JIS K 5600_4_3 塗料一般試験方法‐第4部‐第3節:色の目視比較

 JIS K 5600-4-3 1999年版 塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第3節:色の目視比較 (Testing methods for paints−Part 4 : Visual characteristics of film−Section 3 : Visual comparison of the colour of paints)について  【序文・目次・適用範囲・原理・補足情報】,   【色観察用照明】,   【観察者】,   【試料板と参照標準】,   【色比較の手順】,   【メタリズムの判定】 に分けて紹介する。

 序文・目次・適用範囲・原理・補足情報

 序文
 この規格は,1998年に発行された ISO/FDIS 3668 Paints and Varnishes−Visual comparison of the colour of paints を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
 
 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
 序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 原理,4 必要な捕捉情報5 色観察用照明(5.1 共通事項,5.2 自然昼光照明,5.3 色観察ブース),6 観察者7 試験板と参照標準(7.1 共通事項,7.2 参照標準,7.3 調整及び塗装,7.4 乾燥,7.5 塗膜の厚さ),8 色比較の手順(8.1 共通事項,8.2 日常の方法,8.3 レフェリーの方法),9 メタリズムの判定,10 試験報告
 附属書A(規定) 必要な捕捉情報
 附属書B(規定) 色差等級表
 附属書C(参考) 条件等色対(METAMERIC MATCHES)
 
 1 適用範囲
 この規格は塗膜及び関連製品の色を,自然昼光,又は色観察ブース内の人工光源を用いて,標準品(参照標準又は新たに調整した標準)と対比して目視比較するための方法を規定する。
 特別な効果を示す顔料を含む塗膜(例えば,メタリックエナメル)の方法については,照明及び受光のすべての詳細についての事前の協定がない場合には適用されない。
 
 3 原理
 比較する塗膜の色は,自然昼光,又は人工昼光のいずれかを規定した照明条件,及び観察条件の下で観察する。人工昼光の場合は,色観察用のブースを用いる。
 色差成分(色相,彩度及び明度)を表現するための手順,すなわち,特別の等級法について記載する。また,メタメリズム(条件等色)の判定も考慮している。
 
 4 必要な補足情報
 この規格で規定する試験方法は,いかなる特定の適用に対しても,補足情報によって補完されなければならない。補足情報の項目は,附属書 A に示す。
 附属書 A(規定)
 この附属書に列記した補足情報の項目は,この試験方法を実施できるようにするために適切に提供されなければならない。
 必要な情報は,受渡当事者間で合意することが望ましく,国際規格又は国内規格,又はその他の文書から,その一部若しくは全部を導入することかできる。
 a) 材料,厚さ及び素地の表面調整
 b) 素地に対する試験塗料の塗装方法
 c) 試験前の塗膜の乾燥(又は焼付け)並びに養生(適用される場合)の時間及び条件
 d) JIS K 5600-1-7「膜厚」に従って測定した乾燥塗膜の膜厚(マイクロメータ単位)及びその測定方法塗装系の種類(単層又は多層)及び素地(又は下地)の隠ぺい程度(完全又は不完全)
 e) 目視評価に対して関係がある場合は,試験塗膜と参照標準品間のつやの差

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 5 色観察用照明

 5.1 共通事項
 日常の色合わせ用には,自然昼光,又は人工昼光のどちらを用いてもよい。
 しかし,自然昼光の質は変動しており,観察者の判断はすぐ近くにある物体の色によっても影響されがちなので,目的が照合 (reference purpose)のためであるときは,色観察ブース内の厳密に管理した人工照明を用いなければならない。
 観察者は中性色の衣服を身に付け,試験片よりも強い着色面が視界にあってはならない。
 
 5.2 自然昼光照明
 拡散昼光を用いなければならない。この拡散昼光は,北半球においては,部分的に曇りの北方の空からのものが望ましく,南半球においては,部分的に曇りの南方の空からのものが望ましい。
 また,この拡散昼光には,強い着色体(赤煉瓦壁又は緑色の樹木のようなものすべて)からの反射があってはならない。
 照明は試験片が置かれる部分では均一であり,少なくとも 2000 lx(ルクス)レベルの照度でなければならない。直射日光は,避けなければならない。
 
 5.3 色観察ブースの人工照明
 色観察ブースは,外部光を遮断する囲い及びその囲いの内部を照明する光源で構成される。
 この光源は試験片上を照明し,その分光分布は CIE標準の光 D65,又は CIE標準の光 Aの分光分布と近似である。
 異なった分光分布をもつ光源を使用する場合は受渡当事者間で協定しなければならない。
 人工昼光の質は,CIE出版物 No.51に記載する方法で評価する。光源の分光分布は,分類 BC(CIELAB),又はそれ以上とする。
 色観察位置の照度は 1000~4000 lxの間とし,暗い色に対しては,この範囲の上限に近い数値が望ましい。
 通常用いる色観察用のブースの内面は,明度 L*が約 45~55のつやなし中性灰色(neutral grey)塗料( a*,及び b*の値は各 1.0未満とする)で塗装する。
 しかしながら,主として明るい色,及び白に近い色を比較する場合は,その試験する色とブース内面色間の明るさとを近似させるために,ブース内面は,明度L*が約 65,又はそれ以上になるように塗装してもよい。
 主として暗い色を比較する場合は,ブース内面は明度L *が約 25のつやなし黒で塗装してもよい。
 
