防食概論:塗料・塗装

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         新設時の塗装(第1層目)について 

 1990年代までの新設時の塗装第 1層目には,さび止めペイント(anticorrosive paint)として,鉛系さび止めペイントを用いた塗装仕様が用いられていた。
 その後に,鉛化合物の作業者の健康への影響や土壌汚染への懸念などを理由に,塗装仕様からの鉛・クロムフリー化が進んだ。鉛・クロムフリー化とは,鉛化合物やクロム化合物を使用しない塗料への変更を意味する。
 現在の鋼橋塗装では,第 1層目に無機ジンクリッチプライマー厚膜形無機ジンクリッチペイント,又は厚膜形有機(エポキシ樹脂)ジンクリッチペイントを用いる長期防せい(錆)型塗装系が主流になった。
 
 次には,素地調整後直ちに実施する第 1層目の塗装に際して,特に留意すべき項目を次に示す。なお,塗装作業で留意すべき一般的事項については,次項の【塗装作業】で紹介する。
 塗料の確認
 塗料の開缶まえに,保管期間が規定期間を超えていないこと,規定された塗料であるかなどを,塗料メーカが提出する試験成績書などで確認する。
 多液形塗料(multi-pack paint)は,規定される方法で正確に配合・混合する。溶剤による希釈は,塗料ごとに定められる希釈範囲を守り,適切な粘度範囲に調整する。塗料混合後は,塗料に指定される熟成時間を守る。
 
 気象条件の確認
 施工時は,気象条件が,塗料ごとに定められる施工禁止条件に抵触しないこと,さらには塗装後しばらくの間(半硬化乾燥(dry to touch, touch dry)状態になるまで)に,気象条件の大幅な変動がないことも確認しておく。
 特に,第 1層目に用いる塗料として,無機ジンクリッチペイントを用いる場合は,他の塗料とは異なる条件が求められるので注意する。
 無機ジンクリッチペイントは,【塗料各論:ジンクリッチ塗料の硬化特性で解説するように,大気中の水分と反応して硬化が進む材料である。
 具体的には,気温 2℃未満の場合,及び相対湿度 50%未満では,必要な速度で硬化反応が進まない材料である。このため,塗装中及びその後の第 2層目が塗装されるまでの間に,気温 2℃以上,及び相対湿度 50%以上(かつ80%以下:素地調整時の制約)の条件が確保できることを確認しなければならない。
 
 先行塗装
 隅部,角部,ボルト・ナット部など,刷毛での塗装で解説したように,塗料の表面張力の影響で十分な厚みを確保できない個所は,本塗装の前に刷毛で先行塗装する。
 先行塗装個所が,少なくとも指触乾燥(set-to-touch, dust-free, dust dry)状態まで硬化が進んだ後に,スプレー塗りで全面塗装を行う。従って,先行塗装した個所は,塗料を 2回塗りしたことになる。
 
