防食概論:塗装・塗料
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ここでは,塗料と環境問題について,【地球環境の変化】, 【地球環境問題とは】, 【アジェンダ 21】, 【レシポンシブル・ケア】 に項目を分けて紹介する。
塗料概論(塗料の環境影響)
地球環境の変化
地球の環境問題(environmental issues)に関する一般的な認識は次の通りである。
人類が地球上に誕生し 300万年ほど経過し,その間に地球環境,すなわち大気圏,水圏,生物圏とも人類にとって最適のバランスを維持してきた。しかし,18世紀になり,人類は自身の持つ物理能力以上のものを発揮できる機械を発明したことを契機に,数多くの技術開発が精力的に行われ,生活環境は,より快適に,より便利にと大きく変質した。
その結果として,幾何級数的な人口増加に伴い,生活維持のためにエネルギー・資源を大量に消費する社会となった。
20世紀後半になって,人類の経済活動が,地球の持つ自律・自浄能力をはるかに超えたため,地球の生態系のバランスを崩し始めた。
これにより,これまで経験されなかった様々の地球環境・地域環境・人の健康に与える影響,すなわち環境問題が出現した。その後,環境問題は我々人類にとって,避けて通れない問題であり,21世紀は「環境の世紀」であるとも言われ,環境との調和をはかりながら経済の持続的成長を続けるために,英知を結集し努力を続けなければならない状況となっている。
【参考】
地球環境(global environment)
地球科学では,地球環境を「大気圏(atmosphere),水圏(hydrosphere),陸圏(landsphere){地圏(geosphere),岩石圏(lithosphere)},生物圏(biosphere)」に区分している。
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地球環境問題とは
地球環境問題は,1974年にオゾン層(the ozone layer)破壊の警告が発せられたことに始まる。その後,1980年代には地球温暖化(global warming),酸性雨(acid rain),熱帯林の減少,生物多様性の減少,砂漠化,海洋汚染,途上国の公害問題,有害廃棄物処理などの国境を越えた広域の問題として採り上げられるようになった。
国際的には,1992年にブラジルのリオデジャネイロで初めて開催された地球サミットの宣言を受けて採択された行動計画「アジェンダ21」,化学会社を中心とした活動の「レスポンシブル・ケア」及び国際標準化機構(ISO)による規格「ISO 14000シリーズ」等が主導的役割を果たしている。日本国内では大気汚染防止法の改訂,PRTR制度の制定などで広域の環境問題に対処している。
【参考】
オゾン層(the ozone layer)
大気中のオゾンの約 90%が成層圏(約 10~50km 上空)に存在している。このオゾンの多い層を一般的にはオゾン層という。オゾン層では,太陽から届く生態系にとって有害な短波長の紫外線を吸収し,地上の生態系の保護,地球の気候の形成(成層圏の大気を暖める)に大きく関わっている。
オゾン層破壊に大きく寄与するのは,触媒 として塩素原子 Cl が挙げられる。これは,数十年間にわたる人間活動で成層圏に到達したフロン類(クロロフルオロカーボン: CFC 等)からもたらされたものと考えられている。
オゾン(ozone)
3つの酸素原子からなる酸素の同素体で,分子式 O3 で表される。オゾンは,酸化能力(腐食性)が高く,生臭い刺激臭を持つ気体である。
環境問題とオゾンの関係は,成層圏でのオゾン層破壊,対流圏での光化学オキシダント濃度増加に分けられる。
地球温暖化(global warming)
石炭・石油等の化石燃料の燃焼等による二酸化炭素( CO2 )など温室効果ガスの大気中濃度が上昇し,この結果として地球規模の気温上昇,気候の変動を生じる問題を気候変動(地球温暖化)という。
酸性雨(acid rain)
化石燃料の燃焼などで発生・排出された硫黄酸化物や窒素酸化物などの汚染物質を取り込んで水素イオン濃度指数(pH)5.6以下の強い酸性になった雨をいう。
なお,汚染されていない大気の雨は,二酸化炭素(CO2)を吸収し,pH 6.5~5.5程度を示すため,日本では,これより酸性度の強い雨を酸性雨と称する。
大気汚染防止法(Air Pollution Control Act)
昭和43年6月10日制定,法律第97号 第一条(目的)
この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建築物等の解体等に伴うばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等を規制し、水銀に関する水俣条約(以下「条約」という。)の的確かつ円滑な実施を確保するため工場及び事業場における事業活動に伴う水銀等の排出を規制し、有害大気汚染物質対策の実施を推進し、並びに自動車排出ガスに係る許容限度を定めること等により、大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)
日本の環境問題に対処するため,1999年(平成 11年)に制定された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法/PRTR制度/SDS制度)に基づき,国が指定した有害性が疑われる化学物質を規定量以上含む物質を対象とし,指定された物質毎に,事業者が環境(大気・水域・土壌など)への排出量,廃棄物などとして移動量の把握,集計・公表する仕組み。
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アジェンダ 21
1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国際会議」(地球サミット;Earth Summit)で,「環境と開発に関するリオ宣言」とその宣言を受けた環境保全の行動計画「アジェンダ 21(Agenda 21)」が採択されている。
日本政府は,我が国が今後重点的に講じる諸施策「アジェンダ 21行動計画」をまとめ,1993年12月に関係閣僚会議の決定を経て国連に提出した。
その概要は次の通りである。
1) 大量消費・大量廃棄の現経済社会のあり方を環境配慮形に変革する。そのために規制的手法(環境基本法,容器包装リサイクル,大気汚染,廃水処理等)と自主的取り組み(省エネ、リサイクル,廃棄物の減少)の両面から推進する。
2) 有害化学物質の国際的管理の推進への協力,有害廃棄物の国境を越える移動・処分の規制への取組。
3) 企業が自社の環境行動計画を自主的に策定し,企業活動の中に環境配慮を組み込んでゆく。
レシポンシブル・ケア
レシポンシブル・ケア(responsible care)は,1984年にカナダ化学品生産者協会が提唱したものである。1990年には国際化学工業協会協議会(ICCA)が設立され,1994年の総会でレシポンシブル・ケア監査の推進とその実施状況の情報交換の充実を図ることが決議された。
この活動は,世界55カ国(2012年)が参加し,国連をはじめとする国際機関・各国政府が認知する活動になっている。
日本では,(社)日本化学工業協会が1995年に日本レシポンシブル・ケア協議会(JRCC)を設立し活動を開始し,2013年現在で化学工業関連の 101社が参加している。JRCCの定めるレシポンシブル・ケアの定義は以下の通りである。
“化学物質を製造し,又は取り扱う事業者が,自己決定・自己責任の原則に基づき,化学物質の開発から製造・流通・使用・最終消費を経て廃棄にいたる全ライフサイクルにわたって,「安全・環境」を確保することを経営方針において公約し,安全・健康・環境面の対策を実施し,改善を図っていく「自主管理活動」。”
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