防食概論:塗料・塗装

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         塗付け方法

 構造物などの被塗物表面に,規定された量の塗料を均一に塗り拡げるために用いられる道具には,刷毛,ローラブラシやスプレーガンなどがある。製品としての塗膜の品質や塗装作業効率は,作業者の技量と選択された道具の影響を強く受ける。
 防食塗装(anticorrosion coating)では,作業効率より塗膜品質を優先した道具の選択が肝要である。ここでは,刷毛塗りに用いる用具,スプレー塗りに用いる器具の現状と変遷を紹介する。

 【刷毛塗り】

 紀元前から,塗り付け方法として,刷毛(はけ)塗り(brush application, brushing, brush coating)が用いられてきた。刷毛は,1本1本の毛に対する塗料の吸着性に加え,毛を束ねることによる毛と毛の間の毛管現象(capillarity, capillary phenomenon)により,多量の塗料を含ませることができる。これにより,比較的広い面積を効率よく塗ることができる道具である。

塗装用具(刷毛)の例

塗装用具(刷毛)の例
出典:大塚刷毛製造株式会社 カタログ

 刷毛に用いる毛の種類には,馬,豚,山羊,羊,牛,人などの動物由来の毛,棕櫚(しゅろ:ヤシ科)など植物由来の毛,人造のナイロンなどがある。
 刷毛に用いる繊維の選択は,塗料の種類(特性)による。例えば,合成樹脂調合ペイントなどの粘度の高い塗料には,馬毛や豚毛など腰の強い毛が,クリアラッカー(clear lacquer)やニス(vernish)など粘度の低い塗料には,羊毛や山羊毛など軟らかい毛が用いられる。水性塗料(water paint, water-based paint)では,それに適した専用の刷毛(最近はナイロン製が多い)がある。また,塗りの刷毛には人毛が,塗り(石膏ブラスター)には棕櫚が用いられる。
 
 ローラ塗り(roller application)も刷毛塗り同様に,手作業で塗り付ける方法として活用されている。ローラブラシが日本で製造・使用され始めたのは昭和40年代(1965年)になってからである。はじめは,建築分野で壁用塗料の厚塗りや模様付けに採用された。
 ローラブラシ用の材質やブラシ製造技術が進み,刷毛塗りほどの技量がなくとも,広い平面の塗装では,ある程度の仕上がりが得られ,作業効率がよいため,構造物の現場施工でもローラと刷毛の併用が主流になっている。
 
 【参考】
 ペイント(paint)
 素地に塗付したとき,保護,装飾又は特殊な性能を持つ不透明膜を形成する,液状,ペースト状又は粉末状の顔料を含む塗料。備考:広義では,顔料を含む塗料の総称。狭義では,顔料をボイル油で練り合わせて作った塗料をいう。【JIS K5500「塗料用語」】
 調合ペイント(ready-mixed paint)
 特にボイル油を加える必要がなく,かき混ぜて一様にすれば,はけですぐ塗れるように製造したペイント。油性調合ペイント,合成樹脂調合ペイントなど。【JIS K5500「塗料用語」】
 油性調合ペイント(ready mixed paints)
 着色顔料・体質顔料などを主にボイル油で練り合わせて作った液体・自然乾燥性の塗料。【JIS K5511「油性調合ペイント」】
 合成樹脂調合ペイント{ready mixed paints (synthetic resin type)}
 着色顔料・体質顔料などを,主に長油性フタル酸樹脂ワニスで練り合わせて作った液状・自然乾燥性の塗料。【JIS K5516「合成樹脂調合ペイント」】
 クリヤラッカー(clear lacquer)
 木材の透明塗装に適し,ラッカーエナメル塗装の際の仕上げ塗りに用いる液状・透明・揮発乾燥性の塗料。硝酸セルロースを主な塗膜形成要素とし,自然乾燥で短時間に溶剤が蒸発して塗膜を形成する。硝酸セルロース,樹脂,可塑剤などを溶剤に溶かして作る。【JIS K5500「塗料用語」】
 ワニス(vernish)
 略してニスとも呼ばれる。樹脂などを溶剤に溶かして作った塗料の総称。顔料は含まれていない。塗膜は概して透明である。【JIS K5500「塗料用語」】
 水性塗料(water paint, water-based paint)
 水で希釈できる塗料の総称。水溶性又は水分散性の塗膜形成要素を用いて作る。粉状水性塗料,合成樹脂エマルションペイント,水溶性焼付塗料,酸硬化水溶性塗料などがある。【JIS K5500「塗料用語」】
 ボイル油(boiled oil)とは,乾性油・半乾性油を加熱し,又は空気を吹き込みながら加熱して,乾燥性を増進させて得た油。【JIS K5500「塗料用語」】
 乾性油(drying oil)は,薄膜にし空気中に置くと,酸素を吸収して酸化し,これに伴って重合が起こって固化し,塗膜を形成する脂肪油。高度不飽和脂肪酸を含む。【JIS K5500「塗料用語」】
 乾性油には,亜麻仁(あまに)油・桐(きり)油・芥子(けし)油・紫蘇(しそ)油・胡桃(くるみ)油・荏(えごま)油・紅花(べにばな)油・向日葵(ひまわり)油などがある。
 半乾性油(semidrying oil)は,乾性油ほど早くはないが,空気中で乾燥する性質のある脂肪油。一般によう素価100~130のもの。【JIS K5500「塗料用語」】
 半乾性油には,大豆(だいず)油・コーン油・綿実(めんじつ)油・胡麻(ごま)油などがある。
 合成樹脂(synthetic resin)とは,それ自身は樹脂の特性を持っていない,反応性分から重合,縮合のような制御された化学反応によって作られた樹脂。【JIS K5500「塗料用語」】

