JIS K 5600_5_6 塗料一般試験方法‐第5部‐第6節:付着性(クロスカット法)

 JIS K 5600-5-6 1999年版  塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法) ( Testing methods for paints− Part 5 : Mechanical property of film−Section 6 : Adhesion test (Cross-cut test) )について  【序文・目次・適用範囲・補足情報】,   【装置】,   【試料採取・試験板】,   【手順】,   【結果の表し方】 に分けて紹介する。

 序文・目次・適用範囲・補足情報

 序文
 この規格は,ISO 2409:1992, Paints and varnishes – Cross-cut test.を翻訳したものである。
 
 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
 序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 必要な捕捉情報4 装置(4.1 切込み工具,4.2 ガイド及び等間隔スペーサー,4.3 軟らかいはけ,4.4 透明感圧付着テープ,4.5 ルーペ),5 試料採取方法,6 試験板(6.1 素地,6.2調整及び塗装,6.3 乾燥,6.4 膜厚),7 手順(7.1 通則,7.2 手動手順による塗膜の切り込み及び除去,7.3 電動工具を用いて塗膜の切り込み),8 結果の表わし方,9 試験報告
 附属書A(規定)必要な捕捉情報
 
 1 適用範囲
 1.1 この規格は,塗料,ワニス及び関連製品の試料採取及び試験を扱う規格の一つである。この規格は,直角の格子パターンが塗膜に切り込まれ,素地まで貫通するときの素地からのはく離に対して塗膜の耐性を評価する試験方法について規定する。
 この試験方法によって測定された性能は,各要因の中から特に,下塗り又は基板いずれかへの付着性に左右されるものである。しかし,この試験方法は,付着性の測定手段とみなしてはならない。
 付着性が必要な場合は, JIS K 5600-5-7 「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第7節:付着性(プルオフ法)」を参照する。
 備考 1 :この試験方法は,主に試験室での実施を目的にしているが,フィールド試験にも適しているものである。
 1.2 試験方法は,合否試験として,又は状況が適合するならば, 6段階分類試験について記載している。多層塗膜系に適用する場合には,個別層ごとに互いの塗膜の耐はく離性を評価することができる。
 1.3 試験は,塗装対象物及び/又は特別に準備した試験試料について実施することができる。この方法は硬い(鋼)及び軟らかい(木製及び石こう)素地に適用されるが,このような各種の素地は,それぞれ異なる試験操作を必要とする。この試験方法は,250μmより大きい膜厚の塗膜,又は模様塗膜には適していない。
 備考 2 :250μm以上の膜厚をもつ塗膜は,単一カットの方法によって試験を行うことができる。
 備考 3 :粗いパターンの表面をもつように設計した塗膜に適用する場合,この方法は,大きなエラーを示す結果になる。
 
 3 必要な補足情報
  いかなる特別の適用に対しても,この規格に規定する試験方法は,補足情報によっ て完結させる必要がある。補足情報の各項目は, 附属書 A に示す。
 附属書 A(規定)必要な捕捉情報
 この附属書 A(規定)に記載する補足情報の項目は,この試験方法を実施するうえで適切なものとして提示しなければならない。必要な情報については,受渡当事者間で協定を見るのが望ましく,試験品に関連する国際規格又は国家規格,若しくは他の文献から,全体的又は部分的に引用してもよい。
 a)  素地についての材料(厚みを含む。)及び表面の調整。
 b)  素地に対する試験塗料の塗装方法。多層塗膜系の場合における各塗膜間の乾燥の時間及び条件を含む。
 c)  塗膜の乾燥の時間,条件,及び放置の状態。適用可能であるなら,試験前に。
 d)  試験開始前の試験試料の状態調整の期間(同じ試験片で他の試験が事前に行われる場合)。
 e)  JIS K 5600-1-7「膜厚」に従っての乾燥塗膜のマイクロメートル単位の厚み,及び測定方法。単一塗膜系又は多層塗膜系双方の場合がある。
 f)  規定と違う場合の試験に対する温度及び湿度。
 g)  実施手順,すなわち,合格/不合格か,又は分類試験。
 h)  使用切込み工具のタイプ,及び操作方法(手動又は電動)。
 i)  表 1に示す分類についての材料に必要な性能。

