防食概論:塗料・塗装

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         塗料形態別分類

 ここでは,塗料組成や塗料形態の違いでの分類を紹介するが,分類が判然としないものも多く,一般的には慣例に従った命名になっている。
 
 クリヤ塗料(clear coating material,clear coating)
 JIS 用語では,クリヤ塗料とは,素地に塗装したとき,保護的,装飾的,又は特殊性能をもつ固体の透明な膜を作る塗料と定義している。
 クリア塗料は,顔料を含まない塗料である。 主に酸化によって乾燥するクリヤ塗料をワニスと称す。
 
 ワニス(varnish)
 JIS 用語では,ワニスとは,樹脂などを溶剤に溶かして作った塗料の総称と定義している。
 この定義は,クリア塗料の範疇に入るが,具体性がない。そこで,クリア塗料の用語説明の備考欄で“ 主に酸化によって乾燥するクリヤ塗料をワニスという。”と定義範囲を明確化している。この定義は ISO の用語定義と同等となる。
 ISO 用語では,“ワニスはクリヤ塗料の一種。主に酸化乾燥によって透明塗膜を形成するクリヤ塗料をワニスという。”と定義している。
 BS 用語では,“ワニスは,主に樹脂,及び/又は乾性油から作られる透明塗料。”と定義している。
 ASTM 用語では,“ワニスは,薄い層に塗ったとき透明な,又は半透明な固体膜を形成する液状組成物。”をいい,ビチューミナスワニス,油ワニス,スパーワニス,揮発性ワニスなどを含めている。
 
 油ワニス(oleoresinous varnish,oil varnish)
 JIS 用語では,塗膜形成要素として,乾性油と樹脂,又はビチューメン(瀝青,コールタール)などを用い,加熱融合して炭化水素系溶剤でうすめて作った塗料と定義している。
 油ワニスは,溶剤の蒸発,乾性油の酸化とこれに伴う重合とによって,乾燥する。樹脂,又はビチューメンに対する乾性油の比の大小によって,長油ワニス・中油ワニス・短油ワニスに分ける。
 
 油性塗料(oil paint)
 JIS 用語では,塗膜形成要素の主成分が乾性油である塗料の総称と定義している。
 乾性油とは,天然油の乾燥性(酸化重合)の分類で,よう素価 130以上の油をいう。
 
 調合ペイント(ready-mixed paint)
 JIS 用語では,特にボイル油を加える必要がなく,かき混ぜて一様にすれば,はけですぐ塗れるように製造したペイントと定義している。
 定義のボイル油の記述から,塗料は油性塗料の範疇で,例えば,JIS K 5511「油性調合ペイント」,JIS K 5516「合成樹脂調合ペイント」など 1液形の油性塗料が該当する。
 
 水性塗料(water paint,water-based paint)
 JIS 用語では,水で希釈できる塗料の総称と定義している。
 水溶性,又は水分散性の塗膜形成要素(樹脂)を用いて作られる。塗料形態としては,粉状水性塗料,合成樹脂エマルションペイント,水溶性焼付け塗料,酸硬化水溶性塗料などがある。
 最近になり,防食塗装においても,環境負荷低減(VOC 削減)を目的に,水性塗料が用いられるようになってきた。ここで用いる塗料は,防食性を重視した水分散性樹脂の多液混合型塗料で,JIS製品規格にみられる水性塗料とは使用材料や要求品質が大きく異なる。
 このため,防食塗装系の環境負荷低減を目的とする水性塗料という意味合いを込めて,水系塗料(water-borne coatings)と別称を用いる事業者もある(例えば鉄道分野)。
 
 水溶性樹脂塗料(water soluble resin paint,water soluble resin coating)
 JIS 用語では,塗膜形成要素として水溶性樹脂を用いて作った塗料と定義している。
 塗膜形成の際に樹脂が硬化して水に不溶性の塗膜ができるものが多い。
 
 エマルションペイント(emulsion paint,latex paint)
 JIS 用語では,水中に分散した有機バインダーを塗膜構成要素(ビヒクル)として作った塗料と定義している。
 厳密には,ボイル油,油ワニス,樹脂などを水中に乳化して作った液状物をビヒクルとして用いた塗料をエマルションペイント,乳化重合で得た合成樹脂エマルション(ラテックス)をビヒクルとして作った塗料をラテックスペイント(JIS では合成樹脂エマルションペイントという。)と区別されている。
 ASTM の用語では,両者を厳密に区分しているが,ISO ,及び BS の用語では,両者を同義語として扱っている。
 JIS K 5663「合成樹脂エマルションペイント及びシーラー」は,コンクリート,モルタル等に用いる塗料規格である。
 
 ハイソリッド塗料(high-solids)
 JIS 用語では,適切な成分を選択することによって,揮発成分をできるだけ低く抑え,かつ,満足できる塗装作業性を維持している塗料の総称と定義している。
 用語定義では,揮発成分の低減程度に関する定義はなく,あいまいな表現になっている。一般的には,低溶剤型塗料と称し,従来から用いている塗料と同じ用途,要求性能に対し,同種の材料を用い,塗装時の塗料量(単位体積当たり)に含まれる固形分量を 15~25%程度高くした塗料をいう場合が多い。
 従って,ハイソリッド塗料が普及し,これが従来型塗料と認識された段階で,ハイソリッド塗料とは言えないことになる。
 
 ハイビルド塗料(high-build)
 JIS 用語では,1回の塗装で,通常よりも厚い塗膜が得られる塗料の総称と定義している。
 一般的には,厚膜形塗料と称し,従来型塗料との比較で用いられる。例えば,エポキシ樹脂塗料といえば,乾燥膜厚 30μmの材料が一般的なため,1回の塗装で乾燥膜厚 60μmが得られる塗料を厚膜形エポキシ樹脂塗料と称してきた。従って,JIS の用語定義に従うと,従来型塗料の認識が変わることで名称の変更が必要になる。
 例えば,道路分野では,防食塗装に用いるエポキシ樹脂塗料は,乾燥膜厚 60μmタイプが一般的となったため,2005年の「鋼道路橋塗装・防食便覧」の改定で,従来の厚膜形エポキシ樹脂塗料をエポキシ樹脂塗料に名称変更している。
 一方,鉄道分野では,名称が変わることでの実務者の混乱(塗料発注,塗替え塗装時の旧塗膜把握など)を避けるため,塗料名称を固有名詞と認識し,塗料を採用した当初の名称を継続して使用している。例えば,「鋼構造物塗装設計施工指針」では,乾燥膜厚 60μmタイプのエポキシ樹脂塗料を採用時の名称「厚膜エポキシ樹脂塗料」を2005年,2013年の指針改定後も変更なしで採用し続けている。
 
 粉体塗料(powder coating material,coating powders,coating powder)
 JIS 用語では,溶融して,硬化した後に連続する膜を形成する,溶剤を含まない粉末状の塗料と定義している。
 通常は,樹脂,顔料,及びその他の添加剤からなり,適切な素地に粉状のまま塗装される。
 
 焼付け塗料(baking finish)
 JIS 用語では,生地に塗ってから加熱して塗膜が形成できるように作った塗料と定義している。
 加熱の温度は,通常 100℃以上である。ASTMや BS の定義では,強制乾燥(66℃以下)より高い温度としている。
 
 多体形製品,マルチパック製品(multi-pack product)
 JIS 用語では,製造業者が指定した混合比で混合して使用するように別々の容器に入れて供給される製品と定義している。
 防食塗装で用いる多液混合形塗料の多くは,配合ミスを避けるため,この形態の製品である。

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