防食概論:塗装・塗料
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ここでは,下塗り塗料の品質規格及び評価方法の解説に先立ち, 【下塗り塗料とは】, 【鉛・クロムフリーさび止めペイントの概要】, 【厚膜形ジンクリッチペイントの概要】, 【構造物用さび止めペイントの概要】 を紹介する。
塗料の評価(下塗り塗料)
下塗り塗料とは
JIS K 5500 「塗料用語」
下塗り塗料(undercoat,priming coat)塗料を塗り重ねて塗装仕上げするときの下塗りに用いる塗料。塗装系に対する素地の影響を防止し,付着性を増加させるために用いる。
備考:1.ISO用語規格では,“undercoat”と“intermediate coat”とは同じ定義で,“地肌塗り(priming coat)”と“上塗り(finishing coat)”との間の塗料(coat)をいう。また,“priming coat”は,素地に塗る塗装系の最初の塗料(coat)をいう。
備考:2.BS用語規格及び CED(Coatings Encyclopedic Dictionary)では“undercoat”は,上塗り塗料を塗る前に,目止め,肌直し,地肌塗りなどを行った素地面,又は素地調整を行った旧塗膜面に塗装される塗料をいう。
下塗り(under coating, primer coating)
中塗り用塗料や,上塗り用塗料を塗る前に,下塗り用塗料を塗る操作。
ISO(International Organization for Sstandardization)
ISO(国際標準化機構)は,国際連合経済社会理事会に総合協議資格(general consultative status)を有する機関に認定された最初の組織の 1つで,各国の国家標準化団体で構成される非政府組織である。 ISOが定める国際規格を ISO規格という。
BS(British Standard)
英国規格協会(British Standards Institution ; BSI)が制定すたイギリスの国家規格。英国規格(BS)はドイツのドイツ連邦規格(DIN)やアメリカ合衆国の ASTM規格と並んで世界で広く活用されている。
前項のプライマーは,素地に最初に塗り付ける塗料であるが,下塗り塗料は,プライマーと同様に素地に最初に塗り付ける場合,プライマーの上に塗リ重ねる場合があり,プライマーを含んだ広い概念の塗料種別となるが,一般的には,前項で紹介したプライマーを除いた塗料に対して用いられる。
防食目的の下塗り塗料には,防せい顔料(rust preventive pigment)を用いたさび止めペイント(anticorrosive paint),エポキシ樹脂などを用いた環境遮断性の高い厚膜形(high-build type)の塗料が適用される。
防食塗装に用いられる JIS製品規格の下塗り塗料には,JIS K 5674「鉛・クロムフリーさび止めペイント」,JIS K 5553「厚膜形ジンクリッチペイント」, JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」などがある。
【参考】
塗装系(一般)(coating system, paint system)
塗装される又は既に塗装されている塗料の塗膜層の総称。塗装の目的・効果を満足するように作った,地肌塗りから上塗りまでの塗り重ね塗膜の組合せを総称する用語。
備考:塗装系は,通常,乾燥又は硬化に必要な適切な間隔をおいて,指定の順番で,別々に塗装された複数の塗膜から構成される。ある種の塗料では,例えば,ウエットオンウエット吹き付け塗りのような多少とも連続する塗装工程によって適切な膜厚と隠ぺい性をもつ塗装系を作ることができる。この場合,塗装系のどの部分も,上記の意味で別々の塗膜とはいえない(CED ; Coatings Encyclopedic Dictionary)。【JIS K5500「塗料用語」】
さび止めペイント(anticorrosive paint)
鉄鋼のさび止め塗装に用いる塗料。さび止め顔料と塗膜形成要素との相互作用で,さび止め効果を現すものと,塗膜形成要素自体のさび止め効果によるものとがある。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
金属素地を腐食から守るために用いる塗料。さび止め顔料と塗膜形成要素との相互作用で,さび止め効果を表すものと,塗膜形成要素自体のさび止め効果によるものとがある。前者には,用いるさび止め顔料の名称を付けて呼ぶのが通例である。【JIS K5500「塗料用語」】
顔料(pigment)
一般に水や有機溶剤に溶けない微粉末状で,光学的,保護的又は装飾的な性能によって用いられる物質。無彩又は有彩の,無機又は有機の化合物で,黄色,補強,増量などの目的で塗料,印刷インキ,プラスチックなどに用いる。屈折率の大きいものは隠ぺい力が大きい。
備考:特殊な場合には,例えば,防せい顔料では,ある程度の水溶性が必要とされることがある。【JIS K5500「塗料用語」】
塗料に用いる顔料は,期待する性能で,着色顔料,さび止め顔料,体質顔料,特殊機能顔料などに分けられる。なお,着色目的で,水や溶剤に溶解する染料とは区別される。
さび止め顔料(rust preventive pigment, rust inhibitive pigment)
