防食概論:塗料・塗装

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         塗替え塗装方法

 既設の塗装構造物は,定期的な検査で腐食進行防食機能低下と評価された場合に,腐食個所や塗膜劣化個所の補修(機能回復)を目的に塗替え塗装が計画される。
 塗替え塗装の基本的な工程は, 塗装計画 ⇒ 塗装足場の架設 ⇒ 素地調整塗装作業 ⇒ 塗膜検査 ⇒ 足場解体(足場金具跡などの補修塗装含む) ⇒ 産業廃棄物処理 である。
 参考:塗装工程の詳細は,【塗装概論】の「塗替え塗装工程

【塗装足場】

 塗替え塗装は,橋梁架設の現地で,一般的には供用中の作業となる。塗装作業では,現地の条件に適した足場を設置する必要がある。
 足場の架設は,厚生労働省の労働安全衛生規則(足場等関係)の規定に従い,安全な作業を行えるようにしなければならない。
 多くの足場の中で,一般的な塗装足場には“吊り足場”が,トラス構造の橋梁や橋脚では,“吊り足場”の他に “本足場” “枠組足場” などが用いられる。
 塗装足場では,作業者,工具類の落下防止は当然として,素地調整時の粉じんや除去した塗膜片の飛散防止,塗装時の塗料ミストの飛散防止を図らなければならない。
 このための防護措置(養生ともいう)に,防護シートの貼り付け,板張りなどが必要となる場合もある。特に,現場ブラスト処理を行う場合は,密閉性の高い防護措置が求められる。
 この場合は,密閉空間として安全対策(事故防止)として,適切な照明,換気装置の設置などが必要になる。

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【素地調整】

 工場塗装では部材を回転・移動できるので,最適の作業姿勢で素地調整できるが,現場塗装では,作業足場の制約,周辺に障害となる部材が多くあるなど,使用できる機器・器具類,作業姿勢が制限される。
 塗替え塗装時の素地調整は,塗装足場の構造や現場の制約を考慮して,“ブラストによる処理”“動力工具を用いた処理”“手工具を用いた処理”を適切に組み合わせて実施できるよう計画しなければならない。
 道路の「鋼道路橋塗装・防食便覧」では,原則としてブラスト処理を用いた塗替え塗装を推奨しているが,実作業では現地の制約で実施困難な場合が多い。
 現地の制約で最も影響の大きいのは,騒音である。付近に住宅密集地がある場合には騒音の大きいブラスト処理の適用は大変な困難を伴う。  
 【道路の素地調整種別】
 「鋼道路橋塗装・防食便覧」では,素地調整種別を次のように分類している。
 素地調整程度 1 種 : ブラスト処理により,さび,旧塗膜を完全に除去し,鋼材面を露出させる。
 素地調整程度 2 種 : さび面積 30%以上の場合,動力工具と手工具との併用により,旧塗膜,さびを除去し鋼材面を露出させる。ただし,さび面積 30%以下で,旧塗膜が B 塗装系(塩化ゴム系塗膜)の場合には,ジンクリッチペイントを残し,他の旧塗膜を完全に除去する。
 素地調整程度 3 種 : 動力工具と手工具との併用により,活膜は残すが,それ以外の不良部(さび,割れ,ふくれ)は除去する。3 種には,さび面積,及び塗膜異常面積の違いで,3 種 A さび面積 15~ 30%,塗膜異常 30%以上),3 種 B さび面積 5~ 15%,塗膜異常 15~ 30%),3 種 C さび面積 5%以下,塗膜異常 5~ 15%)に分けられる。
 素地調整程度 4 種 : 塗膜異常面積 5%以下の場合に適用し,動力工具と手工具との併用により,粉化物,汚れなどを除去する。
 【鉄道の素地調整種別】
 「鋼構造物塗装設計施工指針」では,「塗膜劣化状態,及びケレン程度見本」で,素地調整程度と見本写真が示されている。
 除錆度-1 : ブラスト処理により,ISO 8501-1 の標準写真と対照し B Sa 2 1/2 以上。
 除錆度-2 : ブラスト処理により,ISO 8501-1 の標準写真と対照し B Sa 2 と同レベル。
 除錆度-3 : 動力工具と手工具の併用により,ISO 8501-1 の標準写真と対照し C St 3 以上。
 「鋼構造物塗装設計施工指針」では,塗替え塗装における下塗り塗料のタッチアップ(補修塗り)面積に応じて,次の区分を規定している。タッチアップ面積は,さび箇所の素地調整作業で,健全部の塗膜を含めて除去するので,一般的にさび面積の数十倍にまで広がる。
 なお,替ケレン種別によらず,素地調整程度は,用いる手法に応じた除錆度が求められる。
 替ケレン-1 : 手工具,動力工具,又はブラストを用いて“さび,劣化塗膜”を除去する。タッチアップ面積(下塗り塗料の補修塗り面積)の目安 70~ 100%(見本写真のさび面積約 11%
 替ケレン-2 : 手工具,動力工具,又は部分ブラストを用いて“さび,劣化塗膜”を除去する。タッチアップ面積の目安 30~ 50%(見本写真のさび面積約 1%
 替ケレン-3 : 手工具,動力工具,又は部分ブラストを用いて“さび,劣化塗膜”を除去する。タッチアップ面積の目安 15~ 25%(見本写真のさび面積約 0.4%
 替ケレン-4 : ワイヤブラシ,及び研磨紙等を使用し,表面の粉化物や汚れを除去する。必要により手工具,動力工具を用いる。タッチアップ面積の目安5%以下(見本写真は点さび程度(さび面積0.04%)