   ページのトップ

 4 装置

 4.1 切込み工具
 切込み工具は規定の形をもち,かつ,刃先が良好な状態にあることを確認することが特に重要である。
 4.1.1 適切な工具は,次に列記するもので,また,図 1(省略)に示すものである。
 a)  20~30°の刃をもち,また規定する寸法をもつ単一刃切込み工具。
 b)  1mm又は 2mm離した間隔で,6枚の刃をもつ多重刃切込み工具。単一切込み工具は,すべてのケースにとって望ましい工具である(すなわち,硬及び軟の基板双方での塗膜のすべての種類)。多重刃切込み工具は,厚い(>120μm)又は硬い塗膜に用い,塗膜が軟らかい基板に適用される場合には,適していない。
 4.1.2 規定する工具は,手動で使用するのに適したものであり,また,これが一般的な使用方法であっても,より一様な切込みを与える電動装置に取り付けることもできる。
 電動装置の手順の適用については,受渡当事者間の協定によるものとする。
 4.2 ガイド及び等間隔スペーサー
 等間隔で切り込むためには,単一刃切込み工具を用いる際には,ガイドのある等間隔スペーサーが必要である。適切な装置を,図 2(省略)に示す。
 4.3 軟らかいはけ
 4.4 透明感圧付着テープ
 幅は 25mmで,IEC 60454-2「1994 Specification for pressure-sensitive adhesive tapes for electrical purposes −Part 2 : Methods of test」に従い 25mmの幅当たり 10±1Nの付着強さをもつもの。
 4.5 ルーペ (viewing lens)
 手で用いるもので,2倍又は 3倍の倍率をもつもの。

   ページのトップ

 試料採取・試験板

 5 試料採取方法
 試験に用いる製品の代表試料は,JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第2節:サンプリング」に規定する方法によって採取する。
 試験用の各試料は, JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」に規定する方法によって,検分,調整する。
 
 6 試験板
 6.1 素地
 特に規定がなければ,JIS K 5600-1-4 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第4節:試験用標準試験板」に規定する中の一つから素地を選択する。
 試験板は,平らでゆがみがないもの。また,試験板の寸法は,試験部位が互いに試験板の端部から,5mm以上の異なる 3か所で実施できるようにしなければならない。
 試験板が木製のような比較的軟らかい材料からできている場合,最小厚さは,10mmとする。試験板が硬い材料でできている場合は,最小厚さは,0.25mmとする。
 6.2 調整及び塗装
 特に合意がなければ,JIS K 5600-1-4「試験用標準試験板」に従って各試験板を調整し,試験用の製品又は多層塗膜系について規定された塗装方法で塗装する。
 6.3 乾燥
 規定条件下で,規定時間にわたって,各塗装試験板を乾燥(又は焼付け)及び静置(適用可能なら)する。
 6.4 膜厚
 乾燥膜厚は,JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」に規定する操作の一つによって,マイクロメートル単位で測定する。規定は,クロスカットを行う位置,又はそれとできるだけ近い位置で行う。測定数は,用いた方法によって決まる。

