防食概論:塗装・塗料
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ここでは,道路の鋼橋塗装に適用される塗替え塗装系について, 【一般外面用・塗装系 Rc 】, 【旧塗膜全面除去 Rc-Ⅰ,Rc-Ⅱ塗装系】, 【活膜残す塗装 Rc-Ⅲ,Rc-Ⅳ塗装系】, 【有機ジンクリッチペイントの品質】, 【弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料の品質】, 【弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗の品質】, 【弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗の品質】 に項目を分けて紹介する。
道路橋の防食塗装(塗替え塗装)
一般外面用・塗装系 Rc
防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 7章 塗替え塗装系, 塗替え塗装仕様
塗替えの塗装系 Rc は,新設時の C塗装系と同種の塗料を用いた重防食形の塗替え塗装系である。旧塗膜の種別・状態,塗替え時に適用できる素地調整種別により,Rc-Ⅰ からRc-Ⅳ までの 4種がある。
Rc-Ⅰ :旧塗膜( A,B,a,b,c 塗装系),素地調整( 1 種),特徴(ブラスト処理で旧塗膜完全除去,スプレー塗装)
Rc-Ⅱ :旧塗膜( B,b,c 塗装系),素地調整( 2 種),特徴(工事上の制約でブラストできないとき,旧塗膜全面除去)
Rc-Ⅲ :旧塗膜( A,B,a,b,c 塗装系),素地調整( 3 種),特徴(工事上の制約でブラストできないとき,活膜残す)
Rc-Ⅳ :旧塗膜( C,c 塗装系),素地調整( 4 種),特徴(旧塗膜に欠陥がなく,美観を改善するため)
旧塗膜の概要(塗料名称は塗料の分類参照)
塗装系 A,a
ジンクリッチペイント+さび止めペイント+アルキド樹脂塗料 1971年~1979年
さび止めペイント(鉛丹,鉛系,鉛・クロムフリー)+アルキド樹脂塗料 1971年~
さび止めペイント(鉛系)+フェノール MIO 塗料+アルキド樹脂塗料 1979年~2005年
塗装系 B,b
フェノール樹脂系プライマー+フェノール樹脂系塗料 1971年~1979年
ジンクリッチペイント+タールエポキシ樹脂塗料 1971年~1979年
ジンクリッチプライマー+塩化ゴム系塗料 1979年~1993年
鉛系さび止めペイント+フェノール樹脂 MIO 塗料+塩化ゴム系塗料 1979年~2005年
塗装系 C,c
フェノール系ジンククロメートプライマー+ MIO 系プライマー+長油性フタル酸樹脂系塗料 1971年~1979年
ジンクリッチペイント+(フェノール MIO 塗料)+塩化ゴム系塗料 1971年~1993年
ジンクリッチペイント+(エポキシ樹脂塗料)+ポリウレタン樹脂塗料 1971年~2005年
ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂塗料+ふっ素樹脂塗料 1993年~2005年
ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂塗料+ふっ素樹脂塗料(弱溶剤形ふっ素樹脂塗料) 2005年~
PCB を含む旧塗膜(塩化ゴム系塗膜)
平成 30年 10月付けで,環境省廃棄物規制課より, PCB 廃棄物となる塗膜の把握に関連し,地方自治体に対し塗膜調査の依頼(ポリ塩化ビフェニルを含有する可能性のある塗膜のサンプリング方法について)が出されている。
この中で,調査対象の塗膜は,「ポリ塩化ビフェニルが含有している可能性のある塗膜について」(令和元年 6月 27日事務連絡)で,昭和 41年(1966年)から昭和 49年(1974年)までに建設又は塗装されたものとなっている。
すなわち,PCB を可塑剤として使用したことが確認された塗料(PCB 含有塗料)はすべて塩化ゴム系塗料であること。当該塗料は,昭和 41年から,通商産業省(当時)による製造中止の通達が出された昭和 47年(1972年)1月まで製造されている。加えて,1972年に製造中止となったが,実際に使用中止が正式に通達されたのは 1974年 6月 10日である。従って,調査対象は在庫品の使用を含めて,1966年から 1974年までに広げられている。
従って,1971年の「鋼道路橋塗装便覧」に規定される塩化ゴム系塗料の仕様(塗装系 C,c )には,PCBを含む可能性があり,塗替え塗装に際しては注意が必要である。
【参考】
PCB(ピーシービー)
ポリ塩化ビフェニル(polychlorinated biphenyl)の略号で,ポリクロロビフェニル((polychlorobiphenyl)とも呼ばれ,ベンゼン環が 2つ結合した芳香族化合物ビフェニル(分子式 C12H10,構造式 C6H5-C6H5 )の水素原子が塩素原子で置換された化合物の総称である。
PCB は,塩素の置換数が 1個のモノクロロビフェニルから 10個置換したデカクロロビフェニルまでの 10種類ある。置換塩素の位置の違いによる異性体は,209種存在する。
化学的に安定で,熱媒体,変圧器やコンデンサなどの電気機器の絶縁油,塩ビ管や塗膜の可塑剤などの幅広い分野で用いられていたが,生体に対する毒性が高く,体内の脂肪組織に蓄積され,発癌性,皮膚障害,内臓障害,ホルモン異常を引き起こすため,「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」で第 1種特定科学物質に指定され,製造・輸入・使用が禁止され,廃棄物に対しても非常に厳しい管理が求められる。
