JIS K 5600_5_7 塗料一般試験方法‐第5部‐第7節:付着性(プルオフ法)
JIS K 5600-5-7 1999年版,2014年版 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第7節:付着性(プルオフ法) ( Testing methods for paints−Part 5 : Mechanical property of film−Section 7 : Adhesion test (Pull-off methods) )について 【序文・目次・適用範囲・用語・原理】, 【装置・接着剤】, 【試料採取・試験板】, 【手順】, 【結果の表し方】 に分けて紹介する。
序文・目次・適用範囲・用語・原理
本規格の 1999版は ISO規格の直訳のため,従来から日本で採用していた付着試験(プルオフ試験)での用語と異なる部分もあるので,JIS原文を多少編集して紹介する。2014年に改定され,表現が大幅に変更されているので,変更の大きい部分を 1999年版と併記して紹介する。
序文
1999年版
この規格は,ISO 4624:1978, Paints and varnishes – Pull-off test for adhesionを翻訳したものである。
この試験方法は,試験板に垂直の方向加えた引張力で生じる塗膜のはがれ,又は破れに必要な最小の張力の測定によって,塗料,ワニス若しくは関連製品の単一塗膜,又は多層塗膜系の付着力を評価するもので,引張試験機を用いて測定する。
この試験結果は,試験する塗膜(単層,又は多層膜)の機械的性質だけでなく,素地の性質,及び調整,塗料の塗装方法,塗膜の乾燥状態,温度,湿度,及びその他の試験環境条件によって影響される。
規定する試験方法は,どのような適用に対しても,次の補足情報によって補完することが必要である。
a) 試験アセンブリ(試験のための構成,ここでは試験円筒,接着剤,及び試験片の構成体をいう)の表面,又は素地の材料,及び表面調整
b) 素地,又は試験円筒(引張り治具,スペシメンともいう)に対する試験塗料の塗装方法
c) 試験前の塗料の乾燥時間,及び条件(又は必要な場合は,焼付け及び静置の条件)
d) JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」による測定方法を用いて計測した単一塗膜,又は多層塗膜の乾燥膜厚の厚さ(マイクロメートル単位で表示)
e) 接着剤(及び必要な場合は,混合比率)及び硬化条件
f) 試験体構成後から試験開始までの期間,及び状態調節
g) 使用したプルオフ試験アセンブリの型式(種類)
h) 引張試験機の型式,及び円筒の直径
2014年版
この規格は,2002年に第 2版として発行された ISO 4624を基に,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
1999年版
序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 装置(3.1 引張試験機,3.2 試験円筒,3.3 芯出し装置,3.4 切り込み装置),4 接着剤,5 試験の採取,6 試験板(6.1 試験板の調整及び塗装,6.2 試験塗膜の乾燥,6.3 膜厚),7 手順(7.1 環境条件,7.2 接着剤,7.3 試験アセンブリ,7.4 測定,7.5 測定回数),8 手順上の注意事項,9 結果の表わし方(9.1 破壊強さ,9.2 破壊の性質),10 試験報告
2014年版
序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 用語及び定義,4 原理,5 装置(5.1 引張試験機及びジグ,5.2 試験円筒,5.3 芯出ジグ,5.4 切込用具),6 接着剤,7 サンプリング並びに検分及び調整,8 試験板(8.1 試験板の材料(素地),8.2 試験板の調整及び塗装,8.3 試験片の乾燥及び養生,8.4 膜厚),9 手順,10 結果のまとめ方(10.1 破壊強さ,10.2 破壊の形態,10.3 表示の例),11 試験報告,附属書 A(規定)報告書に必要な補足情報
