防食概論塗装・塗料

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 ここでは,最も的確に塗膜の耐久性を評価できる実環境への暴露試験を行う【耐候性とは】, 【 JIS試験規格(屋外暴露耐候性)】, 【 JIS試験規格(大気暴露試験通則)】, 【 JIS試験規格(環境汚染因子の測定)】 に項目を分けて紹介する。

 塗膜の評価(塗膜耐久性;耐候性,大気暴露試験)

 耐候性とは

 JIS K 5500「塗料用語」

 耐候性(weathering, weathering resistance)
 屋外で,日光,風雨,露霜,寒暖,乾湿などの自然の作用に抵抗して変化しにくい塗膜の性質。JIS K 5600-7-6「屋外暴露耐候性」参照
 耐候試験(weathering test)
 塗膜の耐候性を調べる試験。JIS K 5600-7-6 参照。
 耐候試験台(exposure rack)
 塗膜の耐候性を試験するために,塗装試験片を取り付けてさらす台。塗膜が太陽光にできるだけ直面することが望ましい。自動的に直面するようにしたものもある。固定式のものは,台が正南向きで,塗面が上向きに傾いている。JIS K 5600-7-6「屋外暴露耐候性」では, 水平面との傾きが 45 度と定めている。

 JIS Z0103「防せい防食用語」

 屋外暴露試験(outdoor exposure test)
 試験片を,一定期間屋外にさらして,自然環境での腐食,さび,劣化などの状態を調べる試験。大気暴露試験,耐候性試験ともいう。
 
 なお,大気環境下(開放及び遮へい)で行う暴露試験(耐候試験,屋外暴露試験)は,「防せい防食用語」や「塗料用語」に用語の定義にはないが,一般的には大気暴露試験(atmospheric corrosion test, atmospheric exposure test)といわれている。
 
 塗膜の耐候性は,用語の定義にあるように,適切に作製した試験片を,屋外(実環境)に直接暴露し,塗膜表面の変化,ふくれ,割れ,さび発生などの変状を観察して評価する。
 しかし,屋外暴露では,暴露地の気象因子,試験片の形状,暴露開始時期など多くの因子が試験結果に大きく影響する。
 このため,耐候性評価では,規定された暴露条件下で,暴露期間中の気象因子が把握されていない限り,異なる暴露地,暴露期間の試験結果を相互比較できないなどの課題もある。
 ここでは,塗料・塗装分野で用いるJIS K 5600-7-6 「屋外暴露耐候性」の規格概要に加えて,屋外暴露試験に関連するJIS Z 2381 「大気暴露試験方法通則」JIS Z 2382 「環境汚染因子の測定」,及び JIS Z 2383 「標準金属試験片及びその腐食度の測定方法」の概要も紹介する。

 【参考】
 気象因子(meteorological factors)
 JIS Z 2381 「大気暴露試験方法通則」では,気象因子を“気象観測の対象となる気温,湿度,太陽放射エネルギー量,降水量,風向,風速などの因子。”と定義している。
 一般的には,気象要素(meteorological element)ともいい,気象学でいう気候要素(climatic factor)と同等の意味で用いられる。
 なお,気象(meteorological phenomena)とは,大気の状態や大気の中で起きる現象をいい,気候(climate)とは,その地域を特徴づける大気の状態をいう。
 気候要素とは,ある気候を構成する種々の要素で,学術的には気温,降水量,風向・風速の三大要素に加えて気圧,湿度,蒸発散量,雲量,日照時間,日射量,水温,地温,降水時間,土壌水分量などが挙げられる。
 なお,気候因子(climatic factor)といった場合は,気候の地域差を生じる原因となる緯度・高度・水陸分布・地形・海流などを指し,この結果として,各地の気候要素(気温,降水量,風向・風速など)に影響を与える。

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 JIS試験規格(屋外暴露耐候性)

 JIS K 5600-7-6 塗料一般試験方法−第 7 部:塗膜の長期耐久性−第 6 節:屋外暴露耐候性(Testing methods for paints−Part 7 : Long-period performance of film−Section 6 : Natural weathering)
 適用範囲
 屋外暴露試験は,太陽の放射,及び大気に対して塗膜,及び塗装系の耐久性を測定するために適用する。
 特別の大気の影響,例えば,工業的な汚染はこの規格に適用しない。
 この規格は,屋外暴露試験の種類,及び屋外暴露試験方法(直接暴露試験,又は窓ガラス越しの暴露試験)を選択するのに必要な条件を規定する。
 
