防食概論塗装・塗料

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 ここでは,道路の鋼橋塗装に適用される防食塗装系について, 【一般外面用・塗装系 C-5・仕様】, 【ジンクリッチ系塗料の品質】, 【エポキシ樹脂塗料下塗りの品質】, 【ふっ素樹脂系塗料の品質】 に項目を分けて紹介する。

 道路橋の防食塗装(新設塗装)

 一般外面用・塗装系 C-5

 防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 2章 防食設計・新設塗装仕様, 一般外面塗装系

  一般外面塗装系には,架橋地点の腐食環境の厳しさに十分耐えられる防食性能を有していると同時に美観・景観性をできるだけ長期間保つために耐侯性の良好な上塗塗料を用いた C-5塗装系を適用するとよい。
 本便覧では,塗装便覧(1995年)の A塗装系(A-1,A一2,A-3,A-4),B塗装系(B一1),C塗装系(C-1,C-2,C-3,C-4)は取り扱わないこととし,新設時の一般外面塗装系は C-5塗装系,A-5塗装系とした。
 
 工場塗装した塗膜と現場塗装した塗膜の塗膜間での付着力の低下を防ぎ,均質で良好な塗膜を形成させるため,塗装は上塗りまで橋梁製作工場で塗装する全工場塗装とする。
 工場における塗装は,均質で良好な塗膜が得られやすいスプレー塗装を適用する。ただし,連結部や補修部分は,はけ,またはローラーで塗装する。このため,塗装方法によって上塗塗膜の外観が若干異なって見えることがあるがそれぞれ適切に施工が行われていれば防食上の問題はない。

 塗装仕様
 原板(製鋼工場)

 一次素地調整
 ブラスト処理
 除錆度:ISO Sa2 1/2,表面粗さ: 10 点平均粗さ 80μmRzJIS 以下
 プライマー塗装
 ブラスト処理後 4 時間以内
 無機ジンクリッチプライマー:吹付け塗り,使用量 160g/m2(膜厚 15μm)
 プライマーの膜厚は総合膜厚に加えない。

 橋梁製作工場

 二次素地調整
 ブラスト処理
 除錆度:ISO Sa2 1/2,表面粗さ:10 点平均粗さ 50μmRzJIS 以下
 下塗り塗装
  ブラスト処理後 4 時間以内
 無機ジンクリッチペイント:吹付け塗り,使用量 600g/m2(膜厚 75μm)
  ①塗装後 2 日以上,10 日以内
 ミストコート(エポキシ樹脂塗料下塗の 50%希釈):吹付け塗り,使用量 160g/m2(膜厚に寄与せず)
  ②塗装後 1 日以上,10 日以内
 エポキシ樹脂塗料下塗:吹付け塗り,使用量 540g/m2(膜厚 120μm)
 中塗り塗装
 下塗り塗装後 1 日以上,10 日以内
 ふっ素樹脂塗料用中塗:吹付け塗り,使用量 170g/m2(膜厚 30μm)
 上塗り塗装
 中塗り塗装後 1 日以上, 10 日以内
 ふっ素樹脂塗料上塗:吹付け塗り,使用量 140g/m2(膜厚 25μm)

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 ジンクリッチ系塗料の品質

 防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
 無機ジンクリッチプライマー

 亜鉛末を主成分とする粉末と,アルキルシリケートを主成分とする液とからなる 2液形の塗料で,素地調整を行った鋼面に直ちに塗装して一時的に防せい(錆)するためのものである。
 品質
 下表には,無機ジンクリッチプライマー塗料品質,比較のため JIS K5552「ジンクリッチプライマー」 1種無機ジンクリッチプライマー)の品質を紹介する。

無機ジンクリッチプライマー
青字:無機ジンクリッチプライマー
  項  目    無機ジンクリッチプライマー    JIS K5552( 1種無機) 
  容器の中での状態    粉は微小で一様な粉末であるものとする。液はかき混ぜたとき堅い塊がなくて一様になるものとする。 
  塗装作業性    塗装作業に支障があってはならない。 
  乾燥時間   1以下 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  ポットライフ    5時間で使用できるものとする。 
  耐衝撃性    衝撃によって割れ及びはがれが生じてはならない。(500g,500mm) 
  耐塩水噴霧性    塩水噴霧に耐えるものとする。 
  混合塗料中の加熱残分(%)    70以上 
  加熱残分中の金属亜鉛(%)    80以上 
  屋外暴露耐候性    6か月間の試験でさび,割れ,はがれ及び膨れがあってはならない。 