1 適用範囲
1999年版
この規格は,塗料,ワニス,又は関連製品の単一塗膜,又は多層塗膜系に対するプルオフ試験の実施のための方法について規定する。
この試験方法は,広範囲の素地に対して適用可能である。素地が変形性,例えば薄い金属板,プラスチック及び木であるか,又は堅固,例えば厚いコンクリート及び金属板であるかによって,異なった手順が規定されている。
試験目的によっては,試験円筒(スペシメン)に塗装してもよい。この場合には,塗膜の厚さの測定方法は受渡当事者間の協定による。
試験結果は,試験アセンブリの最も弱い境界面の破壊(界面破壊や,付着破壊という)か,又は最も弱い構成要素の破壊(凝集破壊という)に必要な最小張力である。
なお,付着破壊と凝集破壊が同時に生じる(付着/凝集破壊という)ことがある。
2014年版
この規格は,塗料,ワニス又は関連する製品の単一塗膜又は多層塗膜系に対し,付着性試験(プルオフ法)で付着強度を求める方法について規定する。
この試験方法は,広範囲の素地に対して適用可能であるが,変形しやすい素地(例えば,薄い金属板,プラスチック及び木),又は固く変形しにくい素地(例えば,厚いコンクリート,金属板など)とでは,異なった手順を用いなければならない。
注記 1 この試験方法は,各種の塗膜の付着性を比較,特に付着性の大きく異なる多種の塗装試験板に対して相対的な順位付けをするのに有効である。
3 用語及び定義 2014年版
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 5500 によるほか,次による。
3.1 試験体(bonded dolly assembles)
試験片に試験円筒( 5.2 「試験円筒」参照)を接着したもの。
3.2 付着破壊
試験片の塗膜の剝がれ方が,塗膜と基材との界面又は,塗膜と塗膜との界面から剝がれること。
3.3 凝集破壊
試験片の塗膜の剝がれ方が,塗膜層の途中から剝がれること。
4 原理 2014年版
塗膜に対するプルオフ試験とは,次に示す試験方法である。
試験に供する塗料を平たんな板に塗装仕様に従って,均一な膜厚で単層又は複層に塗り分けて塗装する。塗膜を乾燥し,硬化した後,試験円筒を塗装した面へ直接,接着剤を用いて貼り付ける。接着剤の硬化後,試験体を適切な引張試験機に設置して引張試験を行い,塗膜と素地間との付着破壊に必要な張力を測定する。破壊力は,試験体の最も弱い境界面の付着破壊か,又は最も弱い部分に凝集破壊を起こすのに必要な最小張力で表す。
なお,付着破壊と凝集破壊とが混在する場合もある。
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装置・接着剤
1999年版
3 装置
3.1 引張試験機
後述の規定に則して選択した手順に適したもの。
張力は,塗装した素地面に対して垂直に加え,試験アセンブリ(塗膜,又は接着剤)の破壊が90秒以内に発生するように,1MPa/s超えない,実質的に一様な速度で増加させなければならない。
張力を加えるのに適した方法を,図1及び図2(ここでは省略する)に示す。
注:1MPa/s=1MN/m2・s
3.2 試験円筒
他に規定がなければ,直径20mmで,試験中に決して変形することのない十分な厚さをもつ鋼製で,引張試験機の使用に適したもの。
試験円筒の長さは,その直径の半分以上であることを推奨する。試験片に接着する表面は,使用前に試験円筒の長軸に対して垂直に調整しておく。
日本では,鋼製の他にアルミニウム製のものも用いられている。
3.3 しん(芯)出し装置
試験円筒の長軸に対し垂直な方向の表面を試験片(塗膜)に接着するとき,引張試験の引張り方向に対し適正な角度を確保させるための養生装置。適切な設計例を図3(ここでは省略する)に示す。
3.4 切込み装置
試験円筒の周囲の硬化した接着剤,及び塗膜を基板まで切り込むための,鋭いナイフのようなもの。
加えた引張力が試験円筒の表面以外に拡散しないように,すなわち引張り試験時の試験表面積を厳格にするため,試験円筒の外縁に沿って適確に,試験円筒周辺の接着剤,及び塗膜を基板まで切り込むことにより,周辺塗膜と縁切りをする。