 定義:この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
 耐久性 (durability): 屋外暴露に耐える塗膜の特性。
 湿潤時間 (time of wetness): 金属表面が腐食の原因となる水性の媒体で覆われている期間。
 
 一般要求事項(抜粋・要約)
 屋外で暴露された塗膜の耐久性は,その塗膜を暴露したときの方法・場所・季節が影響する。そのため,これらのパラメータと塗膜の用途は,暴露が実施された時期を考慮しなければならない。
 特に,次のパラメータは考慮しなければならない。
 a) 暴露場の場所:試験をする塗膜の最終用途に適した暴露場所(工業地帯,海岸地帯,田園地帯など)を選択する。最終用途と明らかに汚染の種類及び水準が異なる環境での暴露は,避けなければならない。
 b) 暴露架台の高さ,角度及び方向:例えば,露・霜・大気汚染物などに影響される度合いを左右するパラメータである。
 c) 架台を設置する土地の状況(例えば,コンクリート,草地,砂利):試験片は周囲の条件によって影響を受ける。
 
 同時に試験をした多くの試験片の相対的な性能の順位は,実用目的と確実に合致する結果となる。しかし,暴露開始時期や暴露場所が異なる場合の結果との比較は困難である。そのため,評価する試験片の各シリーズに参照基準として,性能が知られている塗膜を含めるとよい。
 試験開始時期の影響は,暴露期間が十分長ければ減少する。暴露期間は少なくとも 1 年間,又は数年間必要である。もし,暴露開始が常に年の同時期,好ましくは春に始めれば,結果の再現性はよくなる。
 気候条件は,ほかの気象条件と一緒にモニターして,完全な記録を報告しなければならない。(気候と気象の使い分けに注意)
 
 暴露架台(抜粋・要約)
 ほかに規定,又は協定がなければ,試験片は赤道に向けて暴露台を使用する。
 ほかに指定がなければ,架台はすべての試験片が暴露場の地面から最低 0.45mの高さに保ち,植物との接触がないようにし,被害を予防するのに十分な高さに設置する。
 架台の下や周辺の地域は,太陽光の反射が低く気候の典型的な場所(例えば,建物又はほかの設備の影響を受けない場所)でなければならない。
 試験片は,通常水平に対して 45度の角度に保つ。塗膜の使用目的,又は地域によっては他の角度でもよい。例えば,自動車用塗料及び屋根用塗料は 5度,又はテクスチャー壁塗料は垂直暴露でもよい。
 赤道に面して暴露されていない試験片は赤道に面して暴露された試験片より乾燥が遅いので,長い期間湿潤している。このことはより腐食しやすい傾向になる。
 
 気象因子の測定装置(抜粋・要約)
 太陽放射エネルギーの測定
 ピラノメータ類:全天日射計ともいい,単位時間,及び単位面積ごとには付随する全太陽放射エネルギーを測定するのに用いる。
 ピレリオメータ類:直達日射系ともいい,太陽光に向かって表面に直接当たった太陽放射照度を測定するのに用いる。 <
 他の気象測定機器類
 大気温度,試験片表面温度,相対湿度,降雨量,湿潤時間及び太陽光照射時間を測定する機器類は,使用した暴露方法に対して適切なもの。また受渡当事者間の協定による。
 
 試験片(抜粋・要約)
 最も単純で最も広い用途の試験片は,適切な材質の平らな板である。暴露目的により,例えば,接合部を有する構造などを持つ試験片も用いられる。
 ほかに規定がない場合は,標準試験片はJIS K 5600-1-4「試験用標準試験板」に従って作製し,その面積は 0.03m2以上でいずれの辺も 100mm 以上のもの。試験をする塗料を適切な方法で塗装し,規定の時間に規定の方法で各塗膜を乾燥(焼付け)し,(好ましくは)養生又は熟成させる。
 腐食試験を目的とする場合は,試験片に未塗装部分(素地に達する 0.1~0.2mmの幅スクラッチを入れる,半面のみ塗装するなど)を作製して供試するとよい。
 塗膜厚さはマイクロメータでJIS K 5600-1-7「膜厚」に規定する非破壊の方法の一つで測定する。
 試験片の枚数は,ほかに規定,又は協定がなければ,試験片の枚数は 3枚以上とする。既知の耐久性,又は類似の組成の参照試験片を用いることを推奨する。
 