 備考:L*,a*,及びb*は,CIELAB 表色系。(JIS K 5600-4-4「塗料一般試験方法‐第4部:塗膜の視覚特性‐第4節:測色(原理)」参照)
 色比較用としての適切な視野の環境を確保するために,ブース内部の机表面は,比較する試料の明度に近似の中性灰色の板で覆わなければならない。
 試験片上に,反射による像が生じるのを避けるために,正しくは拡散用スクリーンを使用しなければならない。光源の分光分布特性は,このスクリーンの分光透過率を含まなければならない。
 光源の製造者は,その製品が,この規格に適合することが期待できる稼動時間数を,示さなければならない。

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 6 観察者

 観察者は,正常な色覚をもっていなければならないが,かなりの割合の人間は,その色覚に欠陥があるので,注意して選ばなければならない。
 石原式色盲検査は顕著な異常を検出できるが,観察者の適性を確認するためには,より鋭敏な試験,例えば,ファーンスワース 100ヒューテスト(全部で85色を使った色相配列検査法),又はより厳密なアノマロスコープ測定(はじめから黄色い光と赤い光と緑の光を混ぜてできた黄色(混色)とを比較する検査で,赤緑異常の評価に頻用される。)が望ましい。
 親察者が視力矯正用に眼鏡を装着する場合は,この眼鏡は,可視スペクトルの全域で均一な分光透過率をもっていなければならない。
 色覚は加齢と共に大きく変化するので,40歳を超える観察者は,メタメリズム(条件等色)の一連の色から最高の色合わせを選ぶように要求される方法を用いて試験されることが望ましい。色の比較作業では,正常な色覚以外に色識別能力又は経験が重要である。
 目の疲労の影響を避けるために,強い色の直後に,その補色やパステルカラー(淡彩色)を検査してはならない。
 明るい高彩度の色を比較する場合,迅速に比較判断できないときは,観察者は,再度の比較を試みる前に,目をそらして,周辺視野の中性色の灰色を,数秒間見なければならない。
 観察者が連続して作業をすると,目視判断の質は著しく低下する。したがって,色観察をしない数分程度の休憩時間を頻繁に取らなければならない。
 
 注1) :ファーンスワース 100ヒューテストとは,色彩を使用する人の適否を調べたり,色覚異常者の弁色能を測定することを目的とする色相配列検査法である。
 注2) :アノマロスコープとは,色覚の精密検査装置でスペクトルの波長 670nm(赤),及び 545nm(緑)の色光が,任意の割合で混合できる視野と,589nm(黄)の強さだけを変えうる単色視野とを被検者をして等色させ,そのときの混色及び単色の目盛によって色覚の正常,異常を判定する方法である。

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 7 試験板と参照標準

 7.1 共通事項
 試験板及び参照標準は,平らで,大きさは約 150mm×100mmが望ましい。試験板用に適した材料は,JIS K 5600-1-4 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第4節:試験用標準試験板」に規定したぶりき板,上塗りした繊維圧縮板,硬質アルミニウム板,鋼板,又はガラス板である。
 試験板及び参照標準の大きさ並びに観察距離は,目に対する角度が 10°になるように選ばなければならない。試験片と標準品の大きさが,より大きいときは,灰色のマスクを用いて観察者の視野が 10°になるようにする。
 観察距離及びマスクの正方形の開口サイズは,JIS規格で,観察距離(cm):開口サイズ(cm×cm),30:5.4×5.4,50:8.7×8.7,70:12.3×12.3,90:15.8×15.8が推奨されている。
 
 7.2 参照標準
 経時変色の少ない色標準だけを参照標準に使用しなければならない。
 可能な場合は,参照標準は,試験片と同一の大きさとし,つや及び表面のテクスチャーは,極めて似ていなければならない。
 
 7.3 調整及び塗装
 誘料は JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」の規定に従って試験板を調整する。できればJIS K 5600-1-4 「試験用標準試験板」に従う。
 この試験板は,厳密に規定,又は協定した方法によって塗装する。その理由は,塗装方法と膜厚は色に対して大きな影響を及ぼす可能性があるためである。
 標準塗料の色に対して比較する場合は,試験板は試験する塗料又はその塗装系で塗装しなければならない。同時に,同様の試験板について,標準の塗料又はその塗装系で塗装しなければならない。両方の塗装方法及び塗装膜厚は,できるだけ同一になるようにしなければならない。
 備考:塗膜は,素地の影響を除くために,素地を完全に隠ぺいする厚さであることが望ましい。その場合には,黒色及び白色のチャートを用いてチェックすることができる。
 