4 接着剤
試験に使用する接着剤は,適切に選択する。
塗膜の破壊を起こすためには,接着剤の凝集,及び接着力が被試験塗膜よりも大きいことが必要である。
備考:一般的には,シアノアクリレート(Cyanoacrylate),二液無溶剤エポキサイド(two-component solventless epoxide),及びパーオキサイド触媒型ポリエステル(peroxide-catalised polyester)接着剤が適しているとされている。
シアノアクリレート,及びポリエステル接着剤は,硬化時間が短く,高湿度状態での使用に適している。
2014年版
5 装置
5.1 引張試験機及びジグ
箇条 9 d) に規定する試験体の引張りに適したもの。張力を,塗装面に対して垂直に加え,張力を最初に加えてから 90 s 以内に試験体が破壊するように,1 MPa/sを超えない一定の張力増加速度で動作する。
引張試験機の代わりとして,同様の試験結果が得られる,形式の異なるプルオフ接着試験機(機械式,気圧式,水圧式又は手動式)を用いてもよい。水圧式,手動式装置は,結果がばらつくとの報告があるので,これらを使用した場合は,試験報告書に使用した試験機を記録しなければならない。
5.2 試験円筒
試験円筒は,引張試験機用に設計され,鋼製,又はアルミニウム製の円柱形であって,堅ろう(牢)で接着剤と塗膜とを接着するための平滑な面を片面とし,もう一端の面にプルオフ試験機に接続する構造をもつ。試験円筒は,ほかで規定のない場合は,直径 20 mm で,接着面は,試験中に変形することのない十分な厚さをもつ。その長さは,その直径の半分以上であることを推奨する。接着面は,試験に用いる前に試験円筒の長軸に垂直に加工しなければならない。
付着強度試験を片側からだけ行う場合には,直径 7 mm の試験円筒を使用する[箇条 9 d) 2) 参照]。直径 7 mm の試験円筒を使用する場合には,測定精度を出すために繰り返し 10 回の試験を実施し,試験報告書には使用した試験円筒の直径を記録する。
5.3 芯出ジグ
芯出ジグは,箇条 9 d) 1) 及び箇条 9 d) 3) の規定に従って使用する付着操作時に,試験体の正しい軸方向の位置合わせを確保するためのもので,ジグの例を図 3 (省略)に示す。
5.4 切込用具
切込用具は,試験円筒の周囲に沿って丸く,硬化した接着剤及び塗膜を通して素地まで切り込むための,鋭いナイフなどを用いる。
塗装系の機械的性質の違いによって,硬化した接着剤と塗膜とに対し,素地まで切れ目を入れる際に塗膜の付着強度が大きく影響を受ける場合がある。塗装膜厚が 150μm 以下の塗装系について,受渡当事者間で協定がある場合,切込みを入れないことも認める。試験円筒周囲に切込みを入れた場合には,切込みを入れた内容と,使用した切込具の種類を試験報告書に記録しなければならない。
6 接着剤
試験に使用する適切な接着剤の選択には,特に注意を要する。塗膜の破壊を起こすためには,接着剤の凝集及び接着力が被試験塗膜の凝集力及び付着力よりも大きいことが必要である。使用する接着剤がこの試験に適しているか事前に選別しなければならない。可能であれば,接着剤の混合前の構成成分を別々に試験塗膜に塗布し,接着剤の硬化時間に相当する時間,塗膜と接触させて試験塗膜に外観変化がないことを確認する。試験円筒と塗膜との間の付着力が最も高い結果となる接着剤が望ましい。
一般的にはシアノアクリレート接着剤,無溶剤二液形エポキシ接着剤,及びパーオキサイド触媒形ポリエステル接着剤が適している。高湿度下の引張試験は,硬化速度ができるだけ短い接着剤を選択する必要があり,速乾の二液形エポキシ接着剤が適している。
注記 破壊が主として接着剤の凝集破壊の場合は,別の種類の接着剤を使用することでより有用な結果が得られる。
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試料の採取・試験板
1999年版
5 試料の採取