 手順(抜粋・要約)
 試験片の洗浄が規定されている場合
 規定の間隔で試験片の全体又は一部分を洗浄する。試験片の一部分のみを洗浄する場所は,板の上か下のいずれかを洗浄するよりも右か左のいずれかを帯状に洗浄するほうがよい。
 洗浄する場所は規定されているが,試験片の洗浄手順が詳細に規定されていない場合は,適切な湿潤剤が添加されているJIS K 0557「用水・排水の試験に用いる水」に規定する A2又は A3の水を用いる。洗浄溶液は柔らかいブラシ,又は柔らかいスポンジを用い,水で十分に洗浄し,機械的損傷をなくする。
 検査
 塗膜の耐性を表面,裏面,端面及び非塗装面を別々に注意して検査する。
 検査は適切な間隔で,例えば,変色,光沢の減少,塗膜の膨れ,素地のさびの徴候などを調べる。規定されている場合は,10倍に拡大して塗膜の浅割れ,膨れ,素地の腐食の徴候などを検査する。また,白亜化の徴候を調べる。
 規定の暴露期間が終了したら,塗膜の最後の試験を行う。素地への侵食の徴候に対する試験が必要な場合は,規定する方法で塗膜を剥離する。
 
 結果の表現(抜粋・要約)
 塗膜の規定又は協定した特性は, JIS K 5600-4-7「鏡面光沢度」, JIS K 5600-4-4「測色(原理)」, JIS K 5600-4-5「測色(測定)」, JIS K 5600-4-6「測色(色差の計算)」, JIS K 5600-4-3「色の目視比較」, JIS K 5600-8-1「一般的な原則と等級」, JIS K 5600-8-2「膨れの等級」, JIS K 5600-8-3「さびの等級」, JIS K 5600-8-4「割れの等級」, JIS K 5600-8-5「はがれの等級」, JIS K 5600-8-6「白亜化の等級」に従って暴露中又は暴露後優先して測定する。
 
 試験報告(抜粋・要約)
 e) 使用した暴露方法(直接暴露又は窓ガラスを透過しての暴露)
 f) 試験の詳細
  1) 暴露面(例えば,傾斜角度,方角), 2) 暴露地とその詳細(例えば,経度,緯度,高度,年間の気象条件), 3) 気象の分類及び類形(権威のある附属書Bの引用), 4) 必要な場合は,マスキング・裏面・支柱・取付け具の性質, 5) 暴露時期を決めるのに使用した手順, 6) 暴露段階: 開始時間,経過時間(週,月,年),必要な場合は,測定方法を含めて平方メートルあたりのジュールで示した全太陽放射露光量
 h) 試験結果
  1) 試験結果, 2) 特性測定及び試験片を架台から取り除いているときの間隔, 3) 気象データ
 
