防食概論:塗装・塗料
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ここでは,合成樹脂調合ペイント上塗りの品質規格及び評価方法について, 【合成樹脂調合ペイント 上塗り塗料】, 【塗料の品質試験】に項目を分けて紹介する。
塗料の評価(合成樹脂調合ペイント 上塗り用)
合成樹脂調合ペイント・上塗り塗料
JIS K 55162019 「合成樹脂調合ペイント」
序文この規格は,1965年に制定され,その後 7回の改正を経て今日に至っている。前回の改正は 2014年に追補にて行われたが,その後の品質項目の見直し(一部廃止;指触乾燥性)に対応するために改正した。
適用範囲
この規格は,建築物(鉄部,木部),及び鉄鋼構造物の中塗り,又は上塗りに用いる合成樹脂調合ペイントについて規定する。
注記:合成樹脂調合ペイントは,着色顔料・体質顔料などを,主に長油性フタル酸樹脂ワニスで練り合わせて作った液状・自然乾燥性の塗料である。
種類
a) 合成樹脂調合ペイント 1 種 主に,建築物,及び鉄鋼構造物の中塗り,及び上塗りとして,下塗り塗膜の上に数日以内に塗り重ねる場合に用いる。
b) 合成樹脂調合ペイント 2 種中塗り用 主に,大形鉄鋼構造物の中塗りに用いる。
c) 合成樹脂調合ペイント 2 種上塗り用 主に,大形鉄鋼構造物の上塗りに用いる。
【品質項目の概要】
塗料の成分 : 品質項目にはないが,適用範囲の注記に長油性フタル酸樹脂ワニスを用いた材料と記述されている。
塗料の性状 : 容器の中での状態,加熱残分が規定されている。
塗装作業 : 塗装作業性,乾燥時間(表面乾燥性),重ね塗り適合性が規定されている。
塗膜形成機能 : 塗膜の外観,隠ぺい率,上塗り適合性が規定されている。
塗膜の性能や耐久性 : 何れも鏡面光沢度,促進耐候性及び屋外暴露耐候性が規定され,加えて 1種では促進黄色度が,2種では耐塩水性が規定されている。が規定されている。
その他 : 建材に使用される際に,改正建築基準法の沿った表示が求められるため,ホルムアルデヒド放散等級の表示も規定されている。
項 目 | 1種 | 2種 上塗り用 |
---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |
塗装作業性 | はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 | |
乾燥時間(表面乾燥性) | 16 時間以内 | |
塗膜の外観 | 塗膜の外観が正常であるものとする。 | |
隠ぺい率 %(白及び淡彩(1) ) | 90 以上 | |
促進黄色度(白について) | 0.20 以下 | ― |
鏡面光沢度( 60度 ) | 80 以上 | |
重ね塗り適合性 | 重ね塗りに支障があってはならない。 | |
加熱残分 % | 65 以上 | 60 以上 |
耐塩水性 | ― | 塩化ナトリウム溶液に浸しても,異常がないものとする。 |
促進耐候性 | 膨れ,割れ及びはがれの等級は0であり,色とつやの変化の程度が見本品に比べて大きくないものとする。 また,白及び淡彩では,白亜化の等級が 1 以下とする。 |
|
屋外暴露耐候性 | 1種では1年間の試験で,2種では2年間の試験で, 膨れ,はがれ及び割れがなく,色とつやの変化の程度が見本品に比べて大きくないものとする。 また,白及び淡彩では,白亜化の等級が 4 以下とする。 |
建材に使用される際に,改正建築基準法の沿った表示が求められるため,ホルムアルデヒド放散等級についても規定されている。
ホルムアルデヒド放散等級は,JIS K 5601-4-1「ホルムアルデヒド放散量の求め方」の箇条 5 (デシケータ法)によって試験を行ったときの塗膜からのホルムアルデヒド放散量で区分する。
F☆☆☆☆(放散量 0.12mg/L以下),F☆☆☆( 0.35mg/L以下),F☆☆( 1.8mg/L以下),-( 1.8 mg/Lを超える)
注記 ハイフン(-)は,ホルムアルデヒド放散等級を規定しないことを示す。また,箇条 5 の試験を行わないものは,これと同じとみなす。
【参考】
ワニス(vernish)
樹脂などを溶剤に溶かして作った塗料の総称。顔料は含まれていない。塗膜は概して透明である。
備考:1. ISO用語規格では,“ワニスはクリヤー塗料の一種。主に酸化乾燥によって透明塗膜を形成するクリヤー塗料をワニスという。”と定義している。クリヤー塗料の項参照。
備考:2. BS用語規格では,“ワニスは,主に樹脂及び/又は乾性油から作られる透明塗料。”と定義している。
備考:3. ASTM用語規格では,“ワニスは,薄い層に塗ったとき透明な又は,半透明な固体膜を形成する液状組成物。”をいい,ビチューミナスワニス,油ワニス,スパーワニス,揮発性ワニスなどを含めている。【JIS K5500「塗料用語」】
フタル酸樹脂塗料(phthalic resin coating)
無水フタル酸を原料とするアルキド樹脂を塗膜形成要素とする塗料。耐候性が優れている。フタル酸樹脂エナメル。【JIS K5500「塗料用語」】
アルキド樹脂は,グリセリンなどの多価アルコール(polyhydric alcohol)とフタル酸などの多塩基酸(polybasic acid),又は酸無水物(acid anhydride)との脱水縮合(dehydration condensation)で進む共重縮合(copolycondensation)によるポリエステル樹脂(polyester resin)の一種である。
