防食概論:塗料・塗装

 技術用語関連のページ探しは
    “キーワード索引”

 関連機関へのリンク,防食関連書籍は
    “お役立ち情報”

  ☆ “ホーム” ⇒ “腐食・防食とは” ⇒ “塗料・塗装” ⇒

         ジンクリッチ塗料の特徴

 ジンクリッチ系塗料は,塗膜形成要素としてアルキルシリケート(無機高分子材料)を用いる無機系,エポキシ樹脂などの有機高分子材料を用いる有機系に分けられる。
 有機系ジンクリッチペイントは,他のエポキシ樹脂塗料などと同等に扱うことができる。一方,無機ジンクリッチペイントは,次に示すように,他の有機系塗料と大きく異なる特徴がある。
 第 1にミストコートを必要とすること,第 2に施工時の制約として相対湿度 50%以上と下限値が設けられていることである。

【性能の比較】

 鋼構造物への適用が多い無機ジンクリッチプライマー,厚膜形ジンクリッチペイント 1種(無機)及び厚膜形ジンクリッチペイント 2種(有機)の性能や施工性に関する特性の違いをまとめて表に示す。


性能比較
  項  目   無機ジンクリッチプライマー  厚膜形ジンクリッチペイント
1種(無機)
 厚膜形ジンクリッチペイント
2種(有機)
  亜鉛含有量(%)    80以上    75以上    70以上 
  標準膜厚(μm)    15~20    75    75 
  硬化機構    大気中の水(湿気)による
  アルキルシリケートの加水分解縮合 
  エポキシ樹脂と硬化剤の
  混合による反応硬化 
  犠牲防食性能    良好    良    やや劣る 
  付着性    やや良好(薄膜のため)    低い(凝集破壊)    良好 
  耐衝撃性    良好(薄膜のため)    低い    良好 
  施工時の制約    気温2℃以上
  相対湿度50%以上,80%以下 
  気温5℃以上,
  相対湿度80%以下 
  塗り重ね    ミストコート不要    ミストコート必須    ミストコート不要 
 塗膜厚み 15~20μmで塗装されるジンクリッチプライマーに比較し,塗膜厚み 75μmを期待して塗装される厚膜形ジンクリッチペイントは,樹脂成分が多い設計となっている。

【ミストコートとは】

 空隙の多い素地に塗料を塗付ける場合に,そのまま塗付けると空隙中の空気と塗り付けた塗料との置換が起き,塗付けた塗膜に泡やピンホールが発生する。
 これを防止するため,浸透性の高い塗料をあらかじめ塗り付け,表層の空隙を樹脂で埋めてから次の塗料を塗付ける方法がとられる。浸透性の高い塗料をミストコートといい,塗装系の塗膜厚みには寄与しない塗料である。
 一般的には,その上に塗付ける塗料を溶剤で約 2倍に希釈した塗料をミストコートとして用いる。

【亜鉛末と樹脂の体積について】

 ここで,厚膜形ジンクリッチペイント 1種(無機)の塗膜に空隙が生じる理由を考える。第一に,樹脂が顔料の空隙を充填できるほど十分な量があるのかについて検討する。
 亜鉛の密度 7.14 g/cm3,樹脂(アルキルシリケート)の密度を 1.1~1.4 g/cm3とし,硬化塗膜中の亜鉛末含有量を 75%としたときの顔料(亜鉛末)の占める体積 PVC(pigment volume concentration:顔料体積率)は,37~42%と計算される。亜鉛末含有量 80%の場合では PVC= 38~44%となる。
 すなわち,樹脂の体積は,亜鉛末含有量 75%のときに 58~63%,亜鉛末 80%のときで 56~62%となる。
 

最密充填構造

最密充填構造

 一方,亜鉛末を直径の等しい球体と仮定し,亜鉛の粒子が最密充填構造を取ったとき亜鉛の占める体積は,体心立方格子で約 68%,面心立方格子で約 74%となる。すなわち,亜鉛粒子間の空隙の占める体積は,体心立方格子で約 32%,面心立方格子で約 26%になる。
 厚膜形ジンクリッチペイント 1種(無機)は,亜鉛末含有量 80%のときの樹脂の体積が 56~62%である。これは,空隙の体積を超える量であり,塗料は亜鉛粒子間の空隙を埋めるのに十分な量の樹脂を含有しているといえる。
 
 仮に,空隙の体積が最大となる状況,すなわち亜鉛粒子が不規則な形状の場合を想定する。この場合は,コンクリート中の粗骨材(砕石)の充填と同様に考えることができる。この場合の固体の占める体積は45%程度といわれている。
 すなわち,厚膜形ジンクリッチペイント 1種(無機)の亜鉛末は,粒径にばらつきはあるものの,ほぼ球形の粒子であるので,コンクリート中の骨材の占める体積より大きいと考えられるので,亜鉛粒子の占める体積は,最少でも 45%(空隙の体積 55%)となり,この場合でも空隙の体積は,樹脂の量( 56~62%)より十分に小さいことになる。
 従って,樹脂不足による空隙発生は考え難い。にもかかわらず,厚膜形ジンクリッチペイント 1種(無機)では,ミストコートが必須な状況,すなわち多量の空隙を塗膜内部に含有している。この理由としては,次の節で考察するように,塗料の硬化反応に起因する空隙と考えるのが妥当である。

 ページのトップへ