防食概論:塗装・塗料
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ここでは,鉄道の鋼橋塗装に適用される新設時の長期耐久型防食塗装系 【一般外面・塗装系 J・仕様 】, 環境影響低減型の【一般外面・塗装系 JECO・仕様 】, 塗装系の構成塗料【ジンクリッチ系塗料】, 【厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗】, 【(水系)ポリウレタン樹脂塗料中・上塗】 に分けて紹介する。
鉄道橋の防食塗装(新設塗装)
一般外面・塗装系 J
「塗装指針」 2013;第Ⅰ編 塗装一般 第 D章 解説(塗装系の特徴), 塗装系 J
塗装系 J は,塗装系 Lと同様に,本州・四国連絡橋の計画を受けて,1960年代に日本国有鉄道・鉄道技術研究所が中心となり,海岸近接地域や海上に架設される橋梁に適用でき,長期防食性を有する塗装系の研究が開始され,1970年代に開発された景観性を必要としない場合に適用する長期防錆型塗装系の一つである。この塗装系は,腐食性環境での長期防錆型塗装系として,東北地方の日本海からの離岸距離約 50mの実橋梁( 1976年試験塗装)で 30年以上の実績がある。また,一般環境での実績として,東北・上越新幹線や京葉線の鋼橋に開業当時( 1980年ころ)から適用され,30年以上経過した 2014年の時点でも塗替え塗装を必要とする状況に至っていない。
硬化機構と塗装間隔
厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗及びポリウレタン樹脂塗料用中塗は,二液硬化形(主剤と硬化剤の混合で反応硬化するタイプ)の塗料であるため,硬化反応は気温の影響を強く受ける。通常の条件(気温20℃)では約 2週間で反応が終了するが,低温では反応の進行が著しく遅くなる。
塗料の塗り重ねは,塗り重ねた塗膜との付着性を確保するため,硬化反応が完了する前に実施しなければならない。このために,これらの塗料に塗り重ねる場合には 7日間が塗装間隔の制限になっている。
その他注意事項
第1層目の無機ジンクリッチプライマーは,現在の塗料技術レベルでは,すべり係数 0.4以上を保持しうるものがないので,摩擦接合継手面については,無機ジンクリッチペイントを塗装しなければならない。
「塗装指針」 2013;第Ⅱ編 新設構造物 第 A2章 塗装仕様(塗装系), 一般外面の塗装系 J
原板(製鋼工場)
塗装系 J は,塗装系 L と同時に,本州・四国連絡橋の計画を受けて,昭和 30年代に日本国有鉄道・鉄道技術研究所が中心となり,海岸近接地域や海上に架設される橋梁に適用でき,長期防食性を有する塗装系として開発された景観性を求める場合に適用する長期防錆型塗装系である。
仕様(全工場塗装)
原板(製鋼工場)
素地調整
ブラスト処理
除錆度: ISO Sa2 1/2 以上,表面粗さ: 10点平均粗さ 80μmRzJIS 以下
プライマー塗装
ブラスト処理後 3時間以内
無機ジンクリッチプライマー: 吹付け塗り,使用量 160g/m2 (膜厚 15μm)
2次素地調整で除去されるので,プライマーの膜厚は総合膜厚に加えない。
橋梁製作工場
2 次素地調整ブラスト処理
除錆度: ISO Sa2 1/2 以上,表面粗さ: 10点平均粗さ 70μmRzJIS 以下
下塗り塗装
① 素地調整後 3 時間以内
厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント: 吹付け塗り,使用量 700g/m2(膜厚 75μm)
② ①塗装後 2日以上,3カ月以内
厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗: 吹付け塗り,使用量 300g/m2(膜厚 60μm)
③ ②塗装後 1日以上,15日以内
厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗: 吹付け塗り,使用量 300g/m2(膜厚 60μm)
中塗り塗装
下塗り塗装後 1日以上,15日以内
ポリウレタン樹脂塗料用中塗: 吹付け塗り,使用量 160g/m2(膜厚 30μm)
上塗り塗装
中塗り塗装後 1日以上,15日以内
ポリウレタン樹脂塗料上塗: 吹付け塗り,使用量 140g/m2(膜厚 30μm)
【備考】