塗料業界で単にアルキド樹脂と称した場合は,脂肪酸(fatty acid)で変性(modification)した多価アルコールを用いた油変性アルキド樹脂を指す場合が多い。
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塗料の品質試験
ここでは,合成樹脂調合ペイント 上塗りの塗料品質の試験法を紹介する。塗膜品質の試験法については,【塗膜の評価】・「上塗り塗料」で紹介する。
7. 試験方法
7.1 サンプリングは,JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第2節:サンプリング」による。
7.2 試験用試料の検分及び調整は,JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第3節:試験用試料の検分及び調整」による。
7.3 試験の一般条件は,次による。
試験の一般条件は,JIS K 5600-1-1 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件及び方法)」 ,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」及び JIS K 5601-1-1 「塗料成分試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件及び方法)」によるほか,次による。
a) 試験の場所
1) 養生及び試験を行う場所は,他に規定がない場合は,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」の4.1(標準条件)に規定する条件[温度 23±2℃,相対湿度(50±5)%]
2) 目視観察のときの光源(拡散昼光,色観察ブース)
b) 試験板の作製
1) 鋼板: SPCC-SB の鋼板とし,7.5,7.7,7.11及び 7.12の試験では,溶剤洗浄によって調整した鋼板,7.14,7.15及び 7.16の試験では,研磨によって調整した鋼板とする。
2) ガラス板: 溶剤洗浄によって調整したガラス板(フロート板ガラス又は磨き板ガラス)とする。
3) アルミニウム板: 溶剤洗浄によって調整したアルミニウム板とする。
c) 試料の塗り方: はけ塗りとし,1回ごとの塗付け量は,100cm2 当たり 0.50±0.05mL とする。はけの種類は,JIS K 5600-1-5 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第5節:試験板の塗装(はけ塗り)」の 3.1(はけ)又は附属書 A[試験板の塗装(はけ塗り)]による。
d) 乾燥方法: 標準状態で乾燥する。
7.4 容器の中での状態の試験は, JIS K 5600-1-1 の 4.1.2 a)(液状塗料の場合)による。
7.5 塗装作業性の試験は,次による。
a) 試験板: 7.3 b)に規定する鋼板とし,寸法は,500mm×200mm×1mm とする。
b) 試験方法: 7.3 c)の方法によって,試験板の片面に規定の塗付け量になるように,はけ塗りする。
c) 評価及び判定:塗装作業性に特に困難を感じないとき,“支障がない”とする。
7.6 表面乾燥性の試験は,次による。
a) 試験板: 7.3 b) 2)に規定するガラス板とし,寸法は,200mm×100mm×2mm とする。
b) 試験片の作製: 附属書 Aに規定する隙間 100μmのフィルムアプリケータを用いて,試料をうすめずに塗り付ける。
c) 試験方法: JIS K 5600-3-2「塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第2節:表面乾燥性(バロチニ法)」による。標準状態で 16時間乾燥後,直ちに試験を行う。
d) 評価及び判定: 試験片を目視によって観察し,塗膜表面に損傷を与えずに全てのバロチニをはけで除去できたとき,“16時間以内で表面乾燥する”とする。
7.11 重ね塗り適合性の試験は,JIS K 5600-3-4「塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第4節:製品と被塗装面との適合性」によるほか,次による。
a) 試験板: 7.3 b) 1) に規定する寸法 200mm×100mm×0.8mm の鋼板。
b) 試験片の作製: 試料を 7.3 c) の方法によって 1回塗りした後,水平に置いて標準状態で 24時間乾燥したものを試験片とする。
c) 試験方法: 試験片の塗面に,同一試料を塗り重ねて,水平に置き標準状態で 24時間乾燥した後,塗り重ねた塗面を観察する。
d) 評価及び判定: 重ね塗り作業に支障がなく,塗り重ねた塗面に,はじき,割れ,穴,膨れ及び剝がれを認めないとき,“支障がない”とする。
7.13 加熱残分の試験は, JIS K 5601-1-2 「塗料成分試験方法−第1部:通則−第2節:加熱残分」による。試験条件は,加熱温度 105±2℃で 1時間とする。
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