 附属書 A(規定)環境と気象(抜粋・要約)
  特に鋼構造物に関する環境の影響について使用されている環境の分類は,ISO 9223「1992, Corrosion of metals and alloys −Corrosivity of atmospheres−Classification」を基礎として順番に ISO 12994-2「1998, Paints and varnishes −Corrosion protection of steel structures by protective paint systems −Part2 : Clasification of environments」に規定する。
 2.気象に関する付加観察
 分類,タイプ及び特別な条件による暴露地での気象の一般的表現は,次の詳細な観察によって補足する。
 2.1 温度 ; a) 毎日の最高温度の月平均温度,b) 毎日の最低温度の月平均温度,c) 月平均の最高と最低温度
 2.2 相対湿度 ; a) 毎日の最高湿度の月平均湿度,b) 毎日の最低湿度の月平均湿度,c) 月平均の最高と最低湿度
 2.3 降雨量 ; a) ミリメータで測定した月ごとの降雨量,b) 凝縮による湿潤時間の月ごとの総時間,c) 降雨による湿潤時間の月ごとの総時間
 2.4 湿潤時間 ; a) 一日の湿潤時間パーセントの月ごとの平均,b) 一日の湿潤時間パーセントの月ごとの範囲
 2.5 その他の観測 ; 風速,方角,どのような大気汚染の発生率や性質,(もし測定できるなら)全帯域紫外線放射露光量や特別な地域の特徴などの観測は記録しなければならない。
 附属書 1(規定)耐候試験の実施,及び管理(抜粋・要約)
 1 耐候試験の実施
 1.1 塗料製造業者の実施
 塗料製造業者は,毎年4月から9月まで及び毎年10月から翌年3月までの各6か月間に自己が製造した製品の全バッチについて,それぞれの種類及び主な色ごとに分けて試料として保管し,それぞれの集団からその集団の品質を代表するものを選び出し,この規格によるほか,次の事項に従って耐候試験を開始する。同時に同じ試料について公的機関に耐候試験を委託する。
 1.1.1 試験の開始 ; 試験片は,製品規格に規定する条件で乾燥した後,試験面を上にして耐候試験台に取り付けて試験を開始する。開始時期は,特に規定がない場合は,4月及び10月とする。ただし,試験を開始する日は,曇天又は晴天の日とする。
 1.1.3 試験・観察の時期 ; 塗膜を試験し観察する時期は,特に指定がない場合には開始後3か月ごととし,1か年経過した後は6か月ごととする。
 1.1.5 評価方法 ; 評価は,製品規格に規定する項目について,次の a)及び b)の方法について行う。ただし,試験片の周辺及び塗膜の端からそれぞれ 10mm以内の塗膜は,観察・評価の対象としない。洗浄など評価の際に必要な前処理は,製品規格に規定する。
  a) 目視評価方法 ; 1) 耐候試験によって生じた色・光沢の変化の程度を,耐候試験片と原状試験片とを目視によって観察し,比較する。,2) 見本品耐候試験片及び見本品原状試験片について 1)と同様に目視によって観察し,試料と見本品との変化の差を比較して調べる。,3) 割れ,はがれ,膨れ,穴などは,それぞれ試料と見本品との耐候試験片を直接比較して程度の大小を観察する。
  b) 数値評価方法 ; 試験終了後,それぞれの試料耐候試験片・試料原状試験片について,次によって観察して評価する。
   1) 割れ・はがれ・膨れ・白亜化の程度については,それぞれ JIS K 5600-8-2「膨れの等級」,JIS K 5600-8-4「割れの等級」,JIS K 5600-8-5「はがれの等級」,JIS K 5600-8-6「白亜化の等級」によって評価する。
   2) 白亜化度の試験を行った後,試験片を清浄(注2)にして乾燥し,試料耐候試験片・原状試験片についてJIS K 5600-4-7「鏡面光沢度」の方法によって光沢保持率を測定する。
   3) 1),2)の測定が終了した試験片についてJIS K 5600-4-6「測色(色差の計算)」の方法で色差を測定する。
    注 2 :水に浸してから十分に柔らかくしたビスコーススポンジ,ポリ塩化ビニルスポンジなどで試験片を全面にこする。こするときに常に水を流しかけて付着物などで試験片にきずがつかないようにし,付着物を除く。洗い終わった後,試験片は室内の清浄な場所に立て掛けて乾かす。
 1.2 公的試験機関での実施
 耐候試験を委託された公的試験機関では,1.1 と同じ時期に試験を開始して耐候試験を行い,その試験記録を作成する。試験記録は試験委託者に送付する。
 参考:公的試験機関 塗料の耐候試験を委託する公的試験機関としては,財団法人日本塗料検査協会,耐候試験の場所としては.財団法人日本ウエザリングテストセンター暴露試験場などがある。

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 JIS試験規格(大気暴露試験通則)

 JIS Z23812017 大気暴露試験方法通則(General requirements for atmospheric exposure test)
 適用範囲(抜粋)
 2001年版:この規格は,開放大気環境,及び遮へい大気環境下における工業材料及び工業製品(以下,材料及び製品という。)の化学的性質,物理的性質,及び性能の経時変化を調査することを目的とした大気暴露試験方法の通則について規定する。
 2017年版:この規格は,屋外大気環境及び遮蔽大気環境下における工業材料及び工業製品(以下,材料及び/又は製品という。)の大気暴露試験方法の一般要求事項について規定する。
 
