防食概論塗装・塗料

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 ここでは,実用で想定される塗膜への揮発油の作用に関し, 【耐揮発油性とは】, 【JIS 製品規格での扱い】 で紹介する。

 塗膜の評価(化学的性質;耐揮発油性)

 耐揮発油性

 JIS K5500「塗料用語」

 耐揮発油性(gasoline resistance)
 揮発油の作用に対して変化しにくい塗膜の性質。
 
 揮発油(gasoline)
 一般的にはガソリンといい,石油製品の一種で,常圧蒸留装置で得られる沸点範囲 30℃~180℃程度のナフサ(naphtha)を改質・異性化などの化学的処理をしたもので,自動車ガソリン( JIS K 2202 ),航空ガソリン( JIS K 2206 ),工業ガソリン( JIS K 2201 )がある。 ガソリンは,常温での揮発性が高く,日本の法令などでは揮発油(きはつゆ)とも呼ばれる。
 工業ガソリン(gasoline for industrial purpose)
 無色透明で異臭がなく,水及び沈殿物を含まず,洗浄,溶解,希釈,抽出などの用途に適当な品質の精製鉱油( JIS K 2201「工業ガソリン」)。
 工業ガソリンは,用途によって次の 5 種類に分けられる。
 1号は,洗浄用途の“ベンジン”と称され,引火点-,初留温度 30℃以上,蒸留試験で 50%留出温度 100℃以下,終点 150℃以下
 2号は,ゴム用溶剤,塗料用途の“ゴム揮発油”と称され,引火点 -,初留温度 80℃以上,蒸留試験で 50%留出温度 120℃以下,終点 160℃以下
 3号は,抽出用途の“大豆揮発油”と称され,引火点 -,初留温度 60℃以上,蒸留試験で 50%留出温度 -,終点 90℃以下
 4号は,塗料用途の“ミネラルスピリット”と称され,引火点 30℃以上,初留温度 -,蒸留試験で 50%留出温度 180℃以下,終点 205℃以下
 5号は,ドライクリーニング,塗料用途の“クリーニングソルベント”と称され,引火点 -,初留温度 38℃以上,蒸留試験で 50%留出温度 150℃以下,終点 210℃以下。

 塗料規格耐揮発油性

 防食塗装に用いられる代表的な塗料で,耐揮発油性を品質として規定している塗料は, JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」の有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料の A,B種である。
 一方,防食塗装に用いられる塗料の中で,JIS K5633「エッチングプライマー」JIS K5552「ジンクリッチプライマー」JIS K5674「鉛・クロムフリー鉛さび止めペイント」JIS K5553「厚膜形ジンクリッチペイント」,及び JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」の反応硬化形変性エポキシ樹脂系又は反応硬化形ポリウレタン樹脂系塗料の C種,水を主要な揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料 D,E種JIS K 5516「合成樹脂調合ペイント」,及びJIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」では,耐揮発油性は規定されていない。

 

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 JIS 製品規格での扱い

 ここでは, JIS K 5551 「構造物用さび止めペイント」A,B 種(有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料)の品質項目“耐揮発油性”を紹介する。
 適用範囲
 この規格は,橋りょう(梁),タンク,プラントなどの鉄鋼構造物,及び鉄,鋼,ステンレス鋼,アルミニウム,アルミニウム合金の建築などの金属部分の塗装に用いる構造物用さび止めペイント(塗料)について規定する。
 ただし,この規格の塗料には,発がん性のおそれのあるタール成分を含まないものとする。
 種類
 荷姿には,「 1液形,又は多液形a) 」がある。
 A 種:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 30μmの標準形塗料。主に鋼構造物及び建築金属部の防せい(錆)に用いるもの。
 B 種:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 60μmの厚膜形塗料。主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
 C 種
   1 号:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形変性エポキシ樹脂系塗料,又は反応硬化形変性ウレタン樹脂系塗料で,標準の膜厚が約 60μmの厚膜形塗料のうち,常温環境下で施工する,主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
   2 号:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形変性エポキシ樹脂系塗料,又は反応硬化形変性ウレタン樹脂系塗料で,標準の膜厚が約 60μmの厚膜形塗料のうち,低温環境下で施工する,主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
 D種を主要な揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 30μm の標準形塗料。主に建築金属部の防せい(錆)に用いるもの。
 E種を主要な揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 60μm の厚膜形塗料。主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
 
 耐揮発油性
 試験片の作製
 試験片の枚数は 3 枚とし,JIS K 5551 の塗料(下塗り塗料)を規定の塗膜厚みとなるようスプレー塗りで 1 回塗る。  24 時間置いた後,JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」に規定する中塗り塗料を,それぞれJIS K 5600-1-1 「試験一般(条件及び方法)」(吹付け塗り)の方法で 1 回塗り重ねる。
 更に 24 時間置いた後,同一の中塗り塗料で板の周辺を,試験に影響がないように塗り包み,6 日間置いて試験片とする。1 枚は原状試験片とする。
 試験方法
 耐揮発油性の試験方法は,JIS K 5600-6-1 「耐液体性(一般的方法)」の方法1(浸せき法)手順 A (単一の液相を使用)による。ただし,試験液,試験条件,及び観察方法は,次による。
 1) 試験液
 2008年版では,試験液は試験用揮発油3号を用いる。試験用揮発油3号は,JIS K 8594 に規定する石油ベンジンと,JIS K 8680 に規定するトルエンを容量比で 8:2 に混合したものを用いる。
 2018年版では,JIS K 8594 に規定する石油ベンジンと,JIS K 8680 に規定するトルエンを容量比で 8:2 に混合したものを試験液とする。
 2) 試験条件
 容器に試験液を 150mm の深さまで入れる。試験片 2 枚を長辺が垂直になるように糸につるし 120mm の深さまで浸し上部 30mm は試験液に浸さない。試験温度は 23±1℃とし, 168 時間浸せきする。
 3) 試験終了後の処置,及び観察方法
 試験片を取り出して室内に立てかけて保持し, 2 時間置いた後,目視によって観察する。
 評価,及び判定
 評価は観察によって行い,原状試験片と比べて,2 枚の試験片の双方について液面から外部(大気)に出た 10mm を含む塗膜に,しわ,膨れ,割れ,及びはがれを認めず,更に液の着色,及び濁りの程度が大きくないときは,“異常がない。”とする。
 このとき,試験片の周辺約 10mm 以内は評価の対象から外す。

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