一般には防せい(錆)顔料ともいわれる。金属にさびが発生するのを防止する機能を持つ塗料用顔料。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
金属にさびが発生するのを防止する機能をもつ顔料。
備考:単なる遮断機能の作用ではなく,化学的及び/又は電気化学的に金属の腐食を制御又は防止する機能をもつ顔料をいう。ほとんど又は全くさび止め効果のないべんがらに対して,鉛丹及びクロム酸亜鉛は,さび止め顔料の例である(BS)。【JIS K5500「塗料用語」】
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鉛・クロムフリーさび止めペイントの概要
鉛・クロムフリーさび止めペイント(lead-free, chromium-free anticorrosive paint)
2000年代までは,安価で防食性能が高いため,鉄鋼構造物の防食に限らず多くの分野で長年にわたり,JIS K5622 鉛丹さび止めペイント(red lead anticorrosive paint),JIS K5624 塩基性クロム酸鉛さび止めペイント(badic lead chromate anticorrosive paint),JIS K5625 シアナミド鉛さび止めペイント(lead cyanamide anticorosive paint)などの鉛化合物やクロム化合物をさび止め顔料として用いた鉛系・クロム系さび止めペイントが利用されてきた。
しかし,1990年代になると鉛・クロム化合物の人の健康に与える影響が問題視され,2000年代から使用自粛が進むと共に,代替となる塗料や塗装系の開発が進んだ。このような背景の中で,鉛系・クロム系さび止めペイントの代替を期待し,鉛化合物,クロム化合物を含まないことを規定したさび止めペイントとして JIS K 5674 「鉛・クロムフリーさび止めペイント」が 2003年に制定された。
JIS K56742019 「鉛・クロムフリーさび止めペイント」
この規格は,2003年に制定され,その後 2008年に改正された。その後 2008年版の引用規格 JIS K 5108 鉛丹(顔料)の廃止に伴い,2019年に改正されている。これまでのさび止めペイントの JIS製品規格と異なり,使用するさび止め顔料に関する規定はなく,塗膜の耐久性に関わる品質項目の「サイクル腐食性」及び「防錆(せい)性」に合格すれば認定される,すなわち性能規格的な規定になっている。
しかし,品質規格は最小限の性能を保証するもので,長期の耐久性に関しては「鉛系・クロム系さび止めペイント」に劣ると考える技術者も多く,腐食性が比較的高い環境での防食設計では,ジンクリッチ系塗料や厚膜型のエポキシ樹脂系塗料を用いた塗装系との適切な比較が求められる。
適用範囲
この規格は,一般的な環境下での鉄鋼製品,鋼構造物などのさび止めに用いる塗料で,鉛フリー及びクロムフリーのさび止め顔料を含む鉛・クロムフリーさび止めペイントについて規定する。
注記 この規格は,環境対応で廃止された,各種鉛含有 JISさび(錆)止めペイントの代替えとして開発され,JIS K5621 「一般さび止めペイント」よりも長期にわたる屋外での防食性を求められている塗料である。
種類
a) 1種 有機溶剤を揮発成分とする液状・自然乾燥形のさび止め塗料。
b) 2種 水を主要な揮発成分とする液状・自然乾燥形のさび止め塗料。
【参考】
鉛系さび止めペイント(lead-based anticorrosive paint)
さび止め顔料(防せい顔料)として鉛化合物を用いたさび止めペイントである。現在は廃止されているが,過去には鉛系のさび止めペイントの JIS規定として,平成 22年 5月に廃止された JIS K 5622「鉛丹さび止めペイント」,JIS K5624「塩基性クロム酸鉛さび止めペイント」,JIS K5628 「鉛丹ジンククロメートさび止めペイント」,平成 26年 4月に廃止された JIS K 5623「亜酸化鉛さび止めペイント」,JIS K 5625「シアナミド鉛さび止めペイント」,亜鉛めっき鋼用途の平成 28年 12月に廃止された JIS K 5629「鉛酸カルシウムさび止めペイント」などがあった。
非鉛系さび止めペイント(lead-free anticorrosive paint)
鉛系さび止めペイントに対する用語で,鉛化合物を含まない顔料を用いたさび止めペイント全般を指す。
JIS製品規格には 合成樹脂調合ペイントや合成樹脂エマルションペイントを用いる塗装仕様において,さび止め顔料に鉛系及びクロム系成分を使用しないで,一般的な環境下での鉄鋼製品などのさび止めに用いる JIS K56212008 「一般用さび止めペイント;Anticorrosive paints for general use」,一般的な環境下での鉄鋼製品,鋼構造物などのさび止めに用いる塗料で,鉛フリー及びクロムフリーのさび止め顔料を含む JIS K56742008 「鉛・クロムフリーさび止めペイント;Lead-free, Chromium-free anticorrosive paints」,エポキシ樹脂系,変性エポキシ樹脂系塗料を用いた鋼構造物などの下塗りに用いる JIS K 55512018「構造物用さび止めペイント」,さび止め顔料として亜鉛末を用いた JIS K 55522010 「ジンクリッチプライマー」,JIS K 55532010 「厚膜形ジンクリッチペイント」などがある。
