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     ここでは,塗膜の品質試験における色の目視比較について,【色の目視比較】, 【光源とは】に項目を分けて紹介する。

     塗膜の評価(視覚特性;色の目視評価)

     色の目視比較

     防食塗装などに用いられる JIS製品規格のJIS K 5516 「合成樹脂調合ペイント」では,試験項目塗膜の外観,促進耐候性,及び屋外暴露耐候性において,目視で見本品と試験片の色の比較が試験結果の判定に用いられている。また,JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」においても,塗膜の外観,耐アルカリ性,耐酸性,促進耐候性,及び屋外暴露耐候性の判定に用いられている。
     このように,目視による色の比較は,上塗り塗料の品質試験において重要な項目の一つである。
     
     塗膜の色は,塗膜表面から反射する光により認識される。すなわち,色の判定目視で行う場合には,判定時に用いる光源により観察される色が異なって感じられる。
     このため,上記の塗料 JIS製品規格では,目視観察のときの光源として, JIS K5600-4-3 5.2(自然昼光照明)の拡散昼光,又は 5.3(色観察ブースの人工照明)の色観察ブースを用いることと規定している。

     JIS K 5600-4-3 「第 3節:色の目視比較」

     1.適用範囲
     この規格は塗膜及び関連製品の色を,自然昼光,又は色観察ブース内の人工光源を用いて,標準品(参照標準又は新たに調整した標準)と対比して目視比較するための方法を規定する。
     特別な効果を示す顔料を含む塗膜(例えば,メタリックエナメル)の方法については,照明及び受光のすべての詳細についての事前の協定がない場合には適用されない。
     3.原理
     比較する塗膜の色は,自然昼光,又は人工昼光のいずれかを規定した照明条件,及び観察条件の下で観察する。人工昼光の場合は,色観察用のブースを用いる。
     色差成分(色相,彩度及び明度)を表現するための手順,すなわち,特別の等級法について記載する。また,メタメリズム(条件等色)の判定も考慮している。
     5.2 自然昼光照明
     拡散昼光を用いなければならない。この拡散昼光は,北半球においては,部分的に曇りの北方の空からのものが望ましく,南半球においては,部分的に曇りの南方の空からのものが望ましい。
     また,この拡散昼光には,強い着色体(赤煉瓦壁又は緑色の樹木のようなものすべて)からの反射があってはならない。
     照明は試験片が置かれる部分では均一であり,少なくとも 2000 lx(ルクス)レベルの照度でなければならない。直射日光は,避けなければならない。
     5.3 色観察ブースの人工照明
     色観察ブースは,外部光を遮断する囲い及びその囲いの内部を照明する光源で構成される。
     この光源は試験片上を照明し,その分光分布は CIE標準の光 D65,又はCIE標準の光 Aの分光分布と近似である。
     色観察位置の照度は 1000~4000lxの間とし,暗い色に対しては,この範囲の上限に近い数値が望ましい。
     6. 観察者
     かなりの割合の人間は,その色覚に欠陥があるので,観察者の適性を確認するためには,例えば,ファーンスワース 100ヒューテスト,又はより厳密にはアノマロスコープ測定を用いて観察者を選定する。
     色覚は加齢と共に大きく変化するので,40歳を超える観察者は,メタメリズム(条件等色)の一連の色から最高の色合わせを選ぶように要求される方法を用いて試験されることが望ましい。色の比較作業では,正常な色覚以外に色識別能力又は経験が重要である。
     ファーンスワース 100ヒューテストとは,色彩を使用する人の適否を調べたり,色覚異常者の弁色能を測定することを目的とする全部で 85色を使った色相配列検査法である。
     アノマロスコープ測定とは,色覚の精密検査装置で,赤色と緑色の光を混ぜた混色(黄色)の光と黄色単色の光とを比較する検査で,赤緑異常の評価に用いられる。具体的には,波長 670nm(赤),及び 545nm(緑)の色光が,任意の割合で混合できる視野と,波長 589nm(黄)の強さだけを変えうる単色視野とを被検者をして等色させ,そのときの混色及び単色の目盛によって色覚の正常,異常を判定する方法である。
     
     【参考】
     色彩(色)(color)【JIS Z8105「色に関する用語」】
     1.知覚色(perceived colour):色感覚ともいい,有彩色成分と無彩色成分との組合せからなる視知覚の属性。
     この属性は,黄,オレンジ,赤,ピンク,緑,青,紫などの有彩色名,若しくは白,灰,黒などの無彩色名を,明るい,暗いなどで修飾したもの,又はこれらの色名の組合せで記述される。
     備考 1:知覚色は,色刺激の分光分布,刺激面の寸法,形,構成,及び周囲条件,観測者の視覚系の順応状態,並びに観測者がなじんでいる類似の状況での経験に依存する。
     備考 2:知覚色は,幾つかの色の見えのモードで見える。種々の色の見えのモードの名称は,色知覚の質的及び形状,観察条件などの幾何的な差を区別するためにある。
     2.心理物理色(psychophysical color):色刺激値(いろしげきち)ともいい,三刺激値のように,算出手法が規定された 3個の数値による色刺激の表示。
     備考 3:知覚色,心理物理色とも,文脈から意味が明確な場合に限って,用語 色 又は色彩だけを用いてよい。

