間を過ぎたもの,B種は 3時間を過ぎたものは,試験に用いてはならない。
 3) 試料の塗り方: 2)で調製した試料を使用直前によくかくはん(攪拌)し,直ちに試験板の片面にエアスプレー塗りで 1回塗る。塗付け量は,7日間乾燥後の乾燥膜厚を測定し,中塗りのときは 25μm~35μm,上塗りのときは 20μm~30μm になるようにする。
 4) 乾燥方法: 自然乾燥による。試験までの乾燥時間は,7日間とする。
 
 7.7 塗膜の外観の試験は,次による。
 a) 試験板: A種に用いる試験板は,7.3 b) 1)による。大きさは,200mm×100mm×0.8mm とする。B種に用いる試験板は,溶剤洗浄によって調整した大きさ 200mm×100mm×2mm の板ガラスとする。
 b) 試験片の作製: 試験板に,A種及び B種の中塗り塗料及び上塗り塗料を7.3 b) 3)の方法によって,それぞれ塗り付けて,48時間塗面を水平に置いたものを試験片とする。
 c) 試験方法 JIS K 5600-1-1 の 4.4(塗膜の外観)による。
 c) 評価及び判定:試験片を目視による観察によって評価し,割れ,剝がれ及び膨れを認めず,色,つや,平らさ,流れ,つぶ,むら及び穴の程度が見本品に比べて差異が大きくないとき,“正常である”とする。
 7.8 隠蔽率試験は,次による。
 a) 試験片の作製JIS K 5600-4-1 「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第1節:隠ぺい力(淡彩色塗料用)」 の 4.1.2[方法 B(隠ぺい率試験紙)]に規定する隠蔽率試験紙を置くことのできる平らなガラス板の上に水平に固定し,隙間 150μmのフィルムアプリケータを用いて,上塗り塗料及び中塗り塗料をそれぞれ塗り付け,72時間塗面を水平に置いたものを試験片とする。試験片は 2枚作製する。
 b) 試験方法JIS K 5600-4-1 の 6.4.2[方法B(隠ぺい率試験紙)]による。試験片の白地部分及び黒地部分の塗膜の各 4か所について,JIS Z8722「色の測定方法−反射及び透過物体色」によって三刺激値 Yを測定し,それぞれの平均値 YW(白地上)と YB(黒地上)とを求める。
 c) 評価及び判定: 4か所の平均値 YW及び YBから,2枚の試験片の隠蔽率 YB/YW を百分率で計算後,2舞の平均値を産出し,整数 2桁に丸めた数字を隠蔽率とする。隠蔽率は,白・淡彩色は 90%以上,鮮明な赤及び黄色は 50%以上,その他の色は 80%以上とする。
 7.11 上塗り適合性の試験は,次による。
 a) 試験板: A種に用いる試験板は,7.3 b) 1) の大きさ 200mm×100mm×0.8mm の鋼板とする。また,B種に用いる試験板は,溶剤洗浄によって調整した,大きさは 200mm×100mm×2mm の板ガラスとする。
 b) 試験片の作製: 7.7の評価に適合した中塗り塗料の試験片に,上塗り塗料を7.3 b) 3)によって塗り重ねる。別に,試験板 1枚の片面に同じ上塗り塗料を同じ方法で塗装したものを原状試験片とする。
 c) 試験方法: 試験方法は,上塗り塗料を塗り重ねるときに塗装作業性を観察し,塗装後 48時間静置した後,外観を観察する。
 d) 評価及び判定: 上塗り塗装作業に支障がなく,目視による外観の観察によって,上塗り塗膜に,はじき,割れ,穴,膨れ及び剝がれを認めず,原状試験片に比べて,つや,粘着及びしわの程度の差異が大きくないときは,上塗り適合性は,“支障がない”とする。
 7.14 層間付着性 I(下塗り塗料と中塗り塗料との間)の試験は,次による。
 a) 試験板: 7.3 b) 1) の大きさ 150mm×70mm×0.8mm の鋼板 2枚とする。