第 1層目に厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイントは,塗料単独の暴露試験の結果では厚膜型無機ジンクリッチペイントに比べ防食性能が若干劣ると言われている。しかし,実用では,下・中・上塗り塗料を塗り重ねた塗装系として用いられ,実橋梁の実績などから,無機系と比較して遜色無い結果が得られている。
一方で,厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイントは,無機ジンクリッチペイントの低湿度下での施工制限がなく,ミストコートを省略できるなど,施工上の利点がある。
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一般外面・塗装系 JECO
塗装指針 2013;第Ⅰ編 塗装一般 第 D章 解説(塗装系の特徴), 塗装系 JECO
塗装系 JECO は,「塗装指針」の 2005年 5月改訂で,塗装作業の環境負荷低減,作業者への健康影響低減を目的に採用された“塗替え塗装系 ECO”の施工実績などを踏まえて,水系塗料の適用拡大を図るため,塗装系 J と同等の防食機能を有し, VOC 排出量を低減できる環境負荷低減型の新設時塗装系として,2013年 12月改訂の「塗装指針」に採用された。
硬化機構と塗装間隔
厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗及び水系ポリウレタン樹脂塗料用中塗は,二液硬化形(主剤と硬化剤の混合で反応硬化するタイプ)エポキシ樹脂の塗料であるため,硬化反応は気温の影響を強く受ける。通常の条件(気温20℃)では約 2週間で反応が終了するが,低温では反応の進行が著しく遅くなる。
塗料の塗り重ねは,塗り重ねた塗膜との付着性を確保するため,硬化反応が完了する前に実施しなければならない。このために,これらの塗料に塗り重ねる場合には 7日間が塗装間隔の制限になっている。
その他注意事項
第1層目の無機ジンクリッチプライマーは,現在の塗料技術レベルでは,すべり係数 0.4以上を保持しうるものがないので,摩擦接合継手面については,無機ジンクリッチペイントを塗装しなければならない。
「塗装指針」 2013;第Ⅱ編 新設構造物 第 A2章 塗装仕様(塗装系), 一般外面の塗装系 JECO
塗装系 JECO は,塗装系 J をベースとした環境負荷低減及び作業者への健康影響の低減を目的とした塗装系である。従って,塗装系 J と同様に,景観性を求める場合に適用する長期防錆型塗装系である。塗装系 JECO は,中・上塗り塗料に水系塗料を用いているが,下塗り塗料には従来からの溶剤形塗料を用いている。これは,現在の技術レベルでは,期待する防食性能を十分に発揮できる下塗り用水系塗料の開発に至っていないためである。
仕様(全工場塗装)
原板(製鋼工場)
素地調整(塗装系 J と同じ)
プライマー塗装(塗装系 J と同じ)
橋梁製作工場
2 次素地調整(塗装系 J と同じ)下塗り塗装(塗装系 J と同じ)
中塗り塗装
下塗り塗装後 1日以上,15日以内
水系ポリウレタン樹脂塗料用中塗: 吹付け塗り,使用量 160g/m2(膜厚 30μm)
上塗り塗装
中塗り塗装後 1日以上,7日以内
水系ポリウレタン樹脂塗料上塗: 吹付け塗り,使用量 150g/m2(膜厚 30μm)
【備考】
第 1層目に厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイントは,塗料単独の暴露試験の結果では厚膜型無機ジンクリッチペイントに比べ防食性能が若干劣ると言われている。しかし,実用では,下・中・上塗り塗料を塗り重ねた塗装系として用いられ,実橋梁の実績などから,無機系と比較して遜色無い結果が得られている。
一方で,厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイントは,無機ジンクリッチペイントの低湿度下での施工制限がなく,ミストコートを省略できるなど,施工上の利点がある。
中・上塗り塗料に水系塗料を用い,塗装系 J に比較して,VOC 量,有害化学物質量が少ない環境負荷低減型塗装系となっているが,溶剤形塗料とは異なる塗装作業,施工管理,及び廃液・廃塗料処理が必要になる。
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ジンクリッチ系塗料