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     光源とは

     拡散昼光(scattering daylight, diffused daylight)
     日の出 3時間後から日の入り 3時間前までの北空昼光で,周辺の建物,部屋の内装などの環境色の影響を受けていない光。試験片の色を観察するときの条件として,JIS Z 8723「表面色の視感比較方法」に定められている。【JIS K5500「塗料用語」】
     北空昼光(north sky light)
     物体色の色比較を行う場合に,実用的に標準イルミナント D65及びその他の昼光イルミナント DTの代用として用いられる,北半球における北空からの自然昼光。通常,日の出 3時間後から日の入り 3時間前までの太陽光の直射を避けた天空光をいう。【JIS Z8105「色に関する用語」】
     
     標準光源(standard light source, standard illuminant)
     特定の分光分布,光度,光束などをもち,測光,測色の標準として用いられる光源。【JIS Z 8120「光学用語」】
     物体の色はそれを照明する光源の分光分布によって異なって見えるので,国際照明委員会 CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)では協約により,相対的な分光分布を定めた標準イルミナント A および D65 を照射する具体的な光源として,A光源(色温度 2856ケルビン,タングステン電球が発する光),D65光源(色温度 6504ケルビン,自然な昼光に近づけた特殊な蛍光ランプ)の 2種類が規定されている。
     常用光源(色比較用の)(daylightsimulator)
     物体色の色比較を行う場合に,実用的に標準イルミナント D65並びに補助標準イルミナント D50,D55及び D75の代用として用いられる相対分光分布をもつ人工光源
     備考 その特性評価方法及びそれによる等級 A~Dの区分は,JIS Z8720「測色用の標準イルミナント(標準の光)及び標準光源」附属書(常用光源の分光分布の評価方法)に定められている。 【JIS Z8105「色に関する用語」】
     
     【参考】
     知覚色(perceived colour)の見えのモードによる分類【JIS Z8105「色に関する用語」】
     物体色(object-color);物体知覚色ともいい,対象物体に属しているように知覚される色。
     表面色(surface color);表面から拡散的に反射又は放射しているように知覚される色。
     開口色(sperture color);遮光板に開けた孔の中に見える一様な色で,奥行き方向の空間的定位が特定できないように知覚される色。
     発光(知覚)色(luminous(perceived)color)一次光源として光を発している面に属しているか,又はその光を鏡面反射しているように知覚される色。
     非発光物体色(非発光(知覚)色;non-luminous(perceived)color)二次光源として光を透過又は反射している面に属しているように知覚される色。
     関連(知覚)色(related (perceived)color);他の色と相互に関連して見えている面に属するように知覚される色。例えば,通常の背景又は周囲視野とともに相互に関連して知覚される色。
     無関連(知覚)色(unrelated (perceived)color);他の色から独立している面に属するように知覚される色。例えば,暗黒の周囲の中に一つだけ照明された 1色の色紙,又は暗い夜に一つだけ点灯した信号灯のように他に比較するものがない色。
     備考 自然の環境で見る二次光源は,普通,この意味での非発光物体色の見えを呈する。
     
     一次光源(primary light source)
     エネルギーの変換によって発生した光を放出する表面又は物体。
     参考 IEC では,一次光源だけを使用しているが,我が国では,単に,光源と呼ぶ。ただし,二次光源と対比して使われる場合は,一次光源と呼んでもよい。【JIS Z8113 「照明用語」】
     二次光源(secondary light source)
     それ自体では発光しないで,受けた光の少なくとも一部を反射又は透過して,再放出する表面又は物体。【JIS Z8113 「照明用語」】

     イルミナント(illuminant)
     測色用の光ともいい,物体の色知覚に影響する波長域全体の相対分光分布が規定されている放射。【JIS Z 8120「光学用語」】
     それで照明された物体の色知覚に影響を及ぼす波長域全体の相対分光分布が規定されている放射。
     参考1. この用語は,以前は標準 , 基準などの語と組み合わせて …の光と呼び,単独の場合には 測色用の光としたが,場合によっては紫外波長域も含む分光分布を表すので,IEC 60050 (845) 01-06 light の定義1.及び2.と矛盾しないように,イルミナントと呼ふことにした。
     参考2.この用語の対応英語 illuminant は日常英語では,このような意味に限らず,物又は場面を照明するどんな光に対しても用いる。【JIS Z8105「色に関する用語」,JIS Z8113 「照明用語」】
     CIE 標準イルミナント(CIE standard illuminant)
     ISO/CIE 10526 によって相対分光分布が規定されたイルミナント A,及び D65【JIS Z8105「色に関する用語」】
     CIE(国際照明委員会)によって相対分光分布が規定されたイルミナント A 及び D65
     備考 イルミナント Aは温度が約 2856K の黒体放射を,イルミナント D65は紫外放射を含む昼光を代表するものである。
     参考 CIE(国際照明委員会)は過去に,イルミナント B,C,及び D65以外の DTを標準イルミナントとしたことがある。これらのイルミナントは JIS Z8720 「測色用の標準イルミナント(標準の光)及び標準光源」では補助イルミナントとされている。【JIS Z 8120「光学用語」】
     CIEによって相対分光分布が規定されたイルミナント A,C,D65及びその他のイルミナント DT(ISO/CIE 10526及び CIE 出版物 15.2 参照。)【JIS Z8113 「照明用語」】
     昼光イルミナント(daylight illuminant)
     昼光のある様相とほぼ等しい相対分光分布をもつように定めたイルミナント。
     参考 昼光イルミナントは,主として北空についての多くの分光測定値から統計的手法によって各々の相関色温度における昼光の代表として CIE(国際照明員会)が定めた分光分布をいい,それを明確にするためには,CIE 昼光,又は CIE昼光イルミナントと呼ぶ。【JIS Z8105「色に関する用語」】

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