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【塗装作業】

 塗替え塗装は,屋外の現場で供用しながらの作業になることを除いて,基本作業は新設時塗装と同様である。 ただし,「塗り付け方法」のうち,エアレススプレー塗りは,塗料粉末の飛散防止対策なしでは使用できない。
 トラス橋,アーチ橋,及び吊り橋では,飛散防止対策に多くの経費が必要となるため,実質上スプレー塗りは困難である。
 
 次には,塗替え塗装と新設塗装で大きく異なる条件を次に示す。
 1) 付着塩分量の測定
 飛来海塩粒子の付着が想定される鋼橋では,素地調整前,塗料を塗り付ける前に塗膜表面の付着塩分量を計測する。付着塩を残したまま塗り付けると,早期の塗膜ふくれや塗膜はがれの原因となる。
 このため,規定以上の塩分付着が計測された場合には,水洗等の適切な方法を用いて除塩しなければならない。  
 2) 活膜の判定
 JIS 等で“活膜”関する用語定義はないが,古くから用いている用語で,一般的にはスクレーパー(力棒)で擦っても容易に剥離しない塗膜,すなわち良好な付着性を有し,脆化していない旧塗膜をいう。
 スクレーパーを当てることで,塗膜にせん断力を加えることになる。これにより,塗膜の付着性と脆性を定性的に評価できる。
 一方,ディスクサンダーなどの動力工具では,塗膜に大きなせん断力を与えられないので,ディスクサンダーで除去されない塗膜を活膜と判断するのは間違いである。
 3) 塗付量の管理
 新設時塗装では,磁気式,電磁誘導式,又は渦電流式の膜厚計を用いて塗膜厚みを管理できる。
 しかし,塗替え塗装では,腐食した鋼表面の平滑性が乏しいこと,腐食個所以外では,厚みの異なる旧塗膜(活膜)が残存する。このため,膜厚計を用いた塗膜厚み管理が困難である。
 そこで,塗り付け方法の適否をウェット膜厚計で随時確認し,塗装面積に対する塗料使用量から規定の塗膜厚み(平均値)が得られているかを推定することで,塗付量を管理するのが一般的となっている。この方法は,塗料使用量管理,空缶管理などともいう。

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