防食概論:塗料・塗装

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         上塗り塗料

 上塗り塗料(top coat,top coat,finishing coat)とは, “塗料を塗り重ねて塗装仕上げをするときの,上塗りに用いる塗料”と定義され,表面に特殊機能を付与することを目的に用いられる。
 防食塗装では,おもに色付与,すなわち美装を目的に塗装される。他の用途では,硬さ,潤滑性,撥水・撥油性,日射反射性など要求に応じた特殊機能の付与した塗料もある。
 ここでは,「塗料の評価・上塗り塗料で紹介したJIS K 5516 「合成樹脂調合ペイント」,及び JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」に規定される防食塗装用途の上塗り塗料について,その品質規格の概要,及び適用される試験規格を紹介する。

 

【合成樹脂調合ペイント】

 JIS K 5516 「合成樹脂調合ペイント」は,建築物(鉄部,木部),及び鉄鋼構造物の中塗り,又は上塗りに用いる合成樹脂調合ペイントについて規定している。
 合成樹脂調合ペイントとは,着色顔料・体質顔料などを,主に長油性フタル酸樹脂ワニスで練り合わせて作った液状・自然乾燥性の塗料である。JIS 規格では,次の 3 種類が規定されている。
 a) 主に,建築物,及び鉄鋼構造物の中塗り,及び上塗りとして,下塗り塗膜の上に数日以内に塗り重ねる場合に用いる 1 種
 b) 主に,大形鉄鋼構造物の中塗りに用いる 2 種 中塗り用
 c) 主に,大形鉄鋼構造物の上塗りに用いる 2 種 上塗り用
 1 種,及び 2 種上塗り用の品質項目は次の通りである。
 塗料の品質
 塗料性状の規定として容器の中での状態,加熱残分を,塗装作業に関連する規定は塗装作業性,表面乾燥性(乾燥時間),指触乾燥性(乾燥時間)が,塗膜形成機能として,塗膜の外観,重ね塗り適合性が規定されている。
 【塗膜の品質】
 塗装作業に関連する隠ぺい率が規定されている。
 塗膜の性能や耐久性については,鋼構造物用の 2 種では,美装性,及び外観性能の耐久性評価を目的に,鏡面光沢度,耐塩水性,促進耐候性,及び屋外暴露耐候性が規定されている。


品質(JIS K 5516 「合成樹脂調合ペイント」 1 種及び 2 種上塗り用)
  項  目   1  種  2種上塗り用
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  塗装作業性    はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 
  乾燥時間(表面乾燥性)    16 時間以内 
  指触乾燥性    ―    1時間以下で指触乾燥してはならない。 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  隠ぺい率 %(白及び淡彩)(注1)    90以上 
  促進黄色度(白について)    0.20 以下    ― 
  鏡面光沢度(60度)    80 以上 
  重ね塗り適合性    重ね塗りに支障があってはならない。 
  加熱残分 %    65以上    60以上 
  耐塩水性    ―    塩化ナトリウム溶液に浸しても,異常がないものとする。 
  促進耐候性    膨れ,割れ及びはがれの等級は 0 であり,色とつやの変化の程度が見本品に比べて大きくないものとする。また,白及び淡彩では,白亜化の等級が 1 以下とする。 
  屋外暴露耐候性    1種では1年間の試験で,2種では2年間の試験で,膨れ,はがれ及び割れがなく,色とつやの変化の程度が見本品に比べて大きくないものとする。また,白及び淡彩では,白亜化の等級が4以下とする。 
注 1 : :淡彩とは,白エナメルを主成分として作った塗料の塗膜に現れる灰色,桃色,クリーム色,うすい緑及び水色などのようなうすい色で,JIS Z 8721 「色の表示方法−三属性による表示」による明度 V が 6 以上 9 未満のものをいう。

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【鋼構造物用耐候性塗料】

 JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」は,鋼構造物美装仕上げ塗りに用いられ耐候性(耐紫外線性)に優れた塗料の性能規定である。
 この規格は,2008年に,それまでの製品規格であった旧JIS K 5657 「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と旧JIS K 5659 「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統合し,鋼構造物用の上塗り塗料の性能規格化を図ったものである。
 種類は,促進耐候性試験,及び耐候性試験の結果に応じて 1 級,2 級,3 級に分類される。
 JIS K 5659 は,性能規定のため,塗料種を限定する成分規定はない。
 しかしながら,旧 JIS 規格との整合のためか,目的は不明であるが,JIS K 5659「表1-種類及び等級」には,
 “上塗り塗料の原料は,ふっ素系樹脂シリコン(シリコーン)系樹脂,又はポリウレタン系樹脂とする。塗料は,上塗り塗料と中塗り塗料とを組み合わせて用いる。上塗り塗料,及び中塗り塗料のいずれも,主剤と硬化剤を混合し硬化させて用いる。
 と記述されている。
 塗料の品質
 塗料性状の規定として容器の中での状態,加熱残分を,塗装作業に関連する規定には,表面乾燥性(乾燥時間),ポットライフが規定されている。塗膜形成機能として,塗膜の外観,付着性(層間付着性)が規定されている。
 【塗膜の品質】
 塗装作業に関連する規定には,隠ぺい率が規定されている。塗膜形成機能として,耐屈曲性,耐衝撃性(耐おもり落下性)が規定されている。
 塗膜の性能や耐久性については,鏡面光沢度,耐アルカリ性,耐酸性,耐湿潤冷熱繰返し性,促進耐候性,屋外暴露耐候性が規定されている。


