防食概論:塗装・塗料
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ここでは,道路の鋼橋塗装に適用される防食塗装系について,【一般外面用・塗装系 A-5・仕様】, 【長ばく形エッチングプライマーの品質】, 【鉛・クロムフリーさび止めペイントの品質】 , 【長油性フタル酸樹脂塗料の品質】 に項目を分けて紹介する。
道路橋の防食塗装(新設塗装)
一般外面用・塗装系 A-5
防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 2章 防食設計・新設塗装仕様, 一般外面塗装系
本便覧では,塗装便覧(1995年)の A塗装系(A-1,A一2,A-3,A-4),B塗装系(B一1),C塗装系(C-1,C-2,C-3,C-4)は取り扱わないこととし,新設時の一般外面塗装系は C-5塗装系,A-5塗装系とした。一般環境に架設する場合で,特に LCC(ライフサイクルコスト)を考慮する必要のない場合や,20 年以内に架け替えが予定されている場合などでは,鉛・クロムフリーさび止めペイントを使用する A-5 塗装系を適用してもよい。
A-5塗装系は,下塗り塗料のさび止めペイントには鉛・クロムが含まれないが,ほとんどの長ばく形エッチングプライマーは鉛・クロムを含むので,その後の塗替え塗装で除去された塗膜には鉛・クロムが含まれており,橋周辺への塗膜残査の飛散防止対策と法令に基づいた廃棄物の処理が必要となる。
A-5塗装系の場合,耐水性,耐アルカリ性に劣るため RC床版けたには適用しないのがよい。また,A-5塗装系は,下塗りまでを工場塗装し,現場で中塗り,上塗りを塗装する方式である。従来 A塗装系で,工場塗装と現場塗装の間隔が 6ヶ月以上 12ヶ月未満の時に適用していたフェノール樹脂 MIO塗料は,下塗りと中塗り塗膜の層間ではく離することが多いので適用しないほうがよく,このため A-5塗装系は,工場塗装後 6ヶ月以内に現場塗装しなくてはならない。6ヶ月以上経過し,塗膜劣化がある場合は塗替え塗装仕様の Ra-塗装系を適用するのがよい。
Ⅰ) 工場塗装と現場塗装の間隔が表に示す間隔を超えた場合は,割れ,はがれ,はく離,さびがない場合は清掃と軽い面あらしを行い鉛・クロムフリーさび止めペイントを1層(140g/m2,35μm)塗装し,長油性フタル酸樹脂塗料中塗,長油性フタル酸樹脂塗料上塗を塗装する。
Ⅱ) 摩擦接合面やコンクリート接触面には塗装しない。
Ⅲ) 使用量は,工場塗装はスプレー塗り,現場塗装ははけ・ローラー塗りの場合を示す。
Ⅳ) プライマーの膜厚は総合膜厚に加えない。
Ⅴ) 上塗りに隠ぺい力が劣る有機着色顔料を使用した塗色の場合,上塗りを 2回以上塗付する必要がある。
塗装仕様
原板(製鋼工場)
一次素地調整
ブラスト処理
除錆度:ISO Sa2 1/2,表面粗さ:10点平均粗さ 80μmRzJIS 以下
プライマー塗装
ブラスト処理後 4 時間以内
長ばく形エッチングプライマー:使用量 130g/m2(膜厚 15μm)
プライマーの膜厚は総合膜厚に加えない。
橋梁製作工場
二次素地調整動力工具処理
除錆度:ISO St3,表面粗さ:規定なし
下塗り塗装
① 素地調整後後 4 時間以内
鉛・クロムフリーさび止めペイント:吹付け塗り,使用量 170g/m2(膜厚 35μm)
② ①塗装後 1日以上,10日以内
鉛・クロムフリーさび止めペイント:吹付け塗り,使用量 170g/m2(膜厚 35μm)
橋梁架設現場
中塗り塗装下塗り塗装後 6カ月以内
長油性フタル酸樹脂塗料中塗:はけ・ローラ塗り,使用量 120g/m2(膜厚 30μm)
上塗り塗装
中塗り塗装後 2 日以上 10 日以内
長油性フタル酸樹脂塗料上塗:はけ・ローラ塗り,使用量 110g/m2(膜厚 25μm)
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長ばく形エッチングプライマーの品質
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
長ばく形エッチングプライマー主剤はビニルブチラール樹脂を主成分とし,添加剤は素地の金属と反応するためのリン酸を含む 2液形の塗料で,素地調整を行った鋼面に直ちに塗装して一時的に防錆するためのものである。本塗料は,JIS K5633 2種エッチングプライマーに準拠する。
品質
下表には,長ばく形エッチングプライマーの塗料品質,比較のため JIS K5633 2010 「エッチングプライマー」2 種(長暴形)の品質を紹介する。
項 目 | 長ばく形エッチングプライマー | JIS K5633(2種長暴形) |
---|---|---|
密度 20℃ g/cm3 | 0.88~1.20 | |
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になるものとする。 | |
加熱残分 % | 20以上 | |
溶剤不溶物 % | 9以上 |
項 目 | 長ばく形エッチングプライマー | JIS K5633(2種長暴形) |
---|---|---|
密度 20℃ g/cm3 | 0.80~1.00 | |
りん酸 %(H2PO4として) | 6以上 |
