防食概論:塗装・塗料
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ここでは,塗膜の視覚特性である【鏡面光沢度とは】, 【光の反射】, 【鏡面光沢度の測定】 に項目を分けて紹介する。
塗膜の評価(視覚特性;鏡面光沢度)
鏡面光沢度
JIS K5500「塗料用語」
光沢(gloss)光の反射(能力)で特徴付けられる表面の(光学的)性質。JIS Z 8105「色に関する用語」参照
鏡面光沢度(specular gloss)
面の入射光に対して,等しい角度での反射光,すなわち鏡面反射光の基準面における同じ条件での反射光に対する百分率。
面の光沢の程度を表す。光沢度が比較的大きい塗面では,法線に対して入射角 60度,反射角 60度で測る。これを 60度鏡面光沢度という。鏡面光沢度の基準面として屈折率 1.567 のガラスの平面を用いる。
光沢:表面の方向選択特性のために,諸物体の反射ハイライトが,その表面に写り込んで見えるような見えのモード。【JIS Z8105「色に関する用語」】
一般的には“つや”の有り無しで表現されるように,光の反射で特徴付けられる表面の性質である。
塗膜の鏡面光沢度は,塗膜表面の樹脂の光屈折率のみならず,表面の平滑性などの影響を受ける。すなわち,初期性能のみならず,経時での樹脂劣化や表面平滑性の変化の評価にも用いられる。
光源及び受光器の角度が 20°,60°,又は85°の幾何条件の反射率計を用いて塗膜の鏡面光沢度を測定する試験方法は,JIS K 5600-4-7 :1999 「塗料一般試験方法−第 4 部:塗膜の視覚特性−第 7 節:鏡面光沢度」に規定されている。
なお,光沢度の一般的な測定法については,JIS Z 8741 :1997 「鏡面光沢度-測定方法」に規定されている。
【参考】
光屈折率(refractive index)
真空中の光の位相速度と媒質中の光の位相速度との比。量記号 n で表す。【JIS Z 8120 「光学用語 」】
屈折(refraction)
光がその単色光成分の周波数を変えずに光学的に不均質な媒質中を進むとき,又は異種の媒質間の境界面に入射するとき,位相速度の変化に応じて伝搬方向が変わる現象。【JIS Z 8120 「光学用語 」】
すなわち,波動が進む 1 つの媒質から他の媒質の中に入り込む場合に,その界面で進行方向が変化する現象をいう。物質を構成する結晶の分子・イオンの空間分布が方向に依存しない等方性媒質の間での屈折では,入射角 i と屈折角 r との間にスネルの法則が成り立つ。
位相速度(phase velocity)
波の山や谷の特定の位置が移動する速度のことで,伝播速度ともいわれる。
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光の反射
正反射(regular reflection, specular refrection)
鏡面反射ともいい,幾何光学の反射の法則に従う,拡散がない反射。【JIS Z 8120「光学用語」】
全反射(total reflection)
屈折率の大きい媒質から屈折率の小さい媒質へ光が入射するとき,特定の角以上の入射角で,入射光のエネルギーがすべて反射される現象。【JIS Z 8120「光学用語」】
つや(gloss)
物体の表面から受ける正反射光成分の多少によって起こる感覚の属性。一般に,正反射光成分が多いときに,つやが多いという。塗膜では,光沢度計を用いて,入射角/反射角を 45度/45度,60度/60度などとして鏡面光沢度を測定して,つやの大小の目安とする。【JIS K5500「塗料用語」】
幾何光学(geometrical optics)
光伝播を光線という概念で捕え,直進性,反射,屈折など光線の経路を幾何学的に論じる分野である。
すなわち,干渉や回折などの波動的現象を考えず,光線は一様で,媒質内では直線をなして進むと考えて,レンズで構成される光学系などの実用的な特性の解明を主目的としている。
空間を伝わる波動の位相の等しい点を連ねた面を波面(wave front)といい,波面が球面状の波動を球面波(spherical wave),平面状ならば平面波(plane wave)という。
波動の伝わる方向は,波面に垂直な方向である。この波動の進む線を射線という。一本一本の射線,又はそれらの集合を光線(ray of light)と呼ぶ。
光線は,均質な媒質の中では直進し,異なった媒質の境界面で,光線の反射,屈折が起きる。なお,反射と屈折は,入射面内の法線に対して,入射側と反対側で起きる。
反射の法則(law of reflection)
光の波長に比べてなめらかな2媒質の境界面で反射するとき成り立つ法則。
入射光線と反射光線は入射点で媒質の境界面に立てた法線と同じ平面上にあり,かつ法線に関して反対側にある。
媒質 1を経て入射した光線が他の媒質 2との境界面で反射するとき,境界面の法線に対して θの角度で入射した光線は入射面内で法線に対して -θの角度をなす方向に反射される。すなわち反射において入射角と反射角は等しく逆符号であることをいう。
【参考】
拡散反射(diffuse reflection)