塗装系 J,JECO に用いるジンクリッチ系塗料は,無機ジンクリッチプライマー,厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイントである。
「塗装指針」 2013;附属書 A 塗料規格及び試験方法
SPS 66053-8 無機ジンクリッチプライマー
品質
下表には,無機ジンクリッチプライマーの塗料品質,比較のため JIS K5552 2010 「ジンクリッチプライマー」 1種(無機)の品質を紹介する。
JIS 等で規定される品質の「塗装作業性」,「塗膜の外観」については,これらの品質に適合しない塗料の販売が考え難いこと,また,他の品質を検査する際にこの品質は容易に把握できることから,鉄道では,全ての塗料規格でこれらの品質を規定していない。また,実環境で 2年程度の「耐候性」(屋外暴露耐候性)を規定していない。これは,塗料成分の規定により,塗膜の機械的,化学的,及び耐久性の室内試験を行うことで,耐候性が確保できると考えているためである。
項 目 | SPS 66053-8 | JIS K5552( 1種無機) |
---|---|---|
亜鉛末(質量分率 %) | 56以上 | ― |
アルキルシリケート (質量分率 %) |
3以上 | ― |
溶剤(質量分率 %) | 30以下 | ― |
混合塗料中の加熱残分(%) | 70以上 | |
加熱残分中の金属亜鉛(%) | 80以上 | |
塗膜中の鉛(質量分率 %) | 0.06以下(* 1 ) | ― |
塗膜中のクロム(質量分率 %) | 0.03以下 | ― |
容器の中での状態 | 粉は微小で一様な粉末であるものとする。液はかき混ぜたとき堅い塊がなくて一様になるものとする。 | |
塗装作業性 | ― | 塗装作業に支障があってはならない。 |
乾燥時間 h | 1以下 | |
塗膜の外観 | ― | 塗膜の外観が正常であるものとする。 |
ポットライフ | 5時間で使用できるものとする。 | |
耐衝撃性 | 衝撃によって割れ及びはがれが生じてはならない。 | |
耐塩水噴霧性 | 塩水噴霧に耐えるものとする。 | |
屋外暴露耐候性 | ― | 6か月間の試験でさび,割れ,はがれ及び膨れがあってはならない。 |
「塗装指針」 2013;附属書 A 塗料規格及び試験方法
SPS 66053-11 厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント
品質
下表には,厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイントの塗料品質,比較のため JIS K5553 2010 「厚膜型ジンクリッチペイント」 2種(厚膜型有機)の品質を紹介する。
JIS 等で規定される品質の「塗装作業性」,「塗膜の外観」については,これらの品質に適合しない塗料の販売が考え難いこと,また,他の品質を検査する際にこの品質は容易に把握できることから,鉄道では,全ての塗料規格でこれらの品質を規定していない。また,実環境で 2年程度の「耐候性」(屋外暴露耐候性)を規定していない。これは,塗料成分の規定により,塗膜の機械的,化学的,及び耐久性の室内試験を行うことで,耐候性が確保できると考えているためである。
項 目 | SPS 66053-11(有機) | JIS K5553( 2種有機) |
---|---|---|
亜鉛末(質量分率 %) | 53以上 | ― |
エポキシ樹脂(質量分率 %) | 3以上 | ― |
硬化剤(質量分率 %) | 1以上 | ― |
溶剤(質量分率 %) | 25以下 | ― |
混合塗料中の加熱残分(%) | 75以上 | |
加熱残分中の金属亜鉛(%) | 70以上 | |
塗膜中の鉛(質量分率 %) | 0.06以下(* 1 ) | ― |
塗膜中のクロム(質量分率 %) | 0.03以下 | ― |
エポキシ樹脂の定性 | エポキシ樹脂を含むこと。 | ― |
容器の中での状態 | 粉は微小で一様な粉末であるものとする。液はかき混ぜたとき堅い塊がなくて一様になるものとする。 | |
乾燥時間 h | 6以下 | |
塗膜の外観 | ― | 塗膜の外観が正常であるものとする。 |
ポットライフ | 5時間で使用できるものとする。 | |
耐衝撃性(デュポン式) | ― | 衝撃によって割れ及びはがれが生じてはならない。(500g,500mm) |
厚塗り性 | 厚塗りに支障があってはならない。 | |
耐水性 | 水に浸したとき,異常がないものとする。 | |