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旧塗膜全面除去( Rc-Ⅰ,Rc-Ⅱ塗装系)
防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 7章 塗替え塗装系 塗替え塗装仕様
旧塗膜を完全に除去し,重防食塗装系への塗膜更新を目的とする塗装仕様である。塗装仕様は,塗替え対象物の旧塗膜の種類,及び採用できる素地調整・塗装方法により,Rc-Ⅰ塗装系とRc-Ⅱ塗装系に分けられる。
Rc-Ⅰ塗装系
一般環境用の旧塗膜 A,a,B,b 塗装系が適用される構造物,及び腐食性環境の旧塗膜 c 塗装系が適用される構造物を対象に,耐候性の高い塗装系への更新を目的とし,素地調整にブラスト工法を用い,塗装には吹付け塗り(スプレー塗装)を採用している。
ブラストエ法は研掃材や塗膜のケレンダストの飛散が伴うので,飛散防止ネットなどによる養生を完全に行う必要がある。下塗りから上塗りまでスプレー塗装を行う。その際も塗料の飛散によって周辺を汚染しないように十分に飛散防止処置を行う。
さらに,この塗装仕様は,赤さびが発生した溶融亜鉛めっき鋼材の防食方法を塗装に変更する場合,はがれ,素地からのさびが著しい金属溶射皮膜の補修塗装にも適用される。
塗装仕様
素地調整
1種(ブラスト処理)
下塗り塗装
① 素地調整後 4 時間以内,全面塗り付け
有機ジンクリッチペイント:使用量 600g/m2(スプレー塗り)
② ①塗装後 1 日以上,10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 240g/m2(スプレー塗り)
③ ②塗装後 1 日以上10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 240g/m2(スプレー塗り)
中塗り塗装
下塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗:使用量 170g/m2(スプレー塗り)
上塗り塗装
中塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗:使用量 140g/m2(スプレー塗り)
Rc-Ⅱ 塗装系
一般環境用の中で比較的腐食性がある環境に適用される旧塗膜 B,b 塗装系が適用される構造物,及び腐食性環境の旧塗膜 c 塗装系が適用される構造物を対象に,耐候性の高い塗装系への更新を目的とするが,工事上の制約によって素地調整程度 1種ができない場合に適用される。ただし,素地調整程度 2種は,効率が悪く大面積の施工には不向きなため,旧塗膜 A,a 塗装系への適用は除外している。
ジンクリッチプライマーやジンクリッチペイントが下塗りに使用された旧塗膜 B,b,c 塗装で,これらの塗膜の多くに劣化がないことが確認できたときは,素地調整程度 2種でジンクリッチプライマーやジンクリッチベイントを残し,他の旧塗膜を全面除去する塗替え塗装系 Rc-Ⅱを適用してもよい。
しかしながら,過去に旧塗膜が B,b 塗装系から c 塗装系へと塗替えられた塗膜である場合には,旧塗膜にさびがほとんどなくても,割れ,はがれ,膨れ等の欠陥が見受けられることがあるので,この場合は素地調整程度 1種 の Rc-Ⅰを適用するのが望ましいが,前回の塗替え塗装でブラスト処理ができなかった工事上の制約を回避する対策が必要になる。
塗装仕様
素地調整
2 種(動力工具・手工具併用)。ただし,健全なジンクリッチプライマー,ジンクリッチペイントを残す。
下塗り塗装
① 素地調整後 4時間以内, 鋼板露出部のみ
有機ジンクリッチペイント:使用量 240g/m2(ローラ・刷毛塗り)塗膜を全除去した場合は,使用量 600g/m2とする。
② ①塗装後 1 日以上,10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 200g/m2(ローラ・刷毛塗り)
③ ②塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 200g/m2(ローラ・刷毛塗り)
中塗り塗装
下塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗:使用量 140g/m2(ローラ・刷毛塗り)
上塗り塗装
中塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗:使用量 120g/m2(ローラ・刷毛塗り)
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活膜残す塗装( Rc-Ⅲ,Rc-Ⅳ塗装系)
防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 7章 塗替え塗装系 塗替え塗装仕様
Rc-Ⅲ 塗装系
一般環境用の中で比較的腐食性がある環境に適用される旧塗膜 A,a,B,b 塗装系が適用される構造物,及び腐食性環境の旧塗膜 c 塗装系が適用される構造物を対象に,塗膜の不良部(さび,割れ,ふくれ)を除去し,活膜を残す時に適用する塗装仕様である。
塗装仕様
素地調整
3 種(動力工具・手工具併用)活膜は残す。
塗膜の不良部の面積率で素地調整種別が,3種 A(さび面積 15~30%,塗膜異常 30%以上),3種 B(さび面積 5~15%,塗膜異常 15~30%),3種 C(さび面積 5%以下,塗膜異常 5~15%)に分けられる。
