防食概論:塗料・塗装

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         塗膜変状と措置(経年変化)

 ここでは,塗膜の劣化老化ともいわれ,塗装後の経年で現れる主な塗膜の変状(harmful alteration, deformation)を,JIS K 5500「塗料用語」などを参考に,防食性能に影響する程度で分類し,その原因,及び措置の例を紹介する。
 
 【参考】
 劣化(degradation, deterioration, aging)
 材料の劣化は,時間経過,繰り返し使用などにより,熱,光(放射線),機械的摩擦,化学薬品,微生物などの影響を受け,化学的・物理的変化により材料の品質・性能が損なわれること。老化(aging)ともいわれる。
 JIS K6900「プラスチック用語」では,劣化(崩壊;degradation)を“特性に有害な変化を伴うプラスチックの化学構造の変化。”,劣化(変質;deterioration)を“それらの特性の悪化により現れるプラスチックの物理的特性の永久変化。”,老化(aging)を“時間の経過の中で材料に生ずるすべての不可逆的な化学的及び物理的作用の全体。”と定義している。

 【防食性能に影響する重大な変状】

  • はがれ(peeling, flaking)
     付着性が失われて,ある広さの膜が自然に素地から分離する現象。
     はがれは,塗装系の 1層,又はそれ以上の塗膜が下層塗膜からはがれれる現象(層間はがれ)と,素地から塗装系全体の塗膜がはがれる現象(素地からのはがれ)に分けられる。
     はがれ現象は,その形状によっても“peeling”(リボン,又はシート上のおおきなはがれ),”flaking”(りん片状の小さなはがれ)に分けられる。
     原因:“層間はがれ”は,塗装時の下層塗膜表面が,油,塩分,水などで汚染されていた場合,塗装間隔が長くなり下地塗膜が過度に硬化した場合などで塗り重ねた塗膜との付着性が低下していた場合に生じる。
     防食性能に大きく影響する“素地からのはがれ”は,塗膜の老化により素地との付着性低下,塗膜の粘弾性低下,体積収縮による内部応力の増加などが原因で起きる。一般的には,塗膜割れ,膨れを伴うことが多い。
     措置:“層間はがれ”の場合に,下層塗膜が健全な場合は,はがれた部分のはがれた塗膜の除去程度で素地まで露出させる必要はない。
     一方,“素地からのはがれ”は,塗膜層全体の老化が原因と考えられるので,割れ・はがれを生じていない部分を含めて,同じ経歴の旧塗膜除去を検討する必要がある。
  • 割れ(cracking)
     塗膜老化の結果,塗膜に現れる部分的な裂け目。
     一般的に,割れは程度の低いもの,浅いものから,ヘアクラック,チェッキング,クレージング,わに皮割れ,深割れ,からす足状割れに分けられる。
     備考:旧塗膜の塩化ゴム系塗膜の上に,エポキシ樹脂塗料,ポリウレタン樹脂塗料を塗付けた時,塗装後しばらくしてから,塗り付けた塗膜の体積収縮で,塗り付けた塗膜層に広い幅の方向性のある大きな割れ(旧塗膜まで達することが少ない)が発生する。これは,旧塗膜との組合せの問題であり,塗膜老化による割れとは区別される。  
     原因:塗膜の老化により,旧塗膜の脆化が進むとともに,塗膜体積の収縮,内部応力の増加で割れが進む。  
     措置:ヘアクラック,チェッキングは上塗り塗膜にとどまる割れである。塗膜全体の老化には至っていないが,表層部の老化が相当進んでいると考えられるので,旧塗膜の中塗り層まで削り取るような素地調整が求められる。
     深割れ,からす足状割れの状態に至ると複数層の塗膜を貫通する割れで,はがれを伴うこともある。塗膜層全体の老化が原因と考えられるので,割れ・はがれを生じていない部分を含めて,同じ経歴の旧塗膜除去を検討する必要がある。
  • 膨れ(blister)
     塗膜に泡(半球状のふくらみ)が生成する現象である。
     原因:水分・揮発成分・溶剤を含む被塗面に塗料を塗ったとき,又は塗膜形成後に,下層面にガス,蒸気,水分などの発生,侵入で起こる。
     塗膜下で腐食が進み塗膜膨れに至ることもある。これをさびふくれと称しているが,外観から区別することは困難である。
     措置:膨れ現象は,塗膜老化を原因とするより,局部的な塗膜の不均一や汚れを原因としているので,膨れ個所以外の塗膜は健全(活膜)な場合が多い。
     従って,膨れ発生部周辺の塗膜を評価し,周辺が活膜の場合は膨れ部のみを鋼素地まで除去し,補修塗装するのが望ましい。

