防食概論:塗装・塗料
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ここでは,道路に架設される 鋼橋の維持管理 と防食塗装について, 【定期点検】, 【腐食の点検】, 【防食機能の劣化の点検】 に項目を分けて紹介する。
防食塗装系(鋼橋維持管理の背景)
鋼道路橋の維持管理
道路のうち,国が直接管理する国道(一般国道)は,原則として国土交通省道路局が定めた「橋梁の維持管理の体系と橋梁管理カルテ作成要領(案)」,「橋梁定期点検要領(案)」などの維持管理要領に準拠して管理される。
圧倒的に多数を占める地方行政機関管理の地方道(都道府県道,市町村道)も,国土交通省の定めた維持管理要領に準拠して管理されている。高速道路株式会社法に基づき,民間企業の管理となる高速道路は,維持管理要領を参考に管理会社が定めた要領に従い管理されている。
維持管理技術の詳細は,【社会資本とは】の「道路橋の維持管理」に示す。ここでは,点検方法,腐食・塗装関連の管理項目を抜粋して紹介する。
【参考】
道路(road, street)
一般的には,Streetは都市部の道路(街路),Roadは都市と都市を結ぶ道路と区分している。
日本の法律では,「道路法」,「道路交通法」,「建築基準法」で道路を定義している。なお,臨港道路と農道はこれらの法律の定義に含まれない道路である。
一般的に知られる高速自動車国道(expressway),一般国道(national route, national roads, national highway),都道府県道(prefectural road),市町村道は,「道路法」 で定義される道路である。
道路法
第二条第一項(用語の定義) この法律において「道路」とは,一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい,トンネル,橋,渡船施設,道路用エレベーター等道路と一体となつてその効用を全うする施設又は工作物及び道路の附属物で当該道路に附属して設けられているものを含むものとする。
第三条(道路の種類) 道路の種類は,左に掲げるものとする。一 高速自動車国道,二 一般国道,三 都道府県道,四 市町村道
第三条の二(高速自動車国道) 高速自動車国道については,この法律に定めるもののほか,別に法律で定める。
高速自動車国道法
第四条第一項(高速自動車国道の意義及び路線の指定) 高速自動車国道とは,自動車の高速交通の用に供する道路で,全国的な自動車交通網の枢要部分を構成し,かつ,政治・経済・文化上特に重要な地域を連絡するものその他国の利害に特に重大な関係を有するもので,次の各号に掲げるものをいう。
一 国土開発幹線自動車道の予定路線のうちから政令でその路線を指定したもの,
二 前条第三項(高速自動車国道の予定路線)の規定により告示された予定路線のうちから政令でその路線を指定したもの
高速道路株式会社法
第二条(定義) この法律において「道路」とは,道路法第二条第一項に規定する道路をいう。
2 この法律において「高速道路」とは,次に掲げる道路をいう。
一 高速自動車国道法第四条第一項に規定する高速自動車国道,
二 道路法第四十八条の四に規定する自動車専用道路並びにこれと同等の規格及び機能を有する道路。
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定期点検
日常の道路巡回時に道路パトロールカー内から橋梁の異常を発見する目的で道路巡回実施要領(案)に従って通常点検が実施され,橋梁に係る維持管理を効率的に行うために必要な記録を得ることを目的に定期点検が実施する。点検の実施は,国土交通省で定める「点検要領」に従って実施される。
定期点検の頻度
供用後 2 年以内に初回の定期点検が行われ,2回目以降は,原則として 5 年以内 に実施される。
初回の定期点検は,橋梁の初期欠陥の早期発見,橋梁の初期状態の把握による損傷の進展過程を明らかにすることを目的としている。
橋梁の下を道路や鉄道が交差する場合,駐車場や歩道などに利用されている場合は,「橋梁における第三者被害予防措置要領(案)」に基づき 2~3年に 1回実施される。
点検項目(損傷の分類)
定期検査は,目視による外観調査が主体である。鋼橋の点検で観察する項目,すなわち損傷は,次のように分類される。
・ 種類 1 : 腐食,亀裂,ゆるみ・脱落,破断,防食機能の劣化
・ 種類 2 : 変形・欠損,異常なたわみ,異常な音・振動
・ その他 : 沈下・移動・傾斜,漏水・滞水,土砂詰り,支承の機能障害,遊間の異常,変色・劣化
なお,種類 1,及び種類 2 は,煩雑さを回避するため,点検要領で定めた便宜的なグループ分けで,技術的な意味はない。
点検要領では,鋼橋の部位・部材で点検対象の種類を区分している。
「部材」とは,例えば主桁,橋脚,支承本体等を指し,「部位」は部材中の特定部位,例えば橋脚の柱部・壁部,梁部,隅角部・接合部等を指す。