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 【スプレー塗り】

 機械を用いた塗装は,1907年(明治40年)に米国のデビルビス社で発明されエアスプレーガンを,家具や自動車のラッカー塗装に使用したのが始めと考えられている。日本では,1924年(大正13年)に輸入され,これを参考に,1926年(昭和1年)には国産化が図られた。

塗装用具(スプレー)の例

塗装用具(スプレー)の例
出典:アネスト岩田株式会社 カタログ

 エアスプレー塗装(air spray application)とは,霧吹きと同様の原理で,圧縮空気を用いて,スプレーガンの先端で塗料を霧化して塗り付ける方法である。早くから,自動車産業などで実用されていたが,鋼構造物等の大型物件の塗装には採用されなかった。
 エアスプレー塗装より塗着効率(coating efficiency)の良いエアレススプレー(airless spraying)は,1962年(昭和37年)に国産化されていた。鋼橋等の塗装に採用されたのは,1965年(昭和40年)以降である。
 エアレススプレーは,空気を用いずに直接高圧をかけた塗料をスプレーガンの先端で大気開放することで,急激な圧力変化で拡散・霧化する方法である。空気流がなく,高速で飛翔するため,塗着効率がエアスプレーより高い。
 
 鋼橋等の新設時の塗装(工場内)では作業効率,塗着効率の高いエアレススプレーが基本となっている。しかし,エアスプレーより塗着効率が高いといえども,刷毛塗りに比較すると大変低く,塗料飛沫の環境への飛散(吹き付けた塗料の 20%程度)が避けられない。このため,屋外作業となる現場塗装(塗替え塗装など)では,適切な養生なしで利用できない。
 
 構造物塗装以外で採用されている塗装技術には,1961年(昭和36年)に米国で開発されたアニオン電着塗装技術,1964年(昭和39年)に開発された静電塗装,1971年(昭和46年)に開発されたカチオン電着塗装が家電製品,自動車などの工業塗装で利用されている。1973年(昭和48年)には塗装ロボットも開発され,工業塗装への導入が進んでいる。
 
 【参考】
 静電塗装(electrostatic spraying, electrostatic coating)
 霧化した塗料粒子と被塗物との間に静電電位差を掛けて,塗料の霧を被塗物に引き付けて塗る方法。塗料の霧は,回転円盤,スプレーガンなどで発生させるが,発生源に対する物体の裏側にも塗料が付着し,塗料の損失が少ないのが特徴。電圧は通常 40~100kV。【JIS K5500「塗料用語」】
 一般に被塗装物を陽極,噴射装置を陰極とし,直流高電圧をかけて静電気を帯電させた噴霧状の塗料を品物に電気的に引き付けて塗装する方法。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 電着塗装(electrodeposition, electrocoating
 導電性のある物体を,水に分散した塗料の中に入れ,物体と他の金属体とが両極になるようにして電流を通し,物体に塗料を塗る方法。塗料中の塗膜形成要素と顔料とは帯電するので,物体がそれと反対の極になるように電流の方向を選べば,帯電したものは物体に付着し,電荷を失い,付着物は水に非分散性の被膜層になる。一般には,この後に塗料から引き上げ,水で洗浄してから焼き付ける。【JIS K5500「塗料用語」】
 解離可能な水溶性塗料中で,被塗装物を陽極又は陰極として直流電圧を印加し,電気泳動によって塗装する方法。アルミニウムの場合は,アルミニウムを陽極として使うのが一般的である。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】

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