防食概論塗装・塗料

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 ここでは,道路の鋼橋塗装に適用される防食塗装について, 【金属溶射用塗装系・仕様】, 【エポキシ樹脂塗料下塗の品質】, 【ふっ素樹脂系塗料の品質】 に項目を分けて紹介する。

 道路橋の防食塗装(新設塗装)

 金属溶射用塗装・仕様

 防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 2章 防食設計・新設塗装仕様, 金属溶射への塗装

 金属溶射(metal (thermal) spraying)された部材についても,溶融亜鉛めっき部材と同様に様々な目的で塗装を施工する場合がある。
 例えば,景観上の対策が求められる場合の他に,腐食性環境で塗装を併用することによって金属溶射皮膜の長寿命化を図ることができる。
 金属溶射面は,多孔質なため。そのまま塗装すると塗膜にピンホールが生じやすい。従って,塗装に際して封孔処理(sealing)を確実に施すことが必須である。また,表面の凹凸が多いので,高い景観性能(平滑性)は期待できない。

 塗装仕様
 橋梁製作工場

 二次素地調整
 目的:溶射被膜の密着性確保のため,表面の粗面化を図る。
 ブラスト処理
 除錆度: ISO Sa2 1/2,表面粗さ:10 点平均粗さ 50μmRzJIS 以下
 又は,
 粗面化処理
 表面粗さ: 10 点平均粗さ 80μmRzJIS 以下
 金属溶射
 最小皮膜厚さ:100μm以上
 下塗り塗装
 ① ミストコート(エポキシ樹脂塗料下塗の50%希釈):十分な量を使用(膜厚-μm)
 ② ミストコート塗装後 1 日以上 10 日以内
 エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 540g/m2(膜厚 120μm)
 中塗り塗装
 下塗り塗装後 1 日以上,10 日以内
 ふっ素樹脂塗料用中塗:吹付け塗り,使用量 170g/m2(膜厚 30μm)
 上塗り塗装
 中塗り塗装後 1 日以上, 10 日以内
 ふっ素樹脂塗料上塗:吹付け塗り,使用量 140g/m2(膜厚 25μm)
 
 【備考】
 構造上,施工上の制約で溶射ができない部位,素地が露出する溶射欠陥部などは, 無機ジンクリッチペイントで補修する。

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 エポキシ樹脂塗料下塗りの品質

 防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
 エポキシ樹脂塗料下塗

 エポキシ樹脂,硬化剤,顔料および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,下塗り塗装に使用するもので,施工時の気温 10℃以上で使用する A種,気温 5~20℃程度で使用する B種がある。
 本塗料は JIS K5551:2002 2種下塗り塗料エポシキ樹脂塗料に準拠する。 JIS K5551:2002「エポキシ樹脂塗料」は,2008年に全面改訂され,「構造物用さび止めペイント」に改称され,常温硬化用は B種(厚膜形エポキシ樹脂塗料),低温硬化用は C種 2号(厚膜形変性エポキシ樹脂系,又は厚膜形変性ウレタン樹脂系)になった。
 品質
 下表には,エポキシ樹脂塗料下塗塗料品質,比較のため JIS K 55512018「構造物用さび止めペイント」 B種,C種 2号の品質を紹介する。

エポキシ樹脂塗料下塗の品質
  項  目   下塗り A種  下塗り B種  JIS B種  JIS C種 2号
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  半硬化乾燥性    ―    常温 16時間    低温 24時間 
  乾燥性    23℃で 16時間以内    5℃で 24時間以内    ― 
  塗装作業性    塗装作業に支障があってはならない。    支障がない。 
  塗膜の外観    正常である。 
  ポットライフ    23℃ 5時間    5℃ 5時間    23℃ 5時間    5℃ 5時間 
  たるみ性    たるみがない。(すき間200μmで流れがない) 
  上塗り適合性    ―    支障がない。 
  耐衝撃性    割れ及びはがれがない。 
  (デュポン式500g,300mm) 
  割れ及びはがれがない。 
  (デュポン式300g,500mm) 
  付着性    分類 1以下    分類 1又は分類 0 
  耐アルカリ性    異常が無い。    ― 
  耐揮発油性    異常が無い。    ― 
  耐熱性    ―    外観が正常である。試験後の付着性試験で分類 2,分類 1,又は分類 0 
  塩水噴霧試験    192時間の塩水噴霧に耐えるものとする。    ― 
  サイクル腐食性    ―    さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(120サイクル) 
  加熱残分
(質量分率%) 
  60以上    ― 
  塗膜中の鉛の定量
(質量分率%) 
  ―    0.06以下 
  塗膜中のクロムの定量
(質量分率%) 
  ―    0.03以下 
  エポキシ樹脂の定性    エポキシ樹脂を含むこと    ― 
  屋外暴露耐候性    さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(24か月) 