耐塩水噴霧性 | 塩水噴霧に耐えるものとする。 | |
屋外暴露耐候性 | ― | 2年間の試験でさび,割れ,はがれ及び膨れがあってはならない。 |
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厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗の品質
「塗装指針」 2013;附属書 A 塗料規格及び試験方法
SPS 66099-14 厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗
施工時の気温 10℃以上で使用する厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗(常温用),気温 5~20℃程度で使用する厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗・低温用(低温用)がある。
品質
下表には,厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗の塗料品質,比較のため JIS K 5551 2018「構造物用さび止めペイント」B種(反応硬化形エポキシ樹脂塗料)の品質を紹介する。なお,B種には,低温用の規定はないので,低温用との比較に変性エポキシ樹脂を用いた C種 2号を紹介する。
JIS 等で規定される品質の「塗装作業性」,「塗膜の外観」については,これらの品質に適合しない塗料の販売が考え難いこと,また,他の品質を検査する際にこの品質は容易に把握できることから,鉄道では,全ての塗料規格でこれらの品質を規定していない。また,実環境で 2年程度の「耐候性」(屋外暴露耐候性)を規定していない。これは,塗料成分の規定により,塗膜の機械的,化学的,及び耐久性の室内試験を行うことで,耐候性が確保できると考えているためである。
項 目 | SPS 66099-14(常温用) | JIS B種(常温) | SPS 66099-14(低温用) | JIS C種 2号(低温) |
---|---|---|---|---|
顔料(質量分率 %) | 40以上 | ― | 30以上 | ― |
エポキシ樹脂(質量分率 %) | 10以上 | ― | ||
変性エポキシ樹脂または 変性ポリオール(質量分率 %) |
― | 10以上 | ― | |
硬化剤(質量分率 %) | 3以上 | ― | 3以上 | ― |
溶剤(質量分率 %) | 40以下 | ― | 40以下 | ― |
加熱残分 % | 60以上 | ― | 60以上 | ― |
エポキシ樹脂の定性 | エポキシ樹脂を含むこと。 | ― | エポキシ樹脂を含むこと。 | ― |
塗膜中の鉛(質量分率 %) | 0.06以下 | |||
塗膜中のクロムの定量 (質量分率%) |
0.03以下 | |||
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |||
半硬化乾燥性 | 常温 16時間 | 低温 16時間 | 低温 24時間 | |
塗装作業性 | ― | 支障がない。 | ― | 支障がない。 |
塗膜の外観 | ― | 正常である。 | ― | 正常である。 |
ポットライフ | 23℃ 5時間 | 5℃ 5時間 | ||
たるみ性 | ― | たるみがない。 (すき間200μmで流れがない) |
― | たるみがない。 (すき間200μmで流れがない) |
上塗り適合性 | 支障がない。 | |||
耐衝撃性 | 割れ及びはがれがない。 | |||
耐屈曲性 | 直径10mmの折り曲げに 耐えるものとする。 |
― | 直径10mmの折り曲げに 耐えるものとする。 |
― |
付着性 | 分類 1以下 | 分類 1又は分類 0 | ||
耐アルカリ性 | ― | 異常がない | ― | |
耐揮発油性 | ― | 異常がない | ― | |
耐熱性 | ― | 外観が正常である。 試験後の付着性試験で 分類 2,分類 1,又は分類 0 |
||
耐塩水噴霧性 | 192時間の塩水噴霧に 耐えるものとする。 |
― | 192時間の塩水噴霧に 耐えるものとする。 |
― |
サイクル腐食性 | ― | さび,膨れ,割れ及び はがれがない。(120サイクル) |
― | さび,膨れ,割れ及び はがれがない。(120サイクル) |