試料の採取は,JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第2節:サンプリング」の規定に従って,試験する製品(又は多層塗膜系の場合は各製品)の代表的試料を採取する。
次いで, JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」の規定に従って,試験用に試料を検分及び調整する。
6 試験板
6.1 試験板の調整及び塗装
JIS K 5600-1-4 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第4節:試験用標準試験板」に従って規定された試験板を調整し,試験する製品又は塗膜系を規定の方法によって塗装する。
6.2 試験塗膜の乾燥
塗装した試験板を規定時間,及び規定条件下で乾燥(又は焼付け及び静置)する。乾燥条件は,温度 23±2℃,及び相対湿度 50±5%において 24時間以上とする。
一般的には,時間の限定より,硬化乾燥を確認した後(1週間程度養生する例が多い)に試験されることが多い。
6.3 膜厚
JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」に規定されている手順の一つによって,乾燥塗膜の厚さをマイクロメートル単位で測定する。
2014 年版
7 サンプリング並びに検分及び調整
試料の採取は,JIS K 5600-1-2 の規定に従って,試験する製品(多層塗膜系の場合は各製品)の代表的試料を採取する。次いで,JIS K 5600-1-3 の規定に従って,試験用に試料を検分及び調整する。
8 試験板
8.1 試験板の材料(素地)
受渡当事者間の協定がない場合は,JIS K 5600-1-4 に規定する前処理をする。試験板は平滑でゆがみのないものを使用する。
8.2 試験板の調整及び塗装
受渡当事者間の協定がなければ素地に対し,適切な前処理をし,試験板の表面調整をする。前処理の方法は試験報告書に記録する。
8.3 試験片の乾燥及び養生
試験片は,規定時間及び規定条件下で乾燥(又は焼付け及び静置)し,養生する。条件は JIS K 5600-1-6の規定によって,試験前に 23±2℃,相対湿度(50±5)%の状態で 16 時間以上保持する。
8.4 膜厚
膜厚は,受渡当事者間の協定による。JIS K 5600-1-7 に規定されている手順の一つによって,乾燥塗膜の膜厚を μm 単位で測定する。
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手順
1999年版
7 手順
7.1 環境条件
試験は,温度 23±2℃,及び相対湿度 50±5%において行う。
7.2 接着剤
製造業者の説明書に従って接着剤を準備し,使用する。接着剤は,試験アセンブリの構成部品のしっかりした連続的で一様に接合させるのに必要最小限の量を用いる。できれば,直ちに余分の接着剤をすべて除去する。
7.3 試験アセンブリ
堅固な素地,及び変形性素地に対する一般的試験方法
塗装した素地から切り出した試験片の一部(直径 30mm以上の円板,又は一辺の長さ 30mm以上の正方形板)を用いる。
等しい直径の 2個の試験円筒の清浄にした表面に一様に,接着剤を塗布する(備考1.及び備考 3.参照)。
試験円筒が試験片の中心と軸方向に一線になるように,試験片を 2個の試験円筒の接着剤塗布面の間に置く(サンドイッチ法)。
しん出し装置内で試験アセンブリを位置合せし,接着剤の硬化時間維持する(備考 2.参照)。
接着剤の硬化後に,切込み装置を用いて試験円筒の周囲を注意深く生地まで通して切り込む。
備考 1 :接着剤と塗膜の界面からの破壊を防止するため,塗膜の表面を軽く研磨するのが望ましい。
備考 2 :高湿度下での特殊試験では,接着剤の硬化時間をできるだけ短くするため,適した接着剤を選定する。
備考 3 :変形性素地に対しては,素地の両面に試験する製品を塗装した試験片を用いるのが望ましい。
片面だけの試験に対する方法(堅固な表地だけに適する)