 無機ジンクリッチペイント
 亜鉛末,アルキルシリケート,顔料および溶剤を主な原料とした,粉末と液からなる塗料で,鋼面に直接塗装して防せい(錆)するためのものである。 本塗料は JIS K5553:2002 1種厚膜形ジンクリッチベ イントに準拠する。
 品質
 下表には,無機ジンクリッチプペイント塗料品質,比較のため JIS K5553「厚膜形ジンクリッチペイント」 1種(厚膜形無機ジンクリッチペイント)の品質を紹介する。

無機ジンクリッチペイントの品質
青字:無機ジンクリッチペイント
  項  目    無機ジンクリッチプペイント    JIS K5553 ( 1種厚膜形無機) 
  容器の中での状態    粉は微小で一様な粉末であるものとする。液はかき混ぜたとき堅い塊がなくて一様になるものとする。 
  乾燥時間 h     5以下 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  ポットライフ    5時間で使用できるものとする。 
  耐衝撃性(デュポン式)    衝撃によって割れ及びはがれが生じてはならない。(500g,500mm) 
  厚塗り性    厚塗りに支障があってはならない。 
  耐塩水噴霧性    塩水噴霧に耐えるものとする。 
  混合塗料中の加熱残分(%)    70以上 
  加熱残分中の金属亜鉛(%)    75以上 
  屋外暴露耐候性    2年間の試験でさび,割れ,はがれ及び膨れがあってはならない。 

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 エポキシ樹脂塗料下塗りの品質

 防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
 エポキシ樹脂塗料下塗

 エポキシ樹脂,硬化剤,顔料および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,下塗り塗装に使用するもので,施工時の気温 10℃以上で使用する A種,気温 5~20℃程度で使用する B種がある。
 本塗料は JIS K5551:2002 2種下塗り塗料エポシキ樹脂塗料に準拠する。 JIS K5551:2002「エポキシ樹脂塗料」は,2008年に全面改訂され,「構造物用さび止めペイント」に改称され,常温硬化用は B種(厚膜形エポキシ樹脂塗料),低温硬化用は C種 2号(厚膜形変性エポキシ樹脂系,又は厚膜形変性ウレタン樹脂系)になった。
 品質
 下表には,エポキシ樹脂塗料下塗塗料品質,比較のため JIS K 55512018「構造物用さび止めペイント」 B種,C種 2号の品質を紹介する。

エポキシ樹脂塗料下塗の品質
青字:エポキシ樹脂塗料下塗
  項  目    下塗り A種    下塗り B種    JIS B種    JIS C種 2号 
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  半硬化乾燥性    ―    常温 16時間    低温 24時間 
  乾燥性    23℃で 16時間以内    5℃で 24時間以内    ― 
  塗装作業性    塗装作業に支障があってはならない。    支障がない。 
  塗膜の外観    正常である。 
  ポットライフ    23℃ 5時間    5℃ 5時間    23℃ 5時間    5℃ 5時間 
  たるみ性    たるみがない。(すき間200μmで流れがない) 
  上塗り適合性    ―    支障がない。 
  耐衝撃性    割れ及びはがれがない。 
  (デュポン式500g,300mm) 
  割れ及びはがれがない。 
  (デュポン式300g,500mm) 
  付着性    分類 1以下    分類 1又は分類 0 
  耐アルカリ性    異常が無い。    ― 
  耐揮発油性    異常が無い。    ― 
  耐熱性    ―    外観が正常である。 
  試験後の付着性試験で 
  分類 2,分類 1,又は分類 0 
  塩水噴霧試験    192時間の塩水噴霧に耐えるものとする。    ― 
  サイクル腐食性    ―    さび,膨れ,割れ及びはがれがない。 
  (120サイクル) 
  加熱残分
(質量分率%) 
  60以上    ― 
  塗膜中の鉛の定量 
(質量分率%) 
  ―    0.06以下 
  塗膜中のクロムの定量 
(質量分率%) 
  ―    0.03以下 
  エポキシ樹脂の定性    エポキシ樹脂を含むこと    ― 
  屋外暴露耐候性    さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(24か月) 

