防食概論塗装・塗料

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 塗料の評価(加熱残分)

 加熱残分

 JIS K5500「塗料用語」

 加熱残分(solid content, nonvolatile content, non-volatile matter content)
 塗料を一定条件で加熱したときに,塗料成分の一部が揮発,又は蒸発した後に残ったものの質量の,元の質量に対する百分率。
 
 一般的には,加熱による残分は,展色材(ビヒクル;vehicle)中の不揮発物,又はこれと顔料(pigment)の両方と考えられる。
 加熱残分は,乾燥前の塗膜の厚み(ウェット膜厚という)を計測し,乾燥後の塗膜厚み(coating thickness)を推定する際に必要な情報である。また,塗装単位面積当たりの大気に放出される VOC(揮発性有機化合物;volatile organic compound)の量を推定する際の参考になる情報でもある。
 塗料,ワニス,塗料用バインダ,ポリマーディスパージョン及び液状フェノール樹脂の加熱残分を,質量の変化から求める方法については JIS K 5601_1_2「塗料成分試験方法−第1部:通則−第2節:加熱残分」に規定されている。
 
 試験概要
 直径 75±5mm,縁の高さ 5mm以上の皿に試料 1±0.1gとなるように加え,皿+試料の質量を 1mgのけたまで測定する。
 高揮発性の溶剤 2mlを加え,皿の底に均一に広げ,次に示す塗料種別に応じた試験条件に保持した乾燥器へ入れ,規定時間(加熱時間)静置する。規定の加熱時間終了後に皿をデシケータに移し,室温まで冷却し,質量を計測する。
 皿+残さ(渣)の質量を 1mgのけたまで測定する。
 加熱残分=残渣の質量/試料の質量×100% で求める。

塗料,ワニス,バインダ及び液状フェノール樹脂の試験条件
  加熱時間(分)    温度(℃)    試料量(g)    製品種類の例 
  20    200    1±0.1    粉末樹脂 
  60    80    1±0.1    ニトロセルロース,ニトロセルロースラッカー,ポリイソシアネート樹脂 
  60    105    1±0.1    セルロース誘導体,セルロースペイント及びラッカー,自然乾燥塗料,ポリイソシアネート樹脂 
  60    125    1±0.1    合成樹脂[ポリイソシアネート樹脂を含む。]焼付塗料,アクリル樹脂 
  60    150    1±0.1    焼付けプライマー,アクリル樹脂 
  30    180    1±0.1    電着塗料 
  60    135    3±0.5    液状フェノール樹脂 

 【参考】
 揮発性有機化合物(VOC)(volatile organic compound)
 基本的には,接している通常の雰囲気温度及び気圧で,自然に揮発するすべての有機の液体及び/又は固体。
 備考:塗料分野における最近の VOC の用語の使い方については。揮発性有機化合物含有量の項参照。【JIS K5500「塗料用語」】
 揮発性有機化合物含有量(VOCC, VOC content)(volatile organic compound content)
 規定の条件で測定したときの,塗料中に存在する揮発性有機化合物の質量。
 備考:1.考慮しなければならない揮発性有機化合物の性質と量とは,塗装環境によって異なる。塗装環境ごとに,限界値及び測定又は算出方法は,規制又は協定によって規定される。
 備考:2.U.S.のある種の政府規制の中では,VOCという用語は,大気中で光化学的に活性な化合物だけに限定して用いられている。【JIS K5500「塗料用語」】
 ウェット膜厚(wet-film thickness)
 ぬれ膜厚(塗料)ともいい,塗装直後の未乾燥状態での膜厚をいう。
 JIS K5600-1-7 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第7節:膜厚」には,ぬれ膜厚を求める方法として,機械式測定法(mechanical methods)と重量法(gravimetric method)が規定されている。
 機械式測定法には,“くし形ゲージ”(comb gauge),“ロータリー形ゲージ”(wheel gauge)がある。
 重量法によるぬれ膜厚は,揮発性の高い成分の量が少ない液状の塗料に対し,塗料使用量を,塗料の密度及び塗装された面積で除すことで求める。塗料使用量は,被塗物の重量増加量から求められる。
 乾燥膜厚(塗料)(dry-film thickness)
 塗料乾燥後の膜厚で JIS K5600-1-7 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第7節:膜厚」には,乾燥膜厚の測定に使用する機械式測定法(mechanical methods),重量法(gravimetric method),光学的方法(optical methods),磁気法(magnetic methods),放射線法(radiological method)及び音響法(acoustic method)が規定されている。
 機械式測定法には,マイクロメータなどを用いた塗膜除去箇所との厚さの違いによる厚さの差法(difference in thickness),塗膜除去箇所の深さ計を用いたデプスゲージ法(depth gauging),表面粗さ計と同様の原理で,塗膜除去箇所の触針走査で求める表面輪郭の走査(surface profile scanning)ある。
 重量法には,質量法(difference in mass)があり,光学的方法には,塗膜断面を成形し拡大観察する断面法(cross-sectioning),一定角度で斜めに切削した塗膜の幅を計測して三角関数を用いて深さを求めるくさび形切削法(wedge cut)がある。
 磁気法には,永久磁石と強磁性の素地との間の磁気吸引力を測定する磁気プルオフ膜厚計(magnetic pull-off gauge),強磁性の素地に電磁石が接近するときに磁場中で起こる電磁誘導による磁気誘導膜厚計(megnetic-induction gauge),導電性素地中の高周波渦電流によって生じた磁場の変化かラ求める渦電流膜厚計(eddy-current gauge)がある。
 放射線法には,素地からの放射線反射を利用するβ線後方散乱法(beta backscatter method)があり,音響法には,音波の伝達時間差を利用する超音波膜厚計(ultrasonic thickness gauge)がある。

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