防食概論塗装・塗料

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 塗料概論(塗料の構成要素)

 塗膜副要素(添加剤)

 添加剤(additives)
 塗料補助剤,塗装補助剤ともいわれ,塗料に少量添加して,その性質の一つ若しくはそれ以上を改善又は変性する物質をいう。
 添加剤には,その目的により,硬化剤(hardener, curing agent),ドライヤー(drier, siccative),促進剤(accelerator),可塑剤(plasticizer),増粘剤(thckener),流れ止め剤(antisagging agent, antisag agent, antirunning agent),界面活性剤(surface active agent, surfactant),顔料分散剤(dispersing agent, dispersant),沈降防止剤(anti-settling additive, pigment sedimentation-preventing agent),酸化防止剤(antioxidant, oxidation inhibitor),皮張り防止剤(anti-skinning agent, antiskinning agent),つや消し剤(flattingagent),目止め剤(wood filler)などがある。
 
 次に代表的な添加剤を紹介する。
 硬化剤(hardener, curing agent)
 塗料の硬度の増進又は硬化反応を促進若しくは制御するために用いられる橋かけ剤,樹脂,その他の変性剤。
 備考 常温硬化形塗料では,エポキシ樹脂塗料におけるアミンアダクト及びポリアミド樹脂,ポリウレタン樹脂塗料におけるポリイソシアネート類は,架橋反応によって硬化する硬化剤の代表的な例である。
 また,酸硬化形アミノ樹脂塗料における有機酸又は無機酸などの酸触媒,不飽和ポリエステル樹脂塗料の過酸化物(重合開始剤)とナフテン酸コバルト(促進剤)なども硬化剤ということがある。【JIS K5500「塗料用語」】
 備考で紹介する前者の多液形塗料での例は塗料の展色材(架橋剤・硬化剤)として,後者の例は塗料の添加剤(硬化促進剤)として扱われる。
 促進剤(accelerator)は,塗料に少量添加して反応,例えば,架橋反応を促進する物質。【JIS K5500「塗料用語」】
 硬化触媒(curing catalyst)は,化学反応の反応速度を高める目的で用い,反応前後で変化しない物質,又は反応後に再生して元に戻る物質をいい,有機高分子反応における硬化触媒には,酸硬化触媒(ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA) 触媒,ジノニルナフタレン(モノ)スルホン酸(DNNSA)触媒,p-トルエンスルホン酸(p-TSA)触媒など),りん酸ブロック触媒,ウレタン硬化触媒(有機スズ化合物,金属錯体,ジルコニウム錯体など)などが用いられる。
 ドライヤー(drier, siccative)は,通常,有機金属化合物で有機溶剤及びバインダーに可溶,酸化乾燥する塗料の乾燥過程を促進するために添加する化合物。主成分は鉛,マンガン,コバルトなどの金属石けん。液状ドライヤー,のり状ドライヤーなどがある。備考 水可溶性の乾燥剤も存在する。【JIS K5500「塗料用語」】
 金属ドライヤーは,金属石鹸の形態を持ち,有機部分が展色剤中への溶解作用を示し,金属部分が乾性油の酸化や重合促進触媒として働く。アルキド樹脂(フタル酸樹脂)には,ナフテン酸鉛やナフテン酸ジルコニウムなどが用いられている。過去には鉛系材料が主流であったが,近年の鉛フリー塗料ではジルコニウム系の採用が一般的になっている。
 
 可塑剤(plasticizer)
 乾燥した膜に伸び・タフネス・たわみ性を与えて塗膜の性能を向上させるために塗料に添加される物質。塗膜形成要素と相容性のある不揮発性又は難揮発性の液体又は固体の物質を加える。主に,揮発乾燥性塗料の製造に用いる。【JIS K5500「塗料用語」】
 塗膜の柔軟性付与を目的に,フタル酸ジメチルなどフタル酸エステル化合物などが用いられる。可塑剤は,塗料のみならず,塩化ビニル(シート,電線被覆,はき物),合成ゴム,印刷インキや接着剤など多くの有機材料を対象に,数多くの材料が知られている。
 増粘剤(塗料)(thckener)
 一般には,粘弾性調整剤,レオロジーコントロール剤, チキソトロピック剤とも呼ばれ,液体の粘性を高めるために混入する添加物の総称。
 塗装時のたれ防止,塗布厚の調整,塗りやすさの改善,レベリング性の改善,沈降防止などを目的に,塗装,塗工方式に合わせたレオロジー特性を調整する添加剤である。
 用いられる材料には,無機系(沈降炭酸カルシウム,粘土系など),有機系(界面活性剤系,酸化ポリエチレン系,金属石けん系など),複合系(変性粘土系,表面処理炭酸カルシウムなど)など多種類ある。
 流れ止め剤(antisagging agent, antisag agent, antirunning agent)は,塗装したとき,塗膜にたるみを生じる傾向を減少させるために塗料に配合する物質。塗料に適切な流展性を与える増粘剤が多く用いられ,溶剤形塗料には有機ベントナイト,金属石けん,ホワイトカーボン,脂肪酸アマイドなどが,水系塗料にはベントナイト,ポリビニルアルコール,メチルセルロース,カルボキシセルロース,ヒドロキシエチルセルロースなどが用いられる。【JIS K5500「塗料用語」】
 レベリング剤は,塗料を塗付けた後,硬化するまでの間に,塗膜の流動と塗膜表面の平滑化を促す目的で添加される。レベリング剤としては,(変性)シリコーン,界面活性剤などが用いられる。
 沈降防止剤(anti-settling additive, pigment sedimentation-preventing agent)は,液体系の塗料において,顔料や充填剤の沈澱(settling),沈降(sedimentation)を防止する添加剤。増粘剤としても作用する。
 
 皮張り防止剤(anti-skinning agent, antiskinning agent)
 塗料が容器の中で空気との接触面に皮を張るのを防ぐために用いる塗料用の添加剤。主として酸化防止剤。通常,揮発性のものが使用される。【JIS K5500「塗料用語」】
 
 消泡剤
 塗料攪拌時や塗装時の泡立ち防止や塗膜硬化時に泡の残存,ピンホール発生を防止する目的で活用される。消泡剤としては,ビニルエーテル(共)重合物,アクリル重合物,ポリオレフィン重合物,ポリブタジエン重合物,(変性)シリコーン,表面処理シリカ,ふっ素ポリマーなどが知られている。
 
 つや消し剤(flattingagent)
 塗膜のつやを減少させるために塗料に加える材料。【JIS K5500「塗料用語」】
 つや(gloss)とは,物体の表面から受ける正反射光成分の多少によって起こる感覚の属性。一般に,正反射光成分が多いときに,つやが多いという。
 塗膜では,光沢度計を用いて,入射角・反射角を 45 度・45度,60 度・60 度などとして鏡面光沢度を測定して,つやの大小の目安とする。【JIS K5500「塗料用語」】
 塗膜のつやを表す用語には,つやの程度によって,次のようなものがある。
 高光沢 (high gloss) ;光沢が高い状態。
 つやあり (glossy) :塗膜のつやがある状態。
 エッグシェル(卵殻)光沢 (eggshell gloss) ;卵の殻の表面のような半つやに近い状態。
 つやなし(つや消し)(flat, matt) ;塗膜のつやがない状態。
 しゅす(繻子)つや (satin gloss) ;絹のようなつや。

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