JIS K 5600_3_4 塗料一般試験方法‐第3部‐第4節:製品と被塗装面との適合性

 JIS K 5600-3-4 1999年版 塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第4節:製品と被塗装面との適合性 (Testing methods for paints−Part 3:Film formability−Section 4:Evaluation of the compatibility of product with a surface to be painted)について  【序文・目次・適用範囲・用語・試料採取方法】,   【素地】,   【試験製品の塗装】,   【塗装された素地の評価】 に分けて紹介する。

 序文・目次・適用範囲・用語・試料採取方法

 序文
 この規格は,製品と被塗装面との適合性の評価の手順について規定するものであり,規定する試験方法は,次の補足情報によって行う。
 この情報は,試験対象製品に関する規格,若しくはその他の文書から引用するか,又は,それが適切な場合には試験を行う受渡当事者間での取決めを条件にするべきである。
 JIS規格からの抜粋(記号は JIS本体と同じ)
 c) 塗装対象素地の材料,及び表面処理
 d) 基準素地の材料及び表面処理
 f) 塗装方法,塗付量(又は膜厚),乾燥時間及び条件,塗料又は塗膜系。
 g) 塗装された素地の養生の方法及び時間。
 h) 塗付量(又は膜厚),乾燥時間及び条件,製品又は塗膜系の塗装方法。
 i) JIS K 5600-3-2 「表面乾燥性(バロチニ法)」,JIS K 5600-3-5「耐圧着性」及び/又はJIS K 5600-3-6「不粘着乾燥性」 に規定する手順を使用して乾燥の程度を測定するための試験方法。
 k) JIS K 5600-4-3 「色の目視比較」に規定する試験の実施に必要な補足情報
 l) JIS K 5600-4-7 「鏡面光沢度」に規定する測定方法
 m) JIS K 5600-5-7 「付着性(プルオフ法)」に規定する試験の実施に必要な補足情報
 n) 素地を含む塗膜系の耐環境性評価(耐候性,耐久性)のための,試験方法及び必要な補足情報。
 o) 付着性の“現場”評価のための試験方法。
 p) 塗膜劣化の評価における“現場”での暴露期間,及び評価項目(JIS K 5600-8-1~6「塗料一般試験方法‐第8部:塗膜劣化の評価‐第1節:一般的な原則と等級~第6節:白亜化の等級」 を参照)。
 サイト管理者からの意見
 本規格は,対応 ISOの直訳で,専門外の技術者には理解し難い表現が多いため,本サイトの管理者の独断で文章表現を変えた個所がある。
 このため,技術的な精確性に欠く恐れのあることに留意していただきたい。
 
 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
 序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 定義4 試料の採取方法5 素地(5.1 基準素地,5.2 試験室における素地調整,5.3 現場における素地調整),6 試験製品の塗装(6.1 試験室の場合,6.2 現場の場合),7 塗装された素地の評価(7.1 試験室試験,7.2 現場試験),8. 試験報告
 
 1 適用範囲
 この規格は,素地,及び塗料又は塗膜系の適合性の評価のための手順について規定する。
 試験対象の素地は,実用上の素地,すなわち未塗装のもの,特殊な処理をしたもの,又は塗装後の老化を受けたものなどがある。
 この方法は,実験室又は現場双方の塗装,及び評価についての適切な手順を定義する。
 
 3 定義
 3.1 適合性(素地と製品) (compatibility)
 素地に塗装される製品の,不具合な結果をもたらさない性能。
 3.2 素地 (substrate)
 その上に塗料,若しくはワニスを塗装するか,又は塗装することになっている表面。
 
 4 試料の採取方法
 JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第2節:サンプリング」の規定どおりに,試験対象品(又は多層系塗膜系の場合は各製品ごと)の代表的試料を採取する。
 誘料は JIS K 5600-1-3「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」の規定に従って試験するために試料を検分及び調整する。  

