防食概論:塗料・塗装

 技術用語関連のページ探しは
    “キーワード索引”

 関連機関へのリンク,防食関連書籍は
    “お役立ち情報”

  ☆ “ホーム” ⇒ “腐食・防食とは” ⇒ “塗料・塗装” ⇒

         塗替え塗装(竣工検査)

 事業者は,塗装工程の最後に計画通りに塗装されたかを確認するため竣工検査(inspection of completion, final inspection)を実施する。竣工検査では,工事記録などの書類検査が中心になる。
 検査結果に疑義が生じた場合や信頼性確保の目的で抜き打ち的に事業者自ら検査することもある。この場合に,塗膜の防食性能に影響する項目として,計器を用いた乾燥膜厚(dry-film thickness),外観観察による塗膜観察(coating inspection)などである。

 【膜厚の管理】

 塗装作業中の塗膜厚みの管理は,前項で紹介したJIS K 5600-1-72014「膜厚」に規定されるぬれ膜厚(wet-film thickness)の測定に準じた質量法(difference in mass)を応用した方法が適用される。これを使用量管理,又は空缶検査という。
 竣工検査で膜厚に疑義が生じた場合は,抜き打ち的な膜厚検査が実施される。しかし,この段階では,乾燥膜厚の評価となる。塗替塗装では,腐食箇所など素地の大きな凹凸活膜として残した旧塗膜の影響が大きく,電磁現象を用いた非破壊検査(non destructive inspection)による塗替え塗装で塗り付けた塗膜を的確に測定できない。
 そこで,破壊検査になるが,JIS K 5600-1-72014「膜厚」に規定される測定法 6B くさび形切削法が採用される。
 この方法では,くさび形に切削した塗膜断面の拡大観察を伴うので,各層の塗装の事実,層別の塗り付け厚さも把握できる。
 ただし,この方法は,微小領域の観察しかできないので,塗装面全体の平均的状況を反映していないことに注意しなければならない。
 従って,塗装面全体の平均的評価を目的とする場合には,統計学的に意味のあるサンプリング数の調査が必要になる。
 また,調査個所は,素地に達する塗膜欠陥となるので,補修塗装が必要になる。
 

くさび形切削法

くさび形切削法
写真出典:(株)サンコウ電子研究所 カタログ

   ページのトップへ

 【塗膜の外観検査】

 塗膜の外観観察は,竣工検査時のみならず,各層の塗装作業終了時にも施工会社が実施する。検査では,次に例示する塗膜変状(harmful alteration, deformation)の有無を確認し,塗膜変状が観察された場合は,変状程度に応じた適切な措置(action)が行われる。