下塗り塗装
① 素地調整後 4 時間以内, 鋼板露出部のみ
弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 200g/m2(ローラ・刷毛塗り)
② ①塗装後 1 日以上,10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 200g/m2(ローラ・刷毛塗り)
③ ②塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 200g/m2(ローラ・刷毛塗り)
中塗り塗装
下塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗:使用量 140g/m2(ローラ・刷毛塗り)
上塗り塗装
中塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗:使用量 120g/m2(ローラ・刷毛塗り)
Rc-Ⅳ 塗装系
旧塗膜が C塗装系,及び c塗装系の塗替えは,素地調整程度 4種で主として美観を改善するために行う。原則として鋼素地は露出しないが,付着性を確保するために下塗りを全面に 1回塗付するのがよい。
塗装仕様
素地調整
4 種(研磨紙)。塗付けた塗膜との付着性を確保するため,旧塗膜(活膜)の表面の清掃と面粗しを行う。
下塗り塗装
素地調整後直ちに,全面塗り付け
弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 200g/m2(ローラ・刷毛塗り)
中塗り塗装
下塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗:使用量 140g/m2(ローラ・刷毛塗り)
上塗り塗装
中塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗:使用量 120g/m2(ローラ・刷毛塗り)
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有機ジンクリッチペイントの品質
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
有機ジンクリッチペイント(変性エポキシ樹脂塗料下塗)
亜鉛末,エポキシ樹脂,原料,硬化剤および溶剤を主な原料とした,2液形または 1粉末と 1液からなる塗料で,鋼面に直接塗装して防錆するためのものである。本塗料は JIS K5553:2002 2種厚膜形ジンクリッチペ イントに準拠する。したがって,同規格を適用してよい。
品質
下表には,有機ジンクリッチペイントの塗料品質,比較のため JIS K5553「厚膜形ジンクリッチペ イント」2種(厚膜形有機ジンクリッチペイント)の品質を紹介する。
項 目 | 有機ジンクリッチペイント | JIS K5553( 2種厚膜形有機) |
---|---|---|
混合塗料中の加熱残分(%) | 75以上 | |
加熱残分中の金属亜鉛(%) | 70以上 | |
エポキシ樹脂の定性 | エポキシ樹脂を含むこと。 | ― |
容器の中での状態 | 粉は微小で一様な粉末であるものとする。液はかき混ぜたとき堅い塊がなくて一様になるものとする。 | |
乾燥時間 h | 6以下 | |
塗膜の外観 | 塗膜の外観が正常であるものとする。 | |
ポットライフ | 5時間で使用できるものとする。 | |
耐衝撃性(デュポン式) | 衝撃によって割れ及びはがれが生じてはならない。(500g,500mm) | |
厚塗り性 | 厚塗りに支障があってはならない。 | |
耐水性 | 水に浸したとき,異常がないものとする。 | |
耐塩水噴霧性 | 塩水噴霧に耐えるものとする。 | |
屋外暴露耐候性 | 2年間の試験でさび,割れ,はがれ及び膨れがあってはならない。 |
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弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗の品質
弱溶剤形塗料(weak solvent-based paint)
希釈剤として弱溶剤を用いた塗料を指す。なお,弱溶剤に対して明確な定義はなく,一般的には,油性塗料や油変性合成樹脂塗料を希釈するために使用されるミネラルスピリット(塗料用シンナー,脂肪族炭化水素系溶剤溶剤)などを指す場合が多い。
従って,弱溶剤に容易に溶解・分散しない従来型のエポキシ樹脂やポリウレタン樹脂とは異なるプレポリマーを用いた塗料で,弱溶剤形塗料は,いわゆる(強)溶剤形塗料とは種別が異なる塗料といえる。
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗(変性エポキシ樹脂塗料下塗)
用いる溶剤が異なるのみで,塗料品質は変性エポキシ樹脂塗料下塗と同じである。
変性エポキシ樹脂,硬化剤,顔料および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,下塗り塗装に使用するもので,施工時の気温 10℃以上で使用する A種,気温 5~20℃程度で使用する B種がある。
品質
下表には,弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗(変性エポキシ樹脂塗料下塗)の塗料品質,比較のため JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」C種(反応硬化形変性エポキシ樹脂系塗料)の品質を紹介する。