 b) 試験片の作製: 試験板の両面に JIS K 5551 「構造物用さび止めペイント」に規定するさび止めペイントを下塗り塗料として,乾燥膜厚が 55μm~65μm になるように吹付け,室内に 1日放置した後,JIS K 5600-7-7「塗料一般試験方法−第 7 部:塗膜の長期耐久性−第 7 節:促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法)」に規定する条件(方法1),及び表3(試験片ぬれサイクル)のサイクル Aによって 20時間照射した後,取り出して 24時間放置した試験板に中塗り塗料を 7.3 b) 3) によって 1回塗り,室内に 7日間置いたものを試験片とする。
 c) 試験方法
 1) 試験片を,JIS K 5600-7-2 「塗料一般試験方法−第 7 部:塗膜の長期耐久性−第 2 節:耐湿性(連続結露法)」の 5.(回転式)に規定する 50±1 ℃,相対湿度 95 %以上に保った耐湿試験機につり下げる。
 2) 24時間後取り出して,直ちにろ紙を軽く当てて塗面の水分を取り除き,2時間おく。
 3) JIS K 5600-5-6 「塗料一般試験方法−第 5 部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に規定するカッタナイフの刃先で,試験片の中央部に試験片の短辺と平行に,15mmの間隔で長さ約 40mm の切り傷 2本を,試験片の生地に達するように付ける。
 4) 切りきずの幅のほぼ中央に,2本の切りきずを横切って直角にセロハン粘着テープ(24mm)を 2 本の切りきずの外側が約 10mmはみ出してはり付ける。
 5) セロハン粘着テーブの表面をプラスチック字消しで強くこすり付け,塗面にテープを完全に付着する。
 6) 1~2 分後に,テープの折返し部を塗面に直角に,素早く引きはがした後,塗面を調べる。
 d) 評価及び判定
 試験片 2枚について,塗面を目視によって観察し評価する。下塗り塗膜と中塗り塗膜との層間にはがれがないか,又はあっても切りきずから直角な方向に長さ約 2mm以下のときは,“異常がない”とする。
 7.15 層間付着性 Ⅱ(中塗り塗料と上塗り塗料との間)の試験は,次による。
 a) 試験板: 7.3 b) 1) の大きさ 150mm×70mm×0.8mm の鋼板 2枚とする。
 b) 試験片の作製: 試験板の両面に下塗り塗料として JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」の B種,又は C 種を乾燥膜厚が 55μm~65μm になるように吹付け塗りで 1回塗装し,室内に 1日放置後,中塗り塗料を 1回塗り,1日放置する。 JIS K 5600-7-7「塗料一般試験方法−第 7 部:塗膜の長期耐久性−第 7 節:促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法)」に規定する条件(方法1),及び表3(試験片ぬれサイクル)のサイクル Aによって 20時間照射した後,取り出して 24時間放置した試験板に上塗り塗料を試験片の片面(キセノンランプ光が照射された面)に7.3 b) 3) の方法で 1 回塗る。室内に 1日放置後 7日間置いたものを試験片とする。
 c) 試験方法 試験方法は,7.14 c) と同じ操作を行う。
 d) 評価及び判定 試験片 2 枚について,塗面を目視によって観察し評価する。中塗り塗膜と上塗り塗膜との層間にはがれがないか,又はあっても切りきずから直角な方向に長さ約 2 mm以下のときは,“異常がない”とする。
 7.12 耐屈曲性の試験は,次による。
 a) 試験板: 7.3 b) 1) による。ただし,大きさは 150mm×50mm×0.3mm の鋼板とし,3枚とする。
 b) 試験片の作製: A種及び B種中塗り塗料は,試験板の片面に表1に規定する中塗り塗料をそれぞれ 7.3 b) 3)の方法で塗装したものを試験片とする。
 c) 試験方法: JIS K 5600-5-1による。試験装置は, JIS K 5600-5-1 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第1節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」による。タイプ 1の試験装置を用い,試験片を直径 10mmのマンドレルの周りに沿って折り曲げ,塗膜の割れ及び素地からの剝がれを目視によって調べる。
