防食概論塗装・塗料

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 ここでは,鋼橋塗装に適用される防食塗装について, 【鋼道路橋の防食塗装系】, 【新設時用塗装系】, 【塗替え塗装用塗装系】 に項目を分けて紹介する。

 道路橋の防食塗装(新設塗装)

 鋼道路橋の防食塗装系

 橋梁などの構造物に適用される塗装系は,塗装時期により橋梁新設時の新設時塗装,既に供用されている橋梁の補修時の塗替え塗装に分けられる。また,適用する部材・部位により大気に直接さらされる大面積の一般外面用,箱桁等の内部で,ほぼ密封空間となり日照(紫外線)の影響を受けない内面用,道路ではアスファルト敷設などにより比較的高い温度となる鋼床版裏面用,摩擦接合部など添接部の接触面用,添接部に用いる高力ボルト表面用などに分けられる。
 また,塗装下地の材質によっても,鉄鋼の表面に適用される鋼面用,溶融亜鉛めっき鋼に適用される溶融亜鉛めっき鋼用の,亜鉛や亜鉛・アルミニウム合金を溶射した鋼に適用される金属溶射面用,コンクリート橋などに適用されるコンクリート面用なども分けられる。
 
 ここでは,道路分野の鋼橋塗装で用いる 2005年改訂の「鋼道路橋塗装・防食便覧」に記載される主な塗装系を紹介する。

 塗装系記号について

 「鋼道路橋塗装・防食便覧」では,1971年から採用されている前身の「塗装便覧」での考え方を踏襲し,次に示すように,用途別の塗装系記号が用いられている。
 A 塗装系:一般外面・一般環境用,
 B 塗装系:一般外面・やや厳しい腐食環境用,
 C 塗装系:一般外面・腐食環境用,
 D 塗装系:箱げた等内面用,
 F 塗装系:現場添接部用
 新設時塗装系大文字で,塗替え塗装系は2005年までは小文字で,2005年からは R+小文字で表記される。なお,同じ用途であるが,用いる主な塗料種の異なる塗装系は,英記号の後の数値で分類している。
 
 この考え方は,塗装系の記号から用途を容易に示すメリットはあるが,用いた塗料種は,塗装時に採用した「便覧」の発行年により異なるため,塗替え塗装などで旧塗膜に用いられた塗料種を容易に把握できないディメリットがある。
 すなわち,後述の「鋼道路橋・塗替え塗装の基本」(旧塗装系の変遷)に示すように,「便覧」の 3回の改訂により同じ記号で複数の塗料種が用いられているため,塗装された年代と対比しないと旧塗膜の塗料種を確認できない。
 具体例として,塗装系 C-3 は,1971年には,ジンクリッチペイント+ポリウレタン樹脂系プライマー+ポリウレタン樹脂塗料を用いた塗装系であったが,1979年には,厚膜型ジンクリッチペイント+フェノールジンククロメート下塗+フェノール MIO中塗+塩化ゴム系塗料の塗装系に変わり,さらに 1995年に無機ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂塗料下塗+エポキシ樹脂 MIO塗料+ふっ素樹脂塗料に変わり,2005年には廃止されている。
 
 【参考】
 「鋼道路橋塗装・防食便覧」(日本道路協会)
 改訂後 20数年が経過している「鋼道路橋塗装便覧」と「鋼道路橋塗装・防食便覧」を統合し,2005年12月つけで「鋼道路橋防食便覧」として刊行された。その後の知見を加えた改訂版が2014年05月に刊行されている。