性能規格(performance standard)
製品の形状,材質,成分,品質,性能,耐久性,安全性,機能などの全般を規定するこれまでの製品規格と異なり,製品の性能,品質などの要求事項について部分的に定めた規格。
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厚膜形ジンクリッチペイントの概要
ジンクリッチ系塗料は,さび止め顔料(rust preventive pigment, rust inhibitive pigment)として高濃度の亜鉛末(zinc dust)を用い,鋼の防食を目的としたプライマー(地肌塗り)や下塗り塗料として用いられている。
屋外大気環境で長期防せいが期待できる塗装系には,ジンクリッチ系塗料を下塗り塗料として用いるのが一般的になっている。
ジンクリッチ系塗料には,一次防せい目的(次の製作工程までの間の防食)や薄膜仕様を目的に用いられる薄膜タイプのジンクリッチプライマー(zinc rich primer),長期防せい型の塗装系や添接部摩擦接合面に用いられる厚膜タイプのジンクリッチペイント(zinc rich paint)がある。
いずれも,塗膜形成要素(film former, film forming material)である展色材(vihicle)として,アルキルシリケート(alkyl silicate)を用いた無機系,エポキシ樹脂(epoxy resin)を用いた有機系に分けられる。
ジンクリッチペイント(zinc rich paint)
乾燥塗膜の大部分が金属亜鉛末から成り,わずかの無機質と有機質のバインダーで結合された塗料で鋼材のさび止めに用いる塗料。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
展色材をできるだけ少なくし,合成樹脂ワニス,又はアルキルシリケート,アルカリシリケートなどシリケート系ビヒクルに亜鉛末をできるだけ多く配合して作ったさび止めペイント。
塗膜が水分に触れると,鉄よりもイオン化傾向の大きい亜鉛が陽極となって,亜鉛から鉄に向って防食電流が流れ,鉄は腐食から守られる。塗膜中に亜鉛末が 85~95%含まれているとき,防食効果が大きい。
各種鋼構造物の防食塗装に用いられる。被塗鉄面は,サンドブラストなどで十分にさびを除き,適度の粗さにしてから塗らないと効果が薄い。【JIS K5500「塗料用語」】
用語の定義にあるように,ジンクリッチ系塗料の防食原理は,素地の露出する塗膜欠陥が発生した場合に, 異種金属接触腐食で解説した原理により,鋼がカソード(cathode)となり,亜鉛末が犠牲アノードとして作用することで,鋼を防食する機能である。これは,亜鉛めっき鋼における欠陥部の防食機構と同等である。これを 流電陽極方式(galvanic anode system)や犠牲防食ともいう。
JIS K 5553 2010 「厚膜形ジンクリッチペイント」
亜鉛末,及びアルキルシリケート又はエポキシ樹脂,及び硬化剤,顔料,及び溶剤を主な原料としたもので,次の 2種が規定されている。1種 厚膜形無機ジンクリッチペイント: アルキルシリケートをビヒクルとした,1液 1粉末形のもの。
2種 厚膜形有機ジンクリッチペイント: エポキシ樹脂をビヒクルとした,2液 1粉末形,又は 2液形(亜鉛末を含む液と硬化剤)のもので,硬化剤にはポリアミド,アミンアダクトなどを用いる。
【参考】
異種金属接触腐食(bimetallic corrosion, galvanic corrosion)
異種金属が直接接続されて,両者間に電池が構成された時に生じる腐食。ガルバニック腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
異種金属接触腐食は,マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)による腐食一種である。ガルバニック腐食(galvanic corrosion)という場合には,異種金属接触電池(galvanic cell)による腐食を指すのが一般的である。なお,電解質を介して電気回路が形成し腐食する場合を接触腐食ともいわれる。
犠牲アノード(犠牲陽極)(sacrificial anode)
流電陽極(galvanic anode)ともいい,外部電源を用いない陰極防食(カソード防食)の流電陽極方式で用いられる防食対象の金属より電位が卑な金属をいう。
鋼などの母材を,使用環境で母材より腐食電位が卑な金属で被覆したもの。この場合には,ピンホールや傷つきなどの素地に達する損傷があっても,露出した素地金属がカソードとなり,被覆金属が広いアノード(陽極)として作用するため,被覆金属が犠牲的に腐食し,素地金属の腐食を抑制できる。これを犠牲陽極作用,犠牲的保護作用や犠牲防食作用などともいう。
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構造物用さび止めペイントの概要
JIS K55512018 「構造物用さび止めペイント」