屋外暴露耐候性 | ― | さび,膨れ,割れ及びは がれがない。(24か月) |
― | さび,膨れ,割れ及び はがれがない。(24か月) |
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(水系)ポリウレタン樹脂塗料中・上塗の品質
「塗装指針」 2013;附属書 A 塗料規格及び試験方法
ポリウレタン樹脂塗料は,有機溶剤を主要な揮発成分とするSPS 66099-11 ポリウレタン樹脂塗料上塗,この塗料を適用するためのSPS 66099-10 ポリウレタン樹脂塗料用中塗がある。この塗料と同じ目的で用いられる JIS 塗料規格には,JIS K5659 2018 「鋼構造物用耐候性塗料」 A種上塗 2級, A種中塗がある。水系ポリウレタン樹脂塗料は,水を主要な揮発成分とするSPS 66099-31 水系ポリウレタン樹脂塗料上塗,この塗料を適用するためのSPS 66099-32 水系ポリウレタン樹脂塗料用中塗がある。この塗料と同じ目的で用いられる JIS 塗料規格には,JIS K5659 2018 「鋼構造物用耐候性塗料」 B種上塗 2級, B種中塗がある。
中塗塗料
下表には,ポリウレタン樹脂塗料用中塗(SPS 66099-10(溶剤系),SPS 66099-32(水系))の塗料品質,比較のため JIS K5659 2018 「鋼構造物用耐候性塗料」A種中塗(溶剤系),B種中塗(水系)の品質を紹介する。JIS 等で規定される品質の「塗装作業性」,「塗膜の外観」については,これらの品質に適合しない塗料の販売が考え難いこと,また,他の品質を検査する際にこの品質は容易に把握できることから,鉄道では,全ての塗料規格でこれらの品質を規定していない。また,実環境で 2年程度の「耐候性」(屋外暴露耐候性)を規定していない。これは,塗料成分の規定により,塗膜の機械的,化学的,及び耐久性の室内試験を行うことで,耐候性が確保できると考えているためである。
項 目 | SPS 66099-10(溶剤系) | JIS K 5659 A種中塗(溶剤系) | SPS 66099-32(水系) | JIS K 5659 B種中塗(水系) |
---|---|---|---|---|
顔料(質量分率 %) | 25以上 | ― | 20以上 | ― |
エポキシ樹脂又は ポリオール樹脂(質量分率 %) |
10以上 | ― | 10以上(エポキシ樹脂) | ― |
アミン樹脂(質量分率 %) | ― | 3以上 | ― | |
硬化剤(質量分率 %) | 1以上 | ― | ||
溶剤(質量分率 %) | 白・淡彩 40以下,他の色 50以下 | ― | 水 50以下,他 10以下 | ― |
NCO基の定性 | NCO基があるものとする。 | - | ||
混合塗料中の加熱残分 % | 白・淡彩は 60以上,その他の色は 50以上 | |||
塗膜中の鉛(質量分率 %) | 0.06以下 | - | 0.06以下 | - |
塗膜中のクロム(質量分率 %) | 0.03以下 | - | 0.03以下 | - |
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |||
低温安定性(-5±2℃) | - | 変質しない。 | ||
表面乾燥性 | 常温 8 時間後,低温 5 ℃ 16 時間後 | |||
塗膜の外観 | - | 塗膜の外観が 正常であるものとする。 |
- | 塗膜の外観が 正常であるものとする。 |
ポットライフ | 5時間以上 | 3時間 | 5時間 | |
隠ぺい率 | 白・淡彩は 90以上,鮮明な赤,及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 | |||
鏡面光沢度(60度) | - | 70 以上 | - | 70 以上 |
上塗り適合性 | 上塗りに 支障があってはならない。 |
- | 上塗りに 支障があってはならない。 |
- |
耐屈曲性 | 折曲げに耐える。( 10mmマンドレル) | |||
耐おもり落下性(デュポン式) | 塗膜に割れ,及びはがれが生じない。 | |||
層間付着性 Ⅰ | 異常がない。 | |||
層間付着性 Ⅱ | 異常がない。 | |||
耐アルカリ性,耐酸性 | - | 異常がない。 (水酸化カルシウム水,硫酸水) |
- | 異常がない。 (水酸化カルシウム水,硫酸水) |
初期耐水性* | - | 8時間以内(23℃) | - | |