項 目 | 長ばく形エッチングプライマー | JIS K5633(2種長暴形) |
---|---|---|
ポットライフ | 8時間で使用できるものとする。 | |
塗装作業性 | はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 | |
乾燥時間 min | 30以下 | |
塗膜の外観 | 塗膜の外観が正常であるものとする。 | |
耐おもり落下性(デュポン式) | 300mm の高さから落としたおもりの衝撃によって,割れ・はがれがあってはならない。 | |
耐屈曲性(円筒形マンドレル法) | 直径 6mm の折り曲げに耐えるものとする。 | |
耐塩水性 | 塩化ナトリウム溶液に浸したとき,異常がないものとする。 | |
屋外暴露耐候性 | 3か月間の試験で見本品と比べて,さび・膨れ・はがれの程度が大きくないものとする。 |
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鉛・クロムフリーさび止めペイントの品質
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
鉛・クロムフリーさび止めペイント鉛およびクロムを含まない顔料をさび止め顔料とし,ボイル油および/またはフタル酸樹脂ワニスをビヒクルとした 1液形の塗料で,下塗り塗装に使用するものである。防せい(さび)錆顔料としては,りん酸亜鉛, 亜りん酸亜鉛,モリブデン酸亜鉛,モリブデン酸亜鉛カルシウム,りん酸アルミニウム,メタほう酸バリウム,シアナミド亜鉛などを使用する。本塗料は JIS K5674 鉛・クロムフリーさび止めペ イントに準拠する。
品質
下表には,鉛・クロムフリーさび止めペイントの塗料品質,比較のため JIS K5674 2019 「鉛・クロムフリーさび止めペイント」1 種(有機溶剤系)の品質を紹介する。
項 目 | 鉛・クロムフリーさび止めペイント | JIS K 5674(1 種溶剤系) |
---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなく一様になる。 | |
塗装作業性 | はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 | 支障がない。 |
表面乾燥性 | 表面乾燥する。(8時間) | |
塗膜の外観 | 正常である。 | |
上塗り適合性 | 支障がない。 | |
耐屈曲性 | 折り曲げに耐える。(6mm) | |
付着安定性 | - | はがれを認めない。 |
サイクル防食性 | 膨れ,さび及びはがれがない。(36サイクル) | |
加熱残分(質量分率 %) | 75以上 | |
塗膜中の鉛(質量分率 %) | 0.06以下 | |
塗膜中のクロム(質量分率 %) | 0.03以下 | |
防錆性 | 防錆性を持つ。(24 か月) |
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長油性フタル酸樹脂塗料の品質
「防食便覧」付属資料(鋼道路橋塗装用塗料標準)に規定される塗料概要と品質を紹介する。
長油性フタル酸樹脂塗料
着色顔料,体質顔料,長油性フタル酸樹脂,溶剤等からなる 1液形の塗料で,JIS K5516:2003 2種合成樹脂調合ペイントに準拠する。
品質
下表には,長油性フタル酸樹脂塗料の塗料品質,比較のため JIS K5516 2019 「合成樹脂調合ペイント」2 種(大形鉄鋼構造物用)の品質を紹介する。
項 目 | フタル酸樹脂中塗 | JIS K5516( 2種中塗) | フタル酸樹脂上塗 | JIS K5516( 2種上塗) |
---|---|---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |||
塗装作業性 | はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 | |||
乾燥時間(表面乾燥性) | 16 時間以内 | |||
指触乾燥性 | 1時間以下で指触乾燥してはならない。 | ― | 1時間以下で指触乾燥してはならない。 | ― |
塗膜の外観 | 塗膜の外観が正常であるものとする。 | |||
隠ぺい率 %(白及び淡彩) | 85 以上 | 90 以上 | ||
鏡面光沢度( 60度 ) | ― | 80 以上 | ||
重ね塗り適合性 | ― | 重ね塗りに支障があってはならない。 | ||
上塗り適合性 | 上塗に支障があってはならない。 | ― | ||
加熱残分 % | 65 以上 | 60 以上 | ||
耐塩水性 | ― | 塩化ナトリウム溶液に浸しても,異常がないものとする。 | ||
促進耐候性 | ― | 膨れ,割れ及びはがれの等級は 0 であり,色とつやの変化の程度が見本品に比べて大きくないものとする。また,白及び淡彩では,白亜化の等級が 1 以下とする。 | ||
屋外暴露耐候性 | ― | 2 年間の試験で,膨れ,はがれ及び割れがなく,色とつやの変化の程度が見本品に比べて大きくないものとする。また,白及び淡彩では,白亜化の等級が 4 以下とする。 |
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