防食概論:塗料・塗装

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 塗装系(塗装システム)への一般的要求性能,及び基礎用語を紹介する。

         はじめに

 現行の塗料単品(単層膜では,塗装に対する全ての要求性能を満足するのは困難である。そこで,一般的には,特性の異なる塗料を複数用い,複合塗膜を構成する塗装システム(塗装系)として,要求性能を満足できるように塗装設計される。
 例えば,鋼橋などに用いる防食塗装では,次に示す基本性能が要求される。
  腐食による鋼材の板厚み減少を抑制すること(防せい性)。
  構造物検査(疲労亀裂,ボルトゆるみ,変状・変位など)に支障しないこと(構造物検査性)。
  近隣住民や付近通行者に被害を与えないこと(公衆安全性)。
  架設地域の景観に悪影響を与えないこと(景観維持性)。

【防食塗装系の要求性能】

 要求性能 ① : 防せい性
 構造物の防食塗装では,適切な素地調整に加えて,防食性能を強化したプライマー下塗り塗料の選択が,塗装系の防食性能に大きく影響する。
 上塗り塗料は,下塗り塗料の防食性能を長期間維持することを目的に用いられるのが一般的である。すなわち,上塗り塗料(中塗り塗料とセットで)は,要求性能 ④ の対応に加えて,下塗り塗膜の保護も要求性能の一つになる。
 
 要求性能 ② : 構造物検査性
 例えば,鋼の疲労による亀裂発生(金属疲労)は,構造物の健全性(安全性)に大きな影響を与えるため,定期的な構造物検査の目視による外観観察における重要な調査項目になっている。
 目視調査では,構造上で金属疲労の疑わしい個所・部位において,疲労亀裂に伴い破壊された塗膜(塗膜割れ,さび汁発生)の有無を注意深く観察している。
 この検査方式が続く限り,防食塗膜には,疲労亀裂の発生時点で,容易に塗膜が破壊される特性(硬さ及び伸び)が求められる。
 この性能は,複合塗膜として求められる性能である。
 
 要求性能 ③ : 公衆安全性
 例えば,健康被害を与えるような有害成分(例えば,塩化ゴム塗膜中のPCBなど)の使用に加えて,シート状の塗膜落下による交通障害や人的被害に至らないことが求められる。
 環境影響や健康被害に影響する化学成分は,時代と共に変化(増加)する。PCBのように,塗料採用時には,有害性の認識が低く,法規制されていない化学物質が,ある時点で突然の規制対象になることもある。
 構造物管理者としては,塗膜機能の向上に寄与しても,有害性の疑われる化学物質を使用した塗料の採用には細心の注意が求められる時代になっている。
 塗料構成材料の影響以外にも,構造物の下に道路などがある場合に,大面積での塗膜はがれで,通行者や交通機関へ悪影響を与える場合もある。塗膜の付着性,特に経年での下塗り塗膜と素地との付着性低下が問題となる。
 
 要求性能 ④ : 景観維持性
 構造物の防食塗装では,ランドマーク的構造物を除き,自動車や家電品の塗装のような高い景観性能は求められない。
 しかし,地域のカラーイメージに適合すること,塗替え塗装間隔(20年程度,それ以上)での汚損や変色を考慮した色彩設計など,地域住民等に不快感を与えない程度の景観維持性能 が求められる。