 定義:この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
 大気暴露試験:開放,及び遮へい大気環境下で材料及び製品を暴露して,それらの化学的性質,物理的性質及び性能の変化を調査する試験(以下,暴露試験という)。
 屋外大気環境:屋外の自然状態における環境因子の影響を全て受ける大気環境。
 遮蔽(しゃへい)大気環境:自然状態における環境因子の一部を遮断した大気環境。
 試料:暴露試験に用いる材料及び/又は製品。暴露試験用の試料,初期値測定用の試料,保存用試料及び参照試料がある。
 暴露試験場:試料の暴露試験を行う場所。
 暴露試験装置:試料を暴露するための試験装置。暴露架台,試料保持枠などで構成する。
 暴露試験期間:試料の暴露試験を継続して行う期間。
 試験箱:試料を収納するか,又は上面に取り付けた状態で暴露するための容器。
 環境因子:暴露試験場における気象因子,及び大気汚染因子の総称。
 気象因子:気象観測の対象となる気温,湿度,太陽放射エネルギー量,降水量,風向,風速などの因子。
 大気汚染因子:自然的又は人為的に発生する海塩粒子,硫黄酸化物,窒素酸化物,硫化水素などの暴露試験に影響を及ぼす因子。
 海塩粒子:海岸の波打ち際,及び/又は海上で波頭が砕けたときに発生する海水ミストが,風で運ばれて飛来した粒子。海塩粒子の大きさは,約 0.01μm~20μmである。
 評価試験:試料の化学的・物理的性質の変化,及び製品の変化の程度を評価する試験。
 
 暴露試験方法の種類(抜粋・要約)
 直接暴露試験方法(direct outdoor exposure test)
 日照,雨,雪,風などの自然状態における大気環境下で試料を直接暴露する試験方法。
 アンダーグラス暴露試験方法(exposure to daylight under glass)
 板ガラスで覆った試験箱内に試料を取り付け,板ガラスを透過した太陽放射光に暴露する試験方法。
 遮へい暴露試験方法(sheltered exposure test)
 遮へい構造物の下,中又は屋内に試料を設置して,日照,雨,雪,風などの直接の影響を避けた状態で暴露する試験方法。
 ブラックボックス暴露試験方法(black box exposure test)
 黒色処理した金属製試験箱の上面に試料を取り付けた状態で暴露する試験方法。
 太陽追跡集光暴露試験方法(intensified weathering by daylight using Fresnel mirrors)2017年版で削除
 太陽放射光の光軸方向を追跡し,フレネル反射鏡を用いて太陽放射光を反射集光する部位に設置した試料保持枠に試料を取り付けて暴露する試験方法。
 なお,フレネル反射鏡(Fresnel mirrors)とは,平面鏡の形状・寸法と試料取付け部に反射する照射域の大きさが,同一になるよう に配列した複数の平面鏡からなる反射鏡装置。
 
 試料(抜粋・要約)
 試料の区分
 暴露試験用の試料: 試験体(暴露試験に用いる製品),試験片(材料,又は製品を代表するものとして,材料を暴露試験の目的に合わせて加工した試料,又は試験体の一部を切り出して作製した試料。
 初期値測定用の試料: 暴露試験を開始する前の化学的性質,物理的性質,及び性能の初期値を測定するために,暴露試験用の試料と同一で同時に作製した試料。
 保存用試料: 保存用試料は,a) 暴露試験用の試料と同時に作製し,暴露試験を行った試料と比較対照するために暴露しないで保存する同一の試料,b) 試料の化学的性質,物理的性質が変化しにくいデシケータ内,冷暗所などで適切に保管されなければならない。
 参照試料: 参照試料は,a) 暴露試験用の試料と同時に暴露して,それらの暴露試験の結果を相対的に比較するもの,b) 暴露試験による化学的性質及び物理的性質の変化の傾向が既知であるものが望ましい,c) 製品規格などに規定がない場合,参照試料は受渡当事者間の協定による。
 参照試料は,リファレンス材料(JIS K 7219-1)又はコントロール試験片(JIS K 6266)ともいう。
 試料の標識
 試料を識別するために付ける標識の内容は,試料の種類,暴露試験場,試験条件などとし,記号,番号などを用いて簡単に表示する。
 標識の位置: 標識の位置は,a) 試料の端部,裏面など,暴露試験及びその結果の評価試験に支障がない位置とする,b) 試料に直接表示できない場合は,試料を取り付けた暴露架台,試料保持枠などに表示してもよい。
 暴露試験用の試料の前処理
 暴露試験用の試料は,暴露試験の結果の変動を少なくして再現性をよくする目的で,必要に応じて,洗浄,端面及び裏面を保護するなどの前処理を行う。
 