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 5 素地

 5.1 基準素地
 基準素地とは,試験対象の塗料,若しくは塗膜系の適合性を評価するために,既に塗料又は塗膜系の適合性があることが分かっている素地。
 他に規定がなければ,基準素地には,JIS K 5600-1-4「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第4節:試験用標準試験板」に規定される処理を適切に行った調整した鋼板を用いる。
 試験対象の素地(JIS規格にはない項目)
 試験対象の素地には,試験室で用いる実用の素地を模した試験板の素地,実用されている“現場”の実構造物を用いた試験の素地がある。
 
 5.2 試験室における素地調整
 5.2.1 塗装されていない素地
 JIS K 5600-1-4「試験用標準試験板」に規定する方法を用いて,素地を調整する。
 5.2.2 特殊処理された素地
 規定される材料,及び方法で処理し,規定される養生を行う。
 備考:特殊処理には,例えばりん酸処理(金属),含浸(木材),かび防止洗浄(コンクリート又は木材),又はヤニ止め(木材)などがある。
 5.2.3 塗装された素地(新品塗膜)
 規定された塗料(又は塗膜系),及び塗装方法を用い,規定された養生を行う。
 5.2.4 塗装された素地(老化塗膜)
 塗装された素地を規定された方法で老化処理する。
 備考:加熱処理,促進耐候試験などによる老化処理がある。
 
 5.3 現場における素地調整
 試験対象とする素地は,構造物の全体を代表する部分でなければならない。
 大きな構造物,又は複雑な形状の構造物については,試験対象として 1か所以上を選ぶ必要がある。試験箇所の選択は,受渡当事者間の協定によるべきである。
 他に規定がなければ,素地調整は,表面を溶剤で湿らせた布で清浄にし,次いで,シリコンカーバイトの耐水研磨紙(#220)で軽く水研ぎし,水洗後に乾燥させる。
 備考:素地調整は,続いて塗装される塗膜の性質に大きく影響する。従って,処理手順は,構造物全体に対して使用される手順を代表する必要がある。
 接合部,継ぎ目,溶接部,ボルト,又はエッジのような箇所に行う処理には,特に考慮すべきである。

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 6 試験製品の塗装

 6.1 試験室の場合
 6.1.1 塗装及び乾燥
 基準素地,及び試験対象の素地に,塗料(又は塗膜系)を規定の方法,塗付量(又は膜厚)で塗装する。
 両素地の塗装中の状態を観察する。特記事項があれば,これを報告する(例えば,過度のたれ,はじき又はリフティングなどの程度の差)。
 次いで,塗装した素地を規定の時間,条件下で乾燥する。塗装した塗膜の乾燥程度は,次の方法の一つ又はそれ以上の方法を用いて評価する。
  JIS K 5600-3-2 「塗料一般試験方法‐第3部:塗膜の形成機能‐第2節:表面乾燥性(バロチニ法)」
 ・JIS K 5600-3-5 「塗料一般試験方法‐第3部:塗膜の形成機能‐第5節:耐圧着性」
 ・JIS K 5600-3-6 「塗料一般試験方法‐第3部:塗膜の形成機能‐第6節:不粘着乾燥性」
 6.1.2 膜厚
 乾燥膜厚の測定は,JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第7節:膜厚」に規定されて方法を用い,マイクロメートル単位で測定する。
 備考:特殊処理された素地,塗装された素地の膜厚測定では,場合によっては,塗装前に膜厚測定を実施し,その結果との差によって,新たに塗装された塗膜の膜厚を求めることが必要になる。
 
