JIS K 5600_4_7 塗料一般試験方法‐第4部‐第7節:鏡面光沢度

 JIS K 5600-4-7 1999年版  塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第7節:鏡面光沢度 (Testing methods for paints−Part 4 : Visual characteristics of film−Section 7 : Specular gloss )について  【序文・目次・適用範囲・用語の定義】,   【装置】,   【試料採取・試験片の作製】,   【鏡面光沢度計の校正】,   【手順】 に分けて紹介する。

 序文・目次・適用範囲・用語の定義

 序文
 この規格は,1994年に第 3版として発行されたISO 2813 Paints and varnishes−Determination of specular gloss of non-metallic paint films at 20°,60°and 85°及び追補 1 を翻訳し,技術的内容を一部追加(一次参照標準)し,作成した日本工業規格である。
 
 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
 序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 用語の定義,4 必要な捕捉情報,5 装置(5.1 液状塗料の試料の試験板,5.2 フィルムアプリケータ,5.3 鏡面光沢度計,5.4 参照標準),6 液状塗料の試料採取方法,7 塗装された素地の試料採取方法,8 試験片の作製(8.1 液体塗料試料,8.2 素地上の塗膜),9 鏡面光沢計の校正(9.1 装置の調整,9.2 ゼロ点の点検,9.3 校正),10 手順(10.1 液状塗料の塗膜の光沢度測定,10.2 塗装された素地の光沢度の測定),11 精度(11.1 繰り返し精度,11.2 再現性度),12 試験報告
 附属書 A(規定)必要な捕捉情報
 附属書B(参考)参考文献
 
 1 適用範囲
 この規格は,20°,60°,又は 85°の幾何条件の反射率計を用いて塗膜の鏡面光沢度を測定する試験方法について規定する。
 この試験方法はメタリック塗料の光沢度測定には適さない。
  a)  60°の幾何条件は,すべての塗膜に適用できるが,非常に高光沢度の場合,及びつや消しに近い塗膜の場合は 20°,又は 85°がより適している。
  b)  20°の幾何条件は,受光器のより小さい開き角を使用しており,高光沢度の塗膜(すなわち,60°鏡面光沢度が約 70以上の塗膜間の差異をよりよく出すことを意図している。
  c)  85°の幾何条件は,低光沢塗膜(すなわち,60°鏡面光沢度が約 10以下の塗膜)間の差異をよく出すことを意図している。
 備考 1:提示した限度を無視することになっても,一連の測定の間は,同一の幾何条件が,当然,保たれなければならない。
 備考 2:ある場合には,測定した鏡面光沢度が目視評価と一致しないこともある。
 
 3 用語の定義
 鏡面光沢度
 規定した光源及び受光器の角度にて鏡面方向に対象物から反射する光束と,屈折率 1.567のガラスから鏡面方向に反射する光束の比。
 備考 1:鏡面光沢度の基準を明確にするために,屈折率 1.567の磨かれた黒色ガラスには,20°,60°及び 85°の幾何条件で,100の値が定められている。
 
 4 必要な補足情報
 どのような適用に対しても,この規格で規定された試験方法は補足情報によって補完されることが必要である。補足情報の項目は附属書 A に示す。
  附属書 A(規定) 必要な捕捉情報
 この附属書で列挙された補足情報の各項目は,当該方法が実施されるように,適切に提供されなければならない。
 必要な情報は,受渡当事者間で合意することが望ましい,試験する製品に関する国際規格,国家規格,又はその他の文書などから,その一部又は全部が引用できる。
  a)  素地の材料,素地の厚さ及びその素地の表面調整。
  b)  試験塗料の素地への塗装方法。
  c)  試験前塗膜の乾燥(又は焼付け)及び養生(適用可能の場合には)の時間と諸条件。
  d)  単独塗膜又は多層塗膜系における乾燥塗膜のマイクロメートル単位の厚さ及び JIS K 5600-1-7「膜厚」 によるその測定方法。
 備考:はけ塗りによる塗装は光沢度読取り値を変動させる要因となる。