 d) 評価及び判定:試験片 3枚について,目視によって評価し,塗膜に割れ及び剝がれを認めないときは,“折曲げに耐える”とする
 7.13 耐おもり落下性の試験は,次による。
 a) 試験板: 7.3 b) 1) による。ただし,大きさは 150mm×70mm×0.8mmとし,2枚とする。
 b) 試験片の作製: A種及び B種中塗り塗料は,試験板の片面に中塗り塗料をそれぞれ 7.3 b) 3) の方法で塗装したものを試験片とする。
 c) 試験方法 JIS K 5600-5-3 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第3節:耐おもり落下性」の 6.(デュポン式)による。ただし,おもりの質量は,300g±1g とし,おもりを落とす高さは,500mm とする。
 d) 評価及び判定:試験片 2枚について,目視によって塗膜を観察し評価する。試験片 2枚に衝撃的変形による塗膜の割れ及び剝がれを認めないときは,“塗膜に割れ及び剝がれが生じない”とする。
 7.16 耐アルカリ性の試験は,次による。
 a) 試験板: 7.3 b) 1)による。ただし,大きさは 150mm×70mm×0.8mmとし,3枚とする。
 b) 試験片の作製:試験板の片面に JIS K 5551 「構造物用さび止めペイント」に規定するさび止めペイントを下塗り塗料として,乾燥膜厚が 55μm~65μm になるように吹付け塗りで 1回塗装し,室内に 1日放置後,中塗り塗料を 7.3 b) 3) の方法で 1回塗り,更に1日放置後,上塗り塗料を7.3 b) 3)の方法で 1回塗り重ねる。室内に 7日間置いたものを試験片とする。
 c) 試験方法
 1) 試験液 水酸化カルシウムを脱イオン水で調製した飽和溶液を用いる。
 2) 浸せき(漬)方法 JIS K 5600-6-1 「塗料一般試験方法−第6部:塗膜の化学的性質−第1節:耐液体性(一般的方法)」の 7.4[手順A(単一の液相を使用)]による。ただし,試験片 2枚を 23±1℃の試験液に 168時間完全に浸せきする。
 3) 観察方法 水で塗膜表面を軽く洗い流し,2時間放置後,目視によって塗膜を観察する。
 d) 評価及び判定: 試験片 2枚について,塗膜に膨れ,割れ,剝がれ及び穴を認めず,色の変化の程度が原状試験片と比べ大きくないときは,“異常がない”とする。
 7.17 耐酸性の試験は,次による。
 a) 試験片の作製:試験片の作製は,7.16の a)及び b)による。
 b) 試験方法
 1) 試験液 硫酸を脱イオン水で,5g/L に調製したものを用いる。
 2) 浸せき(漬)方法 7.16の c) 2) による。
 3) 観察方法 7.16の c) 3) による。
 c) 評価及び判定: 試験片 2枚について,塗膜に膨れ,割れ,剝がれ及び穴を認めず,色の変化の程度が原状試験片と比べ大きくないときは,“異常がない”とする。
 7.18 耐湿潤冷熱繰返し性の試験は,次による。
 a) 試験片の作製:試験片の作製は,7.16の a)及び b)による。
 b) 試験方法
 1) 試験片 2枚を 23±1℃の水中に 18時間浸した後,直ちに −20±3℃に保った恒温槽で 3時間冷却し,次に,50±3℃に保った別の恒温槽で 3時間加温する。この操作を 10回繰り返す。なお,繰返し操作の途中で試験を中断する場合は,50±3℃で 3時間加温した後とし,試験期間は 4週間を超えてはならない。
 2) 標準状態に約1時間置いた試験片を,原状試験片とともに鏡面光沢度(60度)を測定し,光沢保持率を算出する。
 c) 評価及び判定: 試験片 2枚について,目視によって観察し,塗膜に膨れ,割れ及び剝がれを認めず,光沢保持率が 80%以上あるときは,“湿潤冷熱繰返しに耐える”とする。

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