防食概論:塗装・塗料
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ここでは,道路の鋼橋塗装に適用される塗替え塗装について, 【亜鉛めっき面用塗替え塗装系 Rzc・仕様】, 【亜鉛めっき面用塗料の品質】, 【弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗の品質】, 【弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗の品質】 に項目を分けて紹介する。
道路橋の防食塗装(塗替え塗装)
亜鉛めっき面用塗替え塗装系 Rzc
防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 2章 防食設計・新設塗装仕様 溶融亜鉛めっき面の塗装
鋼道路橋では様々な目的から溶融亜鉛めっきを施した上に塗装を施工する場合がある。主な目的は次の通りである。1) 景観調和のための塗装:併用される他の材料との調和,市街地などでは周囲の色彩調和(手すり,高欄,照明柱など)
2) 補修困難な構造物への耐久性の付与:再めっきで補修を行うことが困難なため
3) 激しい腐食環境での長期耐久性の保持:海岸地帯などの飛来塩分の多い激しい腐食環境では早期に亜鉛が消耗する。長期耐久性を保持するため亜鉛めっき面に施す塗装には耐薬品性があり透水性の小さな塗料を用いる必要がある。
防食便覧 2005;第Ⅱ編 塗装編 第 7章 塗替え塗装系 塗替え塗装仕様
亜鉛めっき面用 Rzc-Ⅰ塗装系
赤さびが発生した溶融亜鉛めっき鋼材の防食方法を塗装に変更する場合は, Rc-1 塗装系を適用するとよい。
部分的な補修塗装の場合には,素地調整程度 1種で鋼材素地を露出させ,亜鉛めっき用エポキシ樹脂塗料下塗を用いた Rzc- I 塗装系を適用するとよい。
金属溶射皮膜が剥がれたり,赤さびが発生した金属溶射した鋼材の補修を塗装で行う場合は,Rc- I 塗装系を適用するとよい。
塗装仕様
素地調整
1 種(ブラスト処理)
素地調整程度1種であるがブラストグレード(除せい度)は,ISO Sa1(スイープブラスト)とする。
下塗り塗装
素地調整後直ちに
亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗:使用量 200g/m2(スプレー塗り)
中塗り塗装
下塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗:使用量 170g/m2(スプレー塗り)
上塗り塗装
中塗り塗装後 1 日以上 10 日以内,全面塗り付け
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗:使用量 140g/m2(スプレー塗り)
【参考】
除せい(錆)度(preparation grade)
ある(素地調整)方法によって得られる清浄仕上げの品質水準を説明する分類。
JIS Z 0313-1998「素地調整用ブラスト処理面の試験及び評価方法」では,除せい度とそれに対する鋼材表面の状態を次のように定義している。
Sa1 : 拡大鏡なしで,表面には,弱く付着したミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。
Sa2 : 拡大鏡なしで,表面には,ほとんどのミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。残存する汚れのすべては,固着している。
Sa2 1/2 : 拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がない。残存するすべての汚れは,そのこん跡が斑点又はすじ状のわずかな染みだけとなって認められる程度である。
Sa3 : 拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がなく,均一な金属色を呈している。ブラストに先立って,厚いさび層,油,グリースや泥土は除去する。
この規格は,ISO8501-1( Rust grades and preparation grades of uncoated steel substrates and of steel substrates after overall removal of previous coatings. )に整合しており,判定はISO規格の写真集と比較して行うことになっている。
一方,比較的使用例の多い米国の規格,SSPC (Steel Structures Painting Council): 「米国鋼構造物塗装協会で規格するブラスト仕上げ等級」では,除せい度の等級は,次のように規定している。
White Metal Blast Cleaning(完全ブラスト処理:SP5) : 全ての錆・ミルスケール・ 塗料その他異物を除去する。 ISO規格のSa3相当
Near-White Blast Cleaning(準完全ブラスト処理:SP10) : 全ての異物を完全に除去。極めて軽微なくもり・条痕,錆の染み・ミルスケール・酸化物等の軽微な残滓は容認。1平方インチ当たり95%以上は残滓がないこと。ISO規格のSa2 1/2相当
Commercial Blast Cleaning(経済的ブラスト処理:SP6) : 少なくとも1平方インチ当たり2/3は錆・ミルスケールの残滓がないこと。ISO規格のSa2相当
Brush-off Blast Cleaning(スイープブラスト処理:SP7) : 固く付着したミルスケール,錆及び塗膜の残滓を除き全ての異物を除去する。ISO規格のSa1相当。
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亜鉛めっき面用塗料の品質
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗