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 新設時用塗装系

 2005年改訂の「鋼道路橋塗装・防食便覧」に記載される新設時の塗装系を次に示す。

鋼道路橋:新設時塗装系一覧
  適用個所    記号等    塗料構成    備  考 
  一般外面用   A-5    長ばく形エッチングプライマー + 鉛・クロームフリーさび止めペイント +  
  長油性フタル酸樹脂塗料中塗 + 長油性フタル酸樹脂塗料上塗
  一般環境でLCCを考慮する必要のない場合,20年以内に架け替えが予定されている場合。
C-5   無機ジンクリッチペイント + エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  ふっ素樹脂塗料用中塗 + ふっ素樹脂塗料上塗
  A-5を適用する場合を除き,原則として用いられる塗装系。
  内面用 D-5   無機ジンクリッチプライマー + 変性エポキシ樹脂塗料内面用   箱桁外面にC-5塗装系を適用した場合の箱桁内面用。
D-6   長ばく形エッチングプライマー + 変性エポキシ樹脂塗料内面用   箱桁外面にA-5塗装系を適用した場合の箱桁内面用。
  鋼床版 上面   無機ジンクリッチペイント   舗装施工までの防せい用。
外面   C-5塗装系と同等   外面には,180℃程度に耐えるC-5塗装系を適用。
内面   D-5塗装系と同等   内面には,180℃程度に耐えるD-5塗装系を適用。
  接合部 F-11   無機ジンクリッチペイント + 変性エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  超厚膜形エポキシ樹脂塗料 + ふっ素樹脂塗料用中塗 + ふっ素樹脂塗料上塗
  一般外面にC-5塗装系を用いる場合の現場高力ボルト接合部の外面塗装系, 
  300μmタイプの超厚膜形エポキシ樹脂塗料を用いる。 
  箱桁内面には,中・上塗り塗料を省略した超厚膜形エポキシ樹脂塗料仕上げの仕様(F-12塗装系)を用いる。
合せ面   無機ジンクリッチペイント   一般外面にC-5塗装系を用いる場合の 
  高力ボルト接合部の合せ面は,片面当たりの最小乾燥膜厚30μm, 
  接触面の合計乾燥膜厚90~200μmの厚み制限がある。 
  塗料は,亜鉛含有量80%以上,亜鉛末の粒径10μm程度以上のものを用いる。
F-13   有機ジンクリッチペイント + 変性エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  ふっ素樹脂塗料用中塗 + ふっ素樹脂塗料上塗
  一般外面にC-5塗装系を用いる場合の現場溶接部の塗装系。 
  箱桁内面には,有機ジンクリッチペイント+超厚膜形エポキシ樹脂塗料仕上げの仕様(F-14塗装系)を用いる。
  溶融亜鉛めっき ZC-1   亜鉛めっき用エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  ふっ素樹脂塗料用中塗 + ふっ素樹脂塗料上塗
  外面用塗装系
ZD-1   亜鉛めっき用エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  変性エポキシ樹脂塗料内面用
  内面用塗装系
  金属溶射   ミストコート + エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  ふっ素樹脂塗料用中塗 + ふっ素樹脂塗料上塗
 
  コンクリート面 CC-A   コンクリート塗装用エポキシ樹脂プライマー + コンクリート塗装用エポキシ樹脂パテ +  
  コンクリート塗装用エポキシ樹脂塗料中塗 + コンクリート塗装用ふっ素樹脂塗料上塗
  ひび割れ頻度が極めて低い場合。
CC-B   コンクリート塗装用エポキシ樹脂プライマー + コンクリート塗装用エポキシ樹脂パテ +  
  コンクリート塗装用柔軟形エポキシ樹脂塗料中塗 + コンクリート塗装用柔軟形ふっ素樹脂塗料上塗
  多少のひび割れの発生が懸念される場合。

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 塗替え塗装用塗装系

  2005年改訂の「鋼道路橋塗装・防食便覧」に記載される塗替え時の塗装系を次に示す。

鋼道路橋:塗替え塗装系一覧
  適用個所    記号等    塗料構成    備  考 
  一般外面用    Ra-Ⅲ    鉛・クロームフリーさび止めペイント +  
  長油性フタル酸樹脂塗料中塗 + 長油性フタル酸樹脂塗料上塗 
  旧塗膜Aの塗膜寿命が十分に残存し,適切な管理体制が期待できる場合, 
  構造物の残存寿命が20年程度の場合。 
  Rc-Ⅰ    有機ジンクリッチペイント + 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗 + 弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗 
  旧塗膜A,又はB(塩ゴム)の塗替え, 
  素地調整程度1種(ブラスト処理)で旧塗膜を完全に除去する。 
  Rc-Ⅱ    有機ジンクリッチペイント + 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗 + 弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗 
  旧塗膜B(塩ゴム)の塗替え, 
  素地調整でブラスト処理が適用できない場合, 
  素地調整程度2種で旧塗膜を除去する。 
  Rc-Ⅲ    弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗 + 弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗 
  旧塗膜A,B,Cの塗替え, 
  素地調整にブラスト処理が適用できない場合で, 
  素地調整程度3種を適用(活膜を残す)した場合。 
Rc-Ⅳ    弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗 + 弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗 
  旧塗膜Cの塗替え, 
  旧塗膜に欠陥がなく,素地調整程度4種で, 
  美観の回復を目的とした場合に適用する。 
  塗装仕様は,RC-Ⅲ塗装系の下塗り塗料の塗り回数を減じた塗装系。 
  内面用    Rd-Ⅲ    無溶剤形変性エポキシ樹脂塗料    旧塗膜Dの塗替え, 
  暗く十分な換気が確保できない場合の内面用。 
  溶融亜鉛めっき    Rzc-Ⅰ    亜鉛めっき用エポキシ樹脂塗料下塗 +  
  ふっ素樹脂塗料用中塗 + ふっ素樹脂塗料上塗 
  溶融亜鉛めっき鋼材の部分的な補修塗装用。 
  赤錆の発生した場合,金属溶射被膜がはがれた場合などは 
  Rc-Ⅰ塗装系を適用する。 

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