項 目 | 下塗り A種 | 下塗り B種 | JIS C種 1号 | JIS C種 2号 |
---|---|---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |||
半硬化乾燥性 | ― | 常温 16時間 | 低温 24時間 | |
乾燥性 | 23℃で 16時間以内 | 5℃で 24時間以内 | ― | |
塗装作業性 | 塗装作業に支障があってはならない。 | 支障がない。 | ||
塗膜の外観 | 正常である。 | |||
ポットライフ | 23℃ 5時間 | 5℃ 5時間 | 23℃ 5時間 | 5℃ 5時間 |
たるみ性 | たるみがない。(すき間200μmで流れがない) | |||
上塗り適合性 | ― | 支障がない。 | ||
耐衝撃性 | 割れ及びはがれがない。(デュポン式500g,300mm) | 割れ及びはがれがない。(デュポン式300g,500mm) | ||
付着性 | 分類 1以下 | 分類 1又は分類 0 | ||
耐熱性 | 160℃で 30分加熱しても,塗膜に異常がなく,付着性が分類 2以上であること。 | 外観が正常である。試験後の付着性試験で分類 2,分類 1,又は分類 0 | ||
塩水噴霧試験 | 192時間の塩水噴霧に耐えるものとする。 | ― | ||
サイクル腐食性 | ― | さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(120サイクル) | ||
加熱残分 (質量分率%) |
60以上 | ― | ||
塗膜中の鉛の定量 (質量分率%) |
― | 0.06以下 | ||
塗膜中のクロムの定量 (質量分率%) |
― | 0.03以下 | ||
エポキシ樹脂の定性 (質量分率%) |
エポキシ樹脂を含むこと | ― | ||
屋外暴露耐候性 | さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(24か月) |
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弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗の品質
弱溶剤形塗料(weak solvent-based paint)
希釈剤として弱溶剤を用いた塗料を指す。なお,弱溶剤に対して明確な定義はなく,一般的には,油性塗料や油変性合成樹脂塗料を希釈するために使用されるミネラルスピリット(塗料用シンナー,脂肪族炭化水素系溶剤溶剤)などを指す場合が多い。
従って,弱溶剤に容易に溶解・分散しない従来型のエポキシ樹脂やポリウレタン樹脂とは異なるプレポリマーを用いた塗料で,弱溶剤形塗料は,いわゆる(強)溶剤形塗料とは種別が異なる塗料といえる。
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗(ふっ素樹脂塗料用中塗)
用いる溶剤が異なるのみで,塗料品質はふっ素樹脂塗料用中塗と同じである。
エポキシ樹脂またはポリオール樹脂,またはふっ素樹脂, 顔料,硬化剤および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,中塗の塗装に使用するものである。本塗料は JIS K5659:2002「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」に準拠する。2008年に,それまでの鋼構造物用上塗り塗料の製品規格であった JIS K 5657「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と JIS K 5659「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統廃合し,性能規格の JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料:Long durable paints for steel structures 」に改定された。
品質
下表には,弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗(ふっ素樹脂塗料用中塗)の塗料品質,比較のため JIS K 56592018「鋼構造物用耐候性塗料」の品質を紹介する。
項 目 | 弱溶剤形ふっ素樹脂 | JIS K 5659 中塗り |
---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |
低温安定性(-5℃) | - | 変質しない。( B種のみ) |
表面乾燥性 | - | 表面乾燥する。(常温8時間後,低温5℃16時間後) |
乾燥時間 | 23℃ 8時間以下,5℃ 16時間以下 | - |
塗膜の外観 | 正常である。 | |
ポットライフ | 規定時間(5時間)後,使用できる。 | |
隠ぺい率 | 白・淡彩は 90以上,鮮明な赤及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 | |
上塗り適合性 | 支障がない。 | |
耐屈曲性 | - | 折曲げに耐える。(10mmマンドレル) |
耐おもり落下性 (デュポン式) |
塗膜に割れ及びはがれが生じない。(デュポン式500g,300mm) | 塗膜に割れ及びはがれが生じない。(デュポン式300g,500mm) |