エポキシ樹脂,硬化剤,顔料および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,亜鉛めっき面用の下塗り塗装に使用するもの。
【品質】
下表には,亜鉛めっき面用エポキシ樹脂塗料下塗の塗料品質,比較のためエポキシ樹脂塗料下塗 A種(常温用),変性エポキシ樹脂塗料内面用 A種(常温用),JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」 B種(エポキシ,常温用),C種 1号(変性エポキシ,常温用)の品質も紹介する。
エポキシ樹脂塗料下塗は,エポキシ樹脂,硬化剤,顔料および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,下塗り塗装に使用するもので,施工時の気温 10℃以上で使用する A種,気温 5~20℃程度で使用する B種がある。
変性エポキシ樹脂塗料内面用は,エポキシ樹脂,ポリオール樹脂,変性樹脂,顔料,硬化剤 および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,箱桁の内面等に使用するもので,施工時の気温 10℃以上で使用する A種,気温 5~20℃程度で使用する B種がある。
項 目 | めっき面用 | エポキシ下 A種 | 内面用 A種 | JIS B種 | JIS C種 1号 |
---|---|---|---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | ||||
混合性 | 均等に混合する。 | ― | |||
半硬化乾燥性 | ― | 常温 16時間 | |||
乾燥性 | 23℃で 16時間以内 | 23℃で 24時間以内 | ― | ||
塗装作業性 | 支障がない。 | ||||
塗膜の外観 | 正常である。 | ||||
ポットライフ | 23℃ 5時間 | ||||
たるみ性 | たるみがない。 | ― | たるみがない。 | ||
上塗り適合性 | 支障がない。 | ― | 支障がない。 | ||
耐衝撃性 | デュポン式300g,300mm | デュポン式500g,300mm | デュポン式300g,500mm | ||
耐屈曲性 | 折り曲げに耐えること。 | ― | |||
付着性 | 分類 1以下 | ― | 分類 1以下 | ||
耐湿性 | ― | 50℃ 95%RH 120h時間 | ― | ||
耐水性 | 168時間 | ― | |||
耐熱性 | ― | 外観正常,付着性分類 2,1,0 | |||
塩水噴霧試験 | 168時間 | 192時間 | ― | ||
サイクル腐食性 | ― | 120サイクル | |||
混合塗料中の溶剤不溶物 (質量分率%) |
30以上 | ― | |||
混合塗料中の加熱残分 (質量分率%) |
55以上 | 60以上 | ― | ||
塗膜中の鉛の定量 (質量分率%) |
― | 0.06以下 | |||
塗膜中のクロムの定量 (質量分率%) |
― | 0.03以下 | |||
エポキシ樹脂の定性 | ― | エポキシ樹脂を含むこと | ― | ||
屋外暴露耐候性 | ― | 24か月 | ― | 24か月 |
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弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗の品質
弱溶剤形塗料(weak solvent-based paint)
希釈剤として弱溶剤を用いた塗料を指す。なお,弱溶剤に対して明確な定義はなく,一般的には,油性塗料や油変性合成樹脂塗料を希釈するために使用されるミネラルスピリット(塗料用シンナー,脂肪族炭化水素系溶剤溶剤)などを指す場合が多い。
従って,弱溶剤に容易に溶解・分散しない従来型のエポキシ樹脂やポリウレタン樹脂とは異なるプレポリマーを用いた塗料で,弱溶剤形塗料は,いわゆる(強)溶剤形塗料とは種別が異なる塗料といえる。
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗(ふっ素樹脂塗料用中塗)
用いる溶剤が異なるのみで,塗料品質はふっ素樹脂塗料用中塗と同じである。
エポキシ樹脂またはポリオール樹脂,またはふっ素樹脂, 顔料,硬化剤および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,中塗の塗装に使用するものである。本塗料は JIS K5659:2002「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」に準拠する。2008年に,それまでの鋼構造物用上塗り塗料の製品規格であった JIS K 5657「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と JIS K 5659「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統廃合し,性能規格の JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料:Long durable paints for steel structures 」に改定された。
品質
下表には,弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用中塗(ふっ素樹脂塗料用中塗)の塗料品質,比較のため JIS K 56592018「鋼構造物用耐候性塗料」の品質を紹介する。
項 目 | 弱溶剤形ふっ素樹脂 | JIS K 5659 中塗り |
---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |
低温安定性(-5℃) | - | 変質しない。( B種のみ) |
表面乾燥性 | - | 表面乾燥する。(常温8時間後,低温5℃16時間後) |
