JIS K 5600_5_3 塗料一般試験方法‐第5部‐第3節:耐おもり落下性

 JIS K 5600-5-3 1999年版  塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第3節:耐おもり落下性 ( Testing methods for paints−Part 5: Mechanical property of filmSectitn 3: Falling-weight test )について  【序文・目次・適用範囲・試験の種類】,   【落体式】,   【落球式】,   【デュポン式】 に分けて紹介する。

 序文・目次・適用範囲・試験の種類

 序文
 この規格は,ISO 6272 : 1993, Paints and varnishes – Falling -weight testを翻訳して作製した。
 
 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
 序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 試験の種類(3.1 落体式,3.2 落球式,3.3 デュポン式),4 落体式(4.1 必要な捕捉情報,4.2 装置,4.3 試料採取方法,4.4 試験板,4.5 手順,4.6 精度,4.7 試験報告),5 落球式(5.1 装置及び材料,5.2 試験片の作製,5.3 操作,5.4 評価,5.5 製品規格の規定条件),6 デュポン式(6.1 素地の調整,6.2装置及び材料,6.2 試験片の作製,6.3 操作,6.4 判定,6.5 製品規格の規定条件)
 附属書A(規定)必要な捕捉情報
 
 1 適用範囲
 この規格は,塗料及びその関連製品の乾燥塗膜が,規定条件下でおもり落下によって変形するときの割れ及び/又は素地からのはがれを評価する試験方法について規定する。
 備考:“衝撃試験”という用語は,この規格の落球式装置では,真の衝撃よりも速く変形を生じるので,この規格から意図的に省いた。
 
 次の方法が適用される。
 ● 特定仕様への適合性を調べるために,ある高さから規定のおもりを用いて合否を判定する試験
 ● 落下高さ及び/又はおもりの質量を徐々に増しなから,塗膜の割れ又は素地からのはがれが生じるおもりの最小質量及び/又は落下高さを測定する等級付け試験
 
 3 試験の種類
 おもり落下性には,次の 3種がある。
 3.1 落体式 (falling-weight method)
 先端が丸い円柱形のおもりを外筒に沿って落下させ,塗膜に対する曲げ及び伸びの抵抗性を評価する(デュポン式との違いは,撃ち型と受け台とのすき間が 35mmある。)。
 3.2落球式 (falling ball method)
 素地の変形が極めて少ない場合に用いられ,塗膜の表面に球体を激突させ,そのときの塗膜の衝撃抵抗性で,割れ・はがれの有無を評価する。
 3.3 デュポン式 (DuPont method)
 撃ち型と受け台が落球式と異なり,両者間のすき間がないので,エッジ部の衝撃と変形を同時に受ける抵抗性を評価する。

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 4 落体式

 4.1 必要な補足情報
 この規格に規定する試験方法は,いかなる適用に対しても補足情報によって補完するものとする。補足情報の各項目は,附属書 A に示す。
 附属書 A(規定)必要な捕捉情報
 この附属書に記載する補完的情報の項目は,この試験方法を実施する上での適切な必要事項として提示するものとする。
これらの必要事項については,受渡当事者間の合意によることが望ましく,また試験品に関する国家規格・国際規格,又はその他の文書から一部若しくは全部を引用することができる。
  a)  試験板の材料(厚さを含む。)及び表面調整
  b)  試験板への試験塗膜の塗装方法。多層塗膜系の場合は,塗装間隔及び乾燥条件を含める。
  c)  試験開始前の塗膜の乾燥時間及び条件(又は焼付け条件),(適用のときは)養生時間及び条件
  d)  JIS K 5600-1-7「膜厚」に従う膜厚(マイクロメートル単位)及び測定方法。単一塗膜か多層塗膜かの区別
  e)  合否試験か等級付け試験かの区別
  f)  おもりの質量
  g)  (適切であれば)おもりの落下高さ
  h)  おもりの落下面が塗膜表面,裏面又はその両方であるかの区別
  i)  おもりの押し込み深さを設定するための止め具使用の有無
 