    塗膜変状の概要
  • 防食性能に影響する重大な変状
     ピンホール(Pin hole):被膜を貫いて,素地や下地まで達している微細孔。
     はじき(Cissing):塗面の表面が不均一で,その分布とその程度が一様でない現象。
     (Bubbling):塗った膜の中の一時的又は永続的な泡。
     割れ(cracking):塗装中の乾燥過程で生じた深い割れ。
     リフティング(Lifting):次の塗料を塗ったことによって素地から浮き上がる現象。
  • 程度が甚だしいと防食性能に影響する変状
     しわ(wrinkling):乾燥中の塗膜に発生するしわ。
     刷毛(はけ)目(brush mark):刷毛目が消えずに残る現象。
     たるみ,たれ(sagging):塗料の層が下方に移動して起こる局部的な膜厚の異常。
     ゆず肌(orange peel):オレンジの表面の肌に似ている感じの塗膜の外観。
  • 程度が甚だしいと外観に影響する変状
     色むら(mottle):塗膜の色が部分的に不均等な状態。
     白化,かぶり(blushing):塗料の乾燥過程で起こる塗膜の白化現象(ミルク状の乳白色を呈する現象)。
     透け(lack of biding):下地が透けて見える現象。
 【参考】
 ピンホール(塗膜の)(pore, pinhole)
 被膜を貫いて,素地や下地まで達している微細孔。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 塗膜に針で作ったような小さな孔がある欠陥。肉眼で見分けられる程度の小さな孔をいう。【JIS K5500「塗料用語」】
 はじき(塗膜の)(cissing, crawling)
 塗面の表面が不均一で,その分布とその程度が一様でない現象。下地面と塗料との間の表面張力の不均等などによって起こる。備考:crawling は cissing の極端な形である。【JIS K5500「塗料用語」】
 泡(塗膜の)(bubbling, bubble)
 塗った膜の中の一時的又は永続的な泡。塗料を塗ったときにできた空気若しくは溶剤蒸気又はその両者の泡が消えないで残ったものが多い。【JIS K5500「塗料用語」】
 割れ(塗膜の)(crack, craking)
 老化の結果,塗膜に現れる部分的な裂け目。ISOでは,割れの方向性の有無,発生密度,割れの幅と深さによって評価する。また,割れの形態によっても区分する。
 備考:ヘアクラック,わに皮割れ及びからす足状割れは,割れの形状の自明な例。塗膜に現れる部分的な割れの状態によって,次のように分ける。程度の低いもの,浅いものから,ヘアクラック,チェッキング,クレージング,わに皮割れ,深割れ,からす足状割れ。【JIS K5500「塗料用語」】
 リフティング(塗膜の)(lifting, raising)
 次の塗料を塗ったことによって乾燥塗膜の軟化,膨潤(※1)して素地から浮き上がる現象。この欠陥は,下層塗膜の塗膜形成要素(※2)に対する上層塗料の溶剤の作用によって塗装又は乾燥の間に発生する。
 (※1)膨潤とは,液体又は蒸気を吸収し,その結果,膜の体積が増加する現象。
 (※2)塗膜形成要素とは,膜を形成するための主成分のことです。例えば,油性塗料の乾性油,ニトロセルロース塗料のニトロセルロース,セラック二スのセラックなどがある。【JIS K5500「塗料用語」】
 しわ(塗膜の)(wrinkling, crinkling, shrivelling, rivelling)
 乾燥中に塗膜に発生するしわ。通常は上乾きが著しいときに,表面の面積が大きくなってできる。しわには,平行線状,不規則線状,ちりめんじわ状などがある。“ちぢみ”とはいわない。【JIS K5500「塗料用語」】
 刷毛目(塗膜の)(brush marks, brush mark)
 流展性の悪い塗料をはけで塗ったとき,はけ目が消えずに残る現象。【JIS K5500「塗料用語」】
 たるみ(塗膜の)(sags, sagging)
 垂直又は傾斜した面に塗料を塗ったとき,乾燥までの間に,塗料の層が下方に移動して起こる局部的な膜厚の異常。半円状,つらら状,波状又はカーテンのひだ状などになる現象をいう。厚く塗り過ぎたとき,塗料の流動特性の不適,大気状態の不敵などによって起こりやすい。
 備考:小さな sags は流れ(runs),涙滴(tears),小滴(droplets)と呼ばれ,幅広のカーテンのひだ状の外観を呈する大きな sags はカーテン(curtains)と呼ばれる。【JIS K5500「塗料用語」】
 ゆず肌(塗膜の)(orange peel)
 オレンジの表面の肌に似ている感じの塗膜の外観。吹付け塗りのときに,塗料の流展性の不足によって起こる塗料又は塗装上の欠陥。蒸発の遅い溶剤を添加するか,うすめ方を多くすれば,ゆず肌は少なくなる。塗膜について,”みかん肌”というのは適切ではない。【JIS K5500「塗料用語」】
 ゆずの実の表皮のような小さなくぼみのある塗膜の外観。オレンジピールともいう。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 色むら(塗膜の)(mottle,irregular colour)
 塗膜の色が部分的に不均等な状態。塗料の欠陥,塗装の欠陥,塗膜の成分の分解,変質などで起こる。【JIS K5500「塗料用語」】
 仕上がりの色調が品物の部分で異なる外観。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 白化(塗膜の)(blushing)
 塗料の乾燥過程で起こる塗膜の白化現象(ミルク状の乳白色を呈する現象)。溶剤の蒸発で空気が冷やされ,その結果,凝縮した水分が塗料の表層に浸入し,又は溶剤の蒸発中に混合溶剤間の溶解力の均衡が失われて,塗膜成分のどちらかが析出するために起こる。通常,ラッカーなど揮発乾燥形塗料に起こりやすい。高湿で起こるものを”moisture blushing”といい,セルロース誘導体が析出する現象を”cotton blushing”といい,樹脂が析出する現象を”gum blushing”という。【JIS K5500「塗料用語」】
 かぶり(塗膜の)(blushing)
 空気中の湿気が塗膜の中で凝縮して塗膜表面が白くにごる現象。⇒ 白化
 透け(塗膜の)(lack of biding)
 下地が透けて見える現象。一般に隠ぺい力が小さい塗料を用いたり,下塗りと上塗りとの色差が大きいときに起こりやすい。【JIS K5500「塗料用語」】

 ページのトップへ