この規格は,1991年に JIS K5551「エポキシ樹脂塗料」として制定され,その後2002年の改訂を経て,2008年には全面改訂された。この際に,規格名称を「構造物用さび止めペイント」に変更された。その後 2018年に,水性さび止めペイントに対応するために改訂された。JIS K 5674 「鉛・クロムフリーさび止めペイント」は,塗膜の乾燥膜厚が 30~40μm に対し,長期防錆に用いる B 種は,用いる防せい顔料の種類は規定されていないが,乾燥膜厚が約 60μmと厚く仕上げることができ,高い環境遮断性を期待したさび止めペイントである。
なお,一般的な鋼構造物塗装の仕様では,さび止めペイント 2回塗りが基本のため,下塗り塗膜の乾燥厚みは,鉛・クロムフリーさび止めペイントで 60~80μm ,構造物用さび止めペイント B種で 120μm 以上となる。
適用範囲
この規格は,橋りょう(梁),タンク,プラントなどの鋼構造物,及び鉄,鋼,ステンレス鋼,アルミニウム,アルミニウム合金の建築などの金属部分の塗装に用いる構造物用さび止めペイント(塗料)について規定する。
ただし,この規格の塗料には,発がん性のおそれのあるタール成分を含まないものとする。
種類
荷姿には,「 1液形,又は多液形a) 」がある。
A 種:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 30μmの標準形塗料。主に鋼構造物及び建築金属部の防せい(錆)に用いるもの。
B 種:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 60μmの厚膜形塗料。主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
C 種:
1 号:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形変性エポキシ樹脂系塗料,又は反応硬化形変性ウレタン樹脂系塗料で,標準の膜厚が約 60μmの厚膜形塗料のうち,常温環境下で施工する,主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
2 号:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形変性エポキシ樹脂系塗料,又は反応硬化形変性ウレタン樹脂系塗料で,標準の膜厚が約 60μmの厚膜形塗料のうち,低温環境下で施工する,主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
D種:水を主要な揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 30μm の標準形塗料。主に建築金属部の防せい(錆)に用いるもの。
E種:水を主要な揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 60μm の厚膜形塗料。主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
【参考】
エポキシ樹脂(epoxy resin)
架橋し得るエポキシ基を含む樹脂。【 JIS K6900「プラスチック−用語」】
分子中にエポキシ基を 2個以上含む化合物を重合して得た樹脂状物質。エピクロルヒドリンとビスフェノールとを重合して作ったものなどがある。【 JIS K5500「塗料用語」】
エポキシ基(epoxy group)
最も簡単な三員環の構造を持つ環状エーテル(C2H4O)。IUPAC名,オキシラン(oxirane),又は 1,2-エポキシエタン(1,2-epoxyethane)。一般には,エポキシエタン(epoxyethane),エチレンオキシド(ethylene oxide)などともいわれる。
オキシランを構造式中に持つ化合物の総称をエポキシド(epoxide)といい,置換基として見る場合にエポキシ基という。
オキシランにメチレンが結合したオキシラニルメチレン(oxiranyl methylene ;(C2H3O)-CH2)をグリシジル(glycidyl)といい,置換基として見る場合にグリシジル基(glycidyl group)という。
常温(反応)硬化形エポキシ樹脂塗料( 2液形)
ビスフェノール A 形エポキシ樹脂を含む主剤( A 剤)と活性水素を持つ硬化剤( B 剤:多価アミン,アミンナダクト,ポリアミドなどのポリアミン類)を使用直前に混合して塗膜を形成するエポキシ樹脂塗料( 2液形エポキシ樹脂塗料ともいう)である。
常温(反応)硬化形エポキシ樹脂塗料は,最も一般的な形態であり,防食塗装の下塗り塗料として広く用いられている。また,樹脂分散のための溶剤種により,溶剤形エポキシ樹脂塗料,弱溶剤形エポキシ樹脂塗料,及び水系エポキシ樹脂塗料に分けられる。
変性エポキシ樹脂塗料(modified epoxy resin coating)
改質目的でクロマンインデン樹脂,石油樹脂,トルエン樹脂などの石油系・石炭系樹脂(変性樹脂という)を用いて変性(modification)したエポキシ樹脂塗料である。変性樹脂自体に防食性はないが,内部応力の緩和,水蒸気透過性の低減などにより高い防食性を発揮する。
変性エポキシ樹脂塗料は,発がん性が認められない変性樹脂を用いることで,JIS 製品規格が廃止されたタールエポキシ樹脂塗料の代替塗料として用いられる。さらに,ある程度の着色が可能なことから高い防食性を期待する塗替え塗装などでの利用が拡大している。
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