防食概論:塗料・塗装

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         塗り替え塗装工程

 事業者は,架設された鋼橋の健全性維持を目的に,維持管理計画に従い適切な調査・点検を実施しなければならない。
 例えば,鉄道では 2年毎の通常全般検査(general inspection)で,道路では 5年毎の定期点検(periodical inspection)と必要に応じた中間年の中間点検で,鋼橋の健全性に加えて,腐食の発生程度,塗膜の劣化程度を評価し,補修・補強工事や塗替え塗装(repainting coat)の要否を判定している。
 
塗り替え塗装工程
 適切な調査・点検で塗替え塗装が必要と判定された場合に,鋼橋の管理者は,腐食の程度(さび度)や塗膜劣化程度に応じた適切な塗替え塗装を計画し,塗装施工会社に発注することになる。
 受注した施工会社は,工事計画を立案し,次の手順で塗り替え塗装工事が実施される。

既設鋼橋 塗り替え塗装の工程例

既設鋼橋 塗り替え塗装の工程例

  1. 足場工(construction scaffold work)
     作業用の足場を,積載荷重,風荷重を考慮し,適切に設計・施工する。
  2. 防護工(protection method)
     架設箇所の条件に応じて,落下防止,飛散防止,騒音対策が出来るように,ネット,シート,パネル等を適切に設置する。
  3. その他設備の設置
     必要に応じて,換気設備,照明設備,暖房設備を設置する。
  4. 塗膜表面の付着塩分量(adhered salt content)測定
     海塩粒子や凍結防止剤などの飛来塩分(flying salinity)が想定される環境では,塗膜表面への付着塩分量を適切な方法で測定し,規制値以上の場合には,施工対象面の水洗などの適切な対策を講じる。
  5. 素地調整(surface preparation)
     架設環境での制約条件を確認し,塗膜調査結果に基づき決定された適切な方法,適切な除せい度素地調整作業を行う。
  6. 第 1層目塗装
     素地調整後の早い機会(その日の内,原則 3時間以内)に第 1層目を塗装する。
  7. 第 2層目以後の塗装
     塗装に適した条件(付着塩分量,気象条件)であることを事前に確認し,塗装系に指示される方法で塗料を順次塗り付ける。
  8. 竣工検査(inspection of completion, final inspection)
     工事記録,検査記録を確認し,適切に工事が完了したことを確認する。現地確認は,足場撤去前に実施するのが望ましい。諸般の事情で足場撤去後に実施される場合もある。
  9. 足場撤去と補修塗装
     塗膜の不具合などの確認,補修後,足場を撤去する。なお,吊り金具接触個所など未塗装個所を適切に補修し,発生した廃棄物を処理する。
 【参考】
 素地調整(surface preparation)
 塗料の付着性及び防せい効果をよくするために,機械的又は化学的に被塗装物体表面を処理し,塗装に適するような状態にすること。ケレンともいう。【 Z0103「防せい防食用語」】
 鋼橋製作時の素地調整には,鋼材製作時の一次素地調整と橋梁組立後の防食塗装時に行う二次素地調整,及び架設工事で行う現場塗装での素地調整がある。
 鉄鋼メーカ等で行われる一次素地調整は,原板ブラスト(blasting for rolled sheet)とも呼ばれる。この処理は,製鉄工場で熱間圧延で生成したミルスケール(黒皮),付着物やその後に発生した赤さびなどを除去することを目的として行われる。
 二次素地調整は,橋梁製作工場で実施する防食塗装前の素地調整である。ここで実施するブラスト処理は製品ブラストともいわれる。
 さび度(rust grade)
 清浄作業前の鋼材表面に形成されているさびの程度を説明する分類。さびの程度は,5段階に分けた写真によって評価する(JIS K 5600-8-3「塗料一般試験方法− 第8部:塗膜劣化の評価− 第3節:さびの等級」,JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」参照)。【JIS K5500「塗料用語」】
 鋼材表面を処理する前のミルスケールの付着程度又はさびの発生程度。【 JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」】
 鋼橋用鋼板表面の清浄度は,ミルスケール付着程度又はさびの発生程度を示す「さび度」と除去程度を示す「除せい度」を組み合わせた等級で表される。
 除せい(錆)度(preparation grade)
 清浄度の中で,ミルスケール及びさびの除去程度。【 JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」】
 ある(素地調整)方法によって得られる清浄仕上げの品質水準を説明する分類。
 JIS Z 0313-1998「素地調整用ブラスト処理面の試験及び評価方法」では,除せい度とそれに対する鋼材表面の状態を次のように定義している。
 Sa1  拡大鏡なしで,表面には,弱く付着したミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。
 Sa2  拡大鏡なしで,表面には,ほとんどのミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。残存する汚れのすべては,固着している。
 Sa2 1/2  拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がない。残存するすべての汚れは,そのこん跡が斑点又はすじ状のわずかな染みだけとなって認められる程度である。
 Sa3  拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がなく,均一な金属色を呈している。ブラストに先立って,厚いさび層,油,グリースや泥土は除去する。
 清浄度(cleanliness , preparation grade)
 ある(素地調整)方法によって得られる清浄仕上げの品質水準を説明する分類(JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」,ISO 8501/1参照)。【JIS K5500「塗料用語」】
 鋼材表面を処理した後の,被覆の付着を阻害するミルスケール及びさび,塩類,油分などの汚れの除去程度。【 JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」】
 飛来塩分(flying salinity)
 海や塩湖などの自然由来の塩を飛来海塩粒子というが,飛来塩分という場合は,定義が一定していないが,一般には飛来海塩粒子に加え,散布された凍結防止塩,工場などからの人為的な原因で飛来する塩粒子なども含まれる。
 海塩粒子(sea salt particle)
 海岸の波打ち際及び/又は海上で波頭が砕けたときに発生する海水ミストが,風で運ばれて飛来した粒子。海塩粒子の大きさは,約 0.01μm~20μm である。【JIS Z 2381「大気暴露試験方法通則」】
 凍結防止剤(antifreezing agent)
 融雪剤ともいわれ,塩の溶解熱や塩水の凝固点降下(氷の融点低下)を期待して散布される。使用される塩には,塩化カルシウム(CaCl2),塩化ナトリウム(NaCl),塩化マグネシウム(MgCl2),酢酸カルシウム( (CH3COO)2Ca),酢酸マグネシウム( (CH3COO)2Mg),酢酸カリウム(CH3COOK),尿素( CO(NH2)2)などがある。
 高速道路,国道では安価で,凍結防止,融雪効果の高い塩化ナトリウム(NaCl)が,勾配の大きい道路,跨線道路橋などのスポット的な融雪(凍結後の散布)には,散布後の発熱効果が期待でき,即効性のある塩化カルシウム(CaCl2)や塩化マグネシウム(MgCl2)が用いられている。なお,凍結防止剤使用量全体の70%以上は塩化ナトリウムである。
 しかし,これらにより塩害(生態系への影響,構造物・車両の腐食)を引き起こすため,近年は代替材料(酢酸カルシウム・マグネシウム(CMA),酢酸カリウム,鉄製品に全く反応(腐食)しない尿素)への変換が検討されている。

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