細心の注意が必要な主要部材は,損傷を放置しておくと橋の架け替えも必要になると想定される部材,すなわち,「主桁」,「横桁」,「縦桁」,「床版」,「主構トラスの上・下弦材,斜材,垂直材及び橋門構」,「アーチのアーチリブ,補剛桁,吊り材,支柱及び橋門構」,「ラーメンの主構(桁・脚)」,「斜張橋の斜材及び塔柱」,「外ケーブル」,「橋脚」,「橋台」,「基礎」が相当する。
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腐食の点検
国土交通省で定める「点検要領」に於ける損傷種別の中で,腐食に関する点検・評価の概要を紹介する。
塗装された鋼橋において,腐食とは,塗膜の劣化・損傷により,素地の鋼材の腐食に至り,鋼橋の一部で集中的にさびが発生している状態,又はさびが極度に進行し断面減少を生じている状態をさす。
無塗装で適用される耐候性鋼材の場合には,保護性さびが形成されず異常なさびが生じている場合や,極度なさびの進行により断面減少が著しい状態をさす。
腐食と防食機能劣化の区分
基本的には,断面欠損を伴うさびの発生を腐食として評価し,断面欠損を伴わない程度の軽微なさびの発生は防食機能の劣化として評価する。
● 断面欠損の有無の判断が難しい場合には,腐食として扱う。
● 耐候性鋼材で保護性さびを生じるまでの期間は,さびの状態が一様でなく異常腐食かどうかの判断が困難な場合があるが,断面欠損を伴わないと見なせる程度の場合には防食機能の劣化として評価する。
● ボルトの場合も同様に,断面欠損を伴うさびの発生を腐食として評価し,断面欠損を伴わないと見なせる程度の軽微なさびの発生は防食機能の劣化として評価する。
注目箇所
腐食しやすい個所は漏水の多い桁端部,水平材上面など滞水しやすい箇所,支承部周辺,通気性,排水性の悪い連結部,泥,ほこりの堆積しやすい下フランジの上面,溶接部等である。
評価と記録
腐食程度の評価区分を下表に示す。なお,区分にあたっては,“損傷の深さ”と“損傷の面積”に分け,その一般的状況から判断した規模の大小の組合せによることを基本としている。
損傷の深さに関しては,さびの状態(層状,孔食など)に関わらず,板厚(断面)減少の有無によって評価することになるが,目視のみでは的確な判断は困難である。
区分 | 一般的状況 | |
---|---|---|
損傷の深さ | 損傷の面積 | |
a | 損傷なし | 損傷なし |
b | さびは表面的であり, 著しい板厚の減少は視認できない。 | 損傷箇所の面積が小さく局部的である。 |
c | 着目部分の全体的にさびが生じている。 または着目部分に拡がりのある発さび箇所が複数ある。 | |
d | 鋼材表面に著しい膨張が生じているか, または明らかな板厚減少が視認できる。 | 損傷箇所の面積が小さく局部的である。 |
e | 着目部分の全体的にさびが生じている。 または着目部分に拡がりのある発さび箇所が複数ある。 |
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防食機能の劣化の点検
損傷の種別として防食機能の劣化については,次のように評価する。
防食機能の評価は,防食皮膜である塗装,メッキ・金属溶射と耐候性鋼材に分けて行う。
防食皮膜(塗装,メッキ・金属溶射)の評価は,劣化による変色,ひびわれ,ふくれ,はがれ等の状態を評価する。さびが生じている場合には腐食としても評価する。
耐候性鋼材については安定さび(保護性さび)が形成されていない状態を評価する。著しい断面欠損を伴うと見なせる場合には腐食としても評価する。
評価と記録
損傷の発生位置やその範囲・状況をスケッチや写真で記録(損傷図)するとともに,代表的な損傷の主要寸法も損傷図に記載する。
亜鉛めっきや亜鉛溶射において,白さびや“やけ”は,ただちに耐食性に影響を及ぼすものではないため損傷とはならないが,その状況は損傷図に記録する。
耐候性鋼材のさびの色は,黄色・赤色から黒褐色へと変化して行くが,さび色だけで保護性さびかどうかを判断することはできない。また,表面処理を施した場合に,皮膜の残っている状態でさびむらが生じることもある。
区分 | 一般的状況 | ||
---|---|---|---|
塗装 | メッキ・金属溶射 | 耐候性鋼材 | |
a | 損傷なし | 損傷なし | 損傷なし |
b | (評価区分なし) | (評価区分なし) | (評価区分なし) |
c | 最外層の防食皮膜に変色を生じたり, 局所的なうきが生じている。 | 局所的に防食皮膜が劣化し, 点さびが発生する。 | さびの大きさは 1~5mm程度で粗い。 |
d | 部分的に防食皮膜が剥離し, 下塗りが露出する。 | (評価区分なし) | さびの大きさは 5~25mm程度のうろこ状である。 |
e | 防食皮膜の劣化範囲が広く, 点さびが発生する。 | 防食皮膜の劣化範囲が広く, 点さびが発生する。 | さびは層状の剥離がある。 |
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