防食概論:塗料・塗装

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         防食用エポキシ樹脂塗料

 鋼の防食を目的に採用されるエポキシ樹脂塗料は,材料特性の違いからピュアーエポキシ樹脂塗料,変性エポキシ樹脂塗料,タールエポキシ樹脂塗料,及びエポキシエステル樹脂塗料( 1液形エポキシ樹脂塗料)に分けられる。
 近年は,タールの健康被害への懸念からタールエポキシ樹脂塗料の採用が減少するとともに,2008年に JIS規格が廃止されている。
 エポキシエステル樹脂塗料は,大気中の酸素により酸化重合する 1液形の塗料で,施工性に優れるが,防食に影響する諸性質はアルキド樹脂塗料に近く,他の 2液形エポキシ樹脂塗料に比較して劣るため,構造物の防食用途での採用はほとんどない。
 鋼橋等の鋼構造物の防食塗装は,一般的に,構造物新設時の外面ピュアーエポキシ樹脂塗料が用いられ,新設時箱桁内面や塗替え塗装では,変性エポキシ樹脂塗料が用いられる。
 ここでは,ピュアーエポキシ樹脂塗料の特徴を紹介し,変性エポキシ樹脂塗料については次項で紹介する。

【ピュアエポキシ樹脂塗料の名称比較】

 防食塗装にエポキシ樹脂を含む塗料が採用されているが,塗料採用機関ごとの開発・採用の経緯の違いから,塗料名称も異なるのが通例である。表には,JIS,鉄道,及び道路で採用するピュアーエポキシ樹脂塗料の名称の比較例を示す。


主なピュアーエポキシ樹脂塗料の名称比較
   鉄 道
(SPS:鉄道総研規格) 
  JIS規格  道 路
(鋼道路橋塗装用塗料標準)
  採用なし    JIS K 5552:ジンクリッチプライマー 2種    採用なし 
  厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント    JIS K 5553:厚膜形ジンクリッチペイント 2種    有機ジンクリッチペイント 
  厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗    JIS K 5551:構造物用さび止めペイント B種    エポキシ樹脂塗料 下塗 A 
  ポリウレタン樹脂塗料用中塗    JIS K 5659:構造物用耐候性塗料 中塗り    弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗 
  超厚膜型エポキシ樹脂塗料    採用なし    超厚膜形エポキシ樹脂塗料 
  水系エポキシ樹脂塗料    採用なし    採用なし 

【備 考】
 上表の塗料以外で,名称に“エポキシ樹脂”と称する物に,鉄道の「厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗低温用,道路のエポキシ樹脂塗料 下塗 B」がある。
 しかし,これらは,エポキシ樹脂塗料を適用できる気温( 10℃以上)を下回る場合の塗料(低温用)で,エポキシ反応(10℃以下の反応性低い)で硬化する塗料ではなく,ウレタン反応を用いた反応硬化形ウレタン樹脂系塗料である。
 従って,名称とは異なり厳密な意味でのエポキシ樹脂塗料ではない。鉄道では,このため,低温用を有する塗料種別を「○○エポキシ樹脂塗料」と称している。
 

【ピュアーエポキシ樹脂塗料】

 ピュアーエポキシ樹脂塗料とは,塗料中の樹脂組成が,主剤のエポキシ樹脂プレポリマーとその硬化剤からのみで構成され,改質用の樹脂を含まない塗料をいう。
 これに分類される防食用途の塗料には,エポキシ樹脂塗料下塗,エポキシ樹脂塗料中塗,超厚膜形エポキシ樹脂塗料などが相当する。
 また,一般的に,ポリウレタン樹脂塗料上塗やふっ素樹脂塗料上塗を用いる場合に,ポリウレタン樹脂塗料用中塗,及びふっ素樹脂塗料用中塗には,ピュアーエポキシ樹脂塗料が採用されている。
 なお,タンクやプラントなどでエポキシ樹脂塗料上塗を採用するする分野もあるが,鋼橋等の日光の直射を受ける屋外構造物での採用は少ない。
 
 エポキシ樹脂塗料下塗
 防せい顔料による防食に加えて素地との高い付着性により優れた防食性能を発揮する。さらに,中塗との付着性も考慮した材料設計がなされている。
 これに相当する JIS規格は,2008年までの旧 JIS K 5551「エポキシ樹脂塗料」の 1種(30μm),及び 2種(厚膜形 60μm)で,これは,2008年に全面改訂・名称変更され JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」の A種(30μm),及び B種(60μm:反応硬化形エポキシ樹脂系塗料)に変更された。
 
 エポキシ樹脂塗料中塗
 下塗り塗膜,及び上塗り塗膜との付着性を優先した材料設計で,下塗り塗料とは異なり,防せい顔料は配合されていない。
 一般的に,ポリウレタン樹脂塗料用中塗やふっ素樹脂塗料用中塗と称される塗料の多くはエポキシ樹脂塗料中塗を用いることが多い。
 実際に,旧 JIS K 5657「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」,及び旧 JIS K 5659「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」では,専用中塗り塗料を“気温 10℃以上ではエポキシ樹脂・顔料・溶剤などを原料とする主剤,ポリアミド樹脂を主な原料とする硬化剤からなる常温硬化形の 2液形エポキシ樹脂塗料”と規格していた。
 
 超厚膜形エポキシ樹脂塗料(無溶剤形エポキシ樹脂塗料も同等)
 明確な定義はないが,一度の塗付けで非常に厚い膜(一般的には 300μm以上)を得るため,低粘度の液状エポキシ樹脂とポリアミン,ポリアミドなどの硬化剤を使用し,溶剤含有量の低いハイソリッド型や無溶剤形の塗料が用いられる。
 この塗料は,厚く塗り付けることを優先し,景観性や作業性を犠牲にした設計が取られ,他のエポキシ樹脂塗料に比較して外観が悪い,可使時間が短いなどの欠点を有する。
 また,溶剤形エポキシ樹脂塗料下塗に比較して感作性(作業者がアレルギーになり易い)が高い場合が多いので,塗装作業時には適切な防護が求められる。

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