防食概論:塗装・塗料
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ここでは,単一塗膜及び複合塗膜(塗装系)の性能規格について,【規格とは】, 【塗膜性能の評価とは】, 【塗膜物性の JIS試験規格】, 【塗膜耐久性の JIS試験規格】 に項目を分けて紹介する。
塗膜の評価( JIS 試験規格)
塗膜の性能評価とは
JIS Z8002「標準化及び関連活動-一般的な用語」
規格(standard)与えられた状況において,最適な秩序を達成することを目的に,共通的に繰り返して使用するために,活動又はその結果に関する規則,指針又は特性を規定する文書であって,合意によって確立し,一般に認められている団体によって承認されているもの。
日本規格協会では,規格を次のように解説している。
標準化によって決められた,ある「取り決め」(標準)を文章に書いたもの。
地政学的な分類
●国際規格:世界中の国々で共通して利用される規格(ISO規格,IEC規格など)。
●地域規格:ある地域の国々の中で共通して利用される規格(EN規格など)。
●国家規格:主に一国内で使われる標準(JISなど)。
●地区規格:一つの業界や一つの企業内で使う標準(業界規格,社内規格など)。
規格の内容による分類
●基本規格:用語,記号,単位,など基本的事項を規定した規格。
●方法規格:試験,分析,検査及び測定方法,作業方法などを規定した規格。
●製品規格:製品の形状,寸法,材質,成分,品質,性能,耐久性,安全性,機能などを規定した規格。
●マネジメントシステム規格:組織が方針及び目標を定め,その目標を達成するためのシステムについて規定した規格。
組織のマネジメントの継続的な向上を図ることを目的とし,P-D-C-A[トップの方針に基づいて計画を立て(Plan),実施マニュアルを作成・運用し(Do),定期的にチェック評価し(Check),見直す(Act)]というデミングサイクルのモデルをベースにしています。
標準規格(standard, standard specification)
製品・サービス・組織・システムなどについて,標準化団体が定める基準。
標準規格は,国家的に認められた学会,協会,業界団体が定める規格。なお,規格を制定する機関や適用される範囲で,国際規格,地域規格,国家規格,団体規格,社内規格などに分類される。
例えば,国際標準化機構(ISO)が制定する ISO規格,工業標準化法に基づき日本産業標準調査会(JISC)が制定する日本産業規格(JIS),通称 JAS法に基づく日本農業規格(JAS)などがある。
試験規格(test standard)
方法規格ともいい,試験,分析,検査及び測定方法,作業方法などを規定した規格。
製品規格(product specification, product standard)
製品の形状,寸法,材質,成分,品質,性能,耐久性,安全性,機能などを規定した規格。
性能規格(performance standard)
製品の形状,材質,成分,品質,性能,耐久性,安全性,機能などの全般を規定するこれまでの製品規格と異なり,製品の性能,品質などの要求事項について部分的に定めた規格。
【参考】
JIS(Japanese Industrial Standards)
2019年までは,日本工業規格(Japanese Industrial Standards)の通称で,1946年(昭和 21年)に制定された工業標準化法に基づき,経済産業省に設置された日本工業標準調査会(略称 JISC)の答申を受け,大臣が制定する国家標準(工業標準)であった。
工業標準化法の改正により,2019年7月に法の名称が産業標準化法に,日本工業標準調査会が日本産業標準調査会(Japanese Industrial Standards Committee ;略称 JISC)に,日本工業規格は「データ,サービス」を含む日本産業規格(Japanese Industrial Standards;略称 JIS)に名称変更された。
ISO(International Organization for Sstandardization)
ISOは,国際標準化機構(International Organization for Sstandardization)の略称で,国際連合経済社会理事会に総合協議資格(general consultative status)を有する機関に認定された最初の組織の 1つで,各国の国家標準化団体で構成される非政府組織である。 ISOが定める国際規格を ISO規格という。
BS(British Standard)
英国規格(British Standards;略称BS),英国規格協会(British Standards Institution ; BSI)が制定すたイギリスの国家規格。
英国規格協会は,1901年にイギリス土木学会が提唱し開設した非営利団体である,英国規格(BS)はドイツのドイツ連邦規格(DIN)やアメリカ合衆国の ASTM規格と並んで世界で広く活用されている。
ASTM(American Society for Testing and Materials)
1898年に鉄道産業のレール製造に用いる鋼の規格の制定に始まり,米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials ; ASTM)の定める工業材料規格と試験法規格からなる。
米国材料試験協会は,2001年に,ASTM規格の国際化を契機に,ASTMインターナショナル(ASTM International)と改称し,世界最大の民間の非営利の国際標準化・規格設定機関となった。
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塗膜性能の評価とは
塗膜の特性評価に用いる試験規格は,JIS 製品規格の品質試験など一般的な塗膜の特性評価に用いる試験,及び塗膜の用途別で,要求される特殊な塗膜特性評価に用いる試験に分けられる。
塗膜特性を評価する JIS試験規格の多くは,塗膜形成後の初期状態を評価することで,定められた塗装方法,塗装条件で形成した塗膜が,所期の塗膜性状を有するかを確認するために用いられる。
このため,塗料のJIS 製品規格では,必要最小限の性能確認を目的とした試験規格が採用されている。
一方,同じ塗料を用いても,塗装の用途によって,塗膜に対する要求性能がそれぞれ異なる。それらを評価しようとした場合には,塗料のJIS 製品規格に規定される試験項目や試験条件では不十分な場合が多い。
そこで,塗膜単体のみならず,塗装系として用いる積層塗膜の要求性能に応じた試験項目,及び試験条件を採用した試験方法が適用される。この中で,適用事例が多く,比較的広い分野で共通に活用できる試験方法は,JIS 試験規格として規定されている。
しかし,性能の限界を評価しようとした場合など,一般的な試験条件では不十分なため,JIS 試験規格を基本として修正・改良された特殊な目的の試験方法,例えば「酸化剤を用いた複合サイクル腐食試験」,「温度勾配膨れ試験」,「熱衝撃試験」などは,事業者間の取り決め,関連団体の規格などで対応される。
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塗膜物性の JIS試験規格