品質(JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」上塗り塗料)
  項  目   上塗り 1 級  上塗り 2 級  上塗り 3 級
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  表面乾燥性    表面乾燥する。(常温8時間後,低温5℃16時間後) 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  ポットライフ    規定時間(5時間)後,使用できる。 
  隠ぺい率    白・淡彩は90以上,鮮明な赤及び黄は50以上,その他の色は80以上 
  鏡面光沢度(60度)    70 以上 
  耐屈曲性    折曲げに耐える。(10mmマンドレル) 
  耐おもり落下性(デュポン式)    塗膜に割れ及びはがれが生じない。(デュポン式300g,500mm) 
  層間付着性 Ⅱ    異常がない。 
  耐アルカリ性,耐酸性    異常がない。(水酸化カルシウム水) 
  耐湿潤冷熱繰返し性    湿潤冷熱繰返しに耐える。 
  混合塗料中の加熱残分 %    白・淡彩は50以上,その他の色は40以上 
  促進耐候性    照射時間2000時間の促進耐候性試験に耐える。    照射時間1000時間の促進耐候性試験に耐える。    照射時間500時間の促進耐候性試験に耐える。 
  屋外暴露耐候性(24か月)    光沢保持率が60%以上で白亜化の等級が1又は0    光沢保持率が40%以上で白亜化の等級が2,1又は0    光沢保持率が30%以上で白亜化の等級が3,2,1又は0 

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【上塗り塗料のJIS品質項目】

 JIS K 5516 「合成樹脂調合ペイント」,JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」の上塗り塗膜の品質項目と試験方法は次の通りである。
 
 合成樹脂調合ペイント上塗り塗膜は,元来長期の耐久は期待されていない。しかし,美装性は求められる。このため,初期性能として塗膜の隠ぺい性,鏡面光沢度が規定され,性能維持に資する化学的外力に対する抵抗性として,耐塩水性,促進耐候性,及び屋外暴露耐候性が規定されている。
 
 鋼構造物用耐候性塗料は,美装性として,塗膜の鏡面光沢度が規定されている。また,塗装後の物理的外力に対する抵抗性については,塗膜の用途別に要求性能が異なり,薄い金属板用途では“耐屈曲性”が,厚い鋼板用途では“耐衝撃性”が求められる。
 一般的に,構造物用さび止めペイントを下塗り塗料として用いた塗装系では,長期の耐久性が期待される。このため,合成樹脂調合ペイントとは異なり,長期間の美装特性の維持が求められる。
 この目的で,化学的外力に対する長期間の抵抗性として,耐アルカリ性,耐酸性,耐湿潤冷熱繰返し性,促進耐候性,屋外暴露耐候性が規定されている。


上塗り塗料のJIS規格の品質項目の種別と試験方法
  種  別   項  目  試験方法
  塗料の性状    容器の中での状態    JIS K 5600-1-1の4.1(容器の中の状態) 
  混合塗料中の加熱残分(%)    JIS K 5601-1-2 
  塗装作業性    塗装作業性    JIS K 5600-1-1の4.2(塗装作業性) 
  乾燥時間,表面乾燥性    JIS K 5600-3-2JIS K 5600-3-3 
  指触乾燥性    JIS K 5600-1-1の4.3.(乾燥時間) 
  ポットライフ    JIS K 5600-2-6 
  隠ぺい率    JIS K 5600-4-1の4.1.2方法B(隠ぺい率) 
  塗膜形成機能    塗膜の外観    JIS K 5600-1-1の4.4(塗膜の外観) 
  重ね塗り適合性    JIS K 5600-3-4 
  層間付着性    塗料規格に定める方法 
  耐屈曲性(円筒形マンドレル法)    JIS K 5600-5-1 
  耐衝撃性,耐おもり落下性(デュポン式)    JIS K 5600-5-3 
  塗膜の性能・耐久性    促進黄色度    JIS K 5600-4-5 
  鏡面光沢度    JIS K 5600-4-7 
  耐塩水性,耐水性,耐アルカリ性,
耐酸性,耐揮発油性 
  JIS K 5600-6-1の7.(浸漬法) 
  耐湿潤冷熱繰返性    JIS K 5600-7-4 
  促進耐候性    JIS K 5600-7-7 
  屋外暴露耐候性    JIS K 5600-7-6 

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