防食概論:塗料・塗装

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         新設時の塗膜厚管理

 塗膜厚みの測定は,JIS K 5600-1-7「膜厚」方法 No.10(ブラスト処理鋼板の乾燥膜厚の測定)に示す非破壊測定法を採用するのが一般的である。
 JIS規格の非破壊測定法には,X線や放射線を用いた方法もあるが,方法 No.10は,鋼構造物等のブラスト鋼板を素地として塗装された塗膜の厚みを,電磁誘導式の測定機器を用いて計測する方法を規定している。
 方法 No.10では,測定方法そのものは,磁性金属上非磁性被膜の測定に用いる方法 No.6磁気法A(磁気又は電磁誘導(感応)原理)を用いて,ブラスト処理鋼板上の塗膜厚みの計測方法を規定するものである。
 ブラスト処理鋼板以外の金属板の塗膜厚み測定には,磁性金属に対し方法No. 6の磁気法B(永久磁石プルオフ原理),非磁性金属に対しては,方法 No.7渦電流式が活用できる。

非破壊での膜厚測定の原理

非破壊での膜厚測定の原理
図出典:(株)フィッシャー・インストルメンツ カタログ

 方法 No.10
 電磁誘導式測定原理(方法 No.6A)
 プローブである鉄芯入りコイル(低周波交流電磁石)の先端に磁性体を近づけると,磁石が磁性体をひきつけることに対する反作用(電磁誘導)がおき,その距離のわずかな変化に対応してコイルのインダクタンスが変化(2次コイルの電圧が変化)する。この変化を計測し膜の厚さを測る。
 磁性体(鉄,鋼,フェライト系ステンレスなど)素材上の非磁性皮膜(めっき膜,塗膜,有機ライニング等の樹脂膜など)の計測に適する。
 注:プローブと膜との密着度,膜の表面粗さ,素材の磁性や表面粗さなどの影響を受ける。
 
 ブラスト面計測の留意点
 ブラスト処理鋼材の膜厚測定は,平らな表面の場合よりも,更に複雑である。測定結果は,場所によって変化する素地の性質,及び測定装置(プローブの構造など)に影響される。
 一般的には,平らな鋼板表面(400 番研磨紙で研磨)で校正した後で,膜厚を測定するが,この方法では,素地の凹凸表面の磁気平面を超える膜厚を測定することになる。すなわち,ブラスト処理表面のピークの底から先端までの高さで表される表面粗さの約半分に相当する位置からの厚みになる。
 従って,防食上意味のある塗膜厚みは,凹凸のピークからの膜厚と考えられるので,計測値から表面粗さの半分に相当する値を引いた値が有効な塗膜厚みと考えることができる。ISO 19840:2004では,ブラスト面の塗膜厚み計測における補正方法を提案している。
 なお,ブラスト面を基準面として装置を校正することも考えられるが,繰り返し測定精度が低下するのでJIS規格では推奨していない。
 
 方法No.7(渦電流式)
 プローブ中で発生させた高周波電磁場(2MHz ~)によって,プローブを置いた導体中に渦電流を生じる。渦電流は磁界を打ち消す方向に流れ,発信機の電流は抵抗を受ける。発生した渦電流の振幅,及び位相は,導体とプローブの間の非導電性塗膜の厚さと相関があるので,これにより膜厚を求められる。
 
 塗装した溶融亜鉛めっき鋼
 磁性金属である鋼の上に,非磁性金属の亜鉛の被膜があり,その上に非導電性の塗膜で構成される。方法 No.10の電磁誘導式で計測されるのは,磁性のある鋼を被覆する亜鉛めっき層と塗膜の合計厚みである。従って,No.10の方法では,塗膜厚みのみを評価することができない。
 そこで,No.7の渦電流式で計測することになるが,亜鉛めっき層が薄いので,下地である鋼の影響を受けることに注意しなければならない。すなわち,計測値はあくまでも参考値として扱い,これを持って塗膜厚みの管理を行うことは勧められない。

 

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【塗膜厚みの管理】

 鋼橋塗装における一般的な塗膜厚み管理方法を紹介する。

  • 測定のタイミング
     塗膜が硬化乾燥に至ってから行う。硬化乾燥前では,プローブを押し付けたとき,塗膜が変形し,正しい厚みを得られないためである。
  • サンプリング法
     対象物に定めたロットの面積に応じ,サンプリング数を規定する。例えば,1ロットの面積が 500m2の場合,20m2につき 1測定点を選択(全体で 25測定点)する。
  • 測定方法
     一般的には,電磁誘導式測定器を用いて,1測定点について,2回測定し,その平均値を読み値とする。読み値から ISO 19840に従い,ブラスト鋼板の表面粗さに応じた補正を行い,この値をその点の測定値とする。
     補正は,ブラスト鋼板の粗さが ISO 8503-1で定義する Fineなら 10μm,Mediumでは 25μm,Coarseの場合に 40μmを読み値から差し引く。
  • 評価方法
     評価は,当該塗装系に定められる標準塗膜厚に対し,測定値の最小値平均値を比較して判定する。例えば,最小値が標準塗膜厚の 60%以上,且つ平均値が標準塗膜厚の 75%以上を合格とするなどである。
  • 不合格時の対処
     不合格となった場合,その程度により,次のような対処法がある。
     平均値が不合格の場合は,そのロットの全面を増し塗りする。
     平均値が合格し,最小値が不合格の場合は,再度塗膜厚を計測する。その結果,塗膜の薄い個所が部分的な場合は部分的増し塗りを,薄い個所が比較的多い場合はそのロットの全面を増し塗りする。
 【参考資料】
 ISO 19840:2004「Paints and varnishes -- Corrosion protection of steel structures by protective paint systems -- Measurement of, and acceptance criteria for, the thickness of dry films on rough surfaces」
 ISO 8503-1:2012「Preparation of steel substrates before application of paints and related products - Surface roughness characteristics of blast-cleaned steel substrates - Part 1: Specifications and definitions for ISO surface profile comparators for the assessment of abrasive blast-cleaned surfaces」

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