JIS K 5600-4-1 「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第1節:隠ぺい力(淡彩色塗料用)」
JIS K 5600-4-3 「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第3節:色の目視比較」
JIS K 5600-4-4 「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第4節:測色(原理)」
JIS K 5600-4-5 「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第5節:測色(測定)」
JIS K 5600-4-6 「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第6節:測色(色差の計算)」
JIS K 5600-4-7 「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第7節:鏡面光沢度」
JIS Z 8741 「鏡面光沢度-測定方法」
JIS K 5602 「塗膜の日射反射率の求め方」
JIS K 5600-5-1 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第1節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」
JIS K 5600-5-2 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第2節:耐カッピング性」
JIS K 5600-5-3 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第3節:耐おもり落下性」
JIS K 5600-5-4 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」
JIS K 5600-5-5 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第5節:引っかき硬度(荷重針法)」
JIS K 5600-5-6 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」
JIS K 5600-5-7 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第7節:付着性(プルオフ法)」
JIS K 5600-5-8 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第8節:耐摩耗性(研磨紙法)」
JIS K 5600-5-9 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第9節:耐摩耗性(摩耗輪法)」
JIS K 5600-5-10 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第10節:耐摩耗性(試験片往復法)」
JIS K 5600-5-11 「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第11節:耐洗浄性」
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塗膜耐久性の JIS試験規格
JIS K 5600-6-1 「塗料一般試験方法−第6部:塗膜の化学的性質−第1節:耐液体性(一般的方法)」
JIS K 5600-6-2 「塗料一般試験方法−第6部:塗膜の化学的性質−第2節:耐液体性(水浸せき法)」
JIS K 5600-6-3 「塗料一般試験方法−第6部:塗膜の化学的性質−第3節:耐加熱性」
JIS K 5600-7-1 「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第1節:耐中性塩水噴霧性」
JIS Z 2371 「塩水噴霧試験方法」
JIS K 5600-7-2 「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第2節:耐湿性(連続結露法)」
JIS K 5600-7-3 「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第3節:耐湿性(不連続結露法)」
JIS K 5600-7-4 「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第4節:耐湿潤冷熱繰返し性」
JIS K 5600-7-6 「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第6節:屋外暴露耐候性」
JIS Z 2381 「大気暴露試験方法通則」
JIS K 5600-7-7 「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第7節:促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法)」
JIS K 5600-7-8 「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第8節:促進耐候性(紫外線蛍光ランプ法)」
JIS K 5600-7-9 「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第9節:サイクル腐食試験方法−塩水噴霧/乾燥/湿潤」
【参考:試験結果評価のための規格】
JIS Z 2382 「大気環境の腐食性を評価するための環境汚染因子の測定」
JIS Z 2383 「大気環境の腐食性を評価するための標準金属試験片及びその腐食度の測定方法」
JIS K 5600-8-1 「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第1節:一般的な原則と等級」
JIS K 5600-8-2 「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第2節:膨れの等級」
JIS K 5600-8-3 「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第3節:さびの等級」
JIS K 5600-8-4 「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第4節:割れの等級」
JIS K 5600-8-5 「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第5節:はがれの等級」
JIS K 5600-8-6 「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第6節:白亜化の等級」
JIS Z 8401 「数値の丸め方」
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