防食概論:塗料・塗装

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         鉛系さび止めペイント

 鉛系さび止めペイントとは,鉛系防せい顔料(塩基性防せい顔料)を用いた下塗り塗料である。防食塗装の中で,最も歴史の長い塗料として鉛丹さび止めペイントが知られている。
 この塗料は,安価で高い防食性能のため,鋼構造物の防食に限らず多くの分野で活用されてきた。しかし,鉛・クロム化合物の人の健康に与える影響が問題視され,2000年代から使用自粛が進んでいる。
 
 鉛丹や鉛系さび止めペイントの多くは 2008年のJIS改訂で廃止され,現時点(2013年現在)にJIS規格として残る鉛系さび止めペイントは,鉄鋼用途では JIS K 5623「亜酸化鉛さび止めペイント」, JIS K 5625「シアナミド鉛さび止めペイント」,亜鉛めっき鋼用途のJIS K 5629「鉛酸カルシウムさび止めペイント」のみである。これらの規格も近い将来の廃止が検討されている。
 
 このような状況を踏まえて,使用者側としては,下塗りの「鉛系さび止めペイント」の廃止に替わり規格された「鉛・クロムフリーさび止めペイント」への変更,又は塗装系そのものを「ジンクリッチペイント」を用いた長期耐久型の塗装系や「厚膜形変性エポキシ樹脂塗料」を下塗り塗料として用いる塗装系へ変更が求められる。
 例えば,道路分野では,2005年12月の「鋼道路橋塗装・防食便覧」の改訂で,架設環境によらず無機ジンクリッチペイントを用いた重防食塗装系への全面移行がなされた。
 鉄道分野では,2005年5月の「鋼構造物塗装設計施工指針」の改訂で,定期的塗り替え対象の構造物に対して,ジンクリッチプライマーをさび止めペイントとして用いた中期防せい型塗装系を新設し,長期耐久を期待する構造物ではジンクリッチプライマーや厚膜形エポキシ樹脂ジンクリッチペイントを用いた長期防せい型塗装系の適用に変更された。2013年12月の改訂では,さらに VOC低減を図った厚膜形エポキシ樹脂ジンクリッチペイントと水系塗料を用いた長期防せい型塗装系が新設されている。
 以上で紹介した歴史的背景からわかるように,2005年以前に製造された鋼構造物の大多数は,旧塗膜の下塗りに鉛系さび止めペイントが用いられ,その後はジンクリッチペイントが用いられている。

 

【JIS規定の鉛系さび止めペイント】

 ここでは,2014年時点でJIS規格として残る「亜酸化鉛さび止めペイント」,「シアナミド鉛さび止めペイント」,「鉛酸カルシウムさび止めペイント」の概要を紹介する。
 
 JIS K 5625:2010「亜酸化鉛さび止めペイント」
 適用範囲:この規格は,屋外における大形鉄鋼製品,鉄鋼構造物などの地肌塗りに用いる亜酸化鉛さび止めペイントについて規定する。
 備考:この規格で規定する亜酸化鉛さび止めペイントは,酸化による自然乾燥の液状塗料ではけ塗り又は吹付け塗りに適し,亜酸化鉛をさび止め顔料とし,ボイル油1)又はフタル酸樹脂ワニス2)に分散させて作る。
 1):ボイル油とは,液状,酸化乾燥性の脂肪油で,乾性油(あまに油,えごま油,きり油など)の1種又はそれ以上を加工してドライヤー(硬化反応触媒:金属石鹸,ナフテン酸鉛,ナフテン酸マンガンなど)を加えるなどして乾燥性を強めたものをいう。
 2):ワニスとは,樹脂などを溶剤に溶かして作った塗料の総称である。顔料は含まれていない。ワニスに顔料を加えて作った塗料の総称をエナメルという。
 種類:種類は,次とする。
 a) 1種 ボイル油をビヒクル(塗膜主要素)としたもの。
 b) 2種 フタル酸樹脂ワニスをビヒクルとしたもの。  
 品質