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 5 装置

 5.1 液状塗料の試料の試験板
 試験板は鏡質のガラスとし,厚さは少なくとも 3mm以上,大きさは少なくとも 150mm×100mm以上でなければならない。
 備考:記載されている方法は,塗料に限定されているが,透明ワニスは,黒色ガラス,又は透明ガラスを粗面とし,裏面,及び縁を黒色塗料で覆ったものを試験板として用いて,試験を行っても差し支えない。
 
 5.2 フィルムアプリケータ
 光学的に平滑な面に置いた場合,ガラス板との間に150±2μmのすき間を形成するフィルムアプリケータ,又は塗膜を得るその他の方法が用いられなければならない。
 備考:このフィルムアプリケータは約75μmのウェット塗膜厚を作る。
 
 5.3 鏡面光沢度計
 鏡面光沢度計は,光源,試料表面に光の平行光を導くレンズ及び受光室などから構成され,受光室は,レンズ,視野絞り,必要な円すい形の反射光を受け取る光電池などを含んでいる。
 鏡面光沢度計は a)~d)の特性(ここでは項目と概要のみで詳細は省略)をもつものでなければならない。
  a)  幾何条件
 入射光の軸は試料面の法線に対して 20°±0.5°,60°±0.2°,85°±0.1°(表1参照)とする。 受光器の軸は入射光の軸の鏡像に対して±0.1以内で一致するものとする。
  b)  受光器でのフィルタリング (filtering)
 受光器のフィルタリングは,次式で与えられるフィルターの透過率τ(λ)に従ってなされる。
  c)  口径食
 a)に規定された画角内に口径食(画像中心部と周辺部の明るさの差)があってはならない。
  d)  受光器の計器
 受光器の測定部は,受光器視野絞りを通過する光束に,フルスケールの目盛に対して 1%以内の範囲で比例した測定値を与えるものとする。
 
 5.4 参照標準
 5.4.1 一次参照標準
  a)  鏡面光沢度の基準:屈折率が可視波長範囲全域にわたって,一定値 1.567であるガラス表面において,規定された入射角 θでの鏡面光沢度を基準とし,この値を 100%として表す。
  b) 一次参照標準は,透明又は黒色ガラスなどを用い,JIS Z 8741「鏡面光沢度-測定方法」6.1に従って,一次参照標準の鏡面光沢度を規定する。
  c)  各種屈折率の磨かれた石英ガラス及び黒色ガラスに対する 3種類の入射角に対応した鏡面光沢度の値を表 2(省略)に示す。
  d)  一次参照標準は,経時変化の可能性があるので,少なくとも 2年ごとに点検しなければならない。これは特に黒色ガラスに適用される。劣化した場合は,酸化セリウムで光学的に磨くことによって,初期の光沢値に復元される。
 備考:一次参照標準は鏡面光沢計の日常の校正に使用されるものではない。
 5.4.2 実用参照標準
 実用参照標準は,セラミックタイル,ほうろう,不透明ガラス,磨いた黒色ガラス,又は均一な光沢度のある他の材料から作られる。
 しかし,平滑性が良好で,定められた位置及び定められた照射方向において,一次参照標準に対して校正されているものとする。少なくとも 2枚の異なった光沢水準の実用参照標準が光沢計の各幾何条件ごとに準備されなければならない。
 実用参照標準は,定期的に一次標準と比較して点検することとする。
 5.4.3 ゼロの参照標準
 反射率計のゼロの点を点検するために,適切な標準(例えば,黒ビロード,黒フエルトの黒い箱)を使用する。

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 試料採取・試験片の作製

  6 液状塗料の試料採取方法
 JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第2節:サンプリング」の規定により,試験に用いる製品(多層塗装系の場合は各製品)を代表する試料を採取する。
 試料は JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」の規定により,試験のために各試料の検分及び調整を行う。
 
 7 塗装された素地の試料採取方法
 塗装した素地の平滑な部分を,可能ならば 150mm×100mm以上の大きさで採取する。
 備考 9. この規格で定める方法を用いてなされた光沢度測定は,良好な平滑面の表面で測定された場合にだけ有効である。素地に何らかの湾曲又は局在する非平滑部が試験結果に影響を与える。
 