 暴露試験場(抜粋・要約)
 暴露試験場の環境
 暴露試験は,暴露試験場の環境因子である気象因子,及び大気汚染因子の影響を大きく受けるので,暴露試験の結果を精度よく解析するためには,暴露試験場の環境区分を明確にしておくことが望ましい。
 注記 国内の場合には,地域的な気象の特徴による気候区分,硫黄酸化物などの大気の汚染状況による大気汚染区分に分類する。また,金属材料などの腐食特性を評価する場合には,海塩粒子の飛来量による腐食への影響を考慮した海塩区分が設定される。
 暴露試験場の要求事項
 暴露試験場の要求事項は,a) 暴露試験場は,当該地域の気候の影響を全面的に受ける場所とする。さらに,大気汚染因子量の年ごとの変動が少ない場所でなければならない。b) 暴露試験場の東,西及び赤道方向の仰角 20°以上,反赤道方向の仰角 45°以上に環境条件に著しい影響を及ぼす地形的特徴,建築物,樹木などがない場所でなければならない。d) 暴露試験装置の設置場所は,水はけのよい地面,草地(芝など),砂利,コンクリート舗装,人工芝などを施した場所とする。ただし,暴露試験装置の設置場所における温度及び湿度分布に影響を与えるおそれがあるので,暴露試験装置の下,周辺の草木などの高さを 0.2 m以下とする。e) 暴露試験装置付近の草木の生長を抑制するために除草剤などの薬品を使用すると,薬品が試料に飛来する可能性があるため,使用しないことが望ましい。
 
 暴露試験方法(抜粋・要約)
 暴露試験面の方位及び角度
 暴露試験面の方位及び角度は,a) 直接暴露試験,ガラス越し暴露試験,ブラックボックス暴露試験の場合,暴露試験面の方位は赤道面とし,暴露試験面の角度は,水平面に対して0°,20°,30°,45°,60°又は90°のいずれかとする。b) 遮蔽暴露試験の場合は,試験面の角度を水平面から90°の間として暴露する。c) プラスチック,塗料,ゴムなど,太陽放射光の影響を大きく受ける試料の場合には,年間に最も多く太陽放射光を受ける角度とし,水平面からの暴露試験面の角度は,暴露試験場の緯度から5°~10°引いた角度にすることが望ましい。d) 金属材料などの腐食特性を評価する試料の場合には,腐食に大きな影響を及ぼす大気汚染因子の発生源に試験面を向けて暴露試験を行ってもよい。
 
 暴露試験期間(抜粋・要約)
 暴露試験期間の設定
 暴露試験期間の設定は,a) 暴露試験期間は,試料の種類,用途などを考慮するとともに,試料の化学的性質,物理的性質及び性能の変化をできるだけ正確に把握できるように設定する。
 b) 暴露試験期間は,暴露試験の目的,試料の種類及び暴露試験方法によって,次のいずれかを設定する。
  1) 時間を単位とする方法
   1.1) 週:1,2,3,4 週
   1.2) 月:1,3,6,9 か月
   1.3) 年:1,1.5,2,3,5,7,10,15,20 年
  2) 太陽放射光の露光量を単位とする方法(試料に照射される太陽放射光の露光量 (MJ/m2)によって設定する。)
  3) 性質又は性能の変化の程度による方法(試料が所定の化学的性質,物理的性質又は性能の変化を生じるまでの期間によって設定する。)
 暴露試験の開始時期
 a) 暴露試験期間が 1年未満の場合で,かつ,試料の化学的性質,物理的性質,及び性能の経時変化を把握できるものについては,通常,暴露試験開始の時期を次の 2期に分けて実施する。
  1) 春を開始時期とする場合:3月,又は4月。2) 秋を開始時期とする場合:9月,又は10月。
 b) 暴露試験期間が1年以上の場合は,暴露試験の開始時期を特に定めない。ただし,暴露試験期間が 2年未満で,かつ,暴露試験の開始時期が異なる場合には,その暴露試験の結果は,同一暴露水準として取扱わない
 