品質(亜酸化鉛さび止めペイント)
  項   目   1 種  2 種
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になるものとする。 
  塗装作業性    はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 
  乾燥時間 h (表面乾燥性)    20以下    8以下 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  上塗り適合性    上塗りに支障があってはならない。 
  耐屈曲性    直径 6mmの折り曲げに耐えるものとする。 
  付着安定性    はがれを認めないものとする。 
  耐複合サイクル防食性    36 サイクルの試験に耐えるものとする。 
  加熱残分 %    90以上    75以上 
  溶剤不溶物 %    55以上    45以上 
  防せい(錆)性    24 か月の試験で塗面にさびがなく,塗膜をはがしたとき,さびの程度が見本品に比べて大きくないものとする。 

 品質項目に対する試験方法は,別途解説する。
 
 JIS K 5625:2010「シアナミド鉛さび止めペイント」
 適用範囲:この規格は,屋外における大形鉄鋼製品,鉄鋼構造物などの地肌塗りに用いるシアナミド鉛さび止めペイントについて規定する。
 参考:この規格で規定するシアナミド鉛さび止めペイントは,酸化による自然乾燥の液状塗料で,はけ塗り又は吹付け塗りに適し,シアナミド鉛をさび止め顔料1)とし,ボイル油又はフタル酸樹脂ワニスに分散させて作る。
 1):PbCN2,鉛石鹸を生成し,強固な塗膜となる。また,遊離のシアナミド(H2N-CN)による鉄表面の不動態化で防せい効果を発揮する。
 種類:種類は,次とする。
 a) 1種 ボイル油をビヒクル(塗膜主要素)としたもの。
 b) 2種 フタル酸樹脂ワニスをビヒクルとしたもの。  
 品質

品質(シアナミド鉛さび止めペイント)
  項   目   1 種  2 種
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になるものとする。 
  塗装作業性    はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 
  乾燥時間 h (表面乾燥性)    20以下    8以下 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  上塗り適合性    上塗りに支障があってはならない。 
  耐屈曲性    直径 6mmの折り曲げに耐えるものとする。 
  付着安定性    はがれを認めないものとする。 
  耐複合サイクル防食性    36 サイクルの試験に耐えるものとする。 
  加熱残分 %    90以上    75以上 
  溶剤不溶物 %    55以上    45以上 
  溶剤不溶物中のシアナミド鉛(PbCN2)%    17以上 
  防せい(錆)性    24 か月の試験で塗面にさびがなく,塗膜をはがしたとき,さびの程度が見本品に比べて大きくないものとする。 

 品質項目に対する試験方法は,別途解説する。
 
 JIS K 5629:2010「鉛酸カルシウムさび止めペイント」
 適用範囲:この規格は,主として亜鉛めっき鋼製品の地肌塗りに用いる鉛酸カルシウムさび止めペイントについて規定する。
 備考:この規格で規定する鉛酸カルシウムさび止めペイントは,さび止め顔料として鉛酸カルシウムをワニスで練り合わせて作った液状の酸化によって自然乾燥する塗料で,はけ塗り又は吹付け塗りに適している。
 種類:1種類のみ。
 品質

品質(鉛酸カルシウムさび止めペイント)
  項   目   品   質
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になるものとする。 
  塗装作業性    はけ塗りで塗装作業に支障があってはならない。 
  乾燥時間 h (表面乾燥性)    8以下 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  上塗り適合性    上塗りに支障があってはならない。 
  耐屈曲性    直径 6mmの折り曲げに耐えるものとする。 
  付着安定性    はがれを認めないものとする。 
  耐塩水性    塩化ナトリウム水溶液に96時間浸しても異常があってはならない。 
  付着性    付着に異常があってはならない。 
  加熱残分 %    70以上 
  溶剤不溶物中の鉛酸カルシウム(2CaO・PbO2)%    17以上 
  屋外暴露耐候性    12 か月の試験で塗膜に膨れ,割れ及びはがれがあってはならない。 

 品質項目に対する試験方法は,別途解説する。

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