サンドイッチ法が困難な試験片などに対し,1個の試験円筒を用い,一方向からの引張りで試験する方法である。
試験円筒の清浄化した面に接着剤を一様に塗布する。
試験円筒の接着剤を試験片の塗膜に密着させ,接着剤が硬化した後に切込み装置を用いて,注意深く試験円筒の周囲を素地まで切り込む。
外側リングを試験円筒に配し,外側リングを抑えながら試験円筒を引張る。
試験円筒に塗装する方法
2個の試験円筒のうち,一方の試験円筒に塗料を塗り付けたものを試験片として用いる方法である。
一つの試験円筒に,試験対象の塗料を塗り付け,前述の「試験板」に従い準備する。
塗膜の硬化後に,他の試験円筒に接着剤を塗布し,塗装した試験円筒の塗膜面に接触させ,しん出し装置中で接着剤が完全に硬化するまで静置する。
接着剤の硬化後に2つの試験円筒を互いに引張り試験する。
7.4 測定
接着剤の硬化時間が過ぎたならば,直ちに試験アセンブリを引張試験機内に置き,曲げモーメントがかからず,張力が試験部分全体に一様に加わるように注意して試験円筒を整列する。張力を塗面に垂直に加え,張力を最初に加えてから90秒以内に試験アセンブリの破壊が起きるように1MPa/sを超えない速度で増加する。試験アセンブリを破壊した張力を記録し,後述の方法 に従って破面を検査する。
7.5 測定回数
少なくとも3回の測定を実施する。参照試験の目的には,最小限5回の測定を行う。すべての測定結果を報告する。
8 手順上の注意事項
・結果は,使用する試験アセンブリによって影響される。さらに,結果は,張力の軸方向のアライメントが確保されない限り,再現可能な結果は得られない。
・破壊が主として接着剤に起因している場合には,別の種類の接着剤を用いることによって,より有用な結果を得るように努める。
2014 年版
9 手順
a) 試験回数
少なくとも 6回試験を行う。すなわち,少なくとも 6個の試験体を使用する[箇条 9 d) 参照]。
b) 試験雰囲気
試験は 23±2 ℃,相対湿度(50±5)%の環境で行う。
c) 接着剤
接着剤は,製造者の説明書に従って接着剤を準備し,調整する。接着剤の量は,試験体の構成材間を隙間なく充塡するのに必要な最小限の量とし,余分な接着剤はすぐに除去する(箇条 6「接着剤」参照)。
d) 試験体
1) 堅く変形しにくい素地及び変形しやすい素地に対する一般的な試験体の作成は,次による[試験円筒 2個使用の場合(サンドイッチ法)]。
試験体には,塗板から切り出した試験片の一部(直径 30mm以上の円盤又は一辺が 30mm以上の正方形の板)を用いる。試験片が変形しないように注意する。直径の等しい 2個の試験円筒(5.2)を受渡当事者間の協定がない場合は,JIS K 5600-1-4の規定に従って新たに清浄にした面に,均一に接着剤を塗布する(注記参照)。
図 4(省略)に示すように試験円筒が試験片の芯と軸方向に一直線になるように,試験片を試験円筒の接着剤塗布面の間に置く。芯出ジグ(5.3)内で試験体を位置合わせし,接着剤が硬化するまで固定しておく。特に高湿度の条件の場合,できるだけ接着剤の硬化時間が短い,二液形で速乾タイプのエポキシ接着剤が望ましい。
受渡当事者間の協定がなければ接着剤の硬化後,切込用具(5.4)を用いて試験円筒の周囲を注意深く素地まで通して切り込む。変形しやすい試験片に対する方法において,無塗装素地面と試験円筒との付着性が弱いと予測される場合は素地の両面に試験対象の塗料を塗装する。
注記 接着剤と塗膜境界面との接着力は,試験円筒の接着剤塗布面と塗膜とを接合させる前に,乾燥塗膜の表面を目粗しすることによって改善される。
2) 片面だけの試験に対する試験体の作成は,次による(堅い変形しにくい素地に適する。)。
受渡当事者間の協定がない場合は,JIS K 5600-1-4の規定に従って,新たに清浄にした試験円筒(5.2)の面に接着剤を均一に塗布する。
試験円筒の接着剤塗布面を,接着剤が硬化するまで[箇条 9 d)の 1)参照]塗膜に接触させる。接着剤が硬化後,切込用具(5.4)を用いて,注意深く試験円筒の周囲を素地まで切り込む。図 5 (省略)に示されているように外側にリングを置き,試験する。