 6.2 現場の場合
 6.2.1 塗装及び乾燥
 基準素地,及び試験対象の素地(選定した試験箇所)に,塗料(又は塗膜系)を規定の方法,塗付量(又は膜厚)で塗装する。
 両素地の塗装中の状態を観察する。特記事項があれば,これを報告する(例えば,過度のたれ,はじき又はリフティングなどの程度の差)。
 可能であれば,乾燥期間を通じて,環境温度,相対湿度,及び関連データを記録する(備考参照)。
 塗装された基準素地,及び試験箇所の乾燥の度合いを規定された方法で判定し,その結果を報告する。
 備考:塗装,乾燥の過程で,環境条件が悪い場合には,適合性の評価は無効になることがある。
 6.2.2 膜厚
 乾燥膜厚の測定は,JIS K 5600-1-7 「膜厚」に規定されて方法を用い,マイクロメートル単位で測定する。
 備考:特殊処理された素地,塗装された素地の膜厚測定では,場合によっては,塗装前に膜厚測定を実施し,その結果との差によって,新たに塗装された塗膜の膜厚を求めることが必要になる。

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 7 塗装された素地の評価

 7.1 試験室試験
  7.1.1 外観
 基準素地,及び試験対象の素地に塗装された塗膜について, 外観の不均一性,例えば,にじみ,又は他の表面欠陥,割れ,しわ,ピンホールについて比較する。
  7.1.2 色の比較
 JIS K 5600-4-3 「塗料一般試験方法‐第4部:塗膜の視覚特性‐第3節:色の目視比較」の要求に従って,塗膜と塗装された基準試験片と色を比較する。
  7.1.3 つや
 JIS K 5600-4-7 「塗料一般試験方法‐第4部:塗膜の視覚特性‐第7節:鏡面光沢度」に規定されている手順の一つによって,塗膜と塗装された素地及び基準試験片のつやを規定された方法によって測定する。
  7.1.4 耐おもり落下性 【JISでは急速塗膜劣化(金属素地だけ)】
 JIS K 5600-5-3 「塗料一般試験方法‐第5部:塗膜の機械的性質‐第3節:耐おもり落下性)」に従い,試験対象の素地,及び基準素地に塗装された塗膜の耐おもり落下性を測定する。
  備考:耐おもり落下性は,促進耐候性試験,又はその他の促進試験の後に行うことができる。
  7.1.5 付着性
 JIS K 5600-5-7 「塗料一般試験方法‐第5部:塗膜の機械的性質‐第7節:付着性(プルオフ法)」に規定される方法によって,試験対象の素地,及び基準素地に塗装された塗膜の付着性を評価する。
  備考:耐おもり落下性は,促進耐候性試験,又はその他の促進試験の後に行うことができる。
  7.1.6 その他の試験(耐候性など環境に関するもの)
 試験対象の素地,及び基準素地に塗装された試験片の耐候性,環境因子に対する抵抗性を比較することによって,素地を含む塗膜系の耐候性,環境因子に対する抵抗性の評価を行う。
 塗膜の変状・劣化の評価は, JIS K 5600-8-1 「一般的な原則及び等級」 によって行う。
  備考:適切な試験方法の例としては,耐湿性,耐塩水噴霧性,耐熱サイクル性,促進耐候性,熱可塑性素地の応力き裂に対する抵抗性などがある。
 
 7.2 現場試験
  7.2.1外観
 試験対象の素地,及び基準素地に塗装された塗膜について, 外観の不均一性,例えば,にじみ,又は他の表面欠陥,割れ,しわ,ピンホールについて比較する。
  7.2.2 色の比較
 試験対象の素地,及び基準素地に塗装された塗膜の色を比較する。
  7.2.3 つや
 試験対象の素地,及び基準素地に塗装された塗膜のつやを比較する。
  7.2.4 付着性
 試験対象の素地,及び基準素地に塗装された塗膜の付着性を評価する。
  備考:評価は,次の暴露試験後行うことができる。
  7.2.5 自然暴露試験
 塗膜を規定された期間自然暴露した後,目視検査し JIS K 5600-8-1 「一般的な原則及び等級」 に記載されている方法を用い,規定に従って,塗膜の変状・劣化を評価する。

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