【基礎用語】

    JIS K 5500「塗料用語」を中心に,塗膜,及び塗膜試験に関する主な基礎用語を紹介する。
  • 塗装系(coating system, paint system)
     塗装される,又は既に塗装されている塗料の塗膜層の総称。塗装の目的・効果を満足するように作った,地肌塗りから上塗りまでの塗り重ね塗膜の組合せを総称する用語。
     塗装系は,通常,乾燥(硬化)に必要な適切な間隔をおいて,指定の順番で,別々に塗装された複数の塗膜から構成される。
  • 耐久性(durability)
     物体の保護,美装など,塗料の使用目的を達成するための,塗膜の性質の持続性。
  • 耐候性(weather resistance)
     屋外で,日光,風雨,露霜,寒暖,乾湿などの自然の作用に抵抗して変化しにくい塗膜の性質。
     塗膜の耐候性を評価する試験方法には,JIS K 5600-7-6 「塗料一般試験方法-第 7 部:塗膜の長期耐久性-第 6 節:屋外暴露耐候性」がある。なお,類似の用語“促進耐候性試験”は,自然の作用の一部を強化した人工試験で,耐候性とは意味合いが全く異なるので注意が必要である。
  • 促進耐候試験(accelerated weathering test, accelerated weathering, artificial weathering)
     塗膜は屋外にさらされると,日光,雨風などの作用を受けて劣化する。この種の劣化の傾向の一部を短時間に試験するために,紫外線,又は太陽光に近似の光線などを照射し,水を吹き付けるなどして行う人工的な試験。
     この試験結果を“塗膜の耐候性”と誤解する例が多いので注意が必要である。誤解を避けるため,促進耐候試験から人工環境試験や促進耐光試験などに名称を変えるべきと考えている技術者も多い。
  • 耐水性(water resistance, waterproof)
     塗膜が,水の化学的作用,又は物理的作用に対して変化しにくい性質。
     試験片を水に浸して,しわ,膨れ,割れ,はがれ,つやの減少,曇り,変色などの有無や程度を調べる。
  • 耐塩水性(salt water resistance)
     食塩水の作用に対して変化しにくい塗膜の性質。
  • 耐液体性(resistance to liquids)
     液体の作用に対する,塗料,又は関連製品の単一塗膜または多層塗膜系の抵抗性(耐性)。
  • 耐薬品性(chemical resistance)
     塗膜が酸,アルカリ,塩などの薬品の溶液に浸しても変化しにくい性質。
  • 塩水噴霧試験(salt spray test, salt spray testing)
     食塩水溶液を噴霧状にして吹きこんだ器中に試験片を入れて金属材料,被覆金属材料,塗装金属材料などの防食性を評価する試験。
  • 複合サイクル試験(combined cyclic corrosion test)
     腐食環境条件の組み合わせを変化させたものを 1 サイクルとしてこれを繰り返し行い,試験片の腐食や被覆の劣化などの状態を調べる試験。
  • 老化(ageing, aging)
     塗膜の性質が経時的に不可逆な変化をする現象。
     この経時的な変化には,劣化を意味する老化と品質向上を意味する熟成とがある。
  • 変色(discoloration , discoloring)
     塗膜の色の色相・彩度・明度のどれか一つ,又は一つ以上が変化する現象。
     変色は,現象により,塗膜の色が黄色を帯びる“黄変”,塗膜の顔料が表に移り出てくる“移行”,彩度が小さく(明度が大きく)なる“退色”などとも呼ばれる。
  • 白亜化(chalking)
     膜の成分の一つ,又はそれ以上が劣化して膜の表面に微粉がゆるく付着したような外観になる現象。
     白亜化(はくあ化,チョーキング)の程度を調べるには,簡易には指先,フェルト,ビロードなどで塗膜の表面を軽くこすって,粉末状のものが塗面から離れて指先などに付着する程度を見る。
     定量的な評価は,JIS K 5600-8-6 に従い,指定の粘着テープを塗面において,指で強くこすり,付着した粉末状物質の量を標準写真と比較して調べる。
  • (塗膜の)(color , color of film )
     塗膜から反射する光の分光組成の差による視感覚の特性。
     一般に色相,明度,彩度の三属性によって表される。特性の評価に関する規格にはJIS K 5600-4-3「塗料-般試験方法-第4部:塗膜の視覚特性-第3節:色の目視比較」,JIS Z 8721 「色の表示方法-三属性による表示」がある。
  • つや(gloss)
     物体の表面から受ける正反射光成分の多少によって起こる感覚の属性。
     塗膜のつやを表す用語には,つやの程度によって,高光沢(high gloss):光沢が高い状態,つやあり(glossy):塗膜のつやがある状態,エッグシェル(卵殻)光沢(eggshell gloss):卵の殻の表面のような半つやに近い状態,つやなし(つや消し)(flat,matt):塗膜のつやがない状態,しゅす(繻)つや(satin gloss):絹のようなつや。

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