 環境因子(抜粋・要約)
 気象因子
 気温 ℃(温度計を用いて,1日の気温を連続,又は 8点以上の定時間間隔で測定),相対湿度 %(露点式湿度計,乾湿球湿度計,又は毛髪湿度計を用いて,1日の相対湿度を連続又は 4点以上の定時間間隔で測定),絶対湿度 g/m3(露点式湿度計を用いるか,又は気温と相対湿度の測定値から絶対湿度を求める。),日照時間 h(日照計を用い,1日の日照時間を測定),太陽放射光の露光量 MJ/m2(受光面を試料の暴露面と平行にした日射計,又は積算照度計を用い,1日の太陽放射光の露光量を測定),降水量 mm(雨量計を用い,1日の降水量を測定),風向 16方位(風向計を用い,その日の風向を16方位に区分して測定),風速 m/s(風速計を用い,その日の風速を測定)
 環境汚染因子
 硫黄酸化物付着量 mgSO2/(m2・d) JIS Z 2382「大気環境の腐食性を評価するための環境汚染因子の測定」に規定する二酸化鉛プレート法,二酸化鉛円筒法,又はアルカリろ紙法によって測定)
 海塩粒子付着量 mgNaCl/(m2・d) JIS Z 2382に規定するウエットキャンドル法,又はドライガーゼ法で測定)
 : 降水のpH,及び降水中のSO42−,NO3−,Clなどの含有量を測定しておくことが望ましい。
 その他の測定項目
 暴露試験の種類又は暴露試験の目的によっては,必要に応じて,ブラックパネル温度,ホワイトパネル温度,試料の表面温度,特定波長域の太陽放射光の露光量,濡れ時間,降水時間,オゾン濃度,二酸化硫黄濃度,二酸化窒素濃度,硫化水素濃度などの測定を行う。

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 JIS試験規格(環境汚染因子の測定)

 JIS Z23821998 大気環境の腐食性を評価するための環境汚染因子の測定(Determination of pollution for evaluation of corrosivity of atmospheres)
 適用範囲(抜粋)
 この規格は,大気中の二酸化硫黄(硫黄酸化物),及び大気浮遊塩分(海塩粒子)の付着度を測定する方法について規定する。
 二酸化鉛(PbO2)プレートによる二酸化硫黄(SO2)の測定(抜粋)
 原理
 大気中の二酸化硫黄(SO2)は,二酸化鉛と反応して硫酸塩を形成して捕捉される。大気中に所定の期間暴露した二酸化鉛プレートを回収し,二酸化硫黄捕捉程度を決定するためにこの二酸化鉛プレートの硫酸根分析を行い,二酸化硫黄の付着度を平方メートル・日当たりのミリグラム[mg/(m2・d)]で表示する。
 この方法で使用される二酸化鉛試薬は,硫化水素やメルカプタンのような他の硫黄化合物とも反応し硫酸塩を形成することがある。
 二酸化鉛プレートの二酸化鉛の面を地面向きにしてあるのは,酸性雨や硫酸エアゾルからの硫酸の捕捉を最小にするためである。
 二酸化鉛( PbO2 )円筒による二酸化硫黄( SO2 )の測定(抜粋)
 原理
 大気中の二酸化硫黄 (SO2)は,二酸化鉛と反応して硫酸塩を形成して捕捉される。
 大気中に所定の期間暴露した二酸化鉛円筒を回収し,二酸化硫黄捕捉程度を決定するためにこの二酸化鉛円筒の硫酸根分析を行い,二酸化硫黄の付着度を平方メートル・日当たりのミリグラム[mg/(m2・d)]で表示する。
 この方法で使用される二酸化鉛試薬は,硫化水素やメルカプタンのような他の硫黄化合物とも反応し硫酸塩を形成することがある。
 アルカリろ紙法による二酸化硫黄( SO2 )の付着度の測定(抜粋)
 原理
 二酸化硫黄 (SO2),及びその他酸性硫黄化合物は,炭酸ナトリウム,又は炭酸カリウム溶液で飽和された多孔質のろ紙プレートの表面でアルカリと反応して硫酸塩を形成し捕集される。
 二酸化硫黄の付着度は,平方メートル・日当たりのミリグラム [mg/(m2・d)] で表される。
 ウェットキャンドル法による塩化物の測定(抜粋)
 原理
 一定面積の織物を湿潤状態で雨を遮断して暴露すると,織物表面に塩化物が捕集される。この塩化物を化学分析によって定量する。
 分析結果から塩化物の付着度を計算し,平方メートル・日当たりのミリグラム[mg/(m2・d)]で表す。
 ドライガーゼ法による塩化物の測定(抜粋)
 原理
 一定面積をもつ2枚重ねのガーゼを,雨を遮断して暴露すると,ガーゼ表面に塩化物が捕集される。この塩化物を化学分析によって定量する。
 分析結果から,塩化物の付着度を計算し,平方メートル・日当たりのミリグラム[mg/(m2・d)]で表す。

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