 7.4 乾燥
 塗装した各々の試験板を規定時間及び規定条件下で乾燥(又は焼付け)する。別に規定がない場合は,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」に規定する標準状態で,少なくとも 16時間,空気の流通がなく,かつ,直射日光が当たらない場所で養生する。
 
 7.5 塗膜の厚さ
 乾燥塗膜の膜厚は,JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第7節:膜厚」に規定する手順の一つに従って,乾燥塗膜の膜厚をマイクロメートル単位で測定する。

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 8 色比較の手順

 8.1 共通事項
 標準化した色比較法では,正常な色覚をもった観察者と再現性のある照明条件,及び観察条件が必要である。
 ほとんどの塗料は,昼光下で色標準に合致することを要求されるが,昼光の分光成分は,かなり大きく変動する。人工光源は,限定した期間内では,昼光に比べてより安定であるので,より再現性のある色比較が可能である。したがって,色の評価用としては,人工昼光を使用するのが望ましい。
 他に協定のない場合,この試験方法では,自然昼光,又は二種類の人工昼光源を使用する。日常の比較において,自然平均昼光,又は人工平均昼光を使用する。
 人工平均昼光照明はCIE標準光源D65による。白熱照明はメタメリズムを点検するために追加の光源として使用する。白熱照明はCIE標準光源Aによる。
 疑義が生じた場合は,常にレフェリー比較 (referee comparison)を規定人工昼光下で行わなければならない。
 色の構成成分である色相,彩度及び明度の差による目視評価は,附属書 Bに示す等級表に従って行うのが望ましい。受渡当事者間の協定によって,5未満の評価段階を含む単純化した等級表を用いてもよい。しかしながら,混乱を避けるために,附属書 Bに示す個々の等級の意味を変えてはならない。
 
 8.2 日常の方法
 試験試料,及び標準塗料を塗装した 2 枚の試験片,又は試験片と参照標準を,自然昼光,又は色観察ブース内の人工昼光の下で観察する。
 2枚の試験片を,目から約 500mmの距離の同一面に並べて接触させて置く。試験試料で塗装した塗膜の色を,標準塗料から塗装した塗膜の色,又は参照標準の塗膜の色と比較する。より正確に比較するために,ときどき,試験片の左右を逆にした位置で色を比較する。
 塗膜間のつやの水準が広く異なっているのを,例外的に比較する場合は,その観察方法を受渡当事者間で協定しなければならない。この場合,それらの試験片は,自然昼光又は色観察ブースのどちらで観察してもよい。
 次の a),又は b)の方法で観察をする。
 a) 自然昼光における観察
 つやの差を最小にする角度,例えば,鏡面反射が目に達しないような垂直に近い方向から試験片を観察する。 色相,彩度及び明度の色差成分をその大きさを示すように観察する。
 例えば,試料は,参照標準と比較して色相は,適度に黄が強く,彩度はきわめてわずかに少なく,明度はわずかに暗い。又は,附属書Bに示す成分差の等級表を用いて DH:3ye,DC:−1,及び DL:−2と記録する。
 備考: DH,DC及び DLは,表色値ではなく,色差の分類のために用いる値である。
 b) 色観察ブースにおける観察
 0°の角度で照明して 45°の角度で試験板を観察するか,又は,45°の角度で照明して 0°の角度で試験片を観察する。 色差成分を総合した全色差を観察するか,又は,a) に従って色差成分を観察する。
 
 8.3 レフェリー(referee)の方法
 疑義のある場合,受渡当事者間で代替の光源について同意が得られなければ,CIE標準の光 D65に合致する人工昼光で,比較を行う。

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 9 メタメリズムの判定

 参照標準,及び試験板の両者間の顔料組成が異なる場合は,それらはその標準光源下では色が合致していても,他の光源下では色が合致していないこともある。この現象はメタメリズム(附属書C参照)として知られている。
 メタメリズムの重要さは,その塗料の使用目的によって極めて大きく左右される。
 例えば,顔料組成が標準品と試験塗料間で同じ場合であっても,又は異なる場合であっても,その間に生じるメタメリズム程度が小さいならば,その使用状況にもよるが,容認されることもある。
 異なった照明条件においての厳密な色合わせが必要な場合に,もしメタメリズムがあるときは,メタメリズムの許容の程度を受渡当事者間で協定しなければならない。
 
 人工平均昼光照明(D65) の下での色合わせ結果の等級評価に加えて,白熱電球(A) の照明下でも,さらに比較を行い,その色合わせの等級が同様に保持されているかどうかを評価する。
 メタメリズム数値で表す必要がある場合は,JIS K 5600-4-4「塗料一般試験方法‐第4部:塗膜の視覚特性‐第4節:測色(原理)」,及び JIS K 5600-4-5「塗料一般試験方法‐第4部:塗膜の視覚特性‐第5節:測色(測定)」に従って,CIE標準の光 D65,及び Aの両方を用いて分光測定をして,JIS K 5600-4-6 「塗料一般試験方法‐第4部:塗膜の視覚特性‐第6節:測色(色差の計算)」に従って色差を計算する。

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