3) 試験円筒だけを用いる試験体の作成は,次による。
特殊な目的に対しては,試験円筒に直接塗装してもよい。清浄にした試験円筒表面に接着剤を均一に塗布する。図 6 (省略)に示す,試験円筒の接着剤塗布面を,試験用に供する塗料を塗装,乾燥させた試験円筒面に接触させ,試験体を芯出ジグ(5.3)中で位置合わせをし,接着剤が硬化するまで静置する。
e) 測定
測定は,次による。
1) 破壊強さ
接着剤の硬化時間が過ぎた後,直ちに試験体を引張試験機(5.1)内に置き,曲げモーメントがかからず,張力が試験部分全体に均一に加わるように注意して,試験円筒を調整する。張力を塗面に垂直に加え,張力を最初に加えてから 90s以内に試験体の破壊が起きるように 1MPa/sを超えない張力増加速度で引っ張り,試験体を破壊した張力を記録する。用意した各試験体を用い,繰り返し試験を行う[箇条 9 a) 参照]。
2) 破壊の形態
目視によって破壊の形態を評価するために破壊面の観察を行い,破壊面のタイプの評価を次の表現を用いて表示する。
A = 基板の凝集破壊
A/B = 素地と第一塗膜との間の付着破壊
B = 第一塗膜の凝集破壊
B/C = 第一塗膜と第二塗膜との間の付着破壊
n = 多層系塗膜の第 n 層目の凝集破壊
n/m = 多層系塗膜の第 n 層/m 層との間の付着破壊
−/Y = 最終塗膜と接着剤との間の付着破壊
Y = 接着剤の凝集破壊
Y/Z = 接着剤と試験円筒との間の付着破壊
それぞれのタイプの破壊について 10%単位で破壊面積を換算評価する。繰り返し試験の結果,破壊面積が一定でない場合には塗料の調整,塗装工程の見直しを実施する。接着剤に起因する破壊面積のばらつきについては,箇条 6(接着剤)及び箇条 9 d) の 1) の注記を参照する。さらに,少なくとも 6個の試験体による追加試験を実施する。
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結果の表し方
1999年版
9 結果の表し方
9.1 破壊強さ
各試験アセンブリに対する破壊強さ( MPa)は,次の式によって算出する。
4F/πd2
ここに,F:破壊力(N)
d:試験円筒の直径(mm)
直径が 20mmの試験円筒の場合の破壊力( MPa)は,次の式によって算出する。
4F/400π=F/314
9.2 破壊の性質
試験結果は,付着破壊(界面破壊),凝集破壊,又は付着/凝集破壊の用語を用いて,破壊された部位別に,破壊面積の百分率,及び位置を表す。
便宜上,観測した結果の記載には,次の略語が用いられる。
A = 基板(素地)の凝集破壊
A/B = 素地と第一塗膜との界面の付着破壊
B = 第一塗膜の凝集破壊
B/C = 第一塗膜と第二塗膜との界面の付着破壊
−/Y = 最終塗膜と接着剤との界面の付着破壊
Y = 接着剤の凝集破壊
Y/Z = 接着剤と試験円筒との界面の凝集破壊
例:試験塗膜が 20MPaの張力で破壊し,第一塗膜の凝集破壊約30%,第一塗膜と第二塗膜間の付着破壊約 70%の場合は,その試験結果は,次のように表される。
20MPa,30%B,70%B/C
2014年版
10 結果のまとめ方
10.1 破壊強さ
ここに,試験体によって得られる,破壊強さσ( MPa)は,次の式によって算出する。
σ=F/S
ここに,F:破壊力(N)
d:試験円筒の面積(mm2)
直径が 20mmの試験円筒の場合の破壊力σ( MPa)は,次の式によって算出する。
σ=F/314
10.2 破壊の形態
箇条 9 e) 2)の手順に従って評価した,破壊の形態と平均破壊面積とを結果として表記する。
10.3 表示の例
プルオフ試験によって試験したある塗装システムが 20MPaの張力で破壊し,各側の破壊面積が第一塗膜の凝集破壊に関しては,試験円筒の面積の約 30%を示し,第一塗膜と第二塗膜間の付着破壊に関しては,試験円筒の面積の約 70%を示す場合には,そのプルオフ試験の結果は,次のように表す。
20MPa,30%B,70%B/C
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