巨視的にみて正反射(鏡面反射)が認められない反射による拡散。【JIS Z 8120「光学用語」】
拡散反射では,物体表面に入射した光束が,その表面から映像を作らないような状態で各方向に反射される。
拡散反射率(diffuse reflectance, reflectance)
面の入射光に対する拡散光の割合。面の色の明るさを表す。通常は,面の法線に対して 45度で光を当て,法線方向(受光角 0度)で計測する。これを 45度,0度拡散反射率という。【JIS K5500「塗料用語」】
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鏡面光沢度の測定
JIS K 5600-4-7「塗料一般試験方法:鏡面光沢度」
【適用範囲】この規格は,20°,60°,又は85°の幾何条件の反射率計を用いて塗膜の鏡面光沢度を測定する試験方法について規定する。この試験方法はメタリック塗料の光沢度測定には適さない。
a) 60°の幾何条件は,すべての塗膜に適用できるが,非常に高光沢度の場合,及びつや消しに近い塗膜の場合は 20°,又は 85°がより適している。
b) 20°の幾何条件は,受光器のより小さい開き角を使用しており,高光沢度の塗膜(すなわち,60°鏡面光沢度が約 70以上の塗膜間の差異をよりよく出すことを意図している。
c) 85°の幾何条件は,低光沢塗膜(すなわち,60°鏡面光沢度が約 10以下の塗膜)間の差異をよく出すことを意図している。
【装置】
試験板
試験板は鏡質のガラスとし,厚さは少なくとも 3mm以上,大きさは少なくとも 150mm×100mm以上でなければならない。
フィルムアプリケータ
ガラス板との間に 150±2μmのすき間を形成するフィルムアプリケータ,又は塗膜を得るその他の方法が用いられなければならない。
備考:このフィルムアプリケータは約 75μmのウェット塗膜厚を作る。
鏡面光沢度計
鏡面光沢度計は,光源,試料表面に光の平行光を導くレンズ及び受光室などから構成され,入射光の軸は試料面の法線に対して 20±0.5°,60±0.2°,85±0.1°とする。受光器の軸は入射光の軸の鏡像に対して±0.1以内で一致するものとする。
参照標準
一次参照標準
屈折率が可視波長範囲全域にわたって,一定値 1.567であるガラス表面において,規定された入射角θでの鏡面光沢度を基準とし,この値を 100%として表す。
備考:一次参照標準は鏡面光沢計の日常の校正に使用されるものではない。
実用参照標準
実用参照標準は,セラミックタイル,ほうろう,不透明ガラス,磨いた黒色ガラス,又は均一な光沢度のある他の材料から作られ,一次参照標準に対して校正されているものとする。
ゼロの参照標準
反射率計のゼロの点を点検するために,適切な標準(例えば,黒ビロード,黒フエルトの黒い箱)を使用する。
【手順】
光沢度測定
光沢度計の校正後,ガラス板上の試験塗膜について塗装方向に平行な異なった位置で 3回の読取りを行い,一連の測定終了後,ドリフトがないことを確かめるために高光沢度の実用参照標準に対して点検を行う。
読み取り値の開きが 5単位未満の場合は鏡面光沢度としてのその平均値を報告し,5単位以上の場合は更に 3個の値を読み取り,合計 6個の値の平均値及び幅を報告する。
ガラス板以外の素地上の塗膜の測定は,互いに直角の 2方向で,各々につき 3回の計 6個の読み取りを行い,その平均値及び幅を報告する。
【参考】
測定方法の種類 | 方法 1 | 方法 2 | 方法 3 | 方法 4 | 方法 5 |
---|---|---|---|---|---|
名称 | 85 度鏡面光沢 | 75 度鏡面光沢 | 60 度鏡面光沢 | 45 度鏡面光沢 | 20 度鏡面光沢 |
記号 | GS ( 85°) | GS ( 75°) | GS ( 60°) | GS ( 45°) | GS ( 20°) |
適用例 | 塗膜,アルミニウムの陽極酸化皮膜,その他 | 紙,その他 | プラスチック,塗膜,ほうろう,アルミニウムの陽極酸化皮膜,その他 | ||
適用範囲 | 方法 3 による光沢度が 10 以下の表面 | ― | ― | ― | 方法 3 による光沢度が 70 を超える表面 |
JIS K 5516 「合成樹脂調合ペイント」,及びJIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」では,試験片の作製を除き,JIS K 5600-4-7 「鏡面光沢度」に準じて試験されている。
【試験片の作製】
JIS K 5516 「合成樹脂調合ペイント」
試料をガラス板(200×150×5mm)の片面に,すき間 100μmのフィルムアプリケータを用いて塗り付け,水平において 48 時間乾燥させたものを試験片とする。
JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」
試験板(200×100×2mm)にすき間 150μmのフィルムアプリケータによって塗り付け,標準状態で 72時間塗面を水平に置いたものを試験片とする。
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