 4.2 装置
 次のものを装備した実験用装置及び観察用レンズ。
 4.2.1 おもり落下装置(記載事項の一部を省略した)
  a)~f) に記載する要素からなる。
  a)  支持台:d) 受け台を支え得るのに十分な質量をもつもの。
  b)  落下おもり:直径20±3mmの球状の頭部をもち,全質量は 1000±1g
  備考:1000±1gの追加質量を頂部に載せることができる。
  c)  垂直外筒:落下おもりを試験片の面へ垂直方向に向けるためのもの。外筒は,試験片の面の上方1mからは,mm単位で目盛りを付ける。余分な摩擦を避け,正確な方向付けをするために,外筒の内径と落下おもりの外径の差は 0.7±0.1mmとし,外筒の下端と試験片上面との距離は 45mm以下とする。
  d)  受け台:内径 27±0.3mmのリング状とする。リングの内部上端は曲率半径 0.9±0.2mmで丸めて,リングの最小高さは 20mmとする。
  e)  固定器:試験片を規定の位置に保持するためのものであり,底部の内径は受け台の内径と同じく 27±0.3mmとする。
  f)  止め具:落下おもりの押し込み深さを設定するためのものであり,種々の厚さのものとする。
 4.2.2 観察用レンズ
 手持ち形で,倍率 10倍とする。
 
 4.3 試料採取方法
 試験に用いる製品の代表試料(多層膜系では各製品)は,JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第2節:サンプリング」によって採取する。
 試験用の各試料は, JIS K 5600-1-3「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」によって,検分,調整する。
 
 4.4 試験板
 4.4.1 素地
 他に合意がない限り,JIS K 5600-1-4 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第4節:試験用標準試験板」に適合する鋼板とする。試験板は,平らでゆがみがなく,最低厚さは 0.25mmとする。
 また試験板の寸法は,試験板の端から 20mm以上離れた箇所で,かつ,相互の距離が 40mm以上離れた最低5箇所で試験ができるものとする。厚さは 0.01mmのけたまで測定する。
 4.4.2 調整及び塗装
 他に合意がない限り,試験板はJIS K 5600-1-4「試験用標準試験板」に従って調整し,試験される製品又は塗装系に規定する方法で塗装する。
 4.4.3 乾燥
 各試験片は,規定条件下で規定時間乾燥(又は焼付け乾燥)し,必要なら養生する。
 4.4.4 塗膜の厚さ
 乾燥塗膜の厚さは,JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」に規定する手順の一つを用いてマイクロメートル単位で測定する。
 測定は試験される位置にできるだけ近い位置で行う。規定又は合意した膜厚との差が 10%以内の膜厚の試験片だけを使用する。
 
 4.5 手順
 4.5.1 通則
  a)   他に合意がない限り温度 23±2℃,相対湿度 50±5%で試験する(JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」参照)。
  b)  装置は,堅固な面(例えば,コンクリート,金属,石)の上に置く。
  c)   他に規定がない限り,試験片は,試験の直前まで少なくとも 16時間,温度 23±2℃,相対湿度 50±5%の環境下に置く。
 4.5.2 合否試験(特定質量使用)
 外筒が垂直であることを確認する。落下位置の目盛りが規定の高さになるように調整する。必要ならば,受渡当事者間の合意,又は規定する押し込み深さに設定するため,止め具を装着する。試験板を指定[附属書 A,h)参照]に従い,塗面を上向き,又は下向きに支持台の上に置き,固定器を用いて規定の位置に取り付ける。試験片におもりを落下させる。
 観察用レンズで塗膜を検査する。試験片の塗膜に割れ・はがれがないかどうか,及び試験板が割れていないかどうかを報告する。
 さらに 4回異なった位置で(全部で 5回落下になるよう)試験を繰り返す。少なくとも 4か所で割れ,はがれが認められなければ,この塗膜は合格と報告する。
 4.5.3 等級付け試験(割れ,はがれを生じる最低の落下高さ・おもりの質量の測定,内容の一部省略)
  a)   欠陥が生じないと思われる高さまでおもり(1000g)を持ち上げて,試験片の上に落下させる。
  b)   固定器から試験片を取り外し,観察用レンズで塗膜の割れがないかどうかを検分する。割れがない場合は,割れが観察されるまで,25mm又は 25mmの倍数で増やした高さで,この操作を繰り返す。最初に割れが観察された高さを記録する。
 装置の最大高さで割れが観察されない場合は,おもりを 2000gにしてこの操作を繰り返す。
  c)   最初に割れが観察された高さ,これより 25mm高い高さ,及びこれより 25mm低い高さから,それぞれ適切なおもりを 5回落下させる。
  d)   試験箇所の割れ,はがれを観察用レンズで検査し,15箇所すべての結果の合格,不合格を一覧表にする。試験の終点として,大部分が合格から不合格に変化するおもりの質量/落下高さの組合せを報告する。
  e)   d)によっても終点が決められない場合は,終点が試験される高さの範囲に入るように,適切に 25mmの高低を付けた 3段階の高さを採用して,c)及び d)の手順を繰り返す。