耐湿潤冷熱繰返し性 | - | 湿潤冷熱繰返しに耐える。 | - | 湿潤冷熱繰返しに耐える。 |
上塗塗料
下表には,ポリウレタン樹脂塗料上塗(SPS 66099-11(溶剤系),SPS 66099-31(水系))の塗料品質,比較のため JIS K5659 2018 「鋼構造物用耐候性塗料」A種上塗 2級(溶剤系),B種上塗 2級(水系)の品質を紹介する。JIS 等で規定される品質の「塗装作業性」,「塗膜の外観」については,これらの品質に適合しない塗料の販売が考え難いこと,また,他の品質を検査する際にこの品質は容易に把握できることから,鉄道では,全ての塗料規格でこれらの品質を規定していない。また,実環境で 2年程度の「耐候性」(屋外暴露耐候性)を規定していない。これは,塗料成分の規定により,塗膜の機械的,化学的,及び耐久性の室内試験を行うことで,耐候性が確保できると考えているためである。
項 目 | SPS 66099-11(溶剤系) | JIS K 5659 A種上塗(2級) | SPS 66099-31(水系) | JIS K 5659 B種上塗(2級) | ||
---|---|---|---|---|---|---|
顔料(質量分率 %) | 5以上 | ― | 10以上 | ― | ||
ポリオール樹脂(質量分率 %) | 13以上 | ― | 15以上 | ― | ||
硬化剤(質量分率 %) | 1以上 | ― | 3以上 | ― | ||
溶剤(質量分率 %) | 白・淡彩 50以下 他の色 60以下 |
― | 水 60以下,他 10以下 | ― | ||
NCO基の定性 | NCO基があるものとする。 | - | ||||
混合塗料中の加熱残分 % | 白・淡彩は 50以上 その他の色は 40以上 |
40以上 | 白・淡彩は 50以上 その他の色は 40以上 |
|||
塗膜中の鉛(質量分率 %) | 0.06以下 | - | 0.06以下 | - | ||
塗膜中のクロム(質量分率 %) | 0.03以下 | - | 0.03以下 | - | ||
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |||||
低温安定性(-5±2℃) | - | 変質しない。 | ||||
表面乾燥性 | 常温 8 時間後,低温 5 ℃ 16 時間後 | |||||
塗膜の外観 | - | 塗膜の外観が 正常であるものとする。 |
- | 塗膜の外観が 正常であるものとする。 |
||
ポットライフ | 5時間以上 | 3時間以上 | 5時間以上 | |||
隠ぺい率 | 白・淡彩は 90以上,鮮明な赤,及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 | |||||
鏡面光沢度(60度) | 80 以上 | 70 以上 | ||||
耐屈曲性 | 折曲げに耐える。( 10mmマンドレル) | |||||
耐おもり落下性(デュポン式) | 塗膜に割れ,及びはがれが生じない。 | |||||
層間付着性 Ⅱ | 異常がない。 | |||||
耐アルカリ性,耐酸性 | - | 異常がない。 (水酸化カルシウム水,硫酸水) |
- | 異常がない。 (水酸化カルシウム水,硫酸水) |
||
初期耐水性* | - | 8時間以内(23℃) | - | |||
耐湿潤冷熱繰返し性 | - | 湿潤冷熱繰返しに耐える。 | - | 湿潤冷熱繰返しに耐える。 | ||
促進耐候性 | 促進耐候① | 促進耐候② | 促進耐候① | 促進耐候② | ||
屋外暴露耐候性(24か月) | - | 屋外暴露耐候 | - | 屋外暴露耐候 |
促進耐候①:照射時間 500時間で塗膜に,膨れ・はがれ・割れがなく,光沢保持率は,70%以上で,色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化等級が 1以下とする。
促進耐候②:照射時間 1000 時間で塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 1 又は 0,光沢保持率 80%以上。
屋外暴露耐候:塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 2,1 又は 0 ,光沢保持率 40%以上。
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