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 ふっ素樹脂系塗料の品質

 防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
 ふっ素樹脂塗料用中塗

 エポキシ樹脂またはポリオール樹脂,またはふっ素樹脂, 顔料,硬化剤および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,中塗の塗装に使用するものである。本塗料は JIS K5659:2002 鋼構造物用ふっ素樹脂塗料に準拠する。
 2008年に,それまでの鋼構造物用上塗り塗料の製品規格であった JIS K 5657「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と JIS K 5659「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統廃合し,性能規格の JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」に改定された。
 品質
 下表には,ふっ素樹脂塗料用中塗塗料品質,比較のため JIS K 56592018「鋼構造物用耐候性塗料」の品質を紹介する。

ふっ素樹脂塗料用中塗の品質
  項  目   ふっ素樹脂塗料中塗  JIS K 5659 中塗り
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  低温安定性(-5℃)    -    変質しない。( B種のみ) 
  表面乾燥性    -    表面乾燥する。(常温8時間後,低温5℃16時間後) 
  乾燥時間    23℃ 8時間以下,5℃ 16時間以下    - 
  塗膜の外観    正常である。 
  ポットライフ    規定時間(5時間)後,使用できる。 
  隠ぺい率    白・淡彩は 90以上,鮮明な赤及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 
  上塗り適合性    支障がない。 
  耐屈曲性    -    折曲げに耐える。(10mmマンドレル) 
  耐おもり落下性(デュポン式)    塗膜に割れ及びはがれが生じない。 
  (デュポン式500g,300mm) 
  塗膜に割れ及びはがれが生じない。 
  (デュポン式300g,500mm) 
  層間付着性 Ⅰ    異常がない。 
  層間付着性 Ⅱ    異常がない。 
  耐アルカリ性    異常がない。(水酸化カルシウム水) 
  耐酸性    異常がない。(硫酸水) 
  耐湿潤冷熱繰返し性    湿潤冷熱繰返しに耐える。 
  混合塗料中の加熱残分 %    白・淡彩は 60以上,その他の色は 50以上 

 

 ふっ素樹脂塗料上塗

 ふっ素樹脂,顔料,硬化剤および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,上塗の塗装に使用するものである。本塗料は JIS K5659:2002 鋼構造物用ふっ素樹脂塗料に準拠する。
 2008年に,それまでの鋼構造物用上塗り塗料の製品規格であった JIS K 5657「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と JIS K 5659「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統廃合し,性能規格の JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」に改定された。
 品質
 下表には,ふっ素樹脂塗料上塗塗料品質,比較のため JIS K 56592018「鋼構造物用耐候性塗料」上塗り 2級(ポリウレタン樹脂塗料相当)の品質を紹介する。

ふっ素樹脂塗料上塗の品質
  項  目   ふっ素樹脂塗料上塗  JIS K 5659 上塗り 2級
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  低温安定性(-5±2℃)    -    変質しない。( B種のみ) 
  表面乾燥性    -    表面乾燥する。(常温 8 時間後,低温 5 ℃ 16 時間後) 
  乾燥時間    23℃で 8時間以下,5 ℃で 16時間以下    - 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  ポットライフ    規定時間(5 時間)後,使用できる。 
  隠ぺい率    白・淡彩は 90以上,鮮明な赤,及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 
  鏡面光沢度(60度)    70 以上 
  耐屈曲性    -    折曲げに耐える。( 10mmマンドレル) 
  耐おもり落下性
  (デュポン式) 
  塗膜に割れ,及びはがれが生じない。 
  (デュポン式 500g,300mm) 
  塗膜に割れ,及びはがれが生じない。 
  (デュポン式 300g,500mm) 
  層間付着性 Ⅱ    異常がない。 
  耐アルカリ性,耐酸性    -    異常がない。(水酸化カルシウム水,硫酸水) 
  耐湿潤冷熱繰返し性    湿潤冷熱繰返しに耐える。 
  混合塗料中の加熱残分 %    白・淡彩は 50 以上,その他の色は 40 以上 
  主剤溶剤可溶物中の
  ふっ素の定量 % 
  15以上    - 
  促進耐候性    塗膜に,膨れ・はがれ・割れがなく, 
  光沢保持率は照射時間 1000時間の場合は 80%以上,照射時間 300時間の場合は 90%以上で 
  色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化の等級が 1以下とする。 
  照射時間 1000 時間で 
  塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 1 又は 0,光沢保持率 80%以上。 
  屋外暴露耐候性
  (24か月) 
  塗膜に膨れ・はがれ・割れがなく, 
  光沢保持率は 60%以上で色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化の等級が 2以下とする。 
  塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く, 
  色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 2,1 又は 0 ,光沢保持率 40%以上。 

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