 8 試験片の作製
 8.1 液体塗料試料
 8.1.1 試験塗膜の作製
 規定された方法,又は協定された方法,例えば,はけ塗り,ローラ塗り,スプレー塗装などの,その塗料が通常使用される方法,及び膜厚で試験用塗料を塗装する[附属書Aの d)参照]。
 規定又は協定した方法がなく,議論が生じた場合には,次のように行う。
  すべてのチクソトロピック構造を破壊するために,塗料の試料に気泡を塗料中に混入させないように注意しながら塗装直前に激しくかくはんして十分に混合する。
   新規に脱脂した素地に,ガラス板の一端を横切って線状に約2mlの塗料を広げ,フイルムアプリケータを用いて,平滑な塗膜を得るためにフイルムアプリケータを約 100mm/sの速度で安定して押しつけながら板の下方へ引き,塗布量およそ15m2/リットルで各塗料を塗り付ける。
   塗り付けた試験板は温度 23±2℃,相対湿度 50±5%,(又は焼付け)で,規定時間,又は適切な時間乾燥させる。
   光沢度測定の前に,塗膜を直射日光にさらすことなく上記と同温度,同湿度で 16時間養生する。この試験手順はできるだけ速やかに行う。
 8.1.2 膜厚測定
  JIS K 5600-1-7「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」に規定された手順の一つによって,乾燥塗膜の膜厚をマイクロメートル単位で測定する。
 
 8.2 素地上の塗膜(試験塗膜の作製によらず,既に塗装された塗膜)
 8.2.1 共通事項
 はけ目の方向,識別可能な場合の浮き上がった木目,又は同様に規則的な織目状の模様は,測定器の入射と反射の面に平行にする。
 8.2.2 膜厚測定
 JIS K 5600-1-7「膜厚」に規定された手順の一つによって,乾燥塗膜の膜厚をマイクロメートル単位で測定する。

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 9 鏡面光沢計の校正

 9.1 装置の調整
 操作開始時は毎回,また操作中は測定器の感度が基本的に一定であることを確かめるのに十分な頻度で校正をする。
 
 9.2 ゼロ点の点検
 目盛の0点を点検するためには,ゼロ参照標準を使用する。目盛の読みが 0±0.1以内にない場合は,それ以後の目盛の読み取り値からその値を減算する。
 
 9.3 校正
 鏡面光沢度の値が 100に近い実用参照標準を用いて,目盛の上位半分以上の指針で装置を正しい値に調整する。
 次に,第 2(より低い値)の実用参照標準を用いて,同様に調整して測定を行う。
 読取り値が正しい値の一目盛以内の場合は,前出の鏡面光沢度計・受光器の比例に関する要求事項は満足される。
 しかし,読み取り値が規定された許容値から外れている場合には,更に他の実用参照標準を用いて追加測定を行う。
 両方の読み取り値が正しい値から一目盛単位以上異なった場合は,その測定器は製造業者によって調整されるか,又は製造業者の指示に従って実用参照標準が要求された正確さで測定されるまで校正手順を繰り返す。
 繰返しの読取り値一が目盛単位以内の場合は試験を行ってもよいが,校正点検は各測定前に行う。

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 10 手順

 10.1 液状塗料の塗膜の光沢度測定
 光沢度計の校正後,ガラス板上の試験塗膜について塗装方向に平行な異なった位置 3回の読取りを行い,一連の測定終了後,ドリフトがないことを確かめるために高光沢度の実用参照標準に対して点検を行う。
 読み取り値の開きが 5単位未満の場合は鏡面光沢度としてのその平均値を報告し,5単位以上の場合は更に3個の値を読み取り,合計 6個の値の平均値及び幅を報告する。
 ガラス板以外の素地上の塗膜の測定は,互いに直角の 2方向で,各々につき 3回計 6個の読み取りを行い,その平均値及び幅を報告する。
 
 10.2 塗装された素地の光沢度の測定
 液状塗料の塗膜の光沢度測定と同様に行い,表面上の異なった部分,又は異なった方向(はけ目のような方向性のある塗膜を除いて)について 6個の読み取りを行う。
 3回の読み取りの後に,測定器がドリフトしていないことを確かめるために,高光沢度の実用参照標準の読み取り値に対して点検を行う。
 平均値を計算する。最も離れた変動の幅が 10単位未満,又は平均値の 20%未満にある場合には平均値と幅を報告する。それ以上変動がある場合にはその試験板は無効である。

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