層間付着性 Ⅰ | 異常がない。 | |
層間付着性 Ⅱ | 異常がない。 | |
耐アルカリ性 | 異常がない。(水酸化カルシウム水) | |
耐酸性 | 異常がない。(硫酸水) | |
耐湿潤冷熱繰返し性 | 湿潤冷熱繰返しに耐える。 | |
混合塗料中の加熱残分 % | 白・淡彩は 60以上,その他の色は 50以上 |
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弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗の品質
弱溶剤形塗料(weak solvent-based paint)
希釈剤として弱溶剤を用いた塗料を指す。なお,弱溶剤に対して明確な定義はなく,一般的には,油性塗料や油変性合成樹脂塗料を希釈するために使用されるミネラルスピリット(塗料用シンナー,脂肪族炭化水素系溶剤溶剤)などを指す場合が多い。
従って,弱溶剤に容易に溶解・分散しない従来型のエポキシ樹脂やポリウレタン樹脂とは異なるプレポリマーを用いた塗料で,弱溶剤形塗料は,いわゆる(強)溶剤形塗料とは種別が異なる塗料といえる。
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗(ふっ素樹脂塗料上塗)
用いる溶剤が異なるのみで,塗料品質はふっ素樹脂塗料上塗と同じである。
ふっ素樹脂,顔料,硬化剤および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,上塗りの塗装に使用するものである。本塗料は JIS K5659:2002「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」に準拠する。2008年に,それまでの鋼構造物用上塗り塗料の製品規格であった JIS K 5657「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と JIS K 5659「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統廃合し,性能規格の JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料:Long durable paints for steel structures 」に改定された。
品質
下表には,弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用上塗(ふっ素樹脂塗料用上塗)の塗料品質,比較のため JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」上塗り 2級(ポリウレタン樹脂塗料相当))の品質を紹介する。
項 目 | 弱溶剤形ふっ素樹脂 | JIS K 5659 上塗り 2級 |
---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |
低温安定性(-5±2℃) | - | 変質しない。( B種のみ) |
表面乾燥性 | - | 表面乾燥する。(常温 8 時間後,低温 5 ℃ 16 時間後) |
乾燥時間 | 23℃で 8時間以下,5 ℃で 16時間以下 | - |
塗膜の外観 | 塗膜の外観が正常であるものとする。 | |
ポットライフ | 規定時間(5 時間)後,使用できる。 | |
隠ぺい率 | 白・淡彩は 90以上,鮮明な赤,及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 | |
鏡面光沢度(60度) | 70 以上 | |
耐屈曲性 | - | 折曲げに耐える。( 10mmマンドレル) |
耐おもり落下性 (デュポン式) |
塗膜に割れ,及びはがれが生じない。(デュポン式 500g,300mm) | 塗膜に割れ,及びはがれが生じない。(デュポン式 300g,500mm) |
層間付着性 Ⅱ | 異常がない。 | |
耐アルカリ性,耐酸性 | - | 異常がない。(水酸化カルシウム水,硫酸水) |
耐湿潤冷熱繰返し性 | 湿潤冷熱繰返しに耐える。 | |
混合塗料中の加熱残分 % | 白・淡彩は 50 以上,その他の色は 40 以上 | |
主剤溶剤可溶物中の ふっ素の定量 % |
15以上 | - |
促進耐候性 | 塗膜に,膨れ・はがれ・割れがなく,光沢保持率は照射時間 1000時間の場合は 80%以上,照射時間 300時間の場合は 90%以上で色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化の等級が 1以下とする。 | 照射時間 1000 時間で塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 1 又は 0,光沢保持率 80%以上。 |
屋外暴露耐候性 (24か月) |
塗膜に膨れ・はがれ・割れがなく,光沢保持率は 60%以上で色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化の等級が 2以下とする。 | 塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 2,1 又は 0 ,光沢保持率 40%以上。 |
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