防食概論:塗料・塗装

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         はじめに

 JIS K 5500「塗料用語」では,塗料(coating material,coating)とは
 “素地に塗装したとき,保護的,修飾的,又は特殊性能をもったを形成する液状,ペースト状,又は粉末状の製品。流動状態で物体の表面に広げると薄い膜となり,時間の経過につれてその面に固着したまま固体の膜となり,連続してその面を覆うもの。”と定義し,
 塗膜は,“塗られた塗料が乾燥してできた固体皮膜。”と定義されている。

 塗料にユーザーが期待する性能は,塗膜として形成された固体被膜に対してであり,塗料そのものに対し性能を期待しているわけではない。
 すなわち,塗料は最終製品である塗膜を作るための中間製品と考えられ,塗料には施工するまでの材料の性状と安定性,施工し易さ,期待する塗膜の形成機能が求められる。
 塗料の製品規格である JISにおいても,塗料品質項目として,これらの製品に求められる最小限の性能規定が採用されている。
 本節,及び次節では,代表的な塗料の JIS製品規格の概要を紹介し,規定される品質項目と規格に採用され試験・評価法を解説する。
 本節では,品質項目の中で,塗料の品質確保を目的とした項目について解説し,形成した塗膜の特性評価を目的とする項目についは,次節の「塗膜の評価」で解説する。

【塗料の品質とは】

 塗料の品質には,塗料一般に求められる品質と塗料・塗膜に期待する機能別に求められる品質がある。
 塗料一般として求められる品質項目は次の通りである。

  1. 塗料の性状に関わる品質
     容器の中での状態,粘度,密度,分散度,低温安定性,常温貯蔵安定性,加熱貯蔵安定性,皮張り性などがある。
  2. 塗装作業に関わる品質
     塗装作業性,乾燥時間,塗り面積,ポットライフ,混合性,たるみ性,にじみ,隠ぺい率などがある。
  3. 塗膜形成に関わる品質
     塗膜の外観,厚塗り性,レベリング,加熱残分,上塗り適合性(中塗り),重ね塗り適合性(上塗り),付着性,不粘着性,塗膜硬度,耐衝撃性などがある。
 塗料の品質を管理するための項目は,塗料,及び塗膜に期待する性能の違いから,プライマー(下塗り塗料),中塗り塗料,及び上塗り塗料で異なるのが一般的である。さらに,酸化重合形の塗料(1液形塗料)と付加重合形の塗料(多液形塗料)でも品質項目が異なる。
 そこで,ここでは,1)プライマー,2)下塗り塗料,3)中塗り塗料,4)上塗り塗料に区分し,防食塗装に用いられる主な塗料を例に,JIS品質の紹介,次いで,夫々の品質確認に用いられる主な試験・評価方法を紹介する。

【基礎用語】

    JIS K 5500「塗料用語」を中心に主な基礎用語を紹介する。
  • 容器の中での状態(condition in container)
     塗料を容器に入れて貯蔵した後の状態。
     顔料を含む塗料では,かき混ぜるか練り混ぜるかしてみて,一様な状態になればよいとする。
  • 乾燥時間(drying time)
     塗料が乾燥(液体から固体に変化する過程の総称)するのに必要な時間。
     塗料の試験では,規定の条件下で,規定の時間経過した後に,塗膜の乾燥状態を評価する。
     乾燥の条件には,自然乾燥,強制乾燥,加熱乾燥などがある。
     一般的に用いられている乾燥状態の表現には,指触乾燥,半硬化乾燥,硬化乾燥,表面乾燥(上乾き)があり,それぞれの用語について定義されている。
  • 低温安定性(low temperature stability)
     冷却しても常温に戻せば,元の性能状態に戻る性質。
  • 貯蔵安定性(storage stability)
     貯蔵しても変質しにくい性質。
     塗料を一定の条件で貯蔵した後に塗ってみて,塗る作業,できた塗膜に支障がないかどうかを調べて判定する。想定される貯蔵条件により,常温貯蔵安定性,加熱貯蔵安定性などに分けられる。
  • 皮張り(skinning)
     貯蔵中に容器の中で,塗料が空気と接触する表面に皮を作る現象。
  • ポットライフ(pot life)
     幾つかの成分に分けて供給される塗料を混合した後,使用できる最長の時間。
  • 隠ぺい率(contrast ratio)
     塗料が下地の色の差を覆い隠す度合。
     黒と白とに塗り分けて作った下地の上に,同じ厚さに塗ったときの,塗膜の 45度,0度拡散反射率,又は三刺激値 Y の比で表わす。
  • 塗膜の外観(appearance of film)
     肉眼で見たときの塗膜の状態。
     塗膜を拡散昼光の下で見本品と比べて,色の差異・色むらの程度・つやの差異・つやむらの程度・厚さのむらの程度・レべリング・はけ目・ゆず肌・しわ・つぶ・くぼみ・穴の程度・流れ・はじき・泡・膨れ・はがれ・白化の程度を調べる。
  • レべリング(leveling)
     塗料を塗った後,塗料が流動して,平らで滑らかな塗膜ができる性質。
  • 加熱残分(solid content, nonvolatile content, non-volatile matter content)
     塗料を一定条件で加熱したときに,塗料成分の一部が揮発,又は蒸発した後に残ったものの質量の,元の質量に対する百分率。
     残分は,主として塗膜構成要素(展色材,添加剤,顔料)中の不揮発物で,塗膜として最終的に残るものである。
  • 上塗り適合性(overcoatability)
     ある塗料の塗膜の上に,決められた塗料を塗り重ねたときに,塗装上の支障が起こらず,正常な組合せの塗膜層が得られるための,塗り重ねられる下地塗膜の性状。
  • 重ね塗り適合性(recoatability)
     乾燥した塗膜の上に,同じ塗料を塗り重ねたときに,塗装上の支障が起こらず,正常な塗り重ね塗膜層が得られるための塗料の性状。
  • 付着性(adhesive property, adhesion)
     塗膜が下地面に付着して離れにくい性質。
  • 層間付着性
     塗膜と塗膜の間の付着性。
     下塗り塗料と中塗り塗料の付着性を層間付着性Ⅰ,中塗り塗料と上塗り塗料の付着性を層間付着性Ⅱという。
  • 耐屈曲性(flexibility)
     塗膜が素地の変形に対し,塗膜の損傷なしで追従する性能。
     屈曲試験では,薄い試験板に塗装された試験片の塗膜を外にし,試験板の内側に規定される丸棒を当てて 180度折り曲げた後,塗膜に表面の割れ等の損傷を調べる。
  • 耐衝撃性(impact resistance, shock resistance, chip resistance)
     塗膜が物体の衝撃を受けても破壊されにくい性質。

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