防食概論塗装・塗料

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 ここでは,建築物に用いられる亜鉛めっき鋼に適用される防食塗装について, 【建築物・亜鉛めっき面の塗装】, 【新設・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)】, 【新設・耐候性塗り(DP)】, 【塗替え・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)】, 【塗替え・耐候性塗り(DP) 】 を紹介する。

 鋼橋以外での防食塗装

 建築物・亜鉛めっき面の塗装

 建屋,ビル,駅舎などの建築物で用いられる鉄骨などの鉄製品は,適切な防食対策を施さないと,建築物の寿命に影響する。このため,公共建築では,「公共建築工事標準仕様書」で標準的な防食対策が定めている。
 亜鉛めっきを施した鋼材の美装・延命化を目的とする塗装について,「公共建築工事標準仕様書」(平成 25 年版) 18 章塗装工事の仕様例を紹介する。
 
 【参考】
 亜鉛めっき鋼(galvanized steel, zinc-coated steel)
 溶融亜鉛めっき鋼(hot dip galvanized steel, hot-dip zinc-coated steel)
 溶融亜鉛めっき鋼は,溶融めっき法の一種で,鋼材や部材を 440℃前後の溶融した亜鉛浴に浸漬して,鋼材表面に鉄と亜鉛の合金層,純亜鉛層の厚い皮膜を形成したものである。
 SGH材や SGC材と記され,質量分率で,97%以上の亜鉛を含むめっき浴(ただし,通常,アルミニウムを 0.30%以下)において,両面等厚の溶融亜鉛めっきを行った鋼板及び鋼帯,並びに板を加工した波板,品質については,JIS G 3302「溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯:Hot-dip zinc-coated steel sheet and strip」に規定されている。
 電気亜鉛めっき鋼(electrolytic zinc-coated steel, electro galvanized steel)
 めっき液に鋼を浸漬し,電気を介して亜鉛をめっきする処理法(電解めっき)で得た鋼。工業的に用いられるめっき液には,青化浴,酸性浴,ジンケート浴などがある。
 建築物(building)
 建築基準法第二条(用語の定義)では,建築物は土地に定着する工作物のうち,
 ① 屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。),
 ② ①に附属する門若しくは塀,
 ③ 観覧のための工作物,
 ④ 地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所,店舗,興行場,倉庫,その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋,プラットホームの上家,貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい,建築設備を含む。
 建築設備(building equipment)
 建築基準法第二条(用語の定義)では,土地に定着し建築物に設ける工作物のうち,電気,ガス,給水,排水,換気,暖房,冷房,消火,排煙若しくは汚物処理の設備や煙突,昇降機若しくは避雷針をいう。
 建築基準法(Building Standards Act)
 建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定める法律。

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 新設・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)

 山間,田園,海岸から遠い都市部などの腐食性の低い環境で,高い耐候性を必要としない建築物の屋外に露出する建屋鉄骨に適用される塗装仕様である。
 
 素地調整
 汚れ,付着物をスクレーパー,ワイヤブラシ等で除去
 油類は溶剤ぶき
 エッチングプライマー塗装
 素地調整後直ちに
  JIS K 5633 エッチングプライマー 1種:塗付け量 50g/m2
 下塗り塗装
 エッチングプライマー塗り付け後 2時間以上,8時間以内
  JIS K 5629 鉛酸カルシウムさび止めペイント:塗付け量 100g/m2
 中塗り塗装
 下塗り塗装後 1日以上
  JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1種 中塗:塗付け量 90g/m2 上塗り塗装
 中塗り塗装後 1日以上
  JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1種 上塗:塗付け量 80g/m2

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 新設・耐候性塗り(DP)

 海岸から近いなどの腐食性の高い環境,高い耐候性が求められる建築物の屋外に露出する建屋鉄骨に適用される塗装仕様である。
 防食性能・耐候性の高い塗装仕様で,鋼橋などの構造物で採用される JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料を用いる。

 鉄骨製作工場

 素地調整
 汚れ,付着物をスクレーパー,ワイヤブラシ等で除去
 油類は,弱アルカリ性液で加熱処理後,湯又は水洗い
 化成皮膜処理は,りん酸処理後に水洗い乾燥,又はクロム酸処理若しくはクロメートフリー処理後乾燥
 下塗り塗装
 素地調整後 1日以上,7日以内
  JASS 18 M-109 変性エポキシ樹脂プライマー:塗付け量 140g/m2

 現場へ搬送・組立

 素地調整
 研磨紙ずり:研磨紙(P120~220)で研磨する。(全工場塗装では省略)
 中塗り塗装
 研磨紙ずり後直ちに
  JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料中塗:塗付け量 140g/m2 上塗り塗装
 中塗り塗装後 1日以上,7日以内
  JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料上塗:塗付け量 100g/m2

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 塗替え・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)

 改修では,劣化した部分のみを除去し活膜を残す場合と,塗膜を全面除去する場合がある。これは,塗膜の劣化状態により選択することになるが,ここでは,活膜を残す場合を紹介する。
 素地調整
 既存塗膜の除去:ディスククサンダー,スクレーパー等により,劣化しぜい弱な部分,及びさび等を除去し,活膜は残す。
 汚れ,付着物除去:素地を傷つけないように,ワイヤブラシ等で除去
 油類除去:溶剤ぶき
 研磨紙ずり:研磨紙(P120~220)で全面を平らに研磨する。
 エッチングプライマー塗装
 露出亜鉛めっき面に対してのみ塗り付ける。
  JIS K 5633 エッチングプライマー 1種:塗付け量 50g/m2
 下塗り塗装
 エッチングプライマー塗り付け後 2時間以上,8時間以内
  JIS K 5629 鉛酸カルシウムさび止めペイント:塗付け量 100g/m2
 中塗り塗装
 下塗り塗装後1日以上
  JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1種 中塗:塗付け量 90g/m2
 上塗り塗装
 中塗り塗装後 1日以上
  JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1種 上塗:塗付け量 80g/m2

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 塗替え・耐候性塗り(DP)

 改修では,劣化した部分のみを除去し活膜を残す場合と,塗膜を全面除去する場合がある。これは,塗膜の劣化状態により選択することになるが,ここでは,活膜を残す場合を紹介する。
 素地調整
 既存塗膜の除去:ディスククサンダー,スクレーパー等により,劣化しぜい弱な部分,及びさび等を除去し,活膜は残す。
 汚れ,付着物除去:素地を傷つけないように,ワイヤブラシ等で除去
 研磨紙ずり:研磨紙(P120~220)で全面を平らに研磨する。
 油類除去:溶剤ぶき
 プライマー塗装
 露出亜鉛めっき面に対してのみ塗り付ける。
  JIS K 5633 エッチングプライマー 1種:塗付け量 50g/m2
 下塗り塗装
 エッチングプライマー塗り付け後 2時間以上,8時間以内
  JASS 18 M-109 変性エポキシ樹脂プライマー:塗付け量 140g/m2
 中塗り塗装
 下塗り塗装後 1日以上,7日以内,研磨紙ずり後直ちに
  JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料中塗:塗付け量 140g/m2
 上塗り塗装
 中塗り塗装後 1日以上,7日以内
  JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料上塗:塗付け量100g/m2

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