   ページのトップ

 7 手順

 7.1 通則
 7.1.1 試験条件及び試験数
 他に合意がない限り,温度23±2℃,相対湿度50±5%で試験を行う(JIS K 5600-1-6参照)。
  備考:フィールド試験では,その環境条件を許容しなければならないであろう。
 試験板上の最低三つの異なる箇所で試験を行う。結果が一致しない(1分類ユニットを超える差がある)場合は,3か所以上で試験を繰り返す。もし,必要ならば異なる試験板を用いて,すべての結果を記録する。
 7.1.2 試験板の養生
 他に規定がない限り,試験板を試験の直前に,最低16時間にわたって,温度23±2℃,及び相対湿度50±5%で養生する。
 7.1.3 カット数
 格子パターンの各方向でのカット数は,6個とする。
 7.1.4 カットの間隔
 各方向でのカットの間隔は等しくするが,次のような膜厚及び素地によって決めなければならない。
   0μm~60μm:硬い素地に対して,1mmの間隔。
   0μm~ 60μm:軟らかい素地に対して,2mmの間隔。
   61μm~ 120μm:硬い,軟らかい素地両方に対して,2mmの間隔。
   121μm~250μm:硬い,軟らかい素地両方に対して,3mmの間隔。
 7.2 手動手順による塗膜の切込み及び除去
 7.2.1  試験中に試験板の変形を避けるために,硬くて平らな表面上に試験板を置く。
 7.2.2  規定の手順に従い,手動で切込みを行う。試験の前に,刃の部分を検査し,刃を研ぐか又は取換えによってその状態を維持する。試験板が,木製又は類似の材料でできている場合,木目の方向に対して約45°でカットする。
 7.2.3  試験板の表面に対して刃が垂直になるように切込み工具を保持する。切込み工具に一様な圧力を加え,また,適切な間隔のスペーサーを用いて,一定の切込み率で塗膜部分に規定の数の切込みを行う。
 すべてのカットは,素地の表面まで貫通していなければならない。塗膜が硬すぎて素地まで貫通することができない場合は,この試験は無効とし,その旨を報告書に記載する。
 7.2.4  この操作を繰り返すが,格子パターンが形成できるように,それらに対して 90°で最初の切込みに重ね,更に等しい数だけ平行な切込みを行う。
 7.2.5  試験板を軟らかいはけで,格子パターンの双方の対角線に沿って,前後に数回ブラッシングする。
 7.2.6  硬い素地に限っては,追加のテープを適用する。新しい試験のシリーズを始める際には,付着テープのリールから完全に 2 巻きのラップを取り外し捨てる。
 一定の速度でテープを取り出して,約75mmの長さの小片にカットする。
 テープの中心を,図3(省略する)に示すように各カットの一組に平行な方向で格子の上に置き,格子の部分にかかった箇所と最低 20mmを超える長さで,指でテープを平らになるようにする。
 塗膜に正しく接触させるために,指先でしっかりとテープをこする。テープを通して見られる塗膜の色は,接触全体がきちんとしているかどうかを示す有効な目安である。テープを付着して 5分以内にテープを引きはがすが,できるだけ60°に近い角度でテープの端をつかみ,0.5~1.0秒で確実に引き離すようにする。
 7.2.7  目的が参照試験の場合には,例えば,透明フィルムのシートをはりつけることなどによってテープを保存する。
 7.3 電動工具を用いて塗膜の切込み
 切込み工具を電動装置と共に使用する際は,手動手順に記載する諸点,特にカットの数と間隔及び試験の数について注意する。

   ページのトップ

 8 結果の表し方

 8.1
 試験結果の評価は,次のように行う。
 軟らかい基板:ブラッシング(はけかけ)の直後
 硬い基板:付着テープを取り外した直後
 8.2
 試験塗膜の切込み部分を念入りに検査する場合,正常又は補正した視力で若しくは受渡当事者間で協定がある場合は,ルーペを用いて,良好な照明下で注意深くカット部分を検査する。検査の間中,試験部位の検査が一方向へ偏らないように試験板を回転する。そのテープも同様な方法で検査すると役に立つかもしれない。
 8.3
 表 1に従い,図例と比較しながら,試験部分を分類する。(なお,図は省略)
 備考:追加の指示は,表 1の説明による。
 表 1では,6段階の分類を示している。最初の 3段階は一般目的に適合するもので,合否判定が求められる際に用いるものである。特別の状況が発生することもあるが,そのような場合には 6段階の完全な分類が必要となる。
 表1 試験結果の分類(抜粋)
 0: カットの縁が完全に滑らかで,どの格子の目にもはがれがない。
 1: カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に5%を上回ることはない。
 2: 塗膜がカットの縁に沿って,及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に 5%を超えるが 15%を上回ることはない。
 3: 塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は目のいろいろな部分が,部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に 15%を超えるが 35%を上回ることはない。
 4: 塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に 65%を上回ることはない。
 5: 分類 4でも分類できないはがれ程度のいずれか。
 8.4
 多層塗膜系では,はがれが生じる境界面を報告する。
 8.5
 試験結果に違いがある場合は,各試験の結果を報告する。多層塗膜系の場合,はがれ(各塗膜間,又は塗膜と基板との間)の部位を報告する。

 ページのトップ