防食概論:塗料・塗装

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         塩基性防せい顔料

 塗装による防食は,環境と金属を遮断する環境遮断を基本原理としている。しかし,塗膜は有機高分子材料であり,本質的に酸素や水分子の透過を完全に遮断することはできない材料である。
 さらに,施工(塗装作業)で完全に均質な塗膜を形成することも困難で,少なからずの塗膜欠陥部(不均質部位)が生じる。
 一般的に,塗膜欠陥部など弱点部からの腐食を抑制するため,多くの防食塗装系では,防せい顔料を用いたさび止め塗料が下塗り塗料として用いられる。
 ここからは,防食塗料に用いられる防せい顔料を,その防せい原理の違いで分けて紹介する。

【塩基性防せい顔料(鉛系防せい顔料)】

   塩基性防せい顔料とは,外部から水が浸入すると,塗膜と鋼の界面を塩基性雰囲気にする顔料である。この種の顔料として,鉛丹,亜酸化鉛,シアナミド鉛などの鉛系化合物を用いた顔料が広く用いられてきた。
 鉛丹は明治初期から 2000年代まで用いられた防せい顔料である。他の鉛系防せい顔料も昭和初期に開発され,2000年代まで標準的な塗装仕様に採用されてきた。
 このように,鉛系防せい顔料は,安価で防食性能が高い材料として長い期間使用されてきた。しかし,1990年代より鉛化合物の健康影響への懸念され,2000年代には使用自粛が進むとともに JIS規格も次々と廃止されている。
 
 鉛丹(2PbO・PbO2
 四酸化三鉛を主成分とし,黄色みかかった鮮やかな赤色で,密度 8,800~9,100 kg/m3と重い顔料である。粒子径 0.5~24μmのものが用いられる。空気中で二酸化炭素と反応し,表面に炭酸鉛が生成して白くなる。
 防せい原理
 鉛丹さび止めペイントは,ボイル油をビヒクルとし,鉛丹を80%程度混合した塗料である。鉛丹に含まれる一酸化鉛(PbO:リサージ)とビヒクル中の脂肪酸成分,及び外部から浸透したとが反応し,金属石鹸(鉛石鹸)を生成する。
 塗膜内部で形成した金属石鹸により,緻密で耐湿・耐水性の良い塗膜を形成する。また,外部から水分が浸透すると,鉛石鹸の加水分解生成物,PbO,Pb(OH) 2による鋼表面の塩基性化,及び鉛酸イオンによる表面被覆などの作用で防せいする。

鉛石鹸の生成

金属石鹸(鉛石鹸)の生成過程


 シアナミド鉛(PbCN2
 黄色の結晶で,密度は約 6,600 kg/m3と鉛丹より軽い。また,活性で空気中の酸素や水と反応(分解)し易いので既調合ペイントとして使用される。
 防せい原理
 鉛丹の防せい有効成分である一酸化鉛の不安定性の改良,および顔料沈降性の改良を目的に開発された防せい顔料である。鉛丹同様にビヒクル中の脂肪酸成分と反応し鉛石鹸を作る。
 また,外部から侵入した水で分解し,生成したアンモニア性アルカリで酸性成分の中和,遊離のH2CN2による鋼表面の不動態化で防せいする。
 
 鉛酸カルシウム(2CaO・PbO2
 淡いクリーム色のため,白色仕上げの塗装仕様に有利である。密度 5,200~6,200 kg/m3で,結晶系の違いでオルト型とメタ型がある。防せい顔料にはオルト型が用いられる。
 防食原理
 鉛丹のPbOをCaOで置き換えたもの。水の存在によって2CaO・PbO2+4H20 → 2Ca(OH) 2+H4PbO4 (又はPbO2) のような加水分解を起こし,Ca2+アルカリによる防せい,鉛酸による中和反応による防せいが期待できるといわれている。
 また,ビヒクル中の脂肪酸と反応し,水可溶性のみならず水不溶性の鉛化合物も生成し,アノードに吸着して防せい作用を示す。さらに,金属イオンと反応しカルシウム塩としてアノードに沈着,炭酸カルシウムとしてカソードに沈着し腐食を抑制する。特に非鉄金属(主に亜鉛)の防せい顔料として用いられている。

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