乾燥時間 | 23℃ 8時間以下,5℃ 16時間以下 | - |
塗膜の外観 | 正常である。 | |
ポットライフ | 規定時間(5時間)後,使用できる。 | |
隠ぺい率 | 白・淡彩は 90以上,鮮明な赤及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 | |
上塗り適合性 | 支障がない。 | |
耐屈曲性 | - | 折曲げに耐える。(10mmマンドレル) |
耐おもり落下性(デュポン式) | 塗膜に割れ及びはがれが生じない。(デュポン式500g,300mm) | 塗膜に割れ及びはがれが生じない。(デュポン式300g,500mm) |
層間付着性 Ⅰ | 異常がない。 | |
層間付着性 Ⅱ | 異常がない。 | |
耐アルカリ性 | 異常がない。(水酸化カルシウム水) | |
耐酸性 | 異常がない。(硫酸水) | |
耐湿潤冷熱繰返し性 | 湿潤冷熱繰返しに耐える。 | |
混合塗料中の加熱残分 % | 白・淡彩は 60以上,その他の色は 50以上 |
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弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗の品質
弱溶剤形塗料(weak solvent-based paint)
希釈剤として弱溶剤を用いた塗料を指す。なお,弱溶剤に対して明確な定義はなく,一般的には,油性塗料や油変性合成樹脂塗料を希釈するために使用されるミネラルスピリット(塗料用シンナー,脂肪族炭化水素系溶剤溶剤)などを指す場合が多い。従って,弱溶剤に容易に溶解・分散しない従来型のエポキシ樹脂やポリウレタン樹脂とは異なるプレポリマーを用いた塗料で,弱溶剤形塗料は,いわゆる(強)溶剤形塗料とは種別が異なる塗料といえる。
防食便覧 2005;付属資料 鋼道路橋塗装用塗料標準
弱溶剤形ふっ素樹脂塗料上塗(ふっ素樹脂塗料上塗)
用いる溶剤が異なるのみで,塗料品質はふっ素樹脂塗料上塗と同じである。
ふっ素樹脂,顔料,硬化剤および溶剤をおもな原料とした 2液形の塗料で,上塗りの塗装に使用するものである。本塗料は JIS K5659:2002「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」に準拠する。2008年に,それまでの鋼構造物用上塗り塗料の製品規格であった JIS K 5657「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」と JIS K 5659「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統廃合し,性能規格の JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料:Long durable paints for steel structures 」に改定された。
品質
下表には,弱溶剤形ふっ素樹脂塗料用上塗(ふっ素樹脂塗料用上塗)の塗料品質,比較のため JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」上塗り 2級(ポリウレタン樹脂塗料相当)の品質を紹介する。
項 目 | 弱溶剤形ふっ素樹脂 | JIS K 5659 上塗り 2級(ポリウレタン樹脂塗料相当) |
---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |
低温安定性(-5±2℃) | - | 変質しない。( B種のみ) |
表面乾燥性 | - | 表面乾燥する。(常温 8 時間後,低温 5 ℃ 16 時間後) |
乾燥時間 | 23℃で 8時間以下,5 ℃で 16時間以下 | - |
塗膜の外観 | 塗膜の外観が正常であるものとする。 | |
ポットライフ | 規定時間(5 時間)後,使用できる。 | |
隠ぺい率 | 白・淡彩は 90以上,鮮明な赤,及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 | |
鏡面光沢度(60度) | 70 以上 | |
耐屈曲性 | - | 折曲げに耐える。( 10mmマンドレル) |
耐おもり落下性 (デュポン式) |
塗膜に割れ,及びはがれが生じない。 (デュポン式 500g,300mm) |
塗膜に割れ,及びはがれが生じない。 (デュポン式 300g,500mm) |
層間付着性 Ⅱ | 異常がない。 | |
耐アルカリ性,耐酸性 | - | 異常がない。(水酸化カルシウム水,硫酸水) |
耐湿潤冷熱繰返し性 | 湿潤冷熱繰返しに耐える。 | |
混合塗料中の加熱残分 % | 白・淡彩は 50 以上,その他の色は 40 以上 | |
主剤溶剤可溶物中の ふっ素の定量 % |
15以上 | - |
促進耐候性 | 塗膜に,膨れ・はがれ・割れがなく,光沢保持率は照射時間 1000時間の場合は 80%以上,照射時間 300時間の場合は 90%以上で色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化の等級が 1以下とする。 | 照射時間 1000 時間で塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 1 又は 0,光沢保持率 80%以上。 |
屋外暴露耐候性 (24か月) |
塗膜に膨れ・はがれ・割れがなく,光沢保持率は 60%以上で色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化の等級が 2以下とする。 | 塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 2,1 又は 0 ,光沢保持率 40%以上。 |
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