防食概論:塗料・塗装

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         塗替え塗装時の素地調整(基本)

 塗替え塗装の素地調整は,新設時の素地調整とは大きく異なる
 新設時の対象面は,橋梁製作過程で損傷を受けたショップ鋼板の表面である。言い換えれば,均質な面を対象とした素地調整作業で,手抜きさえしなければ理想的な被塗面を得ることが出来る。
 一方,塗替え塗装では,新設時とは比較にならないほど深くまで腐食した鋼板,塗膜はがれに至った旧塗膜,付着性の低下で塗膜はがれ寸前の旧塗膜,付着しているが塗膜割れに至った旧塗膜,付着しているが塗膜割れ寸前まで変質し要求性能を満たさなくなった旧塗膜,付着性,物性とも健全性を維持する旧塗膜(活膜)が混在した表面である。

 (塗替え塗装の分類)
 塗替え塗装は,基本的には 2つの方法に分けられる。
 一つ目は,活膜の比率が大きく,活膜の上に塗り重ねることで塗膜耐久性向上を図り,加えて施工コスト低減に寄与する活膜を残して塗装する方法である。
 二つ目は,残すべき活膜が少なく,活膜を残して塗ることの効果が少ない場合,又は塗装系の変更の目的で塗膜更新のために全塗膜を除去して塗装する方法である。何れの方法を採用するかにより,素地調整作業が大きく異なる。
 
 (現場施工の特徴)
 素地調整作業は,新設時塗装と異なり,現場施工固有の様々な制約を受ける。このため,必ずしも理想的な素地調整ができない場合がある。
 適切な素地調整ができない場合には,塗料に期待する性能が発揮できないことが多いので,耐久性の高い重防食塗装系を用いても,塗替え周期の延伸は期待できない。
 このように,塗替え塗装の中で,素地調整作業は最も重要な工程である。次に,素地調整の一般的な手順と管理について概説する。

 

 【付着塩分の確認】

 塗装足場の設置後に,旧塗膜表面の付着塩分量を複数の個所(部材別,部位別)で計測する。計測値が,規定値以上の場合には,水洗を計画する。
 水を用いた作業が制限される場合には,少なくとも水に濡らしたウェスで念入りにふき取るなどの作業が必要である。
 塩を残したまま素地調整すると,付着塩を周囲に飛散させ露出した鋼表面の汚損が起きる。また,塗替え塗装で塗り重ねた塗膜の早期はがれの原因にもなるなど,塗替え塗膜の耐久性に著しく影響する。
 橋梁の立地が,飛来海塩粒子の想定される海岸等の場合には必須の管理項目である。海岸から離れた立地であっても,冬季に凍結防止塩を散布する道路,及びその付近の橋梁で,凍結防止塩散布時期や残存が想定される春季に施工する場合は,付着塩分量の計測が望ましい。
 塗替え塗装が,活膜を残して行う従来型工事と塗膜更新目的の全塗膜剥離工事では,素地調整の考え方が異なる。

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 【素地調整作業】

 素地調整作業では,次の項で解説する腐食個所の“除せい作業”,更に次の項で解説する割れ塗膜,はがれ塗膜,付着性の低下した塗膜,脆化塗膜などの“劣化塗膜の除去作業”,残した活膜との付着性を確保するための“表面処理(面粗し)作業”を実施する。
 素地調整後,その日のうちに第 1層目の塗装を行うので,素地調整,及び塗装に適する気象条件であることを,ピンポイント気象予測で確認しておく。気象が急変し,作業に規定される温度・湿度の制限値を超えた場合は,直ちに作業を中止する勇気が必要である。特に,相対湿度80%以上では露出した鋼の腐食が進むので,湿度の高い季節の施工には注意が必要である。
 素地調整後,第 1層目の塗装開始までに,腐食個所の除せい度,劣化塗膜除去程度,活膜の面粗し程度を検査し,塗り付けてよい状態であることを確認しなければならない。
 その日のうちに第 1層目の塗装ができない場合は,次回に再度の素地調整が求められる。

 

 【活膜の判定】

 活膜とは,塗膜特性(環境因子の遮断特性,機械特性)及び素地との付着性などの性質が維持され,容易に剥離しない旧塗膜である。
 活膜を残して塗り替えることで,活膜を除去して塗り替える場合より塗り替え塗装周期を延伸できると考えられている。
 旧塗膜が無機ジンクリッチペイントを用いていない塗装系
 活膜を定量的に把握する方法はないが,定性的には,スクレーパー(手工具の力棒)を用いても容易に剥離せず粘性のある塗膜を活膜と判断できるとされてきた。これは,油性系塗料全盛期の時代の常識であった。
 すなわち,スクレーパーの刃を立てたとき,塗膜が割れるようであれば,塗膜の粘弾性が低下し,脆化が進んでおり,塗膜割れに発展する可能性が高いこと,スクレーパーに塗膜に沿った力(せん断力)を加えたとき塗膜がはく離する場合は,層間の付着力低下が進んでおり,塗膜はがれに至る可能性が高いことを推定できる。
 この方法は,塗膜/鋼界面に大きなせん断力を与えられる工具で評価できるが,界面に大きなせん断力が作用しないディスクサンダー(サンドペーパーを用いたディスクグラインダ)では評価できないので注意が必要である。
 
 旧塗膜が無機ジンクリッチペイントを用いた塗装系
 旧塗膜が,重防食塗装などで用いる厚膜形無機ジンクリッチペイントを用いた塗装系の場合には,活膜の判定が著しく困難である。
 厚膜形無機ジンクリッチペイントの塗膜は,もともと柔軟性に乏しく容易に凝集破壊する塗膜である。このため,健全性を維持していてもスクレーパーで容易にはく離してしまうことが多い。
 このため,一般化された評価方法はないが,一部の事業者では,せん断力を用いた付着性評価法である碁盤目法(JIS K 5600-5-6「塗膜の機械的性質:付着性(クロスカット法)」)を応用した評価法や粘着力の強い粘着テープを用いた剥離試験などで評価する例もある。

 

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