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 ふっ素樹脂系塗料の品質

 防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
 ふっ素樹脂塗料用中塗

 エポキシ樹脂またはポリオール樹脂,またはふっ素樹脂, 顔料,硬化剤および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,中塗の塗装に使用するものである。本塗料は JIS K5659:2002 鋼構造物用ふっ素樹脂塗料に準拠する。
 2008年に,それまでの鋼構造物用上塗り塗料の製品規格であった JIS K 5657「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と JIS K 5659「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統廃合し,性能規格の JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」に改定された。
 品質
 下表には,ふっ素樹脂塗料用中塗塗料品質,比較のため JIS K 56592018「鋼構造物用耐候性塗料」の品質を紹介する。

ふっ素樹脂塗料用中塗の品質
青字:ふっ素樹脂塗料用中塗
  項  目    ふっ素樹脂塗料中塗    JIS K 5659 中塗り 
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  低温安定性(-5℃)    -    変質しない。( B種のみ) 
  表面乾燥性    -    表面乾燥する。(常温8時間後,低温5℃16時間後) 
  乾燥時間    23℃ 8時間以下,5℃ 16時間以下    - 
  塗膜の外観    正常である。 
  ポットライフ    規定時間(5時間)後,使用できる。 
  隠ぺい率    白・淡彩は 90以上,鮮明な赤及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 
  上塗り適合性    支障がない。 
  耐屈曲性    -    折曲げに耐える。(10mmマンドレル) 
  耐おもり落下性(デュポン式)    塗膜に割れ及びはがれが生じない。(デュポン式500g,300mm)    塗膜に割れ及びはがれが生じない。(デュポン式300g,500mm) 
  層間付着性 Ⅰ    異常がない。 
  層間付着性 Ⅱ    異常がない。 
  耐アルカリ性    異常がない。(水酸化カルシウム水) 
  耐酸性    異常がない。(硫酸水) 
  耐湿潤冷熱繰返し性    湿潤冷熱繰返しに耐える。 
  混合塗料中の加熱残分 %    白・淡彩は 60以上,その他の色は 50以上 

 ふっ素樹脂塗料上塗

 ふっ素樹脂,顔料,硬化剤および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,上塗の塗装に使用するものである。本塗料は JIS K5659:2002 鋼構造物用ふっ素樹脂塗料に準拠する。
 2008年に,それまでの鋼構造物用上塗り塗料の製品規格であった JIS K 5657「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と JIS K 5659「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統廃合し,性能規格の JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」に改定された。
 品質
 下表には,ふっ素樹脂塗料上塗塗料品質,比較のため JIS K 56592018「鋼構造物用耐候性塗料」上塗り 2級(ポリウレタン樹脂塗料相当)の品質を紹介する。

ふっ素樹脂塗料上塗の品質
青字:ふっ素樹脂塗料上塗
  項  目    ふっ素樹脂塗料上塗    JIS K 5659 上塗り 2級 
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  低温安定性(-5±2℃)    -    変質しない。( B種のみ) 
  表面乾燥性    -    表面乾燥する。(常温 8 時間後,低温 5 ℃ 16 時間後) 
  乾燥時間    23℃で 8時間以下,5 ℃で 16時間以下    - 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  ポットライフ    規定時間(5 時間)後,使用できる。 
  隠ぺい率    白・淡彩は 90以上,鮮明な赤,及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 
  鏡面光沢度(60度)    70 以上 
  耐屈曲性    -    折曲げに耐える。( 10mmマンドレル) 
  耐おもり落下性(デュポン式)    塗膜に割れ,及びはがれが生じない。(デュポン式 500g,300mm)    塗膜に割れ,及びはがれが生じない。(デュポン式 300g,500mm) 
  層間付着性 Ⅱ    異常がない。 
  耐アルカリ性,耐酸性    -    異常がない。(水酸化カルシウム水,硫酸水) 
  耐湿潤冷熱繰返し性    湿潤冷熱繰返しに耐える。 
  混合塗料中の加熱残分 %    白・淡彩は 50 以上,その他の色は 40 以上 
  主剤溶剤可溶物中の
  ふっ素の定量 % 
  15以上    - 
  促進耐候性    塗膜に,膨れ・はがれ・割れがなく,光沢保持率は照射時間 1000時間の場合は 80%以上,照射時間 300時間の場合は 90%以上で色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化の等級が 1以下とする。    照射時間 1000 時間で塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 1 又は 0,光沢保持率 80%以上。 
  屋外暴露耐候性(24か月)    塗膜に膨れ・はがれ・割れがなく,光沢保持率は 60%以上で色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化の等級が 2以下とする。    塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 2,1 又は 0 ,光沢保持率 40%以上。 

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