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 【程度が甚だしいと防食性能に影響する変状】

  • 白亜化(はくあか)(chalking)
     上塗り塗膜の成分の一つ,又はそれ以上が劣化して膜の表面に微粉がゆるく付着したような外観になる現象をいう。
     原因:主に屋外使用の塗膜で,上塗り塗膜の表層部を構成する高分子材料が紫外線の影響で分解し,顔料成分のみが濃化する。深さ方向への影響範囲が 10μm程度までとごく薄いため,その下層の塗膜性能には大きな影響を与えない。
     程度がはなはだしくなると塗膜厚みが減少(塗膜減耗)する。その程度は,上塗り塗膜に用いる高分子材料の耐紫外線性や顔料の光活性に依存する。
     措置:下塗り塗膜が透けて見えるほどまで塗膜が減耗した場合には,表層の劣化層を除去(面粗し程度の素地調整)し,中塗り塗料と上塗り塗料を塗装する。

 

 【程度が甚だしいと外観に影響する変状】

 外観に影響する塗膜変状には,の変化(変色),光沢度の変化,汚れの付着がある。変色や光沢度変化には,紫外線や水の影響下における上塗り塗膜表層部の顔料,高分子材料の変質に加え汚れの付着が影響する。
 景観性能を重視する構造物では,洗浄対策,塗装対策(中・上塗り塗料の増し塗り)などの景観性能回復を計画することができる。
 しかし,塗り替えの要否判断は,個々の構造物に求められる外観性能と変化に対する官能的判断に大きく左右されるため,定量的評価法を確立するのが困難である。
 
 【参考】
 変色(塗膜の)(tarnish, tarnishing, discoloration)
 塗膜の色の色相・彩度・明度のどれか一つ又は一つ以上が変化する現象。主として彩度が小さくなり,又は更に明度が大きくなる現象を退色という。【JIS K5500「塗料用語」】
 光沢(gloss, luster)
 光の反射(能力)で特徴付けられる表面の(光学的)性質。【JIS K5500「塗料用語」】
 反射光によって感じられる物体表面の属性。正反射光成分の大小によって光沢の大小が定められる。つやともいう。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 鏡面光沢度(specular gloss)
 入射光に対して,等しい角度で計測した反射光について,基準面での結果との百分率。
 光沢度が比較的大きい一般的な塗膜面に対しては,法線に対して入射角60度,反射角 60度で測定(60度鏡面光沢度)するのが一般的である。鏡面光沢度の基準面は,屈曲率 1.567のガラス坂を用いる。【JIS K5500「塗料用語」】
 測定法の規格には,JIS K 5600-4-7「塗料一般試験方法-第4部:塗膜の視覚特性-第7節:鏡面光沢度」,JIS Z 8741「鏡面光沢度-測定方法」がある。
 つや(gloss)
 物体の表面から受ける正反射光成分の多少によって起こる感覚の属性。一般に,正反射光成分が多いときに,つやが多いという。塗膜では,光沢度計を用いて,入射角・反射角を 45 度・45度,60 度・60 度などとして鏡面光沢度を測定して,つやの大小の目安とする。
 備考 塗膜のつやを表す用語には,つやの程度によって,次のようなものがある。【JIS K5500「塗料用語」】
 高光沢 (high gloss) ;光沢が高い状態。
 つやあり (glossy) :塗膜のつやがある状態。
 エッグシェル(卵殻)光沢 (eggshell gloss) ;卵の殻の表面のような半つやに近い状態。
 つやなし(つや消し)(flat, matt) ;塗膜のつやがない状態。
 しゅす(繻子)つや (satin gloss) ;絹のようなつや。

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