 【参考】
 さび止めペイント(anticorrosive paint, rust inhibiting paint)
 鉄鋼のさび止め塗装に用いる塗料。さび止め顔料と塗膜形成要素との相互作用で,さび止め効果を現すものと,塗膜形成要素自体のさび止め効果によるものとがある。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 金属素地を腐食から守るために用いる塗料。さび止め顔料と塗膜形成要素との相互作用で,さび止め硬化を表すものと,塗膜形成要素自体のさび止め効果によるものとがある。前者には,用いるさび止め顔料の名称を付けて呼ぶのが通例である。【JIS K5500「塗料用語」】
 ジンクリッチプライマー(zinc-rich primer)
 鋼材をブラスト処理し,本塗装に先立って,ブラスト直後に塗装する塗料。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 JIS K 5552 「ジンクリッチプライマー」では,亜鉛末及びアルキルシリケート又はエポキシ樹脂及び硬化剤,顔料及び溶剤を主な原料としたもので,次の 2種が規定されている。
 1種 無機ジンクリッチプライマー: アルキルシリケートをビヒクルとした,1液1粉末形のもの。
 2種 有機ジンクリッチプライマー: エポキシ樹脂をビヒクルとした,2液 1粉末形,又は 2液形(亜鉛末を含む液と硬化剤)のもの。
 ジンクリッチペイント(zinc rich paint)
 乾燥塗膜の大部分が金属亜鉛末から成り,わずかの無機質と有機質のバインダーで結合された塗料で鋼材のさび止めに用いる塗料。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 展色材をできるだけ少なくし,合成樹脂ワニス又はアルキルシリケート,アルカリシリケートなどシリケート系ビヒクルに亜鉛末をできるだけ多く配合して作ったさび止めペイント。
 塗膜が水分に触れると,鉄よりもイオン化傾向の大きい亜鉛が陽極となって,亜鉛から鉄に向って防食電流が流れ,鉄は腐食から守られる。塗膜中に亜鉛末が 85~95%含まれているとき,防食効果が大きい。各種鋼構造物の防食塗装に用いられる。被塗鉄面は,サンドブラストなどで十分にさびを除き,適度の粗さにしてから塗らないと効果が薄い。【JIS K5500「塗料用語」】
 JIS K 5553 「厚膜形ジンクリッチペイント」では,亜鉛末,及びアルキルシリケート又はエポキシ樹脂,及び硬化剤,顔料,及び溶剤を主な原料としたもので,次の 2種が規定されている。
 1種 厚膜形無機ジンクリッチペイント: アルキルシリケートをビヒクルとした,1液 1粉末形のもの。
 2種 厚膜形有機ジンクリッチペイント: エポキシ樹脂をビヒクルとした,2液 1粉末形,又は 2液形(亜鉛末を含む液と硬化剤)のもので,硬化剤にはポリアミド,アミンアダクトなどを用いる。
 長期防せい(錆)型塗装(long-term rust prevention coating, high performance coating)
 重防食塗装を腐食性の激しい環境以外に適用し,従来の塗装より長期の防せいを図る場合に,JIS Z0103「防せい防食用語」での用語定義“重防食塗装”と矛盾するので,“長期防せい型塗装”と称する場合がある。
 重防食塗装(heavy duty coating, high performance coating)
 海岸や海上のような腐食性の激しい環境に建設される鋼構造物の塗り替え周期を長くするため防食性,耐久性を有する防食塗装をいう。一般にジンクリッチペイントをプライマーとして,エポキシ樹脂,ふっ素樹脂塗料などを組み合わせて用いる。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 多液形塗料(multi-pack paint)
 塗料の荷姿として,複数の成分に分けて供給され,塗装作業直前に混合して使用する塗料をいう。例えば,主剤と硬化剤の 2成分に分けて供給されるエポキシ樹脂塗料やポリウレタン樹脂塗料,主剤,反応開始剤と硬化促進剤の 3成分に分けて供給される不飽和ポリエステル樹脂塗料などが挙げられる。前者は 2液形(型)塗料,後者を 3液形(型)塗料ともいう。
 乾燥(塗料)(drying)
 塗付した塗料の薄層が,液体から固体に変化する過程の総称。塗料の乾燥機構には,溶剤の揮発,蒸発,塗膜形成要素の酸化,重合,縮合などがあり,乾燥の条件には,自然乾燥,強制乾燥,加熱乾燥などがある。また,乾燥の状態には,指触乾燥,半硬化乾燥,硬化乾燥などがある。【JIS K5500「塗料用語」】
 半硬化乾燥(dry to touch, touch dry)
 塗料の乾燥状態の一つ。塗った面の中央を指先でかるくこすってみて塗面にすり跡が付かない状態(dry to touch)になったときをいう。JIS K 5600-1-1「塗料一般試験方法-第1部:通則-第1節:試験一般(条件及び方法) 参照。
 備考:BS では,指先で軽く圧力をかけて押えても,指紋の跡が残らず,粘着性を示さない状態(touch dry)をいう。【JIS K5500「塗料用語」】
 指触乾燥(set-to-touch, dust-free, dust dry )
 塗料の乾燥状態の一つ。塗った面の中央に触れてみて,試料で指先が汚れない状態(set-to-touch)になったときをいう。JIS K 5600-1-1「塗料一般試験方法-第1部:通則-第1節:試験一般(条件及び方法) 参照。
 備考:ASTM,BS では,このほかに,塗面にほこり(綿の繊維や顔料グレードの炭酸カルシウムなど)が付着しなくなった状態を dust-free にあるという。【JIS K5500「塗料用語」】

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