防食概論:塗料・塗装

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         塗装作業における被塗面,施工条件の管理

 第 1層目の塗料は,素地調整後直ちに塗装される塗料であること,無機ジンクリッチペイントは他の塗料と施工条件が著しく異なることから,第 1層目とその他の塗料の塗装作業を分けて解説した。
 施工管理では,塗装作業に先立ち対象面(被塗面という)の状態確認,使用塗料の状態確認,及び作業時間帯の気象条件の確認を実施しなければならない。
 次いで,塗装の段階では,作業中の気象計測,規定通りに塗り付けられているか否かの確認をしながら作業を継続する。
 それぞれの作業段階における管理項目や留意点を次に解説する。

被塗面の確認】

 被塗面(塗装対象の素地や前回塗装面)が,塗装に適する状態であるかを次の要領で確認する。
 付着塩分量の測定
 被塗面表面に飛来海塩粒子などのが付着していると,塗り重ねた塗膜の付着性低下,経年での塗膜はがれの原因となる。このため,ガーゼ拭き取り法など適切な付着塩分測定法を用いて,塩分量を計測する。
 計測結果が,規定される塩分量(例えば,鉄道橋では 100mg/m2,道路橋では 50mg/m2)以上を計測した場合には,水洗等の塩分除去のための措置を行わなければならない。
 硬化状態の確認
 2層目以降の塗装では,次に塗り重ねる前に,塗装系で規定する塗装間隔の範囲内で,塗膜を指触検査し半硬化乾燥状態を確認できたときに,塗り重ねて良い状態であると判断する。
 規定される塗装間隔の上限を超えた場合は,塗り重ねる塗料の付着性に悪影響を与えるほど塗膜表面が変化しているので,研磨紙を用いた面粗し等の素地調整を行わなければならない。
 ※:半硬化乾燥とは,塗面の中央を指先で静かに軽くこすって塗面にすり跡が付かない状態をいう。
 塗膜変状の確認と措置
 前回に塗装した塗膜面に,後述の【塗膜変状と措置(塗装時)】に例示する塗膜変状が観察された場合には,適切な措置を行った後で塗装しなければならない。
 

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使用塗料の確認】

 容器開缶前
 その塗料が規定品質であること,保管期間が規定期間を超えていないことなどを塗料会社から提出された試験成績書などで確認する。
 一般的に,塗料の主剤は樹脂,添加剤,溶剤,及び顔料の混合物である。密度の大きい顔料が沈降していることが多いので,開缶前に,内容物が均一になるよう十分に振とうする。なお,保管期間が長期間となった場合には,専門家(塗料メーカーの技術者)に使用可否を確認してもらう。
 容器開缶後
 塗料の状態が正常であること(ゲル化や皮張りがないこと)を確認し,適切な攪拌器具を用いて,十分に攪拌する。
 多液形塗料は,塗料に指定される適切な混合比で調合し,十分に攪拌混合する。粘度を確認しながら希釈剤を添加し,最適の粘度に調整する。このとき,希釈剤の添加量がその塗料で規定される上限を超えないようにする。
 調合の完了した塗料は,その塗料に規定される熟成時間に至ってから塗装作業に供する。なお,その塗料は規定されるポットライフ(可使時間)を超えない時間内で使い切る。ポットライフを超えた場合は,その塗料は廃棄する。

 

塗装作業の確認】

 塗り付け量の確認
 その塗料に規定する量を過不足なく塗り付け,均一で必要な厚さを確保しなければならない。新設時塗装では,一般的に,乾燥塗膜厚が規定されている。しかし,塗装作業中に乾燥塗膜厚の計測は不可能である。
 そこで,塗り付け作業が適切に実施されているかは,塗装面積に対する使用塗料量で推定するか,乾燥前の厚み(ウェット膜厚)の計測で推定する必要がある。
 ウェット膜厚の測定は,JIS K 5600-1-7「膜厚」方法No.1(ぬれ膜厚の評価)のくし形ウェットフィルム膜厚計,又はロータリー形ウェットフィルム膜厚計を用いるのが一般的である。
 塗料に規定される乾燥膜厚をTdとすると,乾燥前のウェット膜厚(Tw)を次の式から推定できる。

   Tw ≒ Td×100/Vs×(100+S)/100 =Td ×(100+S)/Vs
 ここで,Vsは混合塗料中の加熱残分(%),Sは希釈した溶剤の割合(%)である。
 なお,厳密に求めようとすると,塗料密度,希釈に用いた溶剤の密度を入れて計算しなければならないが,ここでは,過不足なく塗り付けているかの確認を目的とするので,塗料の試験成績書に示される値のみで計算される概略値で十分である。
 一般的には,竣工検査で乾燥後の塗膜厚み検査が実施される。この検査では,平均膜厚に加えて最小膜厚で評価されるため,不合格とならないように,厚めに施工する例が多い。
 一見するとよさそうに思われがちであるが,無駄に塗料を使用するのみならず,部分的な過大厚みによる不具合の原因ともなるので注意が必要である。
 一例として,厚く塗りすぎることで,塗膜内部の応力が増加し,経年での塗膜割れはがれの一因となる。特に,厚膜形無機ジンクリッチペイントでは,この傾向が高いので注意が必要である。

ウェットフィルム膜厚計

ウェットフィルム膜厚計
写真出典:(株)サンコウ電子研究所 カタログ


 気象条件の記録
 塗装作業中は,天候,温度,湿度を記録しておく。塗料ごとに,気温,湿度の制限があるので,これを厳守しなければならない。
 特に,冬季の低温時(硬化反応が進まない),夏季の高温時,特に鋼板温度(溶剤揮発が速すぎ,レベリング不良など均一な塗膜が形成されない),相対湿度の高い時期(塗膜表面の結露)は,注意が必要である。
 相対湿度の制限は,無機ジンクリッチペイントでは,前項の「 1層目塗装」で解説した理由により,相対湿度 50%未満で施工禁止となる。他の塗料の多くは,相対湿度 85%以上で施工禁止となる。なお,相対湿度 85%の制限が設けられた理由は次による。
 塗り付けた塗料からの溶剤揮発で塗膜表面の熱(気化熱)が奪われ,表面温度が低下する。常温( 23℃程度)付近で表面温度が気温より約 2.7℃低下した場合には,相対湿度 85%で露点(結露開始)に達する。乾燥前の塗膜表面に水が付着すると塗膜不具合の原因になる。
 一般的には,構造物用塗料の溶剤揮発で表面温度が 2℃以上低下することが少ないので,安全な範囲として,相対湿度 85%が作業禁止の条件として定められた。これは,ブラスト処理の作業禁止条件の相対湿度 80%以上とは技術的意味合いが違うので混同しないこと。  
 他に,強風,降雨,降雪,霜も塗装作業に影響するので,塗装作業期間の気候も記録しておくのが良い。

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