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 5 落球式

 5.1 装置及び材料
  a)  おもり:先端に JIS B 1501「五軸受用鋼球」 に規定する玉軸受用鋼球で,質量は 300.0±0.5g及び直径が 25.40mm,等級 60のものを付けたもの。
 先端を下向きにして,落とすときは,上端の中央に糸を付けてつるす。
  b)  鋼製台:台は縦 300mm,横 200mm,厚さ 30mmよりも小さくなく,上面は平らなものとする。台はコンクリート製の床の上に固定し,上面は水平に保つものとする。
  c)  試験板:特に規定のない場合は,鋼板 200×100×4mmのもの。
 
 5.2 試験片の作製
 試料を試験板3枚の片面に,試料の製品規格に規定する方法によって塗装して乾燥した後,標準状態に 1時間放置したものを試験片とする。
 
 5.3 操作
  a)  塗面を上向きにして鋼製台の上に固定する。
  b)  おもりを球状の先端を下にして,おもりの振れ及び回転が停止したのを確認し,塗料の製品規格に規定する高さからこの塗面に落とす。
  c)  衝撃を受けた試験片を室内に 1時間置いた後,塗面の損傷を調べる。
 :おもりを落とすには,おもりをつるす糸を初めに固定し,おもりが回転,振動しないようになってからおもりの軸が常に垂直になるように糸を静かに放す。
 
 5.4 評価
 3枚の試験片のうちの 2枚以上について,おもりの先端の衝撃による塗膜の割れ・はがれを認めないときは,“おもりの衝撃で割れ及びはがれができない”とする。

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 6 デュポン式

 6.1 装置及び材料
  a)  衝撃変形試験器:先端に一定の丸みをもつ型と,その丸みに合うくぼみをもつ受け台及びおもりを一定の高さから落下させる装置から構成するもの。装置は,コンクリート製の台の上に水平に固定する。
  b)  試験板:特に規定のない場合は,鋼板 200×100×0.6mmのもの。
 
 6.2 試験片の作製
 試料を試験板2枚の片面に,試料の製品規格に規定する方法によって塗装して乾燥した後,室温で 1時間放置したものを試験片とする。
 
 6.3 操作
  a)  特に規定がない限り,半径 6.35±0.03mmの撃ち型と受け台とを取り付け,試験片の塗面を上向きにしてその間に挟む。
  b)  特に規定がない限り,質量 500±1gのおもりを,試料の製品規格に規定した高さから撃ち型の上に落とす。
  c)  塗面に余分の損傷を与えないように注意しながら試験片を取り出し,そのまま室内に1時間放置後,目視によって塗面の損傷を調べる。
 
 6.4 判定
 試験片 2枚について,試験片の衝撃変形による塗膜の割れ・はがれを認めないときは,“衝撃による変形で割れ・はがれができない”とする。

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